ひつじ草の挑戦状

色んな思いを綴ってます。

長井の、乱

2012-07-07 | 義経絵巻-芭蕉夢の跡-
ひらり、ひらりと、
龍之介「あ…ちょうちょ…」を追い駆けて、
ドンッ
人様にぶつかって、尻もち付いた。
「イテェな~、このガキ…」を見たら「…れ?」
雪「龍之介ッ」を抱き起して「す、すみません、ほら…謝り…なッ!?」
ぶつかった人は、私たち兄妹の、最初の奉公先の、
長井様…
長井「あれれ?雪…ちゃん、の子?」
雪ちゃんの着物を見て、
「えらく羽振り良くなったんじゃない?…出世したんだ」着物の袂を引っ張って、
グイ、引き寄せられた拍子に、手から、するりと
雪「あ…」
ひらり、ひらりと、お兄ちゃんからの手紙が地面に落ちた。それをパラ…と、開いて、
長井「何々?利祐からか。新しい奉公先…土岐 光衡…照子…乳母でもやろうっての?」
読まれてしまった。
雪「あ、あの…私たち、急ぎますので…失礼致します。龍之介…」を連れて行こうとしたら、
龍之介「ねぇ、新しい父上…?」
長井「あん?」
雪「ち…違うのよ。この方は…」
長井「ほぉ…ん?ガキをダシに、奉公先を転々としてやがったな」
雪「…」お兄ちゃん…。
「おい。雪、起きろ」
ここはぁ?
「“いいか、雪。今日からここの家の子に成れ”」
お兄ちゃんはぁ?
「兄ちゃんは、もう…お前の兄ちゃんじゃないんだ」
長井「なぁ…雪ちゃん」ガキを肩車して…「俺にもその美味しい蜜(光)、吸わせてくれよ」
私たちを苦しめた長井が再び現れ、龍之介が人質に捕られ「一緒に、乗っ取ろうぜ」
雪「あ…」私…捕えられてしまった。ごめん…お兄ちゃん。

出世欲と支配欲

2012-07-06 | 義経絵巻-芭蕉夢の跡-
斎藤「なれる。蝶(出世)だろうが、北の方(身分の高い人の妻)だろうが、俺が保証する」
あやめ「なら、私を…」
男性恐怖症が、
ひらり…と、男の胸に飛び込んで、
「あなたの黄蝶にして下さいませ」
で、交渉成立、と。
嫌いなタイプのデジャブな女は、後の俺の妻。
もちろん、恋愛感情なんてモンは、これっぽっちもねぇし、
形だけの夫婦ヅラした仮面で、妻らしい顔して座ってりゃ、結構結構。
戦乱乱世に、愛ほど無駄なモノはねぇ。
男と女なんて政略知略戦略の利害関係でくっ付いたり、離れたり…、
ってのが、通例だが、
あやめ「あぁ~あ。蝶々さん、飛んで行っちゃったぁ」とイタズラっぽく笑う顔に、
お福さんがデジャブして、
斎藤「これから、お前が、俺の蝶だ」
お福さんの生き写しを前に性分(サガ)が出ちまって、こういう例外が生まれちまう。
彼女を抱き寄せたら、
あやめ「あの…」
腕をこじ開けて、顔を出した。
斎藤「なんだ?」
あやめ「二番茶…忘れていました」
斎藤「そんなクドイ茶、飲めるか。ひっこめ」
あやめ「…はい」俺の腕の中に、キレイな顔が引っ込めて、
「後から、美味しいお茶、入れ直します」胸に頭を埋めた。
斎藤「あぁ…」こういうトコで、サガが出る。
その時、「もう、見てらんないわ」
ひらり、ひらりと、
黄蝶が外に飛び出して、
ひらり、ひらりと、
戦国乱世を舞っていた。

黄蝶、変化の兆し

2012-07-05 | 義経絵巻-芭蕉夢の跡-
あやめ「尻に敷かれるタイプには見えません」
斎藤「なら、」
すっと手を出し…「御手」
あやめ「エスコートになっていません」
ペンッ、俺の掌を打って、二度目のボディタッチ。
軽く拒否して、私、そんな軽い女じゃないのよってか。
斎藤「犬が気に入らねぇなら、ネコか?にゃぁ、天下取ろうぜぇ」ごろごろぉ…と
あやめ「甘えないで下さい…」
斎藤「アンタが要るんだって」
あやめ「私、アンタ呼ばわりされるの、ヤです」
斎藤「なら、これから、名で呼ぶ」
“菖蒲団子不振症”
あやめ「…考えさせて下さい…」
ふ…と横を向いたら、
「あ…蝶々が、」
ひらりひらりと、人間の世界に入って来た。
「まぁ、紋黄蝶(モンキチョウ)だわ。おめでたい…」
斎藤「めでたい…?」
あやめ「し…(静かに)」人差し指を口に当てて、
その手を、すぅ…と伸ばして、袖を広げ、あやめは動かなくなった。
厨に迷い込んだ黄蝶は、あやめの着物に留まって、
羽をバタつかせたかと思ったら、
次第に羽をゆっくりゆっくり上下させて、
ぴた…、
あやめを花と間違えたか、蝶は蜜もねぇのに羽を休めた。
あやめ「蝶は地を這う蛹から天を舞う美しい姿に変化する事から出世の兆しと言われます」
蝶を驚かせないように、小声で俺に教えた。
斎藤「へぇ…」
紋黄蝶を見て、あやめを見た。
あやめ「…私、黄蝶になれますか?

かかぁ天下、取らせてやるよ

2012-07-04 | 義経絵巻-芭蕉夢の跡-
あやめ「お茶をお入れするにわざわざ、お待ち頂くのはお茶の味を最大限に引き出すため、」
茶の香りを利いて「必要な、間(ま)…なのです」
茶の“間”…日常生活において最小限にして最大の持て成しをして、時間を優しく流す。
斎藤「間…ねぇ」茶を飲んで、
あやめ「二番茶、お入れしましょう」
茶を飲むタイミングを見計らい、二番茶か。
斎藤「よく見てんだな」
あやめ「さり気無く、その方の仕草やお茶の減り方を観察します」
湯呑を下げて、湯を沸かし直していた。
俺には無いな、こういう細やかな心配り。
二番茶を入れている間に、残りの菓子を食って、
さて、商談に入ろう。
斎藤「なぁ、アンタさ。俺と手ぇ組まねぇ?」
あやめ「手を組む…というのは?」
斎藤「アンタが欲しいって言ったら、どうする?」
あやめ「まぁ、いきなりプロポーズですか?変な人…」
斎藤「こっちは真剣な話をしてんだ。他の野郎にくれてやるには、勿体ねぇ」
あやめ「…」
斎藤「俺なら、アンタを…」知識、教養、知性と品格を…「生かせる」
あやめ「生かす…?」
斎藤「アンタの人生、丸ごとひっくるめて背負ってやる。悪い話じゃないだろ」
あやめ「悪い…冗談です」
斎藤「冗談で口説くかよ」
あやめ「いい加減に…」
斎藤「男に遊ばれんのが、ヤなんだろ?」
あやめ「…それとこれとは話が、」
斎藤「これは遊びじゃないんだ。一緒に、天下取ろうって話だ」
あやめ「天下?」
斎藤「かかぁ天下(家庭の実権掌握)、取らせてやるよ」黒文字で、あやめを差して、
「お…」ヒョイと黒文字を取り上げられた。

Teacher

2012-07-03 | 義経絵巻-芭蕉夢の跡-
さて、と、菓子を手でつまんで食おうとしたら、
ぺちッと、
斎藤「てッ」手を打たれた。
おっと?ボディタッチが入った。
あやめ「こういう時は、これ…」
“黒文字”
「くろもじ、を使います」
斎藤「楊枝…?」
あやめ「御菓子を懐紙に乗せられたお菓子を持って」右手に黒文字、
それを斜めに構え、
斎藤「おっ」菓子を、サ…と切り分けた。
あやめ「薙刀(鎌倉室町からの女子武道、桃山の鉄砲伝来以降衰退)は得意ではありませんが、」
御菓子の断面を得意げに見せて、
「黒文字は、得意です」
斎藤「ひゅぅ…、見事な切り口」
あやめ「御菓子が痛そうに見えないでしょ」
斎藤「なるほど。黒文字…ね」
迷い無く一思いに、
「一刀両断ってか」
あやめ「お上手ですわ」
斎藤「ふぅん…」菓子の断面を見て、あやめを見て…「次は?」
あやめ「お茶会で大声と、大口は見っとも無いので、今度は黒文字を横に構え、」
サク…と、菓子を横に割って、十字切り。
「これくらいなら、食べやすいでしょう」
手皿を添えて、
あん、と口に入れたお菓子は「美味し」
斎藤「なるほど。美味いもんだ」あやめの手つきに感心したら、
あやめ「新作ですもの、エッヘン」御菓子を自慢した。こういう抜けた所が、良い。
「コホン、良いですか?」咳払いをして、人差し指を突き立て、
斎藤「Teacherらしくなって来たな」知識を鼻に掛けない所も、また良い。

教養が要るんだよ

2012-07-02 | 義経絵巻-芭蕉夢の跡-
茶碗に一の碗、二の碗、二の碗、一の碗と濃さが均等になるよう最後の一滴まで出し切り、
「どうぞ」
コト…
斎藤「…」湯呑が手前に置かれた。
それを手に取って、
「おっ」
と、手にした茶は程よく温かく、口に含めば円やか、後味は甘い。
あやめ「待ったかいがありました?」
斎藤「ふぅ…ん」彼女の顔を見たら、
あやめ「何か?」勝ち誇った顔してやがった。
斎藤「いや、何でもねぇよ」
あやめ「可笑しな方…」
面白い方から、可笑しな方…か。
より親密な言い方に変化して、
警戒心までも解いちゃった?
斎藤「なぁ、お茶のレクチャーしてくれよ」
あやめ「お茶に関心が御有りですか?」
斎藤「今日、ここで行われている茶会に、俺は蚊帳の外」
あやめ「子供たちの面倒を…という話ですわね」
斎藤「向こうの茶室の中で、御偉方と心理戦…」
“代わりに茶を点ててもらおうか?”
池田たち元々坊ちゃん階級は、幼少期から“そういう教育”を受けている。
生まれ育ちが悪く、膏売ってた破落戸(ごろつき)は、そういう“モン”がねぇ。
あやめ「心理戦…?お茶が?」首を傾げて、
頭にでっかい“?(クエスチョン)”マークを付けやがったから、
斎藤「…。普通に考えて、狭ぇ部屋で野郎が茶して楽しいかよ」
加齢臭プンプン胡散クセェ。出来れば、若くて可愛い子ちゃんとお茶してぇ。
あやめ「まぁ、そうだったのですね」
斎藤「いいか、女の井戸端と違って、男の茶会は、ただ食っちゃべってるだけじゃねぇんだ」
ちょっと抜けてるヤツだがのし上がる為に、この女の“教養”が要る、と思った。

Round-Two

2012-07-01 | 義経絵巻-芭蕉夢の跡-
急須と茶碗二客、用意して、
沸々と湯が湧いたら、茶碗に入れて、湯冷まし。
急須に二人分の茶葉を入れて、湯冷ましした湯を急須に入れて蓋をした。
「しばらく、お待ち下さいませ…」
斎藤「待つってのは、どうも苦手でね。待ってる間に、美味い話を逃がしちまう」
あやめ「あらま?美味しいお魚(女)…逃がしちゃいました?」
そういう過去があるのね…みたいなニュアンスだった。
そういう所が、デジャブ(菖蒲)。
斎藤「さて、Round-Two」
あやめ「レクチャーの続きですか?」
斎藤「いや、違う」心理学の講習ではなく、
男と女のラブゲーム。
こっちが勝手に、
カンッ、ゴングを鳴らした。
あやめ「くす…」口に手を当てて「面白い方…」と小さく笑った。
斎藤「あらま…」
手の隙間から覗く口元が緩み、頬が柔らかく膨らんで、
俺への緊張が解かれた。
簡単に気を許しちゃって、こういうのを油断と言う。
油断しちゃった、この手の御嬢を手中に治めるには、
さて、どうする?
ここは御厨、この女のテリトリー(知識領域)。
茶の湯、御持て成しに無知な俺には形勢不利。
起死回生、権勢逆転を図るには、
“菖蒲団子不振症”
敗退を喫した、あの女の既視(デジャブ)が邪魔だった。
サガに負けるか、策に嵌るか?
さて…、
あやめ「そろそろね」茶葉が花開いた頃、
ちょろろろ…と湯呑に茶を注いだ。

たかが菓子、されど御菓子

2012-06-30 | 義経絵巻-芭蕉夢の跡-
あやめ「た、珠ちゃん?」
斎藤「お前、おやつ抜きッ」
義隆「え゛ぇ゛」
斎藤「謝ってねぇだろ」
バームクーヘンのツーピースを皿に盛って、義隆に、
「珠ちゃんに、頭下げろ」
あやめ「…」
義隆「…珠ちゃん、あの…ごめんね」
珠ちゃんの前にお菓子を持って行って、
「ほら、一緒に食べよ。美味しそうだよ」
珠「ダイ…キライ…」
義隆「え?」
珠「隆くん…私の団子は食べれなくて、あやめおばちゃんのは食べるんだ…」
義隆「…」
珠「ひとりで遊ぶから…、もう、イイもんッ」中庭に飛び出して行った。
あやめ「た、珠ちゃん…」を追いかけようとしたら「あっ」と、止められた。
斎藤「配役が違う。手拭い」をあやめから引っ手繰って、菓子を皿ごと包んで、
「男を上げて、戻って来い」
義隆「はい」厨房を出て、珠ちゃんを追って、たたたたー、走ってったから、
斎藤「おし。しばらくガキのお守りから解放だ。さて…」
あ~ん、と大口開けて、バームクーヘンを手で掴んで食おうとしたら、
あやめ「くす…」と笑って「お行儀が悪いですわ」ぴしゃり、菓子食うのを止められた。
棚から急須を取り出して「お茶を、お入れ致します」
斎藤「たかが菓子に、わざわざ茶を点てて、喰う奴の気がしれぇねぇ」
あやめ「会話に花を咲かし、添える御菓子だからこそ、わざわざ、お茶を点てるんですわ」
鉄瓶に水を入れて、火種に薪をくべた。
湯を沸かす間に、
「御抹茶きらしているようなので、お煎茶にお入れします」
茶筒の蓋を開けたら、初摘みの新茶の香りが漂った。
「きれいな茶葉を咲かせましょう」

デジャブな女

2012-06-29 | 義経絵巻-芭蕉夢の跡-
斎藤「女泣かす野郎がいるかッ。バカ」
パカンッと頭を叩いて、
義隆「イッテッ。父上にも殴られた事無いんだぞ」←教育係 池田さんには殴られています。
斎藤さんを睨んで、
斎藤「なんだ、やんのか?」ガキの胸ぐら掴んで「あん?」
義隆「えいッ」
ベッチョと、斎藤さんの手に泥を塗ってやった。
斎藤「てめッ、一度シバくぞ」
あやめ「もう。親子喧嘩してどうするの?」
珠ちゃんをなだめて、
斎藤「チッ」ガキから手を放して「手が汚れちまったじゃねぇか」
あやめ「とにかく、顔とお手手洗って来ましょうね」
一旦、御まま事を中断して、皆で手水鉢の所まで行った。
珠ちゃんの顔を洗って、お手手を洗って、
キレイキレイしましょうね
斎藤「キレイ…キレイ…ねぇ」
そういや、そんな事…あったっけか。
ピッピッと、
水を跳ね飛ばし、お福さんとの思い出を飛ばして自然乾燥…って思ったら、
横から、
あやめ「はい…」真っ新な布が差し出した。
斎藤「お、おう…」どことなく、お福さんと菖蒲をデジャブさせるような女で、
「…サンキュ」
手を適当に拭いて、記憶を拭き消して、布を返した。
あやめ「そうだ」左手の平をポンと右手で打って「斎藤さん。御厨に案内して下さいませ」
斎藤「台所?」
あやめ「えぇ、頂き物があるの」年輪菓子を取り出して、八等分にしてお皿に盛った。
「ちょっと、おやつには早いけど、これを食べながら御まま事の続きをしましょう」
義隆「うあぁ、美味そう!」と感嘆の声を出したから、
珠「む…」ギュ…ッと、あやめおばちゃんの袖を引っ張った。

女の気持ち、母の思い

2012-06-28 | 義経絵巻-芭蕉夢の跡-
義隆「えぇ!?俺がぁ?」
珠「うん。お父さんで、あやめおばちゃんとおじさんが、子供の役ね」
斎藤「…御まま事かよ…」
珠「はい」と、目の前に差し出された皿に、
義隆「何これ…?」
珠「さぁ、召し上がれ」
斎藤「(メシ上がれるか…)」普通に、汚ねぇ泥団子…。
義隆「こんなもの食えるかよッ」
斎藤「あちゃ…」ピチャッ、おでこを打って、目を覆った。
珠「あ、あなた…。ひ、ひどい…うっうぅ」←役に入っています。
あやめ「まぁまぁ、美味しそうなお団子…」パクパクと食べるフリして…「ねぇ?」
斎藤「あ…あぁ。美味そうだ」全ッ然ッ美味そうに見えねぇ泥を「美味い、美味い」
大人二人で、笑って食う真似して、
義隆「うぇ…まずそ…」
空気の読めねぇガキが一言、大失言。
ヤバい。
珠「せっかくぅ、う、うぅ。作っ…たのに…ヒック(しゃくりあげて)…ひど…」
義隆「だって、泥だよ…これ」
ドロドロのお団子を持ち上げて、
ぼと…ビチャと無残にも地面に落ちた泥団子。
地面と一体化した泥は、団子の跡形も無く…
斎藤「あぁあ…(バカッ、泥でも美味そうに食えって)」
義隆「泥なんて、食べちゃダメだッ。お腹こわすッ」
斎藤「あのなぁ…」母親役の珠ちゃんの気持ちそっちのけ、
感情をとてもストレートに行動と言葉で表現する真っ正直なガキに育っちまって…。
珠「隆くんなんて…大ッ嫌いッ!うぁ…ん」泥の付いた手で顔を覆ったから、
あやめ「ありゃりゃ~。顔がドロンチョになっちゃった」
斎藤「おい、女の顔に泥塗ったぞ、何とかしろ」
義隆「何とかって…だって、」泥食べちゃダメだもん。
珠「うえぇ…ん」大泣きして、