チコの花咲く丘―ノベルの小屋―

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ADHDとともに「君の星座」第12章 揺れて揺れて その36

2014-04-30 20:37:33 | ADHDとともに「君の星座」
 しまった!・・・こんなことめったにしないだけに、物凄くがっくり。
「もう!仕方ないけど、お母さんとしては焦るわ!」
私だって、まさかこんな失敗すると思わなかったもん!お金ももったいなかったけど、時間ももったいない。でも、いつまでもめげてはいられない。
「細かいことは忘れろ、次々いけ。次の予約は入れたか?」
お父さんの言うとおり。早く忘れて、次を考えたほうが。
 そんなこともありながら、パソコン教室も予定の日程どおりに、目標のところまで学習を終えることができ、
「お世話になりました。」
さて、ここからは!
 ジョブサポートセンター、保健師マツウラさんと。
「教室での勉強は、これで終わりました。ここからは独学でがんばります。ソフトと本を買って。」
「そう!よくがんばってるじゃない。」
「いえ。当たり前のことですよ。」
だって。生きていかなくちゃいけないんだから。そのために一生懸命するのは当然。
「まだね、精神的にはしんどいんです。でも、ぼちぼちハローワークには行き始めています。明日から九月なんですよね。焦りますよ、本当に・・・」
 三ヵ月と決めて、クローズで仕事を探してもう、その期限も過ぎている。ハローワークに行けど、
「ツキシロさん、今度ね、合同就職面接会が・・・あ、そうか。手帳持ってないのよね。」
あからさまに、手帳がないことで門前払い的な感じ。
「あの、応募したい求人見つけたんですけど・・・」
「あー、こんなの駄目よ。ツキシロさんは掃除のほうが絶対にいい!」
「だから、出来ないって言ってるでしょ!」
何回も何回も!この頃、ツジムラさんとは喧嘩みたいになってきている。 
 一人一人、ファイルがあるみたいで。適性検査の結果表も入っている。ツジムラさん、その中身をぱらぱらと見ながら、
「これだけ配慮しないといけないことが多いとねぇ・・・」
ため息混じりに。
「手帳、取ったほうがいいってことですか?」
「取ったほうが有利ね。それは絶対に言えますよ。」
「・・・・。」
「要するに、ツキシロさんが偏見あるんじゃないの?」
「違いますよ!親が・・・!」
子どもみたいって言われるかもしれないけど、結局そこが問題。親を説得できないんだ!

ADHDとともに「君の星座」第12章 揺れて揺れて その35

2014-04-29 16:14:55 | ADHDとともに「君の星座」
 夏の終わりって疲れやすいから。
「おじいちゃん、たくさんお茶飲んで。」
言うついでに、自分も水分補給を心がける。障害者職業センターのケース会議の時、言われたんだ。
『疲労のマネジメントが出来ない。』
つまり、自分が疲れていることがわからず、自分で疲労のコントロールができないと言うこと。これも気づいていなかったな・・・
 昔、つまり、私が小学校や中学校に行っていた頃。休憩とか休みは取るな、がむしゃらにやれ、倒れるまでやれ。これが正しいって言われてきたから。
「ハルカ!ちゃんと、おじいちゃんに集中して!・・・もう、お医者さんは怒るなって言うけれど!」
「何言うんだよ!おじいちゃんはそんなにべったり見てなくても出来る人だよ!」
そうそう、障害者施設、特別支援学級を見ていて思った。あまり助けすぎたら、出来ることもできなくなってしまう。
「ちょっと上で休んでくる!」
逃避ってわけでもない、むしろ、休む練習をするため。私は二階に駆け上がった。
 あーあ。ぬいぐるみの群れに寝転がると、窓から何ともいえない湿った風が入ってくるのがわかる。目を閉じると・・・あの、整形外科の風景。
『ねえ、返事して。ねえ!』
あの嫌な人!わかってる人間に何もわかってないみたいに!
『今日限り、出て行って!』
ニヤニヤ笑いの果て、速攻で解雇にした内科医院。
 わかりにくいだけに、自分から明かさなければ何の理解も得られないんだ。
『ワタルに聞け!』
発達障害児の担任だった、キノシタのオッサン!比較的知識があると思われる、特別支援の教員でも、未診断の当事者には虐待する。明かさなくちゃいけない。明かすことは恥じゃない。むしろ、そうして支援を得てでも、きちんと仕事ができたほうが追い出されない。このまま行ったらさ、恥をかき続けるだけだよ!育て方、しつけの問題ってされてさ!
 検査を遅れさせられた上、ここまでわかってくれないなんて・・・わきあがる憤り。
『プルルルル!』
電話?慌ててケータイに出る。
「はい、ツキシロです。」
『こんにちは、パソコン教室です。』
え!
「あ、はい、お世話になっております。」
『あの、ツキシロさん、今日、予約取られてましたが・・・』
「今日でしたか!」
びっくりして飛び起きる。
「申し訳ありません!・・・はい・・・仕方ありませんので、キャンセルでお願いします。」

ADHDとともに「君の星座」第12章 揺れて揺れて その34

2014-04-28 19:31:03 | ADHDとともに「君の星座」
 何か、酷く傷ついてしまった気分・・・発達障害者支援センターの帰り道、かなり落ち込んだ気持ちでバスに揺られている。私だけのせいじゃない。これは、回り回って。
『障害者手帳を取るのか?』
私もまだ悩んでいる。しかも、親は全く拒否。
 家に帰って。
「お帰り、どうだった?」
「うん。大した話はなかった。」
何でもないような顔をして、自分の部屋に逃げる。とにかく、障害者手帳について、ここまで得た情報の整理だ。年末に整理してそれから触ってないのに、ぐちゃぐちゃの書類棚。大学時代のレポート用紙の残りがここに・・・あった!
 私が取るとなると、精神障害者保健福祉手帳になる。身体とか療育手帳に比べると、あまりメリットがないとは聞いているけど、ジョブサポートセンター、ハローワーク、発達障害者支援センターで聞いた情報をまとめていく。
『就職、仕事の定着には絶対に有利。どちらも早く達成出来る。』
『就職後の支援が手厚く、相談、ジョブコーチなども利用できる。』
他にも、交通費、公共施設の利用料、携帯電話料金、税金の減免、利用できるサービス。
 私が願うことは、仕事に定着し、経済的に安定し、自立すること。そのためにはもう、支援がいるんだ。
『助けてもらうって、何を助けてもらうの!』
いつもそう言うけど、ここまでうまくいかなかったらもう、助けてもらわないと無理なの!診断もついたじゃない、発達障害、ADHDだって!
 また、こころのクリニックの集団療法の日が来た。回を重ねるにつれ、この日が楽しみにもなり。今日は、十三人だ。
「では、本日のテーマですが、今日は、私をサポートしてくれている人。物でもサービスでもいいですよ。では、話し合いましょう!」
話し合うと、本当にいろんな意見が飛び出す。
「私は今、ジョブサポートセンターと、発達障害者支援センターと利用しています。」
「ジョブサポートセンターってどんなところですか?」
「仕事を探している人たちに、個別に相談に乗りますってところですよ。働く意志さえあれば、利用は誰でも出来るんです。」
「それ、僕も行ってみようかな?」
家族だったり、支援者さんだったり、子どもがいる人は、保育園って人も・・・そうだよ、人間は誰も、一人では生きていない。誰かに支えられながら、そして、誰かを支えながら。それは、障害があってもなくても。
 

 

ADHDとともに「君の星座」第12章 揺れて揺れて その33

2014-04-27 20:14:53 | ADHDとともに「君の星座」
 なるべく時間をつめて、予約をとって、どんどんパソコンの勉強に通う。
『今日の学習内容です。』
テキストと、パソコンのお手本に習いながら、スイスイと飲み込めていく。
「どうだ?時間かかりそうか?」
「ううん。今の教室は八月中には終われると思うよ。その後は独学で違うソフトの勉強するけど・・・」
早く働きたい。それは、私も思っている。でも、今のままじゃ。また躓くのは確実。障害者手帳が必要なのはわかってるけど、拒まれている以上、こうするしかない。要するに、待ってるんだ。親の気持ちの変化を。
 ジョブサポートセンター。今日は、保健師マツウラさんと。
「しばらく、仕事探しは休んで、パソコンの勉強することにしたんです。」
「そうなのね。ま、疲れるわよね、仕事探しも。」
「はい。」
というか、ハローワークの人に疲れている。
「なんていうのか、強引なんですよね。そりゃないだろうみたいな話ばっかり。親も、障害者手帳には反対してるし、こうするしかないんですよ。」
「そこが辛いわよね。私はね、障害があるなら、取った方がいいと思うのよ。ここの利用者さんもそうだもの。取ったことで適職について、長続きもしている。いじめられてもいない。」
 障害者手帳を取ったほうが、仕事につくのも定着も早い。これはもう絶対みたいだな。今日は、ハローワーク。
「パソコンの勉強はどうですか?」
「教室のほうは、もうちょっとかかりそうです。そのあと、独学でやろうと思ってるんですけど・・・」
こんなことだから、半ば雑談みたいな話にばっかりなってきている。わかってる。わかってるんだ。今はまだ、ここに来る時じゃないって。
「アハハハハ!」
 八月も終わり近く。太陽の力も弱ってきている。今日は、発達障害者支援センター。
「ツキシロさん、ツジムラさんと何を話しているの?」
「え?」
イワキさんの突き刺すような視線と口調に凍りつく。
「ツキシロさん、よくわかってると思うけど、ツジムラさんは発達の相談員ではないからね。」
「・・・・。そういう話はしてないですけど。」
「なら、いいけれど。」
・・・・。たぶん、何も決められないのに、ハローワークに行ってることがいけないんだと思う。そうするしかできないという情があっても。無駄な話をしにいくことにしかならないもん。イワキさん、それで怒ってるんだ。 

ADHDとともに「君の星座」第12章 揺れて揺れて その32

2014-04-26 20:08:51 | ADHDとともに「君の星座」
 そのほうがいいよ。仕事探しはちょっと離れて、しばらく勉強で・・・パソコン教室。わりといいところが見つかったんだ。費用も安く、通いやすく、短期で習得できるっていう。
「はじめまして、お世話になります。」
受付で月謝を払って・・・狭いながらも、パソコンはいっぱい、生徒さんもいっぱい。繁盛してるな。
「だから!わしはその日、用事が!」
あらら、夫婦喧嘩してるよ、あそこのおじちゃんおばちゃん。
 学校の時間割みたいに、レッスンの時間が区切られていて。自分の好きな時間に予約を入れておくってシステム。紙のテキストと、パソコンに入ってる学習ソフトで、個別レッスンが進んでいく。
『まず、このソフトの特徴について勉強しましょう。』
イヤホンから流れる音声。二コマ続きで時間をとってるけど、パソコンの勉強してたらそのぐらいあっという間。チャイムが鳴って。
「はい、お疲れ様でした。ここまでの方はお上がりください・・・次の方、どうぞ。」
私も今日はここまで。
 教室の向かい側に、ちょっとした休憩スペースがある。そこに入って、家から持ってきた水筒を開け、冷たいお茶をゆっくりと飲む。自動販売機もあるけど、これも節約。だって、一年も働いてないもん。貯金はしていたけど、取り崩す毎日。どうだろうな・・・パソコンだって、専門的なソフトになると教室はない。となると、
「独学しかないかな?」
家でちょっとこぼしてみた。
「うーん、でも、我流にならない?それって認められるのかしら?」
 やっぱり、専門家に聞こう。ジョブサポートセンターのムライさん。
「パソコン教室見つかって、行き始めました。これでどうなるかわからないですけど・・・」
「そうですね。でも、身につけたものは絶対に力になりますから。このごろはネットの時代ですからね。サイトを作る仕事が結構あるんですよ。で、絵とかデザインの能力も求められる時代なんですね。」
「そうみたいですね!私も見ました、応募の条件に、美術系の大学卒業してることって言うのを!」
「ね。で、この頃ね、芸大生向けの就職セミナーもあって、パソコンに抵抗がない人なら、それで就職して働いていく人も多いんですよ。」
本当に時代が変わったんだな・・・
 あ、そうだ。肝心の話。
「あの、パソコンの独学ってどうなんでしょう?もっと専門的なソフトだと、教室もないですし、独学しかないかなって思ってるんですけど。」
「大丈夫ですよ。そうしてでも勉強するって意欲を認められますからね。」
「なるほど!意欲を評価、なんですね!」
 

ADHDとともに「君の星座」第12章 揺れて揺れて その31

2014-04-25 16:13:50 | ADHDとともに「君の星座」
 ハローワーク、障害者職業センター会議室。
「イワキさん、この頃、ツキシロさん元気ないんです。」
「そうなんですか?この間会った時は、これからパソコンの勉強するって。」
 今日は、ハローワークのツジムラさんに予約を入れている。申し込みたい求人が見つかったわけでもないのに。
「・・・・・。」
「ツキシロさん、本当に大丈夫ですか?」
落ち込んだ顔をしてるからだろうか。
「正直に言うと、就職活動やめたいです。」
窓の向こう、セミの鳴く声。
「それだけ精神状態悪いとね・・・こちらとしても心配なんですよ。ほら、それでもし仕事が決まっても働けないでしょ?」
「はい・・・」
 ツジムラさん、ひらめいたように。
「こちらにもね、毎週、精神保健福祉士さんが来られてるんです。ちょっと相談しておいたほうがいいかな・・・このまま、求職活動を続けるか。」
「それは構わないですけど。」
それはそれとして、しばらくどうするか。
「パソコン教室は、どのぐらいかかるの?」
「詰めていって、二週間で終わらせるつもりですけど。」
「その間、休んでみる?」
「そうしたほうが、よさそうですね・・・」
 こころのクリニックでも、相談する。
「先生、どうしたものでしょう?仕事探しにもう耐えられないんです。」
「なるほど・・・疲れてきた?」
わからない。でも、このままでもいられない。
「でも、いつまでも無職ではいられないですよ。」
カレンダーを見ると、暦はもう立秋。ほぼ一年働いてない。焦りが増してくる。
「しばらくパソコン教室に行くことにしたんです。その間は求職活動も休もうかと思っています。」
「それもいいかもしれないね。離れることで、ひらめくこともありますからね。では、また三週後に。」

 

ADHDとともに「君の星座」第12章 揺れて揺れて その30

2014-04-20 20:10:10 | ADHDとともに「君の星座」
 よかった。一つ、道が見出せた。
「そう。で、それは可能性があるの?」
「求人は結構出てるよ。」
「でも、人と全く関わらないってことはないんじゃないの?」
「当たり前じゃない!それを最低限に絞るには、そういう道しかないでしょ!」
何だよ!うちの親は!
 ジョブサポートセンター、キャリアカウンセリング。
「働いて欲しいのか、意地悪してるのか、全くわからないですよ!」
ムライさんに、ついつい愚痴をこぼしてしまう。
「お辛いでしょうね。もう少しわかってもらえるといいんですけどね。」
でも、こうしていては始まらないから。
「とにかく、一日も早くパソコンの教室を探したいんです。いいところないですか?自分でも探してるんですけど、専門的なソフトとなると、ないんですよね・・・」
ムライさんもなんともいえない顔。そりゃ、全部全部知ってるわけじゃないし。

 ハルカ、十七歳。高校三年生。
 大学推薦の希望先、ここに決めた!
「ハルカ、本当にそこでいいの?もっと一般受けする学部がいいんじゃないの?」
「ううん。説明会聞いたけど、こっちのほうが進路として一番いけそうだよ。」
中学高校の社会科の教員免許が取れること。そして、
「英語の成績を重視しますってさ。それならばっちりじゃない。去年、英語が生きるところって言われてたし。」
何よりも、推薦枠が小さいところと言うのも安心した。これで、高校の同級生とかなり別れられるもん。
 親はたぶん、就職のこともちょっと心配してるんだと思う。この頃ニュースでよく聞くんだ。就職難・・・リクルートスーツで何社も回ってなかなか決まらないとか。でも、大丈夫だよ。
『いい学校、いい会社。』
ちゃんと大学を出たら、大丈夫。
 でも、勉強って好きじゃない!
「ハルカ!ハルカ!」
やばい!英会話の先生だ!この頃、手を抜きまくってるから。
 そんな一日を終えて、帰宅。
「あれ?ハルカ、何するの?」
「体育のテスト。明日、バスケのテストがある!」
バスケットボールを持って、うちのガレージへ。まだお父さん帰ってないから、しばらく練習できる。雨に打たれてところどころ錆びて、ネットのないバスケットゴール。小学校の時、おじいちゃんが買ってくれたんだ。
 やっぱり、こういうの好きだな、私。離れた位置から放ったシュートは夕空を飛び、ゴールの輪の中にまっすぐ落ちた。 

ADHDとともに「君の星座」第12章 揺れて揺れて その29

2014-04-19 12:09:18 | ADHDとともに「君の星座」
 これと、このチラシも。へぇ、ADHDに特化したパンフもある!もらっておこう。発達障害者支援センターには、こういうのもたくさん集まっていて、もらって帰れるんだ。そして、面談の時間。
「暑いですね。エアコン入れますね。」
イワキさんが。
「ありがとうございます。本当に暑くなりましたよね。」
どんな目的であれ、カウンセリングってこういう雑談から入っていくもんだ。そう、仕事探しのカウンセリングにしても・・・
 そして、本題。
「どうですか?就職活動のほうは?」
「全然です。それなりに、どうかなって思う求人は見つかるんですけど、ハローワークに行ったらツジムラさん、あれもこれも駄目、やめとけばっかりで。」
で、応募に至った求人は一つもなし。
「うん・・・」
真剣に聞いてくれているイワキさん。
「あの人、掃除の仕事しか言わないんですよ。」
 そこが、一番困っているところ。
「言われることがね、矛盾ばっかりなんですよ。ケース会議で、人と関わることはするな、電話も出るなって話だったのに、この間なんか、介護の仕事どうですか?って言われたんですよ!」
「なるほど。押し切られそうになってるんだね。ツキシロさんとしてはどうなの?」
正直に言うと、本当にイメージがない。情けないと思うけど。
「今までしていた仕事は、基本、人と関わる仕事でしたから。確かにむかなかったと思うんです。でも、どんな仕事でも人とのかかわりってあるじゃないですか。」
じゃあ、どんな仕事があるだろう?
 そうだ。
「パソコンを使う仕事ってどうでしょう?結構、そういう求人あるんです。」
「あるね!ホームページ作ったりとか。」
「そうです!・・・そうだな・・・じゃあ、しばらく、パソコンの勉強、行くことにします!」
 ありがとうございました・・・相談に行ってよかったよ。これで、方針は決まった。出来るだけ早く就職できたら、それに越したことはないし、就職活動しながらになるけど、それをしながら勉強しよう。その程度の同時進行なら、できるだろう。



 


 


ADHDとともに「君の星座」第12章 揺れて揺れて その28

2014-04-18 19:57:43 | ADHDとともに「君の星座」
 声楽の先生・・・思い出していたら、一睡も出来ないまま夜が明けた。昨日、また一つ、ゲームセンターの戦利品が増えて。夜明け早い真夏の自室の窓から吹き込む湿った風が、カーテンを揺らしている。
「はぁ・・・・」
ベッドを離れ、ぬいぐるみの群れの中にへたりこんでため息をついた。
 私、そんなに出来ないのかな?どうしてなのかな・・・中学受験にもパスして、大学も問題なく卒業できた。クリニックでも、知的に問題はないって言われた。まあ、それが発達障害なんだろうけど。
「集団を避けるようになるって、ADHDでもそうなんですね。」
ジョブサポートセンターの保健師マツウラさんと。また別の文献も持って行き。
「学齢期に、知的障害を疑われてしまうこともよくあるらしくて。」
そうかもしれないなと思えるのは、講師経験があるから。小学校ぐらいで授業中に教室を出て行くって、殆ど知的障害がある子なんだよね。
「定義のなかったツキシロさんの頃なんか、余計にそう思われたかもね。」
「私は、理由もなく飛び出すってことはなかったですから。全部理由ありましたよ。意地悪なこと言われたとか。」
 話題変わって。こころのクリニックの集団療法のこと。
「どう?やっぱり、行ってよかったと思う?」
「はい。よかったです。もっと踏み込んでいろいろ聞けたらいいんですけど、どこまで聞いていいことなのか・・・」
「そうよね。皆も言いたくないことあるでしょうし。」
その距離を測りにくいのも、きっと、発達障害者なんだ。
 マツウラさん、感心したように、
「ツキシロさんって偉いと思うわ。自分のことに前向きだし。一生懸命何とかしようとしてるもの。」
「いえ、全然そんなことないですよ。」
そのわりには、何も前に進んでいないし。
「ううん。ちゃんと自分で勉強して、対策も練ってるもの。きっと、仕事見つけられるわよ。」
だといいんだけどな。
 ジョブサポートセンターでは、本当に元気をもらっている。本当に、うまく行くような気持ちになるんだよ。帰る道、ブルルルル・・・あれ?ケータイが。メールだ。ハローワーク、ツジムラさん!
『ツキシロさん、こんにちは。いつもお世話になっています。一つ、よさそうな求人がありましたのでお伝えします。』
何だって!・・・その喜びも、内容を見たとたん冷めた。業務内容、医療器具の洗浄。アルバイト。時給七百五十円。
 だから!こういう仕事は出来ないんだって!何回言ったらわかるんだよ!

ADHDとともに「君の星座」第12章 揺れて揺れて その27

2014-04-17 19:24:58 | ADHDとともに「君の星座」
 全くハルカは!
「いつまで相談にばっかり通うつもりなのかしら!」
「待ってやれ!ケイコ!あいつも言ってただろ?まだ二ヶ月経ってないぞ!」
「でも!」
いつまでもいつまでも待たされて!
「親には辛抱しろ、ばっかりじゃない!お医者さんも、支援センターも!」
「だから、落ち着けって!もう、親が出る幕じゃないだろ?」
あれだけ、うまくいかなかったんだ。

 ハルカ、十七歳。高校三年生。
 何でそんなこと、こそこそやってたんだ!ピシッと締め切った、鍵なしの自室ドア。
「ハルカ!誤解しないで!ハルカ!」
いくら弁解しに来たって、絶対に許せない!
 いや、私が知らない間に、お父さんとお母さんが担任と面談していたらしいんだ。そういえば、担任、
『今日、ご両親が?』
変なこと聞いてくると思ったよ!
「誤解するな!お前の悪口じゃない!推薦のことで親として心配で聞いてきただけだ!」
ううん、そうじゃない。絶対私の学校生活のことで何か聞き出そうとしたんだよ!
 昔からそうだったけど、学校ではずっと担任や同級生から監視カメラみたいにマークされて。正直気分が悪かった。で、今は大学の推薦がかかってるでしょ?人間は、いくらでも因縁つけて、相手を悪者に仕立てるってことが出来る。だから、身を固くして。
「で、この問題は・・・」
授業中も、身を固くして。
「キャキャキャ!」
休憩時間も、身を固くして。家でも・・・もう、ガチガチだよ。身動き一つ取れない毎日。
 私、幸せじゃない。親は、幸せだって言うけど、何も幸せじゃない。今、私にとって一番居心地のいいところは・・・
「こんにちは!」
この、声楽のクロサキ先生のところだろうか?
「はーい、こんにちは!」
とりあえず、音楽の成績は五になるし。でも、この先生に成績をつけられるわけではない。
「あらあら、またマスコット?」
「アハハ。」
だけど、この先生にだって、私は何も話していない。っていうか、言葉を発していないというほうが正しいかもしれない。
 だって、この先生。高校一年の担任から紹介された人。ってことは、下手に話したら、高校一年の担任に伝わって学校のほうに私が何を言っていたか広がってしまいかねない。有利になるならいいけど、不利になったりしたら・・・だから私は、何も話せないのだ。