ひつじ草の挑戦状

色んな思いを綴ってます。

散華の如く~美し過ぎて…~

2012-12-20 | 散華の如く~天下出世の蝶~
市姫「ねぇねぇ」
私の手をぶんぶん振って、
「名は?な ま え?」
今度は、
帰蝶「私の、名か…。名は、」
一時の間を置き…少ぉし考えて、
「…蝶、帰蝶…」本名を告げた。
市姫「チョウ?ちょう?」
聞き慣れぬ名で、不思議に思ったのであろう、
やはり、可愛い。ぽやんとした表情を見せた。
帰蝶「キチョウとは…」
恐れ多くも天竺天女、迦陵頻伽(カリョウビンガ)、
仏の御霊を拾うか落とすか極楽鳥。その名を冠し、
“戦乱の世に、相応しい御名を、授かりましたな”
出来るなら、普通の御名を冠して生まれたかった。
天を仰ぎ、キッと空に睨みを利かせ、
亡き父に一つ二つ愚痴を想念したが、
キリリと冷たい風に想念が阻まれた。
「そなたの袿じゃ。蝶が無数おろうが」
市姫「キチョウ…蝶ぉ…」
わざわざ、細い眼を二倍に広げる義妹。
しげしげと袿に刺繍された銀蝶を見て、
私を見て、
帰蝶「そう見比べるな」
不愉快とばかりに、一つ睨み、窘めた。
市姫「わらわ、蝶々。好き。嫌いか?」
帰蝶「蛹は醜く…」嫌い。しかし、蝶…とりわけ黒蝶は殿の舞を見ているようで、
「美しく…好き」
殿のお守りと同じ正絹の、姫の袿を見て、
「ただ、美し過ぎて…少々、困る」


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