ひつじ草の挑戦状

色んな思いを綴ってます。

散華の如く~死者からの声~

2014-08-12 | 散華の如く~天下出世の蝶~
今の殿と同じ四十八で、
幼い小鬼たちを残して、
塩川「さぞ、無念だったことにございましょう」
帰蝶「無念…」
だったのだろうか…?
弟を庇って、負傷した。
あの傷で戦に出れば…、
“死”
覚悟を決めねばならない。
合戦出陣前、
私に、頭を下げて逝った。
死を予見する者にとって、
無念、未練、執着、後悔、
そういう感情を他人に見せるものなのか?
戦人にとって死は、
是とも(良いとも)、
非とも(悪いとも)、
及ばない(言えない)。
戦国時代に生を宿した鬼の宿命、
だから、全ては仕方のないこと。
“後のことは、お頼み申し上げます”
私には、可成様から、
妻と子を頼みますと、
そんな言葉が聞こえたような気がした。
武骨寡黙な死者からの、
たった一つのお願いが、
残された者たちの安否。
「あの世で、可成様に何と申し開き(言い訳)をしよう…?」
塩川「何か、後ろめたいことでも?」
帰蝶「あぁ…」
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散華の如く~白鷹鸚鵡に、蘭丸~

2014-08-09 | 散華の如く~天下出世の蝶~
裏切りとは恐ろしいが、もっと恐ろしいのが、
義に生きること、忠義を尽くすことであった。
一つ、一本、一人に固執し、
尽くし過ぎると他に行けず。
私は蘭丸の行き過ぎた義と、
その行く末が心配であった。
人生50と言われる戦国時代、
殿、御年48、
私、来年47。
蘭丸が義を尽くすのは、織田信長という人物だけで、
決して、織田家、その嫡男信忠ではないということ。
どこかから嫁を…と思っても、あの殿が手放すまい。
帰蝶「奥州白鷹、青鸚鵡に蘭丸…」
塩川「なんです、それ?」
帰蝶「殿の、三大自慢…」
謙信公が下さった白鷹、
伴天連の献上品の鸚鵡、
それと、蘭丸…。
彼が私を疑っているのは、理由があった。
「最近何か思惑されているご様子で」
宴の席であの明智様が、
食事を口に運び損ねた。
箸から、
ぽろ…、
食べ物がころころと床に落ちた。
蘭がそれを見て、
「帰蝶様、何か、御存じなのでは?」
何も知らぬ存ぜぬ関知せず、気にも留めなかった。
しかし、
殿の与り知るところとなり、私の関与が疑われた。
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散華の如く~義の使い方~

2014-08-08 | 散華の如く~天下出世の蝶~
殿に褒められた時の、
小鬼たちのあの顔…、
逆に、信忠が哀れに思えた。
同じ世代で、
同じ行為で、
異なる扱い。
実子であるが故に、
辛い思いをさせた。
本当は、
“引き取りたい”
あの小鬼たちを、
養子にしたかったらしいが、
私は、頑固に反対に回った。
“それだけは、なりません”
養子が実子を差し置き、
どんどん、力を付ける。
小鬼たちが、怖かった。
「もし、あの子たちを養子にするなら…」
家督を継ぐのは嫡男信忠であると、
そう家臣衆に宣言して頂かないと。
“家督?すでに決まっておろうが”
殿の心で定めたことがすんなり、
家臣衆に浸透するか…と言えば、
そうとは限らない。
あっちに付くのが有利か?
こっちに付くのが得策か?
塩川「…そう言えば、古新…そろそろ摂津でしょうか?」
帰蝶「逆賊の姫君を自分の妻と出来るか、楽しみである」
塩川「果たして義を尽くすとは、夫と妻…どちらの義なのでしょうか」
帰蝶「そうじゃな。古新、どこまで妻に義を尽くすか…見ものじゃな」
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散華の如く~父の俤~

2014-08-04 | 散華の如く~天下出世の蝶~
塩川「どなたが、介錯なさるのでしょうね…」
帰蝶「縁起でもない」
塩川「いえ、介錯人が可哀そうと思いまして」
帰蝶「…確かに」
介錯に選ばれた者が可哀そう。
鬼の首とその妻の首を刎ねよ、
と命じられて、
一寸の迷いなく、介助を出来るか?
鬼の首を何の躊躇いなく切れるか?
「よほどの精神か、腕の立つ者でなければ、その大役…務まるまい」
塩川「私の知る限りでは、ただお一人…」
帰蝶「誰か…?」
塩川「鬼には鬼」
帰蝶「森の子たちか?」
塩川「あの小鬼たちにはまず、出来ますまい」
帰蝶「…」
森可成様が亡くなって、
幼き子たちを引き取り、
刀持ち小姓に育て上げ、
立派な殿の小鬼になった。
子たちの成長は嬉しいが、
比較対象者が惨めである。
もう少し、あの子たちのこともお考え下さい、
そう、嫡男や養子の扱いに対して注意したら、
“父子である(繋がりが濃い)が故の垣根かな”
殿と嫡男信忠との間には、大きな壁が出来た。
鬼とその妻の間に子鬼に恵まれず、
恵まれた養子は、普通の子だった。
しかも他人様の小鬼たちは、殿の予想を遥かに超え、血より濃く熱い鬼となって…、
塩川「あの子たち、父を二度失くす事は絶対にしないでしょう」
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散華の如く~逆臣と、運命の糸~

2014-08-03 | 散華の如く~天下出世の蝶~
この日から、古新は無口になった。
その娘に思う所があったのだろう、
京を見学の後、物思いに耽って…、
古新「摂津に、行きます」
安土城ではなく、池田城に帰った。
逆賊の娘を娶るためではあるが…、
帰蝶「なぁ、塩川、古新の、その逆賊の姫君を知っているか?」
塩川「はぁ…確か、糸という名だったと記憶しておりますが…」
帰蝶「…が?」
塩川「えぇ…」
まぁ、いずれ御耳に入りましょうと、
意を決したように、重い口を割った。
「荒木様の元家臣が池田様を頼って来られたそうです」
帰蝶「荒木…村重…」
殿は、彼を気に入っていた。
“荒木か…良い名だ”
荒々しい気質を好んだ殿、
そんな彼を、特に優遇し、
信頼も寄せていた。
なのに、裏切った。
手腕も買っていた。
それなのに…。
奇襲、逆襲、復讐、報復、
寝返りに謀反が当たり前。
そんな時代だから、
“是非に及ばず(仕方のないことだ…)”
と、諦めた。
「なぁ。もし、謀反が成就していたとしたら、我らもあの切支丹の二の舞を踏むのかのう?」
当の謀反人は茶坊主を頼って逃げ延び、
村重の妻子侍女らの首は、飛ばされた。
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散華の如く~その娘次第でしょ~

2014-08-01 | 散華の如く~天下出世の蝶~
“どちらも呑めぬ条件”だとして、
代わりに今川討伐を兄に提案した。
「父はあの世で勝ち誇っておったであろう」
帰蝶、ほれ見たことか、
父の目に狂い無し、と。
帰蝶「…て、聞いておるのか?」
古新「えぇ…、聞こえてますよ」
ぼんやり、
貧困で寂れた京の街を、
淋しそうに眺めていた。
がっかり、
京の都とはこんなものか…、
そう言いたげな表情だった。
帰蝶「その娘を逆賊とするか、妻とするかは、夫の、そなた次第である」
古新「もっと、華やかなものだと思っておりました」
帰蝶「都が…、か?」
古新「京も、婚儀も」
帰蝶「ならば、そうすれば良かろう?」
古新「…」
帰蝶「その逆賊の娘を盛大に持て成し、華やかに宴、美しく飾れば良い」
知らぬ土地のしきたり新たな家に嫁ぎ、
肩身の狭い思いをするのは、逆賊の娘。
この裏切りの世で裏切らぬための契り、
政略結婚のために生まれたのではない、
そう言いたけれども、
父の意向に逆らえず。
「嫁ぐ娘子の気持ちも、汲んでやってくれぬか?」
古新「それは、」
廃れた寺をじっと見つめて、こう言った。
「その娘次第でしょ」
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散華の如く~逆賊の娘たち~

2014-07-31 | 散華の如く~天下出世の蝶~
顔を赤らめた?と思ったら、
頭を垂れて、表情を隠した。
古新「逆賊の娘を娶れ…と」
降って湧いたような縁談に、
困っているんですよ、と…?
顔の知らぬ者同士、しかも、政略結婚が当たり前の時代…、
帰蝶「逆賊が嫌なら、断れば良かろう」
古新「誰も、嫌とは申しておりません」
帰蝶「父に、嫌と言えぬだけであろう」
古新「…」
あぁあ、図星か、
黙ってしまった。
帰蝶「…私は14、殿は16の時であった」
会うた事も無い、格下の男の許に、
しかも、うつけの噂も耳に届いて、
縁談が決まった時は惨めであった。
皆が私を、
“可哀そうに…”
憐れんだ。
「最初、父は私を捨てるつもりなのだと思った」
古新「マムシのお父上も、よほど手を焼いておられたの、ィでッ」
一発、ブチかまし、
あの時の話をした。
帰蝶「子の幸せを願わぬ父は、それこそ父に非ず…」
兄が父を裏切り、父が兄にその首を獲られた時の話。
「私は兄の裏切りで、逆賊の妻となった」
和睦の条件は、妹の私の首を晒すか、もしくは、和睦解消…絶縁だった。
私は「御離縁下さい」と、そう願い出た。もちろん、そうすると思った。
ただ出戻ったとしても、またどこかへ飛ばされるか殺されると覚悟した。
しかし、殿は、
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散華の如く~女子供の扱い方~

2014-07-30 | 散華の如く~天下出世の蝶~
帰蝶「殿は、明智様の…どこまで把握しておいでか?」
古新「それは、申し上げられません」
帰蝶「あぁ…、然様か」
つまり、織田の妻だとはいえ、
明智の血の濃い私は蚊帳の外。
子供子供と見くびっていたら、
これだ。
大どんでん返しと、
大きなしっぺ返し。
だがこうして、
殿の少年小姓たちが嗅ぎ回り、
動き回っているということは、
明智降ろしの日は、近いな。
古いお考えの方たちと手を切りたい殿には、
お古い方々にやれそれ踊らされる重臣こそ、
邪魔。
あっちで罠に嵌って、
古い型に嵌りきった、
私の呼んできた重臣。
型破りな殿の新しい日ノ本には…、
「要らぬなぁ…」と溜息を吐いた。
古新「お疲れで?どこか旅籠で、お休みなさいますか?」
帰蝶「そなた子供がこうしてべったり、おちおち休めもせぬわ。そなたも安土に帰れ」
古新「いえ。御屋形様にしかと学んで来いと申し付かっておりまする故、帰れませぬ」
帰蝶「殿が、何を、学んで来いと?」
古新「京の建築様式と…」
古新は城建築に興味があり、
殿も古新の腕を買っていた。
「女子の扱い方」
帰蝶「は?」
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散華の如く~蓼食う虫も好き好き~

2014-07-28 | 散華の如く~天下出世の蝶~
古新は笑った。
古新「姉そっくり…」
古新の姉は可成様の次男長可の妻 泉は、
信輝の娘である。女ながら鉄砲隊隊長で、
殿は信輝の娘を“鉄砲娘”と呼んでいた。
帰蝶「あぁ…」
もし、私が鉄砲を手にドンパチやっていたなら、
私が、そのような渾名を付けられていただろう。
殿も、私に鉄砲を持て、と言ったが、
私は、男の無駄な意地の張り合いに、
無辜の女や子供が巻き込まれるのは、
“嫌にございます”
きっぱりと断った。
「あの、好き好んで鬼に嫁いだ姉のことか」
古新「鬼を助けるのは、自分しか居らぬと」
帰蝶「世にモノ好きが居らねば、男が余る」
古新「帰蝶様も、だから、御屋形様の所へ…?」
帰蝶「そんな訳がなかろうが。私は父が決めたからで」
古新「姉は、父の反対を押し切り、森家へ嫁ぎました」
私の腹を探るように睨み、
帰蝶「…」
私が言葉を選んでいると、
古新が先に言葉を続けた。
古新「帰蝶様なら本当にイヤなら、断るはず、と」
帰蝶「誰が、言うておった?」
古新「私の推測にございます」
帰蝶「良いか?古新。私一人がイヤだと言った所で、何も成らぬ、為せぬ事がある」
古新「それが、御屋形様の言われる“天下泰平、天下布武”なのでございますか?」
帰蝶「おひとり一人…泰平布武の捉え方が違う、と言っているのだ」
古新「御一人…とは、明智様のこと、にございますね」
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散華の如く~義兄弟、義姉妹~

2014-07-26 | 散華の如く~天下出世の蝶~
道三マムシの血は濃く、
根は深く広がっていた。
もし、四国と戦が起きれば、
私は、どう動くべきなのか?
妻として…、
妹として…。
それにもし、
長宗我部討伐が始まれば、
明智様の側近利三だって、
黙ってはいないだろう…。
“そなた、どう動く?”
妻を取るか、
妹を取るか。
殿から難問を突き付けられているような、
そんな気持ち…かつての明智様のように、
主君を取るか、
家臣を取るか。
忠義とは何か、
忠誠とは何か。
殿に腹を覗かれているような、
探りを入れられているような、
胸の辺りがもやもや消化不良、
胸焼けを起こしているような、
気持ち悪さがここ数日続いた。
こんな晴れない気分でぶらぶら京廻りなど…、
古新「御方様、また気分が優れぬのでございますか?」
不意に、私の顔を覗く義弟の面影が、
余計に、ムカムカと気分を悪くする。
帰蝶「大事無い」
つっけんどんに言い返したら、
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