神社のある風景

山里の神社を中心に、歴史や建築等からの観点ではなく、風景という視点で巡ります。

笹ノ滝

2008年10月31日 | 滝・渓谷

奈良県吉野郡十津川村内原


国道168号線を走って南紀に行く際、途中で「笹ノ滝」の看板を目にする。「日本の滝百選」に選ばれている滝でもあるし、気にはなっていたのだけれど、国道から逸れて結構な距離の林道を走らねばならないし、写真で見る限り、好みの滝ではなさそうなので、ずっと寄らずにいた。
実際に行ってみた感想としては、やはり心惹かれる滝とは言い難くて、「紀伊半島にはもっといい滝がたくさんあるのに、なんでこれが百選なんだろう」というのが正直なところだ。
更に正直に言ってしまうと、神社では正直な感想というのが非常に言い難いのだが、滝だと自分の主観で好きなことが言えるのである。
そういった滝の感想はともかく、十津川村というのは山深く魅力的なところで、滝に到るまでの道中にも見所が多くある。滝そのものの写真が上手く撮れなかったこともあるので、そういった周辺の写真を添えて、魅力が伝えられたらと思う。



まずは十津川の流れ。
考えてみれば、この川沿いを丹念に辿るだけで、一冊の写真集が出来上がるほど魅力ある川である。


国道から逸れ、滝川沿いの道を進む。
地図を見ると途中の内原集落の外れに、ぽつんと神社記号がある。これは寄らずにいられない。
公衆トイレの横から農道のような道を進むと神社前。扁額には矢高神社とある。


簡素な覆屋に、シンプルな社殿。それほど古くないようで、きっちり手入れされているようだ。


ここは本当に居心地の良い空間である。











笹ノ滝は支流に懸かる滝なので、駐車場から歩いて支流に沿った山道に入る。
山道の入り口にある歓迎のゲートというかアーチが興醒めだけれど、水の美しさは見事である。
よく整備された道で距離も僅かだが、変化に富んでいる。


山道に入ってすぐに、こんな場所に出る。何とも言えない神寂びた雰囲気を感じるのだが・・・。


とても存在感のある岩なのに、特に信仰の対象とはなっていないようだ。


流れのそばにあったこちらの岩には仰天。苔や羊歯の天国で、岩肌が見えない。
ちょっと海草サラダを連想してしまった。


岩が折り重なった下を、胎内くぐりのように通り抜ける。


笹ノ滝。
落差40メートルという記述も見かけるが、とてもそんな高さは無いと思う。滝身のそばに生えている植物の大きさと比較して判断すると、30メートルも怪しい気がする。


右岸は巨大な岩壁が広がる。


あまり惹かれないのは、黒い岩肌の滝が好きなせいかも知れない。

さて帰りは同じ道を引き返すことになるのだが、滝川集落を通っているとき、往きには気付かなかった風景が、左手にちらっと通り過ぎた。
慌てて近くに車を停め、歩いて行ってみる。

吊橋だけなら、十津川村では珍しくない。が、橋の向こうがトンネルである。吊橋とトンネルのセットは、少年の心を呼び覚まさずにいられない。


ゆらゆら揺られながら渡る。もうそれだけで楽しい。


そして渡った先にある、この狭くて暗いトンネル。
抜け出た先は、どこか違う世界なのでは、なんて夢想をしてしまう。
実際には、なんの変哲もないような場所に出て、そこから小道が続いているだけであるが・・・。


帰り道、橋の上で地元のおじさんと出会ったので話をする。
昔はトンネルにはトロッコが走っていたらしく、滝川沿いで伐り出された木材がここに集められ、ここからトンネルを経て十津川の筏に載せて新宮へと運んだという。
また、トンネルの先の小道は小学校へと続いており、昔はこの吊橋とトンネルが通学路だったとのことで、当時のそんな光景を想像するだけで、何か胸に溢れるものがある。
残念ながら今は、生徒は送迎バスで学校へ向かうらしい。
どうせなら、小学校の見える風景も撮れば良かった・・・。


2万5千分1地形図 風屋
撮影日時 080910 14時~17時

駐車場 あり
地図

 


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13 コメント

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Unknown (幽黙)
2008-10-31 08:20:17
あまりお好きじゃない滝なのに
この美しさはたまらないですね
それにしても6枚目の岩肌は
本当に神寂びていてぞくりとします
そして吊り橋とトンネル
人々の営みの形と容が
どちらも感じられてなんとも
心から美しいと思える光景ですね
Unknown (たんばの人)
2008-10-31 09:24:30
う、う、うらやましい。
この清い清い景観

これこそ本物の美なのか。
いいですね~。

小学校あったんですか?
それは撮ってほしかったですね。

学校校舎研究委員より。(笑)
Unknown (hiro1jz)
2008-11-01 09:02:36
>幽黙さん
おお、神寂びてる感、わかっていただけますか。
私が「この岩は!」と感じた岩が、
信仰対象になってることって少ないので、
私の感性がズレてるのかと・・・。
かつてそこに描かれたであろう風景を伝えるもの、
そういったものには、何か語りかけてくるような、
心に響くものがありますね。
特に、トロッコだとか、通学路だとか聞くと、
当時の賑わいや活気が耳に甦ってくるようで、
郷愁やら寂寞感やら、
色んな感情が胸に溢れます。


>たんばの人さん
この辺りは人の住むところが「点」で、
殆ど自然ばかりのところですから、
丹波のような温もりには欠けるかな、
という気はします。
自然が観光資源でもありますから、
地元の方は自然の価値をよく判ってらっしゃるようです。
そういった点では、丹波でそういった価値観を
みんなに持ってもらうのは難しいですよね。

学校校舎に限らず、
民家や公共施設、企業の建物まで、
景観に与える影響を考察されてますから、
建築物研究委員では?(笑
紀伊半島では木造校舎がまだ残っていますが、
耐震、耐火を考えると、消え行く運命でしょうか。
味気ない鉄筋の校舎よりも、
何か大事なものを子供の心に
培ってくれると思うのですが・・・。

Unknown (たんばの人)
2008-11-01 10:39:56
思いは強く中身は弱い
研究員です。(笑)

中身の部分は
皆さんから学んだり
補足して頂かなければ。

てこの応用みたいに。

ブログの力を借りて
伝えたいと思うことを

微力ながら
伝えていきたいですね。
Unknown (hiro1jz)
2008-11-02 08:35:40
いやいや、
中身も相当なものだと思います。
私も写真を撮る目であらゆる風景を見ていますから、
常日頃から建物に対して思うところがあったのですが、
まさにおっしゃられてる通りです。
ただ、個人宅のこととなると、
景観への配慮を求めるのは難しいですよね。
かなり厳しい風景条例でも施行しないと・・・。

ブログが共感を呼び、
思いが共鳴しあってより良い方向へと
進んでいくことを期待しています。
Unknown (たんばの人)
2008-11-02 14:20:18
丹波には景観を
守るための緑条例という
ものがあって
(兵庫県がつくられたもの)

前にコメントしたかも
しれませんが
何度もすいません。

景観条例みたいなものですが、
しばりはなく、
そうようにしてください
という指針みたいなものです。

こんなにいい条例があるのに
市や住民や業者の方々には
まだまだ浸透していないのが
現状だと思います。

私はそれを景観教育として
取り組むべきだと
ブログで何回も
繰り返しています。

この緑条例を基に
景観保全地域を指定して
地区整備計画をつくる
動きもありますが、

指定地域以外には
虫食いのように
景観に合わないものが
増えつつあり。

まず住民に知らせて
意識させることが
重要だと思っています。

その意識が高まれば
景観を守るための
決めごとになるんだろうなと。

景観にうるさい住民が
増えるとまちは
変わってくるでしょうね。

少しずつですが
頑張ります。
Unknown (hiro1jz)
2008-11-03 06:28:30
なるほど、そういう条例があったのですか。
縛りはなくとも、周知してもらえばだいぶ変わってくるでしょうね。
広報活動が大事になってきますね。
ただ、もうちょっと突っ込んだ、
具体的な条例が欲しいところです。
京都では看板の大きさや色使いにまで言及しています。
厳しいと企業や住民の誘致に弊害があるかも知れませんが、
厳しい規制によって素晴らしい景観が生まれるなら、
その価値を認めてくれる人が増えて、
逆に潤うようにも思いますし・・・。

神社もそうですが、景観、風景といったものも、
まずは関心を持ってもらうところからですね。
景観にうるさい住民が多いまちって、
すごくいいですねぇ。
Unknown (カナカナ)
2012-08-08 14:01:20
写真使わせていただきます。
Unknown (hiro1jz)
2012-08-09 11:55:37
>カナカナさん
個人的にPCの壁紙にする等はかまいませんが、
というか嬉しいことですが、
それ以外の場合は使用する写真と用途を知らせていただけるとありがたいです。
ブログに明記はしておりませんが著作権を放棄しているわけではありませんので、
場合によってはお断りすることもあるかも知れません。
まあそんな大層な写真でもないのですけど、
一部、別のところで著作権が絡むことに写真を使っていたりしますので・・・。


謝罪とお願い (カナカナ)
2012-08-09 15:02:43
 色々といきなりですみません。趣味でゲーム作りを初めようと思いまして、素材を集めていたんです。そしたら、とてもいい写真がこのページにありまして、つい暴走してしまいました。それじゃ改めて、写真を使わせてください。具体的にはページTOPの神社の写真です。加工して使います。ゲーム自体は商品にしない予定です。(公開の可能性はあり)
 なにぶん、ゲーム自体作るのは初めてなので、至らない点があるか思いますが温かく見守っていただけるとありがたいです。

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