正しい食育への転換 3月16日

安部司氏の「食品の裏側」という食品添加物をバッサリと斬り捨てるセンセーショナルな本は、随所で話題沸騰中。私もこの本を読んで以来、徹底的に添加物について意識するようになり、食材の吟味に以前より時間を要するようになった。覚えてしまえば簡単なので、もう暫くの辛抱だが、豆腐のにがりも添加物とみなさなければならない点は、やっぱりきつい。

大好物の納豆について、ちょっとしたエピソードがある。大豆そのものは、国産の産地が明確な遺伝子組み換えでないものが大前提で、低農薬(勿論、無農薬が理想)の有機栽培であれば尚良い。問題は、納豆に添付されているタレとマスタードだ。納豆の味の決め手とみなされてきたタレにも、日本人の味好みに添加物が使用され、マスタードには粘着剤が使用されている。マスタードはどうにもならないが、タレに関しては無添加のものもあり、選択に幅がある。無類の納豆好きの私は、材料・製造方法ともに納得のいく納豆を、ネット通販でわざわざ取り寄せることもあり、「食品の裏側」を読んで以降は、そのこだわりに益々拍車がかかっている。

先日ある製造元に、一部ではなくすべての納豆のタレを無添加にできないのかと、単純に質問してみた。即座に、非常に丁寧な回答を頂いたことに敬服したが、製造元にはそれなりの苦労があることもまた事実だ。タレを無添加にすることは、それなりにコストがかかり、当然、それが価格に跳ね返ってくる。また、添加物によりタレの味が調整されてきたことも事実であって、無添加の味が消費者に受け入れられるかどうかも大きな問題なのだ。

私が感動したのは、この納豆会社の企業としてのスタンスだ。社会的責任を十分に認識し、無添加のタレを添付した商品を種類は少ないが絶やすことなく供給し、トレーサビリティを明確にし消費者に選択の余地を与える姿勢は、非常に評価できる。信頼にたり得る企業の証だ。解禁直後にすかさず米国産牛肉を輸入し販売しようとしたスーパーや牛丼チェーンとは、明らかに企業としてのモラルが違う。私たちの体は、口にした食材によって健康にもなり蝕まれもする。食材にこだわることは、健康を維持する上で何よりも優り重要なのだ。出来る限り無添加のものを摂取することは、面倒なようだが無病息災への第一歩であって、私たち一人一人の命への責任なのだ。全ての食品会社は、私たちのこの重要な命題に、応えることができるだろうか。

国家予算の1/2にも匹敵する膨大な額の医療費は、誰のせいでもない、私たち自身の食生活や生活習慣の結果はじき出された数字なのだ。従って、医療費抑制のためには、元気を維持するための「食育」に真っ先に取り組まなければならないのだ。間違った食生活と不規則な生活習慣が、病気をうむ。添加物は、間違いなくガンを誘発する。これまで体に良いとされてきた牛乳などの乳製品が、実は人体にとって「毒」であることを、知らない人は多い。「食品の裏側」に並ぶベストセラーに、新谷弘実著「病気にならない生き方」という本がある。1,600円のハードカバーが、既に50万部以上も売れている。書店に山積みされているので、是非、手にとって見て欲しい。例えば、乳製品に対する神話は、もろくも崩壊する。

大腸ポリープを内視鏡で切除する技術を世界で始めて開発した新谷氏は、医師として、正しい食生活こそが、病気から身を守る最大の手段であると強調する。無添加を心がけ、穀物50%・野菜や果物35~40%・動物食10~15%の食生活に切り替えて、過酸化脂質すなわち錆びた脂である乳製品(牛乳・ヨーグルト・チーズ等)の摂取をやめるなどすると、患者が二度とガンを再発していないことが、新谷氏の主張の最大の根拠になっている。病気から始まる医学ではなく、どうしたら健康を維持できるかを考えなければ本当の医学は成り立たないと結ぶ新谷氏は、「現在の医学の延長線上に本当の健康はない」と明言する。

正しい食の知識が、病気の蔓延を阻止する特効薬なのだ。医療費の抑制のためには、正しい食育が何よりも重要なのだ。子どもの頃から病気にならない食習慣を植えつけることを今後の国の政策の重要な柱とすることで、健康で文化的な国家像を描いていけるようになるのだ。国策として正しい食育に力を注いでいくことが、国民の生命財産を守る最大の武器となる。「食品の裏側」や「病気にならない生き方」がベストセラーになる時代だ。食の安全に対する社会の機運を、今後益々高めていくことが、国に課せられた、今、最も重要なテーマなのだ。

消費者が「病気にならない食材」を積極的に求めるようになれば、質の良い食材のインフラも自然と整備されていく。地産地消の重要性が日本中に浸透すれば、平地の農業ばかりでなく、中山間地域の農業も必然的に活性化されていく。理想的な循環型社会が実現されるのだ。正しい食育こそが、健康で緑豊かな日本へと導いていく試金石となるのだ。

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