ひつじ草の挑戦状

色んな思いを綴ってます。

信頼を、この手に

2011-12-17 | 義経絵巻-芭蕉夢の跡-
照「折角の、かんざしを…」頭を下げた。その拍子に、マリアの短い髪がその顔を隠した。
斯波「なぜ?」頭を下げる。俺たちが勝手に開いた宴に、髪を売ってまで「酒を…」
照「祝いの席に夫を手ぶらで行かす妻が居りましょうか?」
斯波「こりゃ参った…」額を、パシッ、打ち付けて「そこまで気が回らなかった、すまん…」
照「何をおっしゃいます。髪は、また伸びます」夫から、かんざしを受け取って「それまで楽しみが一つ増えました」水桔梗のかんざしを寝かせ…マリアは優しく微笑んだ。
斯波「しかし…」
照「妻が、夫に恥をかかせては、それこそ天下の笑い者」
斯波「見事な腹だ」身重のマリアは、肝っ玉で…「丈夫な子を産め」
照「はい、次こそは、男(おのこ)を授かりたいと念じております」
斯波「世継ぎか。なぁ、土岐」
土岐「はい…次こそは、男子を…」女の、妻の覚悟がここまで深いとは…、
“話が違う”
そんな照を、妻として間違いなかった、そう確信した瞬間だった。
私は人目憚らず、照を抱き締め、
「たとえ、天を取らんとて、側室は持たぬ」
生涯一人の妻として、照を愛し尽くすと…そう、ここで誓った。
斯波「これ以上やらネェ…よ!?」と、そこへ、
池田「はぁ、はぁ…」息を切らして、酒宴に着いた「斯波さん…この方…」
斯波「おせぇ。どこ行って…」
池田「土岐さんの奥方様、ですね?」
斯波「あ…あぁ、池田?」土岐さんと奥方様の傍に歩み寄って、
池田「失礼します」手に持つ紙の包みを、パラリ…と、広げて見せた。
照「あ!?」
池田「見事な御髪(みぐし)です」他人の付け髪になる直前の、白い紐で結わいた髪を見せた。
土岐「これ…」
池田「何も知らず、大切な奥方様の御髪を、」土岐さんに差し出し「申し訳ございません」
土岐「池田…」妻の髪を受け取り、彼の手ごと、ギュッと握り締めた。
池田「この御髪は、あなた様のものです」
土岐「我が家の家宝にするよ」黒髪のマリアが戻った「忝(かたじけな)い…」


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