俗世間から、うんと離れた老いぼれ坊主と、
実子を五人に差し出し、末子にすがる尼に、
する相談事ではなく、この時のお抹茶ほど、
苦く、後味が悪いと感じたことは無かった。
帰蝶「今日は疲れた…故、明日、信忠に会うとそうお伝え下さいませ」
密会専用、離れの茶室を出て、
迎賓庭園、地下通路を通って、
塩川「今宵ここで、ごゆるりとお過ごし下さい」
案内された場所が、かつての私の間。
案内してくれたのが、かつての侍女。
帰蝶「変わってしまったな…ここも、」
かつての私の城は、なんとも壮大、
キンキラ、煌びやかに変貌を遂げ、
塩川「彼此十年…変わらぬ方が可笑しゅうございます」
キツさは、相も変わらずであるが、
十年の間に我が嫡男の姑となって、
侍女からコロッと立場が変わって、
帰蝶「…。そなたも、老けたな」
私と同じ義母、姑の立場となる。
塩川「えぇ確かに。笑いジワが増えました」
しゅるる…と木箱の紐を解いて、
帰蝶「それは?」
塩川「勝寿院様より、預かりし品にございます」
木箱の中には、具足が入っていた。
帰蝶「具足に、南無阿弥陀仏…?」
やや小さめの具足には、
墨でそう書かれていた。
塩川「これを蘭に…、とのことにございます」
沢彦様も、勝寿院様も、かつての侍女も、私の苦悩に気付いた。
そして、ただただ傍観するしか出来ない、苦悩を味わっていた。
実子を五人に差し出し、末子にすがる尼に、
する相談事ではなく、この時のお抹茶ほど、
苦く、後味が悪いと感じたことは無かった。
帰蝶「今日は疲れた…故、明日、信忠に会うとそうお伝え下さいませ」
密会専用、離れの茶室を出て、
迎賓庭園、地下通路を通って、
塩川「今宵ここで、ごゆるりとお過ごし下さい」
案内された場所が、かつての私の間。
案内してくれたのが、かつての侍女。
帰蝶「変わってしまったな…ここも、」
かつての私の城は、なんとも壮大、
キンキラ、煌びやかに変貌を遂げ、
塩川「彼此十年…変わらぬ方が可笑しゅうございます」
キツさは、相も変わらずであるが、
十年の間に我が嫡男の姑となって、
侍女からコロッと立場が変わって、
帰蝶「…。そなたも、老けたな」
私と同じ義母、姑の立場となる。
塩川「えぇ確かに。笑いジワが増えました」
しゅるる…と木箱の紐を解いて、
帰蝶「それは?」
塩川「勝寿院様より、預かりし品にございます」
木箱の中には、具足が入っていた。
帰蝶「具足に、南無阿弥陀仏…?」
やや小さめの具足には、
墨でそう書かれていた。
塩川「これを蘭に…、とのことにございます」
沢彦様も、勝寿院様も、かつての侍女も、私の苦悩に気付いた。
そして、ただただ傍観するしか出来ない、苦悩を味わっていた。