新型インフルエンザ:「タミフル」備蓄の真の目的

新型インフルエンザの世界的大流行に備えることは、政府の責任です。しかし、いたずらに国民の不安をあおり、実際には不必要(無意味)な対策を国民に強いることは、国民に対する国家の重大な裏切り行為です。政府が打ち出している新型インフルエンザ・パンデミックへの対応の中で、どうしても私が納得できないのが、抗インフルエンザウイルス薬「タミフル」の備蓄についてです。

世界各地で続発する鳥インフルエンザウイルス(H5N1)が人に感染後、変異を繰り返し、大流行が予想されるのが、「新型インフルエンザ」です。しかし、政府が備蓄を強く推奨・推進する抗インフルエンザウイルス薬2剤のうち特に「タミフル」は、現実にはH5N1型鳥インフルエンザウイルスの人への感染症例に効果をあげておらず、ましてや新型インフルエンザに対して有効であるという保証はまったくないのです。にもかかわらず政府は、地方自治体にも、声高に「タミフル」の備蓄を呼びかけています。不思議でなりません。

現段階で政府および地方自治体が備蓄する「タミフル」の総量は、2,800万人分とされています。総人口から考えても、極めて中途半端な備蓄量です。備蓄の主眼がどこにあるのか、理解できない数字です。「タミフル」は1人5日間投与が基本ですから、薬価を基準に計算すると、2,800万人分で1,086億円というコストがかかっています。これは、「タミフル」の販売元である中外製薬の、半年の売上高(平成20年6月中間期)の約8割に相当します。

周知のように、「タミフル」は中外製薬の親会社であるスイスのロッシュが製造していますが、元々の開発会社であり特許を持つのは米国のギリアド社です。ギリアド社の役員であったラムズフェルト元国防長官ら政治家のインサイダーはいまや明白で、「タミフル」の世界の売上の8割を買い占める日本政府が、年次改革要望書とはいかないまでもその筋のなんらかの圧力を受けているであろうことは、今更言うまでもありません。勿論「タミフル」に絡んだ、厚労省の役人の天下り、即ち官業癒着の構図も、この期に及び否定する理由がありません。

更に言えば、ロッシュ本社のあるスイス・ジュネーブに本部を置く、かのWHOが、新型インフルエンザ対策として「タミフル」の備蓄推奨を勧告している事実は、世界の保健衛生が、政治家の利害によって左右されている実態を、如実に物語っています。WHOは、ご丁寧にも、発展途上国に対しては「タミフル」のジェネッリク薬を勧める念の入れようです。

厚労省は、「タミフル」服用により子どもの飛び降りなどの異常行動が相次いで報告された問題について、先月7月10日、「タミフルと異常行動との関連は検出できなかった」と最終報告を出しました。ところがその喉元もすぎぬ今月5日、調査のデータ処理にミスが見つかったとし、調査結果を再検討すると発表しました。合わせて、「調査結果への影響は大きくないと考えられるが、科学的議論に万全を尽くすため、影響がないかを確認する」と付言しているのですから、わざとらしく不自然なポーズとしか言いようがありません。

発病直後ではなく、症状に差のでない発病後2日~7日までのデータを繁用し、異常行動の発生頻度を薄めた経緯のある厚労省の調査を、今更信用しろというほうが無理ですし、異常行動の6倍以上の頻度で発生する「タミフル」服用後の突然死について一切触れない厚労省の対応にも、疑問が残ります。

「タミフル」と異常行動との因果関係について最終的な結論を出す安全対策調査会の開催は、9月以降に延期されましたが、私には、最初に結論ありき、すなわち「異常行動とタミフルとは因果関係なし」、「タミフル」の備蓄に太鼓判を押そうとする厚労省の魂胆が丸見えで、不適切極まりないと思えてならないのです。一方で、東大教授を含む製薬会社とは一線を画し中立あるいは患者の立場に立つ専門医らは、異常行動や突然死は「タミフル」が引き起こした症状と考えるのが妥当と判断しています。自然な判断というものです。リスクコントロールとは、本来そういうものでなければなりません。

そもそも抗インフルエンザウイルス薬「タミフル」は、インフルエンザ感染後48時間以内に服用した場合、発熱期間が1~2日短縮されるという程度の作用しかありません。「タミフル」は、第三者への感染を防ぐものでもなければ、パンデミックを抑える薬剤でもないのです。万が一新型インフルエンザに感染してしまったら、外出せず安静に寝ていることが一番の対策なのです。むしろ政府が備蓄を推奨すべきは、検討ハズレの「タミフル」などではなく、ウイルスを防御するためのマスクや手袋であってしかるべきです。

新型インフルエンザ・パンデミックに対する国家戦略の大きな柱が、明らかに官業癒着にプライオリティをおいた「タミフル」の備蓄であることは、まさに国民不在の厚生労働行政の、典型的な事例です。いざというその時、「タミフル」は無用の長物です。地方自治体が競い合って「タミフル」を備蓄する様は、中外製薬やロッシュ、天下りする役人、そしてギリアド社やその関係者に、どれほど滑稽にうつっていることでしょう。

パンデミックが予想(想像)される新型インフルエンザに対して、厚労省は正しい施策を講じなければなりません。去る8月4日、東京都内の病院では、医療関係者に対するプレパンデミックワクチンの接種が始まりました。万が一、大流行したとき、ドンピシャリの効果を保証するものではありませんが、現状で為し得る最善の策です。政府は今年度内に、3,000万人分のプレパンデミックワクチンの備蓄を表明していますが、本気で対策を練る気があるのなら、関係機関に更に積極的に働きかけて、国民すべてに行き渡るくらいの勢いで、ワクチンを生産すべきです。

馬鹿を見るのは、いつも日本国民です。社会保障費の抑制という大きな困難に直面する一方で、無用の長物である「タミフル」の備蓄に、1千億円以上もの税金を投入する政府は、国民に不利益をもたらす政府です。一刻も早く打ち倒さなければなりません。政府肝いりの消費者庁も、消費者ではなく業者保護を目的に創設されることを、まだ多くの国民は気付いていません。「クローン牛」であるか否かの表示はしないことを、いずれ消費者庁は決定します・・・。そして何よりも、只今現在、「タミフル」の備蓄に疑問を投げかける現職国会議員がいないことに、私はむなしさを覚えずにはいられないのです。

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2008年8月6日「原爆の日」

2008年8月6日、今日も新しい1日が、私たちの人生に積み重ねられました。8月6日原爆の日は、毎年やってくるけれど、去年の8月6日とも、そして来年の8月6日とも違う、2008年、今日という日の8月6日を、私たちは迎えました。

世界中でいまだ繰り広げられる戦禍を見聞きする度に、人の命を犠牲にしてまで手にする利益とは一体なんだろうかと、考えずにはいられません。米国民の中にも、そのことに気付き、21世紀を迎えてもなお強行されたイラク戦争を、悔いる人々も出てきています。原爆投下から63年が経過したいまも尚、遺族らは避けることのできない恐怖やむなしさ、怒りに震えています。何も生み出すことのない戦争の恐ろしさを、そして、だからこその平和の尊さを、唯一の被爆国である日本は、2008年8月6日、全世界に伝えることができたでしょうか。

今日発信された現在の日本のリーダーである福田首相の言葉は、世界の人々の心に、どういう形で響いたのでしょうか?そもそも、福田首相の言葉に、皆、耳を傾けようとしていたでしょうか?平和式典が、年々色あせて、惰性で行われることを危惧します。福田首相が発した言葉は、本物だろうか?平和式典に臨む福田首相の姿勢を考えると、2008年今日という日、原爆の惨劇に思いを寄せ、平和への新たなる誓いを胸に秘めた人がどれほどいただろうかと、私は心配で胸がいっぱいになるのです。

8月6日、広島には平和の鐘が鳴り響きます。人々は手を合わせ、あるいは心の中で黙祷し、平和への思いを新たにします。大切なことは、世界中のすべての人々が、その瞬間に思いを1つにすることです。8月6日が、原爆で被害を被った当事者に近い人々だけのセレモニーに終わってしまっては意味がありません。そんな思いで語ることのできる日本のリーダーを、私は望みます。心から発せられる言葉は、必ず相手の心に届きます。でも、福田首相の言葉は、私の心には響きませんでした。2008年8月6日は、今日しかないのです。この瞬間に世界に生きる人々に、日本が平和のメッセージを伝えることができなかったことは、もう取り返しがつかず、本当に残念でなりません。

8月6日、この日があるから、人々は平和を希求し、互いに思いやる心を忘れずにいることができるのです。原爆の悲劇は、決して風化させてはなりません。日本国民が平和への思いを1つにして、核兵器根絶と不戦とを、堂々と世界に誓うことのできる8月6日を、いつか必ず迎えるために、力を注いでいきたいと、2008年8月6日、私は強く思うのです。
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