〈検証Ⅳ〉「口蹄疫防疫措置実施マニュアル」6/24農水省消費・安全局長通知

宮崎の口蹄疫は6月19日以降新たな発生はなく、現段階ではワクチン接種の2万頭あまりの処分を残すのみとなりました。28日からは西都市・宮崎市・国富町で移動・搬出制限区域解除のための清浄性確認検査が開始される予定となり、関係者のみなさまのご尽力とご労苦に心から敬意を表します。

去る6月24日、隣県地域の防疫体制の徹底も考慮して、まだ口蹄疫の終息宣言が出されないなか、「口蹄疫防疫措置実施マニュアル」が農水省消費・安全局長の名で通知されました。今回宮崎県で防疫指針通りに実施されなかったことなどを教訓にして、口蹄疫の被害を最小限にとどめるために当事者・関係者がとるべき行動の原則を、家畜伝染病予防法・特定家畜伝染病防疫指針をベースにあらためて強調する内容になっています。逆に言えば、このマニュアルは、今回宮崎で何が起こっていたのかを表すものでもあると思います。

冒頭の「1防疫措置の基本方針」では、口蹄疫の被害を最小限にとどめるための、農水省の強い意志を表しています。

1 防疫措置の基本方針

本病の防疫対策は、本病の早期発見及び早期通報のための監視体制の強化を図るとともに、発生時においては迅速な殺処分及び埋却等によるまん延防止対策を講じ、その被害を最小限にくい止めることが基本である。

「2異常家畜の発見の通報」の項目では、都道府県公務員であり口蹄疫の専門家たる獣医師である「家畜防疫員」の役割の重要性を、あらためて強調しています。

2 異常家畜の発見の通報(抜粋)

(1) 家畜防疫員は、家畜の所有者、獣医師等から異常家畜を発見した旨の通報を受けた場合は、遅滞なく県畜産主務課に連絡・・・

(2) 家畜防疫員は、原則通報から2時間以内に当該農場に到着する。家畜防疫員は、現地到着後、車両を農場施設の外に置いて、防疫衣を着用し、現地に携行した用具をもって施設内に入る。

(3) 家畜防疫員は当該施設に入って直ちに、異常家畜及び同居家畜の鼻腔、口唇、口腔、舌、蹄部、乳頭部等を中心とした臨床検査を徹底する。その際、すべての異常家畜(異常家畜が多数の場合は代表的な数頭)の病変部位をデジタルカメラで鮮明かつ十分に撮影すること。また、防疫指針に基づき、適切に病性鑑定用材料を採取する。

(4) 家畜防疫員は、最寄りの家畜保健衛生所から当該写真及び飼養状況や病歴等の疫学情報(不明疾病の現地調査票等)を畜産課及び動物衛生課に電子メールで直ちに送付すること。この場合においても、防疫指針に基づき可及的速やかに動物衛生研究所に病性鑑定用材料を送付し、精密検査を依頼する。

(8)写真による判定が困難な場合は防疫指針に従いPCR等の病性鑑定を実施し、その結果に基づき対応する。

(9)家畜防疫員は、病性が決定されるまでの間、異常家畜の所有者に対し、防疫指針に基づき飼養家畜の隔離、関係者以外の農場への立入禁止、農場の応急的な消毒等を指導し、病原体の散逸防止を図る。

「3発生確認後の発生農場及び周辺における防疫措置」「4移動制限区域内で講じる防疫措置」の項目では、感染拡大防止のために本来行うべき獣医師による積極的発生動向調査を重視し、殺処分には獣医師以外の者も獣医師の指導のもと活用するよう指示しています。また、複数の畜舎を有する農場への畜舎間の家畜の移動の禁止の徹底についても明記しています。

3 発生確認後の発生農場及び周辺における防疫措置(抜粋)

(1) 当該疑似患畜は、当該農場内で疑似患畜と判定後原則として24時間以内に殺処分を終了する。なお、豚の殺処分においては電殺や炭酸ガスによる殺処分など効率の良い方法を検討する。

(2) 迅速かつ効率的な殺処分を行うため、積極的に民間獣医師の有効な活用を行う。また、獣医師以外の者であっても獣医師の指導の下で殺処分への活用を図るものとする。

(3) 埋却地は当該農場又は当該農場の周辺とし、疑似患畜と判定後72時間以内に埋却を完了する。やむを得ない事情により、これらの埋却地を確保できない場合には、公有地(国、県等)を利用する・・・

(4) ②消毒薬・殺鼠剤・殺虫剤等を的確かつ迅速に使用し、昆虫、小動物等による病原体の拡散防止を徹底する。

4 移動制限区域内で講じる防疫措置

(1) 家畜防疫員は、移動制限区域内にある農場のリストアップを行うとともに、発生農場から半径3km圏内にある農場に対して電話による聴き取り等により、これらの農場における異常畜の有無を速やかに確認する・・・

(2) 畜産課は国と協力して、発生後直ちに、発生農場から半径1km圏内にある農場については抗原検査及び抗体検査を、移動制限区域内にある大型肉用牛肥育農場及び大型養豚農場については臨床検査をそれぞれ実施し、口蹄疫ウイルスの浸潤状況を調査する。

(3) 畜産課は、複数の畜舎を有する農場に対して、畜舎間の家畜の移動の禁止を徹底する。

「5その他」の項目では、移動区域内にある共同たい肥舎の利用の禁止も指示しています。また、農場従業員や訪問者の行動歴の調査にも言及し、特に畜産関係車両や防疫作業車両の厳重な消毒を強調して、企業経営型牧場等大型農場の家畜の移動状況や、家畜防疫員の行動記録の分析の重要性を示唆しています。

5 その他(抜粋)

(1) 特に、畜産関係車両や防疫作業車両については、農場出入りの度に運転手及び車両内部も含め厳重な消毒を徹底するとともに、併せて一般車両の消毒も実施すること。

(3)疫学調査を実施するに当たっては、

① 家畜防疫員は、発生の確認から21日前まで遡って実施すること

② 農場従業員の行動歴、宅配便等の入退場、農場への訪問者等を調査すること。特に農場への訪問者等については訪問前後の行動歴についても調査すること

(4) 移動区域内にある共同たい肥舎については、その利用をやめること

(5) 病性鑑定について、国の現行のPCR検査に加えて簡易キットの実用化を進める。

(6) 疑似患畜の埋却が困難な場合に備え、国は移動式レンダリング車と焼却炉との組合せによる焼却の実用化を進める。

山田農水大臣は、副大臣時代、現地の対策本部に張り付いて対応にあたっていました。まさに宮崎で何が起こっていたのかを目の当たりにしてきたひとりでもあり、農水大臣として、今必要なことをこのようにマニュアル化されたのだと思います。デジカメ画像での鑑定など画期的な項目もありますが、基本的には家伝法やこれまでの防疫指針に則った内容です。あらためてそれらを厳守するよう、農水省が求めたと言うべきものです。

家畜への愛着やあらゆる面での不安など交錯する様々な思いがあるのは当然ですが、農場・農家のみなさまには口蹄疫の被害を最小限にとどめるために、その思いを超えての対応が求められ、そのためにこのようなマニュアルや法律が存在するのだと思います。農水省は、1月7日の韓国での口蹄疫発生を知らせる動物衛生課長通知が周知徹底されなかった反省を踏まえ、今度のマニュアルがすべての都道府県で実行できる体制にあるかどうかの確認を、今後は繰り返し行っていくことがとても重要だと思います。

口蹄疫防疫措置実施マニュアル(6/24農水省消費・安全局長通知)

山田農水大臣単独インタビュー(宮崎日日新聞6/24付)

はたともこ口蹄疫ブログ 〈検証Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ〉

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〈検証Ⅲ〉なぜ口蹄疫パンデミックを防ぐことができなかったのか

4月28日、PCR法による遺伝子診断で日本で初めて「豚」の口蹄疫が確認されました(公式発表10例目)。豚は牛に比して口蹄疫ウイルスの感染伝播力が極めて強く、豚への感染は今回のパンデミックを左右した激震のひとつでしたが、その「最初に感染した」豚が、地域の豚の飼養管理を行い家畜ふん尿処理施設を持つ「宮崎県畜産試験場川南支場」の豚であったことは驚くべき事実です。今回の防疫体制のガバナンスとリスクコントロールを検証する上で、なぜ県の畜産試験場の豚が最初に感染したのか、その感染ルートを解明することは非常に重要です。

FAO「口蹄疫緊急時対策の準備」には、口蹄疫感染ブタが呼気に排出する空中ウイルス量は、ウシの3,000倍に達し、その潜伏期間は10日前後で、感染後ウイルスの排出は臨床症状が現れる最大4日前から始まるとあります。すなわち、日本で初めて口蹄疫陽性が確認された畜産試験場の「豚」は、遅くとも4月17日頃までには感染し、4月23日頃から大量の口蹄疫ウイルスを撒き散らしていたことになるのです。口蹄疫を疑い検体を採取したのは4月27日午前10時なので、4月23日頃から数日間、本来地域の防疫の拠点となるべき畜産試験場で、感染豚は牛の3,000倍もの口蹄疫ウイルスを放出し続けていたことになるのです。

ところで、公表された情報によると、要請に応じ県の公務員である家畜防疫員(獣医師)は、3月31日水牛農家を訪問しました。このとき家畜防疫員は口蹄疫を疑わず「普段の下痢」と判断しましたが、3週間以上が経過した4月23日、この水牛の検体は口蹄疫陽性と確認されました(公式発表6例目)。

また4月9日にも要請に応じ、県の家畜防疫員は別の農家を訪問しています。その際「経過観察」としましたが、4月17日再度訪問した時も口蹄疫を疑わず、4月19日20時にやっと口蹄疫の検査を実施するための検体を採取しました。その結果翌20日、陽性と確認されました(公式発表1例目)。

いずれも宮崎県家畜保健衛生所の家畜防疫員が現場に出向いていますが、結果的に、潜伏期間を考慮すると3月25日頃から水牛(6例目)が、4月3日頃から牛(1例目)が既に口蹄疫に感染していたこと、また、少なくとも3月31日、4月9日、17日の三度にわたり、口蹄疫との認識のないまま家畜防疫員が口蹄疫ウイルスに曝露していたということがわかります。

今となっては、1月7日の韓国での口蹄疫発生を知らせる農水省動物衛生課長通知と2月19日の台湾での口蹄疫発生を知らせる農水省プレスリリースが、なぜ宮崎県の家畜防疫員や関係者に周知徹底されなかったのか、大きな疑問です。これが今回の口蹄疫パンデミックを防ぐことができなかった理由の一つであり、国と宮崎県に大きな責任があることは言うまでもありません。

極めて感染力の強い口蹄疫が1月・2月と隣接する韓国・台湾で発生した以上、国が定める「口蹄疫に関する特定家畜伝染病防疫指針」に従い、宮崎県の家畜防疫員は口蹄疫を疑った防疫体制をとらなければなりませんでした。同指針では、確実な診断が得られるまでは農場を閉鎖し防疫関係者以外の立ち入りを禁止しなければならず、その場で口蹄疫が否定できない場合には家畜保健衛生所は都道府県畜産主務課に連絡するとともに、家畜防疫員(獣医師)は独法・動物衛生研究所に検体を搬送し検査を受けなければならないとしています。

一方、ジャーナリスト横田一氏の取材レポートにもあるように、4月25日に口蹄疫陽性が確認された企業経営型牧場の殺処分が行われた4月26日、殺処分にあたった約50人の人々は壮絶な光景を目の当たりにすることになりました。牧場にいた725頭の殆どの牛が酷い感染状態にあり、現場の人々は上司の指示を仰ぐまでの数時間、手をつけることができなかったということです。この牧場は4月24日午前9時、口蹄疫様症状を示す牛がいると県に通報していますが、状況からいって、それよりもずっと以前から症状を示す牛がいたことは明らかで、そのことを隠ぺい・放置していたとなると、それは家畜伝染病予防法違反(13条の届出義務・14条の隔離義務等)であり刑事罰に値する犯罪です。

3月頃の発生当初、なぜ「家畜伝染病予防法」や「口蹄疫に関する特定家畜伝染病防疫指針」に則った防疫体制がとられなかったのか、今回の口蹄疫パンデミックを検証する上で、最も基礎的な疑問であり、また最も重要な要素です。感染ルートの解明と併せて、この間に宮崎県の関係各所・農場・農家で起こったことすべてが情報開示されなければ、周辺地域の防疫体制にも影響します。真実が公表されなければ、将来に教訓として生かされません。

鹿児島大学・岡本嘉六教授も指摘しているように、有効な防疫体制には、獣医師による未感染地域の積極的発生動向調査が不可欠であるとFAO「口蹄疫緊急時対策の準備」に書かれています。宮崎県では殺処分に大半の獣医師があてられ、未感染農場に立ち入り調査をする積極的発生動向調査が行われてきませんでした。現地で対応にあたっていた経験をもとに就任早々の山田農水大臣は、6月10日都城で口蹄疫陽性が確認された直後の13日、周辺地域での積極的発生動向調査を開始しました。今回の口蹄疫パンデミックによる隣接各県のダメージを最小限にとどめるためにも、農水省は、家畜伝染病予防法やガイドラインに則った防疫体制がとられているかどうかの確認を、今後はしっかりと行っていかなければならないと思います。

「1月7日農水省動物衛生課長通知」

「2月19日農水省プレスリリース」

「家畜伝染病予防法」

「口蹄疫に関する特定家畜伝染病防疫指針」

「口蹄疫対策特別措置法」

鹿児島大学・岡本嘉六教授HPより抜粋

 「FAO口蹄疫緊急時対策の準備:第2章この疾病の特徴」

 「発生農家周辺の調査が始まった」

〈検証Ⅱ〉獣医師の配置を間違えた宮崎県:鹿児島大・岡本嘉六教授に学ぶ口蹄疫対策(はたともこブログ)

〈検証Ⅰ〉「1/7付『韓国における口蹄疫の発生について』農水省動物衛生課長通知」は周知徹底されたのか(はたともこブログ)

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〈検証Ⅱ〉獣医師の配置を間違えた宮崎県:鹿児島大・岡本嘉六教授に学ぶ口蹄疫対策

「火消しは獣医師でなくても出来るのに、燃え盛る火事現場に獣医師を集めた結果、火の粉がどこまで飛んでいるかを調べる発生動向調査が疎かにされた。ヒトに伝染病が発生したとき、医師を葬儀場に集めるような愚挙をやめない限り、口蹄疫拡大を止めることはできない。」鹿児島大学・岡本嘉六教授の怒りをも込めた一言です。この岡本教授の指摘に従い宮崎県の口蹄疫対策が見直され、更に隣接各県において適切かつ強力な防疫体制が速やかに構築されることを、とにかく望みます。

人(獣医師)が足りない足りないと、常に言い訳をする宮崎県知事ですが、十分な数の獣医師を確保できない中、殺処分や埋却に集中して獣医師を投入する今のやり方は、防疫対策上極めて不合理です。本来、防疫対策の要でなければならない獣医師を、ワクチン・殺処分・埋却に集中投入したことが、周辺地域での野放図な感染拡大を招いた最大の理由です。すなわち、今回の口蹄疫パンデミックは、誤った防疫対策のために引き起こされた、途中からは明らかに「人災」なのです。

また一方で、今回は高電圧による殺処分も行われていますが、この方法は熟練した技術者でなければ難しく、未経験の獣医師がその場にいても役に立たないことがはっきりしています。宮崎県が獣医師の配置を間違えたことは明らかで、その結果、周辺地域の農場に立ち入り、飼養状況・家畜観察・検体採取・診断などの「積極的発生動向調査(サーベイランス)」が行われず、封じ込めに失敗し、被害を拡大させてしまったのです。

「獣医師が一旦殺処分に従事すると、口蹄疫ウイルスが上部気道に付着し、その一部は増殖して風邪症状を呈するため、当分の間、清浄地域の発生動向調査に携わることができなくなる。これでは、発生農場周囲の立入り調査活動を誰がするのか?」と岡本教授は嘆いています。

6月4日、主に国による経済的補償を根拠づける「口蹄疫対策特別措置法」が施行されました。しかし、本来この特措法では、防疫対策の要としての獣医師の権限・裁量・立場を明確にし、獣医師が、殺処分ではなく発生動向調査に積極的に従事できるよう法的裏付けを定めるべきでした。

発生予測地域での先手先手の防疫対策が封じ込めには不可欠で、その指揮官こそ専門家たる獣医師でなければならないのです。今からでもワクチン・殺処分・埋却は自衛官や警察官に依頼し、周辺地域・隣接各県においては、獣医師が積極的に発生動向調査を実施すべきであり、そうしなければ今回の口蹄疫パンデミックを終息させることはできないのです。

規模がここまで拡大すると迅速な殺処分は不可能に近く、今となっては、殺処分と積極的発生動向調査に基づいた的を絞ったワクチン接種とを系統的に行うことしか、宮崎県に有効な手立てはありません。現状の発生動向調査に基づかないワクチン接種にあまり意味のないことは、今なお感染拡大が進行していることが証明しています。ワクチンをただ打てば良いという問題ではないのです。

宮崎県知事は、国による全面的な補償が約束されない限りワクチンも埋却も行わないという、プライオリティを見失った信じがたい態度を崩さず、一刻を争う対策に自らブレーキをかけてきました。種牛の処分に抵抗した知事の気持ちもわからなくはありませんが、結果的にその間更に感染は拡大してしまいした。結論は見えているのに、県知事が感情に流された結果、あらゆる意味で損失が加速度的に膨れ上がりました。

宮崎県のプレスリリースを丹念に見れば、公式発生直後しばらくの間、一般車両の通行に制限はなく、家畜運搬車両についても夜間であれば自由な移動が可能であったことがわかります。これが感染拡大の大きな要因となったことは、今更言うまでもありません。獣医師の配置を間違えたことも重大な過失ですが、宮崎県の初期段階でのガバナンス・リスクコントロールの甘さもひときわ目立ちます。

それにしても何故、防疫には素人の現宮崎県知事が、感情を露わにしつつ、今回陣頭指揮をとってしまったのでしょうか。その理由は、意外なところにありました。昨年までは、全国に組織されていた「家畜畜産物衛生指導協会」が、家畜伝染対策についての情報をホームページ等を通して提供してきました。ところがこの組織が事業仕分けの対象となり、鹿児島など一部の県を除き宮崎県などその多くの県で解消してしまったのです。国や県の退職者(家畜防疫官や家畜防疫員であった獣医師のOB)らによる組織であったことが災いしたようですが、今となっては今回のパンデミックとその経済的損失を考えると本末転倒としか言いようがありません。

とうとう6月10日、鹿児島県境の都城まで感染が拡大し、鹿児島県をはじめとする隣接各県への飛び火は時間の問題となりました。本来とるべき対応から大きくはずれた宮崎県の対応を反面教師として、隣接各県は適切で強力な防疫体制を構築すべきです。政府も、これまでの認識をあらため、隣接各県が同じ轍を踏まないよう正しいサポート体制を敷かなければなりません。

例えば鹿児島大学・岡本嘉六教授のような方に防疫指揮官を委任し、専門家による迅速な指揮系統の確立を急ぐべきではないかと、私は強く思います。

鹿児島大学・岡本嘉六教授のホームページ

口蹄疫の蔓延を防止するための殺処分にあたるものが、獣医師でなければならないという規定はありません。家畜伝染病予防法においては、「家畜の所有者」は家畜防疫員(獣医師)の指示に従い直ちに当該家畜を殺さなければならないとし、緊急性がある場合には家畜防疫員(獣医師)自らが当該家畜を殺すことができると定めています。口蹄疫対策特別措置法では更に、知事の勧告を大臣が代執行できるとしています。

大量の殺処分となった今回の場合は、より現実的な対応として、「殺処分→搬送→埋却」の一連の作業を組織行動のとれる自衛隊に要請し、獣医師は、防疫対策の本来の要であるまだ発生が確認されていない周辺地域の農場に立ち入り、飼養状況・家畜観察・検体採取・診断などの「積極的発生動向調査(サーベイランス)」に専念することが最も重要だと、岡本教授は指摘しています。

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〈検証Ⅰ〉「1/7付『韓国における口蹄疫の発生について』農水省動物衛生課長通知」は周知徹底されたのか

1月7日付の「韓国における口蹄疫の発生について」との農水省動物衛生課長通知を受けて、一部の県ではホームページ上でも地元農家に対して注意喚起を行っていますが、宮崎県ではホームページで情報提供・注意喚起を行った形跡はありません。1月7日の農水省通知が宮崎県でも徹底されていたなら、感染の拡大を防ぐことが出来たのではないかと今更ながらに強く思います。

4月9日、児湯郡都農町の農家で、口内がただれた牛が見つかりました。宮崎県は獣医師を派遣しましたが、症状が軽く他に症状のある牛もいなかったという理由で「経過観察」とし口蹄疫の検査を行いませんでした。二週間後の4月23日、あらためて東京の独法・動物衛生研究所に検体を送り、この牛は口蹄疫陽性と判定されました。

また、それ以前の3月31日、都農町の別の農家の水牛に風邪のような症状がありました。農家がかかりつけの獣医師を通じて宮崎県家畜保健衛生所に、「水牛が発熱している。牛乳の出も悪い」と連絡したところ、その日のうちに同衛生所の家畜防疫員(獣医師)が立ち入り検査を実施しましたが、4頭の水牛に発熱・下痢等の症状を確認するも「普段の下痢」と判断して通常の風邪の検査だけを行うにすぎませんでした。このとき採取した検体が保存されていたので、あらためて検査を行った4月23日、この水牛は口蹄疫陽性と判定されました。

この2例に対する県の対応は、国が定める「口蹄疫に関する特定家畜伝染病防疫指針」に明らかに違反しています。同指針では、確実な診断が得られるまでは農場を閉鎖し防疫関係者以外の立ち入りを禁止しなければならず、その場で口蹄疫が否定できない場合には家畜保健衛生所は都道府県畜産主務課に連絡するとともに、家畜防疫員(獣医師)は独法・動物衛生研究所に検体を搬送し検査を受けなければならないとしています。

宮崎県は1月7日の農水省通知をきちんと踏まえ、上記二例の場合も直ちに口蹄疫を疑い、「指針」に則った対処をしなければなりませんでした。指針に則り対処していれば、4月12日・13日、安愚楽が川南の牧場からえびのの預託牧場に牛を移動・出荷することも、防ぐことができたはずです。口蹄疫を否定できる根拠がない限り、農家は農場を閉鎖し口蹄疫の検査を受けなければならず、この指針通りに動いていれば、宮崎県がこれほどまでの口蹄疫パンデミックに陥ることはなかったのではないかと思います。

1月7日の農水省通知を、何故すべての都道府県が周知徹底できなかったのか。農水省は周知徹底を確認したのか。何故、口蹄疫類似症状を前に、指針に則った対応を宮崎県はとることができなかったのか。その検証は、今後のリスクコントロールの在り方を考える上でも非常に重要です。

→「1月7日農水省動物衛生課長通知」はこちら

→「口蹄疫に関する特定家畜伝染病防疫指針」はこちら

(訂正)この文章の8行目「4月23日」を「4月19日」に訂正します。6月20日付〈検証Ⅲ〉では「4月19日」と記していますが、このたび東国原英夫知事のブログで指摘を受けましたので、あらためて訂正させていただきます。(6月22日23:16)

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5.27普天間問題緊急声明(最新版)と閣議決定文書

「5.27普天間問題緊急声明」の最新版はこちら

5.28閣議決定文書はこちら 

5月27日に与党(当時)182名の議員による、将来の国外・県外移設を実現する基本方針の策定を求めた「5.27普天間問題緊急声明」を受けて、

5.28閣議決定文書の3のアンダーラインの部分「基地負担の沖縄県外又は国外への分散及び在日米軍基地の整理・縮小に引き続き取り組むものとする」の文言を入れたと官邸から連絡がありました(5/28)。

とても十分とは言えませんが、「5.27普天間問題緊急声明」によって、「国外・県外移設」に政府が正式に取り組むと閣議決定文書(政府の方針)に明記したことは、意義のあることだと思います。

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