ひつじ草の挑戦状

色んな思いを綴ってます。

見える傷跡、見えない傷跡

2011-05-31 | 義経絵巻-芭蕉夢の跡-
五月晴れ、酒田の料亭から少し離れた赤川 河川敷で、さわさわ流れる風の中、
ちゃっかり、能子の膝を枕にして、気持ち良さそうに、池田「すやすや…」と熟睡中。
能子「(もぅ~)」眉間にシワを寄せ、私は枕じゃないのよ!と赤川鱒遡上現場を眺めていた。
そこには、継「ぅおぉものぉお!」、忠「召し捕ったぁあッ!」と大物を釣り上げる兄弟と、
初音「あ…」、楓「そ…」と素っ気無く、笹の葉を洗う姉妹がいた。
相変わらず、佐藤兄弟夫婦の間には、川の水温と同じ位冷めたい空気が流れていて…、
能子「ふぅ…ん(倦怠期?)」と、静かに身を潜め、夫婦の分析をしていた。
倦怠期を何とか打破しようと意気込む継“この桜吹雪に見覚えがねぇとは言わせねえッ!”
と、遠山の金さんの決め台詞で、ヌギッ、着物を脱いだ。すると、
能子「あッ!」顕わになった右肩に、深い矢傷が見えた。
その声で目を覚まし、ゴロンと向きを変えた池田「あの傷は…?」と、能子の視線を追った。
能子「ムッ」私の膝を相も変わらず枕にして、話の続きを伺う池田に「ちょっとぉ!」腹が立ち「いい加減、私の膝から退きなさいよ」と小声で、御小言、言ったら
池田「こちらの質問の方が先でしょう」と、視線を合わせず…注意された。
能子「もぉ…」と牛みたいに怒っても…「あれは、屋島の合戦の、傷跡よ」…効果はない。
池田「ふぅ…ん」視線は、継に注いだまま続きを聞かせろと、耳をこちらに向けていた。
能子「あの時、継さん…死んでしまったと思ったわ。兄の盾になって背中で矢を受けたの。その後、海に落ちて…。戦の最中、彼を助けられず。でも、生きていて…本当に、良かった」
池田「それは、俺も、思いましたよ」
能子「え?」
池田「いえ…」と言葉を切って「彼ら、藤原大臣の佐(たすく 補佐)、でしたね」
能子「えぇ。秀衡様(義経のパトロン)が兄の身を案じて付けた従者よ。三人でよく悪さしたって聞いたわ。まるで、あなた達みたい、ねっ」と、悪戯っぽく笑ったら、
池田「ふん」と鼻で笑って、“平和だった”あの頃を思い出した。
能子「あの能装束、継さんが用意してくれたの…」鮮やかな紅白の能装束と…、

池田「…」蝶の魂が浮かんで…フッと消えた、清経の最後のシーンを思い浮かべた。
能子「継さんが“蝶の魂を癒してくれって”…衣装を探し回ってくれたんだって、聞いたわ」
池田「…。ワキを癒せても、シテ(自分)が癒されないんじゃ…ダメでしょ」と注意され、
能子「昔から…」痛い所突くなぁ…と思って「能が、“好きだった”もんね」と言ったら、
池田「今でも、能は好きですよ」相変わらず、その視線は継さんの傷跡を追っていた。
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小枝の思い

2011-05-30 | 義経絵巻-芭蕉夢の跡-
瑠璃姫「そ。毒がバラ撒かれた時期と重なっているの」
富樫「何らかの関わりがあって、養子に出した?」
瑠璃姫「分からない…ただ、池田さん。匠君が自分を追ってるとは…知らなかった」
富樫「追って?それにしちゃ、えらく追い越したな。義経たちと会ったのは白神山地だ」
瑠璃姫「えぇ。そうね。それと、これが…」と白鷹の羽の矢じりをじっと見て「気掛かりね」
富樫「待ち伏せ…されていた?つまり、俺らの逃走ルートをどっかで入手した?」
瑠璃姫「ねぇ」小枝を見て「あの木瓜紋の法被…あれ、どういう意味?」と繭子に聞いたが、

繭子「さぁ…」と小枝を見た。
しかし、彼女はうつむいたまま…山吹ちゃんをあやしていた。
相変わらず、能面を付けているので、
冷泉院「ふぅ…」読唇術も使えないし、表情から感情を読み取ることが出来ない。
瑠璃姫「あの”紅葉狩り”って、何を意味しているの?」と、訊ねてみた…が、
繭子「分からないわ」と左右に首を振った。
小枝「…」
瑠璃姫「そう…」息子の死から声が出なくなったらしく、失声症(しっせいしょう)だった。発声気管支に問題はなく、心的外傷ストレス(PTSD)が原因で声を発することが出来なくなる病気で、
富樫「ふぅ…ん」それに、機密文書も、気掛かりだ。
瑠璃姫「そうまでして、紅葉狩りをかばう理由は…?」と鋭い口調で、問い質したが、
小枝「…」深く、深くうつむき、山吹をギュッと抱きしめた。そうしたら…泣き出しだ。
繭子「瑠璃ッ」を注意して「事情聴取は…」と首を横に振った。
瑠璃姫「ふぅ」と溜息付いて「分かってる」と印籠と白鷹の矢を交互に見比べた。
小枝「…」激しく泣く山吹の背を、ポンポンと、優しく叩いていた。
富樫「…まぁ、後はよろしくっと」
繭子「ねッ(ポン!)」と瑠璃の肩を叩き「タッチ交代よ。私たち、これから銀山温泉なの」
冷泉院「え!?ちょっとぉ、私たちの護衛はぁ?」
富樫「手は打ってある、ほれっ」と指差した天井の一角から顔を出す、
乙和「チャオッ♪」佐藤のお袋さんと、
基治さん「やっ、また会ったね」佐藤の親父さんが、いた。
冷泉院「ゲッ!」
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売薬の歴史

2011-05-29 | 義経絵巻-芭蕉夢の跡-
瑠璃姫「その矢…」
冷泉院「匠君が、姫を狙い撃ちした矢ね!!」
繭子「え?匠君の矢…なの?」
冷泉院「そ。姫に一目惚れした匠君が、Love注入♪ズッキューンって、ね」
その後、義経と弓勝負して、匠君が負けちゃって、弟子入り志願したって訳。
繭子「注入されなくて良かった…この矢じりに」と瑠璃に矢を渡し「毒が仕込んであったわ」
富樫「とんでもないI Love 毒注入だな」
瑠璃姫「ふ…ん」と矢じりを見て、
繭子「匠君…毒を、作れるの?」
瑠璃姫「作れない事、ないわ。あの池田さんの弟よ」
富樫「どういう意味だ?」
瑠璃姫「あの兄弟、吉備の呉(岡山)出身なの」
富山 立山は薬草の宝庫といわれ、売薬業が盛んになったのは江戸時代です。それ以前は、中国地方 吉備の薬が使用されていました。平安時代の遣唐使 吉備真備らが兵法・陰陽道とともに漢方 生薬も学び、日本にその知識を持ち帰ったとされます。
富樫「吉備…って!?たった一人で宮中内乱を治めた吉備真備と同じ!?」
繭子「そして、日本売薬の祖(富山売薬の祖) 万代 常閑(まんだい じょうかん)と同じ出身…」
富樫「誰だ、そりゃ?」
繭子「唐から反魂丹を学んできた医師※よ」※池田のお抱え医師です。
反魂丹は、富山藩士が腹痛で苦しんでいた時、与えた薬です。その薬を飲んで腹痛が治まり、その藩士は常閑の製法を学び、富山に持ち帰ったとされます。
その後、腹痛に苦しむ富山藩主 前田正甫(まさとし)に飲ませ、これが効いたことから、正甫は藩内の薬種屋(薬剤所)に命じて製造、販売させることにした。それが、富山売薬の始まり。正甫は、常に反魂丹を印籠に入れて持ち歩くようになり、参勤交代の際、江戸で腹痛に苦しむ藩士に印籠から取り出した反魂丹を与えた。その評判が大名、各国に広がり、越中売薬が発展したという歴史があります。
富樫「ほほぉん、格さんが持ってる光圀公の印籠の中には反魂丹(薬)…」と納得したから、
繭子「御隠居様と印籠の話をしてるんじゃないのよ」とツッコんだ。
瑠璃姫「池田さん、富山で必ず立ち寄る御宅に、10年前、匠君を養子に出したと言っていた」
繭子「10年前…それって、殿下乗合事件の頃ね」
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元を辿って…

2011-05-28 | 義経絵巻-芭蕉夢の跡-
富樫「どした?」と和歌子ちゃんをあやし、小枝御前「??」と山吹ちゃんをあやしていた。
繭子「これ…」昨夜、義経の荷物からドリンクを取り出す時に見つけたモノを富樫に見せた。
富樫「義経の、か?」高い高~い♪して、チラッと見た。
繭子「う…ん」と訝しい顔で「彼、こういうの、嫌うわ…」ポソッと呟いた。
富樫「あん?」
繭子「松殿がバラ撒いた羽根…」を右手に持ち「これと同じ白い羽根だった…」と左手で白鷹の矢を持って見せた。
富樫「出所が同じってことか?」
繭子「えぇ。それに、これだけの鷹羽を集められるのは…矢爪(やつめ)さん、くらいだわ」
富樫「じゃ、その矢の製造元を辿って…」
繭子「違うの。この蝦蟇…」と黒い羽根を見つめた。
富樫「蝦蟇(がま)…?」
繭子「えぇ、カエルの脂※よ。軟膏の材料…」※東三河の蒲郡(がまごおり)が有名です。
富樫「うぇ…カエル、だったんだぁ。軟膏って」現在は、植物性油脂を配合しています。
繭子「そうじゃなくて、売薬さんが絡んでいるって事よ」
そこへ、コンコンとノックされ、戸がスーと開き、
森乃「お連れ致しました」、熊世「どうぞ…」と招き入れられたのは、
超、機嫌最ッ悪の瑠璃姫「こんな朝早く、何?」
冷泉院「姫ったらぁ、朝帰り♪」
瑠璃姫「朝から余計な事、言わないでッ」説明が面倒だわ…。
冷泉院「INTO THE 遊郭ッWITH 服部くん♪」
富樫「おっ♪もう、池田を手玉に取ったのか?」
瑠璃姫「フッ」鼻で笑って「ただの、カウンセリングよ」と繭子を見た。
繭子「あぁ、例の論文ね」と、肩をすくめた。
富樫「カウンセリング?論文?」→瑠璃の職業的なことです。
瑠璃姫「それより…」スッと印籠を出した。
富樫「えーいっ、ひかえいっ!この紋所が目に入らぬか!ってか?」
瑠璃姫「格さんを演じるにはまだ早いわ」ニッと笑ったから、
富樫「ほほぉ~ん。それが、狸の尻尾(物的証拠)って訳だ」
繭子「じゃ、その尻尾とこれを照合してくれない?」キランと白鷹の矢じりを見せた。
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おかしいわ…

2011-05-27 | 義経絵巻-芭蕉夢の跡-
休憩している連中から、志鷹家に養子にいった匠が、チラッと見えた。
義経「…」あいつ、相変わらず、作り笑い浮かべてら…。
どうして、アイツを養子に出したんだ?危ない仕事が回って来たって言っていたが、何だろうと、池田の顔を思い浮かべた。弟 匠を思い、淋しそうに“俺が、移ったんです”と答えた池田…アイツにも、いろいろあんだろうな「ふぅ…」と空に向かって溜息を付き、羽黒山の頂上付近を見た。空気が澄んでいるせいか、白く半透明な三日月が顔を出していた。
義経「Morning-Moon…(song byチャゲ&飛鳥)」とポツリとサビを歌ったら、
松尾「涼しさや ほの三か月の 羽黒山」さらりと、一句詠んだ。
(訳 黒羽山から月の神さんが、涼しい顔して見てやがる…)
義経「なんで、そんな涼しい顔、してられるんだか…」と月の横顔を眺めていたら、
松尾「長年、心忍んでる(隠してる)と…肝心な時に、顔が作れねぇんだよ」
義経「肝心な時に…?」再び「顔が、作れない?」と匠を見た。その視線に気付いて、
松尾「あぁ、あいつ。池田の、弟だってな」ニヤッと笑った。
義経「ん…」視線を松尾に移し「だから、なんだッ」と睨んだら、
松尾「そう噛み付くなって。池田の弟ってんだから、どれほどのもんかなっと思っただけだ」
義経「あん?」
松尾「ひだりに(むやみに)爪は見せねぇ、だろ?」能ある鷹は、爪を隠すってな。
義経「!?」能子から弁当を受け取った時、反射的に左を出した匠の顔を思い出した。
俺は、あいつを右利きだと思い込んで、右手にカケ(弓道具)をはめさした…が、
志津さんの「シャッ!」という声で、ハッとした。あいつ、サウスポーを隠してた!?
志津「そこの三人ッ!行くよッ」と遠くで声がした。
松尾「あいつ、相当、曲(くせ)悪ぃなッ」と竹竿持って服を干しつつ、歩き始めた。
義経「な…」
なぜ、利き腕を偽る必要があるんだ?
なぜ、匠は瑠璃に、白鷹の矢を放ったんだ?と疑問が再浮上した。
本当に、自分の姉に面影のある瑠璃と、話をしたかっただけなのか?
兄の跡を追っていたはずの匠が兄を追い越し、あそこにいたのは、なぜだ?
追っていたのは兄ではなく…俺ら!?
一方、料亭では、松殿がばら撒いた黒羽根の分析が行われていた。
繭子「おかしいわ…」
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お前ならどうする?

2011-05-26 | 義経絵巻-芭蕉夢の跡-
弁慶「義隆、これは…」
義隆「弁慶ッ!」の言葉を遮り、俺から視線を外さず「知ってたなッ!」と問い質した。
弁慶「あ、あぁ…」って、昨日知ったんですけど…クスグリ付け拷問で。
義隆「大人って…平気で、ウソつくッ!」
義経「ち…」違う、と言い訳しようとしたが、何が違う?全部、ほんとの事だ。
志津「…」
匠「あわわ~」と口に手を当てて、海尊「よ、義隆ぁ…」とオロオロになっていた。
義経「…」鋭く冷たい視線が俺の心を突き刺して、体が…動けなくなった。
そんな動けない俺の金縛りを解いてくれたのは、志津さんだった。
志津「シャッ!!」と一喝「無駄口叩いてる暇ないよッ!」と怒鳴ったが、
義経「…あぁ」無駄口叩けるほど心の余裕があるなら、どんなに楽か…と思った。
志津「ほら、行くよッ」と鹿角君の手綱を軽く打ち、俺たちを前進させてくれた。
重苦しい空気のまま、最後尾から付いて行くと、平将門建立とされる羽黒山五重塔(国宝)が見えた。その奥にある南谷(羽黒山別院があった所)で、志津さん、義隆、匠、海尊、弁慶と俺、松尾さん、河合さんと、別れて休憩を取ることにした。
義隆と一緒に居られる心境じゃなかったんだ。
ここには、残雪が残っていて…、
松尾「有難や 雪をかほらす 南谷」と、一句詠んだ。
(訳 有り難てぇな。南谷には残雪が香ってら。こことは違う澄んだ空気が流れてる…)
義経「…」向こうで休憩している連中から視線を逸らせ、ヒトの淀(よど)んじまった心って、どうやったら、元に戻せるんだろ、と考えた。
心って、一度淀んだら二度と元には戻らないんじゃないか…とさえ、思えた。
河合「そういや…言ってたな、義隆の事。悪かったな…」とポツリと呟いた。
義経「悪いのは、俺だ…」こうなる事態を恐れ、真実を告げる事から逃げていた。
だが、全ての真実を教えなければならないのか、隠してもいい事実があっていいじゃないのか、と悩んでいた。ただ、こうして明るみに出てしまった以上、何とかしないと…俺、みたいになる。ガキの頃、源氏の血が流れているという事実を隠され、突然告げられた真実に苦しんだ。知ってしまった、分かってしまった真実に苦しんだ。もしも、という世界があるなら、知らないまま別の人生を歩めたかもしれないな。チッと「清盛の奴…」を空越しに睨んだ。空で、あいつが鼻で笑っているように見えた。お前ならどうする?って。
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隠し事

2011-05-25 | 義経絵巻-芭蕉夢の跡-
そんな心の叫び、心で叫んでいたって…誰の耳にも届かない。それから二時間程過ぎた頃、
繭玉入りの大荷物を抱えて、義経「ちょっと、待ってくれよぉ!」と皆に呼び掛けたが、
鹿角君に跨る志津さん「シャッ」と振り返り「だらしないッ」と一喝し、スタスタ登って待ってくれない。助けを求める声が届いてるはずなのに、叶えてもらえない願いってあるんだ。
チラッと義隆を見たら、
義隆「…」相変わらず、スネていた。あいつの誕生パーティに顔を出さなかったからな。
さて、俺たちは酒田から鶴岡に進み、羽黒山(418m)に登っていた。ここは、月山(がっさん、標高1,984m)と湯殿山(標高1,500m)と、ともに出羽三山といわれる修験山伏 山岳信仰の霊山。
生前の(現在 即身成仏中)役小角や空海の佐伯さんたちが修行した山の一つだ。
そこに、修験装束の出立ちで修行する登山者がいて…、
弁慶「あれっ!?」
義隆「あ!」志津さんの背中からひょこっと顔を出し「おはようございますッ」と挨拶した。
「おッ!」クルッと振り返り「義隆に弁慶!海尊と匠も男に成りに来たか~」と言ったのは、
義経「松尾さんと河合さん…」だった。ここで高飛びスパイ犯二名を発見した。
松尾「おい、今日は女装しないのか?」とわざわざ、
河合「なかなか、似合ってたぞっ」俺をからかいに来たのか?
義経「林業の次は、山伏か?」
松尾「男になるにはちょうどいい、だろ?」ニヤッと笑って、俺を見た。
義経「ふんッ」と大荷物を被き直した。
河合「ったく、あンにゃろ…とんだ御挨拶だったな」と、竹竿に服を干して乾かしていた。
どうやら、例のSOSいかだ下りで、服がべっちょべちょになったらしい。
義経「修験装束まで借りて、俺たちと登山する必要があんのか?」
松尾「そりゃ、そうと…御長男様は、どこだ、え?」と、面白そうに、俺を見た。
「え!?」と驚いた顔で「長男…?」と振り返ったのは、義隆だった。
義経「あ…」しまった、という顔をしたら、
河合「なんだ、教えてないのか?隠し子…」
義隆「いつも、いっつも…」キッと俺を睨み「ウソばっか…のけものにしてッ」
義経「…ッ」言葉が出なかった。隠し子について、いずれは、教えるつもりでいた。
ただ…その“いずれ”の時を、準備してなかった。
でも、本心は、避けて通れるもんなら…避けたかった。義隆には、隠しておきたかった。
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ちょっとぉおぉ~…!!

2011-05-24 | 義経絵巻-芭蕉夢の跡-
松殿「そう…」ニヤッと笑って「しよう…」と目を細めた。
能子「そう…保障された私の家族が、ことごとく、死んでいったわ」
松殿「そりゃ気の毒だ。だが、死んでしまったもの…どうする事も出来ん」
能子「そうね…」と、うつむき「私には、何も出来なかった…」ギュッと、手を握った。
松殿「少しは、物分かりが良くなったか?」
能子「私を宮中に連れ戻せば、軍師を手中に収められる、とでも思ってるの?」
松殿「軍師の才を活かせるのは、私たちだと思ったが?」
能子「その軍師の心を踏みにじったのは、アンタたちよッ」
松殿「あいつは人間的に、脆い…ただ、それだけだ」
能子「それを、人間的に、篤い、って言うのよ。兄弟で戦うように仕向けてッ!」
松殿「義経なら、その兄を、いとも容易く潰してくれると思ったが…不甲斐ない」
能子「兄は、もう戦わないわ!」
松殿「戦えない、の間違いだろ?その代わりに、ガキが、戦(や)ってくれる」
能子「義隆を!?」
松殿「クッ」と嘲笑って「義経の、御曹司…」スッと、右手を挙げて合図を出した。
能子「アンタって人はッ」両腕を交差し左右刀を抜こうとして「!?」ガッと両腕を掴まれ、
池田「そこまでです…」と止められた。
松殿「二日後に、迎えが来る」ニヤッと笑った。
池田「その二日後に、寄り合いがあるそうです」
松殿「こぞって連行だ」とクルッと背を向け、
池田「はい」と目を伏せ、松殿を見送った。
能子「私を、どうするつもり?」
池田「言ったでしょ…トレードするって」
能子「私を、利用、しようっての?」
池田「あなたを、囮に、するんです」グラッと来て、
能子「ど、どうしたの!?」池田さんを支えて、
池田「すみません」と河川敷でゴロンと横になって「寝てないんですよ…」と、強引に、
能子「ひゃッ!」座らされて、
池田「遊郭で…、姫と…」能子を膝枕に、
能子「姫と…」寝ちゃったぁ!?ちょっとぉおぉ~…!!
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飛んで火に入る夏の虫

2011-05-23 | 義経絵巻-芭蕉夢の跡-
義経「で、お前…」相変わらず、浮かない顔した能子を「大丈夫か?」と心配してやったら、
能子「もうッ」と懐から酒田街道マップを取り出し「平気よ!」見せびらかした。
義経「誰が、迷子の心配したよ…」チッと能子を睨んだ。
能子「え?」
義経「なんでもねぇ。早く戻れッ」シッシッと追っ払いポーズを出した。
志津「どうやら、役者は揃ったようね」と鹿角君の手綱を取って「シャッ」と鹿に跨り、義隆の前に座って「Let’sらgo!」と先導し、登山口に向かった。その後ろ姿を、
能子「気を付けてねぇ」と手を振ったら、志津さんは背中を向けたまま、左手でGOサイン、
義隆「行って来まぁーす」と振り返って、満面の笑顔を見せてくれた。
能子「良かった…」ホッと一安心…と、思いきや、急に不安が襲ってきた。AM4時半、一人取り残された私…今いずこ?キョロッと辺りを見渡し、お店の名前…聞いて置けばよかった。
鹿角君に乗って走って、ここまで来たから「マップ…」をじっと見ても、分からない。兎に角、前向きな気持ちで前進するしかないわ…と歩いたら「ゲッ!?」ここ、もしや!?
噂のあっちの世界で俗に言う遊郭街で「ハッ!?」とした。コソ…ッと建物の影に隠れた。
「旦那様ぁ、またいらしてねぇん♪」とでっかいネコを被ったネコなで声の遊女がお見送り、
旦那「また来るよん♪」って、鼻の下伸ばした…、
能子「(松殿ッ!!)」グッと拳を握り、とっちめてやるッ!と尾行した。
その姿を遊郭から見ていた二人組「あらら、あの子…追いかけないと」(ポン!)とバトンタッチ、「まったく、世話の焼ける人だ…」と、能子を追いかけた。
テクテク…と、清々しい朝の川原をのん気に散歩して、
松殿「一人で…」クルッと振り返り「いいのかな…?」と、不敵な笑みを浮かべた。
能子「私一人で、十分よ」
松殿「飛んで火に入る夏の虫…」
能子「私は、蚊じゃないわ」
松殿「駆除される前に、蚊帳の中に戻ってくれれば…害虫を寄せ付けないが?」
能子「宮中へは、戻らない」
松殿「ふぅ…ん」と能子の顔を覗き込み「さて、姉と慕う蕨姫(繭子)に、子供が生まれた…」
能子「え…」
松殿「義経にも、妻子がいる。もちろん、他の連中にも、家族がいる」
能子「…。私の身柄と引き換えに、みんなの命を保障する、とでも…?」
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神に、好かれそうなタイプ

2011-05-22 | 義経絵巻-芭蕉夢の跡-
鹿に跨る能子「お弁当…」を手に持っていた。
義経「弁当ぉ?頼んでねぇ…」と、能子を睨んで「よ、義隆!?」も一緒に…乗っていた。
義隆「ムスッ」とした顔で黙って…スネていた。
能子「登山したいんだって。ヨッ」ストン、と鹿角君から降りた。
義経「ピクニックに行くんじゃねぇんだぞ」と能子を叱ったら、
義隆「…いつも、のけもんにして…」ブスッ…した。
義経「う゛…」
能子「お弁当…皆で、作ったんだよね。それに、鹿角君が一緒なら平気でしょ」
その様子を、じぃ…と見ていた、志津「アンタ、も…登ンかい?」と訝しい顔して、聞いた。
能子「いえ、私はお見送りです」ブンブン!と大きく右手を振った。
志津「ふぅ…ん?」能子の顎をつまみ、くいッくいッと左右に90度を向き変えて「似てる…」
義経「俺の妹だ」
能子「は、初めまして。私、妹の能子(よりこ)です」とご挨拶。
志津「アンタの妹の割には品がある」と能子の姿 格好 身なりを繁々見つめ、義経を疑った。
義経「悪かったな…品の悪い山寺育ちで。こいつとは、お育ちが違うんだよ」
志津「ふぅん。で…」チラッ見て、鹿に跨る「こっちの僕ちゃんは…?」
義隆「源 義隆…です」と名前だけ…答えた。
志津「アンタたち…鹿嶋の神に、好かれそうなタイプだね」ニヤッと笑った。
能子「え…?鹿嶋の神様?」キョ…トンとした顔したから、
義経「鹿に乗った、地震の神さんだ。お前みたいに自信の無さそうな奴が好きなんだよ。それより…」義隆に向かって「朝練は?」と聞いた。
義隆「…帰ったら、バイ…する」
義経「倍じゃ足りねぇ。与一に、三倍、お願いしますって頭下げろ…」と登山許可を出した。
能子「おしッ」と匠に「行ってらっしゃいッ!」とお弁当を手渡したら、
匠「え?」とびっくり、面食らって、反射的に左手で受け取って…しまった!と思った。
義経「!?」
能子「サウスポー…なの」
匠「さ…」と視線を外し、右腕を上げて出陣の掛け声「エイエイ、オーッ」と言ったから、
義経「シッ」と人差し指を口に当て「ボリューム下げろッ!」と小声でデカイ声を注意した。
能子「クスッ」と笑って、義隆に「よかったね」とグーなポーズで、ウインクした。
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