ひつじ草の挑戦状

色んな思いを綴ってます。

事実と現実

2011-01-22 | 義経絵巻-芭蕉夢の跡-
能子「あの…葛葉さんって、卜部(うらべ)※の?」
※卜部とは卜占、つまり、占いによる吉凶判断士、及び、祭祀を執り行っていた人の職業名です。現代、その名残として姓(卜部 浦辺 浦渡さん)があります。
葛葉「あぁあ~卜占の先生していたのは7.8年前で…引退したわ」
義隆「卜占(ぼくせん)!?…それって、トトロ術の事?」
葛葉「あら、懐かしい名前ね。教え子に卜占って漢字をバラして、トトロってカタカナ読みした子たちがいたわ」
義隆「その人たちって…」
葛葉「や…」と名前を言いかけた所で「マ!?」葛葉の口をバッと押さえ付け、
能子「ちょっ、ちょっとタイムね、タイム!」
葛葉「ぶっ!」と葛葉の言葉を制し、恐る恐る義隆を見たら、冷ややかな視線を送っていた。
義隆「ふん。大人って…いっつもいっつも本当のことを隠すんだ。叔母ちゃんもその一人なんだ。母上たちのことでしょ…もう知ってる」
能子「いつ…知ったの?」
義隆「去年の10月30日…」
能子「日にちまで…覚えてるの?」
義隆「だって、元服した日だもん。その時に初めて男の子用の服を着せられた。それまで女の子の服着せておいて…勝手だよ。その服、バリバリに破いてやった。勝手に外に出ちゃダメって言われたり、変だなと思ってたんだ。…その事で母上と何度かケンカしたけど、命を守るためだって。男の子だと殺されるからって。従兄弟みたいに…」
能子「従兄弟って、義高※の事ね。じゃ、父上の事も?」※頼朝に殺された義仲と巴の子。
義隆「知ってるよ。でも、(義仲の)おじちゃんとは、もう会えなんだって」
能子「…そこまで話したんだ」
葛葉「聞く方も辛いし、話す方も辛かったろうね」と義隆の肩を抱いてやって「いずれ知らなければならない事実だし、こちらも明かさねばならない事実…。現実を受け止める時期が早いか遅いかだけ…。それにしても、葵ちゃん、よく頑張ったねぇ」と涙ぐんだ。
能子「…葵ちゃん?郷(さと)ちゃんの本名…山吹…じゃなかった?」
義隆「今の母上は源 葵だよ。ほんとの母上、今 病気で…。だから、代わりに母上になったって、言ってた」
能子「その事実を、兄…知らないわ」