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お江戸名園シリーズ~清澄庭園・紀伊国屋文左衛門も、岩崎弥太郎も愛でた深川の名園~【深川清澄白河】

2010年12月08日 17時34分02秒 | お江戸名園シリーズ
地下鉄清澄白河駅前を走る清澄通りに沿ってこんもりと繁った木々に覆われた一角が現れます。路地を抜けて進んでいくと立派な門が向かえてくれます。お江戸深川の清澄庭園です。

清澄庭園入口

江東区内で最も人気のある観光スポットの一つ「清澄庭園」は春夏秋冬、季節を問わず常に観光客が訪れています。近隣には深川江戸資料館をはじめ、芭蕉所縁の地や名刹、古刹が点在しています。

清澄庭園の門を入ると、広々とした庭園の様子が垣間見ることができます。入園料は一般成人が150円、65歳以上は70円と非常に手ごろな料金です。

早朝の雨で秋空がさらに澄み渡った今日、師走の冷たい風が園内の木々の葉を揺らし、去りゆく秋を偲ぶように黄金色の銀杏の葉が真っ青な空に彩りを添えていました。

園内の銀杏の木

隅田川の流れが間近に迫るここ清澄庭園はお江戸の時代には今の倍の広さを誇り、隅田川の水を引き入れるにはたやすい場所だったのです。そしてお江戸の材木集積所であった木場に隣接していたこともあって、あの紀伊国屋文左衛門が最初にこの場所に別邸を置いたのでした。文左衛門が身代をつぶした後、享保の時代に下総国関宿の城主・久世大和守の下屋敷となり庭園が形づくられました。幕末には久世家も所領を離れた為、この下屋敷は荒れるがままの状態になってしまったとのこと。



明治の御世となって、明治11年に荒廃したこの屋敷跡をあの岩崎弥太郎が三菱社員の慰安や貴賓所にするため、庭園の造成を計画しましたが施工半ばで逝去してしまいます。その後、弟の弥之助が明治24年に「深川親睦園」として竣工後も造園工事は進められ、隅田川の水を引いた大泉水を造り、周囲には全国から取り寄せた名石を配した「回遊式林泉庭園」が完成しました。

大泉水と涼亭

三菱、すなわち岩崎弥太郎が明治の御世にある種、国策会社として国家と結びついた商売でしこたま稼ぎだした金は莫大なものだったと想像します。その財力を背景に弥太郎はさまざま投資を行い、金が金を産むようなシステムをつくり上げていったのです。これはこれで素晴らしいことだと思います。そして当時、社員の福利厚生という極めて先進的な考えの下に、三菱の名の下にこの庭園を整備した弥太郎の経営感覚は「さすが!」と言わざるを得ません。

今、この庭園を見てお江戸(東京)に残る大名庭園と比べても、その規模と様式において勝るとも劣らない内容を誇っているのではないかと思います。浜離宮ほどの広さはありませんが、小石川後楽園とどっこい位の規模ではないでしょうか?園内のどこからでも見える大きな大泉水は浜離宮の汐入の池を彷彿とさせます。

広々とした大泉水と水面に浮かぶ渡り鳥

大泉水の周囲には多種多様な木々が繁り、その木々の根元や遊歩道の傍らには全国から取り寄せた無数の名石が配置され、まるで石庭ではないのかと思うくらいです。

遊歩道傍らの名石

大泉水には小さな島が配され、まるで大海に浮かぶ島のようにすら見えます。そして泉水の岸辺にまるで一幅の絵を見るるような佇まいで数奇屋造りの茶屋が優雅に浮かび上がります。「涼亭」と呼ばれる建物で明治42年(1909)に国賓として来日した英国のキッチナー元帥を迎えるために建てたものです。さすが大財閥三菱ですね!若干の国からの助成もあったのかもしれませんが、岩崎家の庭園に国賓をむかえることができるわけですから。

涼亭

園内の一番南、すなわち大泉水の一番奥に朽ちかけた門があり、その門を入るとパッと開けたような広場が現れます。今はなにも建造物がない広場なのですが、おそらくかつては瀟洒な洋館が建っていたのではないかといった雰囲気を残しています。その広場の端に大きな一枚岩の芭蕉の句碑が置かれています。碑面にはあの有名な俳句「古池や かはづ飛び込む 水の音」が刻まれています。もともとは隅田川の岸辺にあったものを、護岸工事の際に、清澄庭園内に移したものです。

芭蕉句碑

大泉水を囲む遊歩道の傍らに石仏群と書かれた表示板がたっています。遊歩道から少し入り込んだ場所に、石仏が葉影の下にひっそりと佇んでいます。庚申塔、法印慶光供養塔、馬頭観音供養塔などが寄り添うように置かれています。

苔むした遊歩道
石仏群

秋風に泉水の水面はわずかながら揺らいでいます。その水面に大陸から飛来したと思われる渡り鳥が戯れています。泉水に置かれた飛び石に一羽の白鷺が優雅な姿を見せてくれました。秋の陽射しにその白さが際立っていました。



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