「日本ERI」ついに登場 11月29日

住民の命にかかわる深刻な事態を受けて、国会閉会中にもかかわらず衆議院国土交通委員会が急遽開かれた。ヒューザーの小嶋社長やイーホームズの藤田社長など、一連の疑惑の人々が参考人招致され、それぞれの言い分を答弁した。しかし、この中の誰一人として自己責任を認識する者はなく、潔く自らの社会的責任を全うしようとする人物は、残念ながら存在しない。終始、責任のなすり合い、まともな人格者は一人もいない。

イーホームズ藤田社長の口から、今日ついに「日本ERI」の名前が出た。確認審査機関としては最大手。日本ERIの主要株主には、一流住宅メーカーが首をそろえている。ミサワホーム・大和ハウス・パナホーム・三井ホーム・積水化学などで、当然、これらの会社は耐震強度などの機能評価や確認審査を、日本ERIに発注しているはずだ。

本日付けで日本ERIが発表した文書には、姉歯設計事務所が申請代理人あるいは下請けとして構造設計に関与した物件は全部で16件あり、そのうちデータの改ざんが疑われる物件が、数件存在するということだ。建築の評価・審査ではわが国最高峰の日本ERIをしてこの実態。全ては、推して知るべし。ヒューザーグループ以外にもゴロゴロと、データ改ざんを日常化していた悪徳ディベロッパーは存在するはずだ。

今日まで真実を隠してきたイーホームズの藤田社長も、所詮は同じ穴のムジナ。今更ながらに藤田社長は、構造計算の評価・審査をディベロッパーの要求通りの期間で行うこと自体、最初から無理があると白状した。本当に無理なら、専門家の責任として、その矛盾を早急に正すべきだった。小嶋社長を責める藤田氏だって、建築のプロというよりも、建築をビジネスの道具として利用してきただけに過ぎないのだ。

それにしても、ここまで杜撰な状態を放置してきた国交省の責任は大きい。霞ヶ関の役人は、日本の消費者を本当に軽視している。本来、日本国民の利益を守り、日本国民の健全な営みを全面的にバックアップすべき省庁が、その目的はそっちのけで、役人自らの利益や保身のためだけに終始する例は、後を絶たない。輸入血液製剤による薬害AIDSは誰もが知るところだが、BSEに関連して、米国産牛肉や反芻動物由来の医薬品原料の輸入問題なども同様の性質を持っている。

当初、建築物の確認審査を官から民に移行することは、今回のような不祥事につながりかねないとして躊躇されていた。しかし、当時の建設省住宅局長は周囲の不安をよそに、確認審査の民営化を強力に推し進め、1998年、ついに民間企業へも開放されることになったのだ。この局長はその後も、政官業癒着の甘い汁に、どっぷりと漬かることとなる。そのなれの果てが、今回のスキャンダルなのだ。

霞ヶ関のエリート官僚らの志って、いったい何なんだろう。国民のための公僕であることを、完全に忘れている。自らを特権階級と位置づけ、一般国民を見下し切り捨て区別しているとしか思えない。今こそ政治の力で、官僚の不道徳と政官業の癒着をただし、国民の健全な生活の営みを取り戻す努力が必要だ。

不正を働いた業界寄りの発言をする、自民党武部幹事長の真意はどこにあるのか。与党内に、不正に絡む議員が複数存在するのではないか。その中には、確認審査事務を民間に開放した住宅局長を、自らが本部長を努める都市再生本部の事務局長に抜擢した、小泉総理の名もあるいは挙げられるのではないか。社会のチェック機能を正常に働かせるために、まずは政界・官界・業界のウミを徹底的に出し切ることが先決だ。それこそ、小泉構造改革の本質を明らかにする国会の、重大な使命なのだ。
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ヒューザーシンジケート 11月28日

ヒューザーの関る物件はほとんど、耐震計算を偽造しているようだ。確信犯であるヒューザーを、公的資金で援助する理由はどこにもない。ヒューザーの小嶋社長は、自民党元国土庁長官・伊藤公介氏の他に、公明党参議院議員の山口那津男氏にも助けを求めていたことが明らかになった。当初から公明党の関与が噂されていたが、どうやら嘘ではないらしい。

山口議員は、耐震計算の偽造問題を認識しながら、事実をむしろ隠蔽する方向で、国交省の担当課長補佐に小嶋社長を紹介した。山口氏の大きな過ちは、耐震計算の偽造を見逃した確認検査機関を本来監督すべき国に責任があると主張する小嶋氏の主張に、同調している点だ。小嶋氏は確信犯であり、責任を回避しようとしているにすぎないのに、山口議員は、そのことを見抜けなかったのだ。

都心の創価学会関連施設が立ち並ぶ地域の一角に本社を構えるイーホームズの藤田社長は、ヒューザーの小嶋社長に真っ向から対立するコメントを発表した。事件発覚直前に行われた一連の関係者による秘密会議の内容を暴露して、小嶋社長の二枚舌をリークしたイーホームズ藤田社長の態度と、それに呼応して激怒する小嶋社長のパフォーマンスは、どこまでが真実なのか、疑わしい限りだ。

彼らは、マンション住民からの損害賠償を免れたい一心で、木村建設のように表面上は自己破産を装うかもしれない。しかし、木村建設と同様に、おそらく海外の銀行に資産を移動しているに違いない。彼らの犯罪行為のシンジケートを解明し、事件の真相を徹底的に分析していかなければならない。自民党の族議員と公明党がからむ巨大不動産シンジケートに、小泉総理は、いったいどう対処していくのだろうか。小泉総理の“偉大なるイエスマン”武部幹事長は、「あんまり悪者探しばかりしていると、不動産業界は崩壊してしまう」と、小嶋社長もどきの発言をしている。まさか、武部幹事長もグルということなのかっ!?

1998年、官から民に委託された建築確認事務は、当初から不正の温床となりはしないか危惧されていた。というより、不正を働き荒稼ぎをすることを目的に、民間業者は、建築検査確認事務の民営化を求めていたのだ。当時、建設省住宅局長の地位にあった小川忠男氏は、民間業者の思惑を百も承知で、民営化にGOサインを出した張本人だ。小川氏は、小泉総理の任命で「都市再生本部事務局長」の要職に就き、合同庁舎の跡地など都心の一等地を「都市再生機構」に売却し、そこに経団連や大企業を誘致したまさに政官財癒着の権化のような人物だ。そして、なんと小川氏は昨年その任を辞し、「取引先」であった「都市再生機構」に堂々と天下りしているのだ。勿論、これも小泉人事だ。小泉総理の理論は、何でもかんでも民営化。しかし、その裏には、官と民との想像をはるかに超えるもたれあいが存在するのだ。今回の事件の展開如何では、小泉流民営化の本質が誰の目にも明らかになる。

地方でも相次いで発覚する耐震強度偽装疑惑。ついに清水建設やミサワ、大和、積水など大手のディベロッパーの名も上がり始めた。要するに、民間検査機関というものは、大手ディベロッパーの出資で成り立ち、ディベロッパーの事実上の関連会社であるということが明確になってきたのだ。多くの人々にとって、住宅は一生の買い物だ。疑うことを知らない庶民の夢につけ込むヒューザーをはじめとする悪徳業者の陰謀を、これ以上許してはならない。彼らを社会から一掃する、大胆な真相解明と捜査が必要だ。自民党も公明党もまさに当事者であり、民主党が徹底追及するしか術はない。

マスコミも体制派に寄り添うばかりでなく、是々非々で物事を冷静に判断し、正しく質の高い報道に務めるべきだ。住民に、一日も早く平穏な日常が戻ることを祈るばかりだ。
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ヒューザーグループ 11月27日

与党が震撼としている!耐震構造計算書偽造事件は、地震を待たず与党に激震を走らせている。元国土庁長官・自民党の伊藤公介代議士へのヒューザーグループによる献金問題が浮上。国交省への働きかけが問題となっている。今日のサンプロでは田原総一郎氏の問いかけに、なんとも歯切れの悪かった公明党の高木陽介氏。しまいには話題をそらす始末で、北側国交大臣だけではなく、この問題に公明党がからんでいることを疑わせた。

元国土庁長官・伊藤公介氏は、今回の事件が公にされる直前、盗人猛々しいとはこの人のためにある言葉ではないかと思わせるヒューザーの小嶋社長を、国交省の担当課長に引き合わせている。伊藤氏は、自民党住宅土地検査会会長の経験もあり、ほぼ一貫して建設畑を歩んできた。元秘書である地元の都議会議員とともに、イーホームズやヒューザーから幾度となく献金も受けており、両者のもたれ合いは明白だ。

本来国や自治体が責任を負うべき建築確認事務を、民間会社に委託する行為は、小泉改革のキーワードである「官から民へ」への流れそのものだ。しかしそれは、金儲けのために、人命を危険にさらす反社会的な行為を黙認していた。まぎれもなくそれが、小泉構造改革の実態であり、成れの果てであって、なんとも許しがたく、そら恐ろしい限りだ。

自己破産を申し立てた木村建設の社長は、既に多額の預金を海外の銀行に移しているとの噂もある。間違いなくグルであり一蓮托生の彼らは、これまで封印されてきた社会の闇を大胆に暴く端緒になるかもしれない。ヒューザーの小嶋社長のマスコミでの言動を見ていると、毒ガス・サリンをばら撒いたオウムの幹部たちを思い出す。法律違反を承知の上で自ら建築確認を申請しておいて、それを見落とした者が悪いと開き直り自らを正当化する小嶋氏の態度は、オウム幹部とウリ二つだ。彼らも「ああ言えばこう言う」と、保身のために真実を嘘で塗り固めていた。

建築主のヒューザーから姉歯氏を紹介され、マンションの構造計算を発注した森田信秀氏の自殺は、釈然としない。森田氏は、2棟のマンションの構造計算を姉歯氏に下請けに出している。横浜市のマンションはヒューザー、藤沢市のマンションは木村建設が施工主だ。森田氏への相当な圧力が、容易に想像される。政府の責任として、イーホームズ・ヒューザー・木村建設に対する社会的制裁を、刑事責任の追及も含めて最後には断行する必要がある。

勿論、その前に、不安におののく住民の安心と安全を、一刻も早く確保することが肝心で、完全な補償は当然のこと、まずは安全な住宅への速やかな転居を叶えなければならない。民主党は、小泉構造改革の闇を、徹底的に暴く覚悟で臨んで欲しい。
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「タミフル」中外製薬の嘘 11月26日

米国テキサス州に今年の4月まで4年間在住していた30歳の英国人男性が、変異型クロイツフェルト・ヤコブ病であると診断された。米国では公式には2人目の発症だが、この男性は80年から96年の間、英国に住んでおり、その間の牛肉の摂取によって感染した可能性が高いとされている。勿論、米国在住中の感染も否定できない。男性の年齢も若く、非常にリアルな話だ。この男性が献血をした経験があるかどうかも、確認する必要がある。

牛肉を食するという、ある意味短絡的なルートによって、BSEは人に感染する。プリオン専門調査会ですら「科学的根拠はない。米国産牛肉を買って食べるか否かは、消費者の選択だ」と言い放つ現状では、米国産牛肉の安全性は、極めて怪しいと考えざるを得ない。ましてや、現実に米国在住者の中から変異型クロイツフェルト・ヤコブ病の感染者が新たに報告されたからには、やはり、今一度輸入再開が妥当な決断であるのか否か、再考すべきである。

人間の生命にかかわる重大な問題を、看過する政府はどうかしている。武部自民党幹事長は今日、耐震設計の偽造問題を言及して、「悪者探しに終始すると、マンション業界がつぶれる。地震がくるとつぶれると聞かされるた住民は、心配で夜も眠れない。」と、いったい誰の味方なのか、そして何が目的なのか、さっぱりわからない意味不明なことを言い、その際、BSEを引き合いに出し、変異型クロイツフェルト・ヤコブ病を怖い怖いと騒ぎ立てて、牛肉を食べないのはナンセンスだと言わんばかりの発言をした。この人ほど、無責任な国会議員はいないと思う。こうして現実に、米国在住の男性が新たに、感染してしまっているではないか。

話はかわるが、ある雑誌記者に中外製薬は、「タミフルは完成品の状態でロッシュから仕入れ、日本では箱に詰めているだけにすぎず、カプセルに使うゼラチンの状態がどうであるかまでは関知できない」と答えたそうだ。私が聴いた話とはまったく異なり、中外製薬の狼狽のほどがうかがえる。

「日本からスイスにカプセルを持ち込み、薬を充填して持ち帰る。カプセルの原料として、以前は米国産ウシ由来のゼラチンを使用していたが、BSEが問題になって以降BSEが発生していない国を原産とするウシのゼラチンに切り替えた。ゼラチンにはアルカリ処理を施しているので、仮にBSE感染源が混入していたとしてもその段階でリスクは除去できる。」と、私の質問に対してコメントしていた中外製薬のこの豹変振りはいったい何なのだろう。

米国での検査(サーベイランス)の実態は勿論のこと、ウシの飼料あるいはレンダリングの状況を、日本政府はどこまで理解しているのか。医薬品についても、当事者である製薬会社の言うがままではないか。厚労省は、反芻動物由来原料の原産国を、BSE感染の報告のない国に切り替えるよう指導はしたもののその後のフォローもなく、結局は製薬会社の思惑通りに事は運んでいる。薬害エイズの教訓が、まったく生かされていない。リスクをはらんだままの見切り発車は、政府関係者の当事者意識が希薄であることに起因する。被害に遭うのは、いつも弱い立場にある国民なのだ・・・。

耐震偽造マンション問題は、社会のチェック機能が完全に崩壊してしまっていることを顕著にあらわしている。本来、チェックすべき立場にある人々が、まったくその役割を果たさなくなってしまっている。国会議員も例外ではない。心地よい椅子に、安穏と胡坐をかく議員は必要ない。私利私欲を追求する議員も必要ない。公正中立な社会の番人たる議員を、私たちは求めているのだ。「年金」に代表されるように、一般国民より国会議員のほうが優遇されているなんて、絶対におかしいのだ。
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ヒューザー・木村建設・イーホームズの全てがグル 11月24日

熊本県八代市の建設会社が、都内のマンションを建設すること自体に私は違和感を覚える。私がもし、新築マンションを購入するならば、大きな買い物だけに施工主は信頼のおける会社がよい。八代市では有名な会社なのかもしれないが、都心のマンションの建設を、何故、熊本県八代市の会社が請け負ったのだろう。

木村建設は、いち早く自己破産を申し立てた。要は、債務から逃げようとしているにすぎないのだ。耐震強度を偽造した姉歯一級建築士は、施工主であるヒューザーや木村建設からの圧力があったことを認めている。ヒューザーの小嶋社長は、テレビで何やら吠えまくっているが、氏の発言の一部始終に、残念ながらまったく共感できない。この人は、ふざけている。

今朝のみのもんたの番組に、小嶋社長が連れて出た犬山という人物は、くだんのマンションの住民であることをアピールした。が、実は、この人物こそが一連の事件の確信犯なのだ。犬山氏はヒューザーの取締役。そして犬山氏の兄弟は、住宅性能評価機関としてこれらの偽造建築物の設計施工をチェックしたはずのイーホームズの取締役なのだ。兄弟で、このでたらめマンションの建設にかかわり、利益を搾取していたということなのだ。

普通に考えれば、勿論、小嶋社長は全てを承知していたに違いない。テレビに出演して、いかにも被害者づらをして、何が何でも公的資金を獲得しようとする浅薄な言動には、正直虫唾が走る。都心の一等地に本社を構えるヒューザーは、おそらく、会社創設以来、類似の悪徳商法で荒稼ぎをしてきたに違いない。マンション購入者に対する全責任がヒューザーにはあるにもかかわらず、この上、公的資金すなわち国民の税金を獲得しようとする魂胆は、とことん卑しく社会の風上にも置けない。

国交省は監督責任を怠った負い目はあるだろうが、公的資金の導入ではなく、ヒューザーの財務状況を明らかにし、ヒューザーに損害賠償させることが本筋というものだ。自身の重みだけで倒壊の危機にあるマンションなんて、前代未聞だ。最初から承知の上でそんなマンションを建設販売したヒューザーの社会的責任は大きい。刑事罰を免れない。

木村建設も、逃げられると思ってはいけない。熊本地裁は、簡単に自己破産申請を受け入れるべきではない。そ上に上がっているすべての会社がグルなのだ。それら確信犯のために、公的資金を導入することは、ナンセンス。国が、住民の一時退避の手はずを整えることはしても、かかる経費を負担するのは、ヒューザーであり木村建設でありイーホームズであり姉歯氏なのだ。

この悪徳商法に引っかかった住民の方々は本当にお気の毒だが、特に不動産の場合、格安物件には必ず落とし穴があるものだ。しかし、こと人命にかかわる非常事態である以上、国は責任を持って売主に損害賠償させるよう、早急に手はずを整える必要がある。「民にできることは民に」と言っても、今回のように、結果としてそれが不正の巣窟になってしまったのでは本末転倒だ。イーホームズなどの住宅性能評価機関の評価体制を、いかに構築していくかが今後の課題だ。

ヒューザー・木村建設・イーホームズらグルの集団は、正直に悪事を認め、社会的制裁をあまんじて受けるべきなのだ。
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タミフルのカプセル 11月23日

新型インフルエンザのパンデミックな流行に備えて、タミフルはその特効薬とされ世界中の注目を集めている。現在、製造販売の権利を持つスイスのロッシュ社は勿論のこと、ラムズフェルド米国防長官をはじめ米国の政治家によるインサイダーが噂される、タミフルを開発し特許権を持つギリアド社の株価はうなぎのぼり。「新型インフルエンザ対策=タミフル」という構図の裏には、米国の国家戦略が見え隠れする。

タミフルの剤形は、子ども用のドライシロップ(顆粒のようなもの)と大人用のカプセル剤とがあるが、ゼラチンカプセルのタミフルは、そのゼラチンの原料を以前は米国産のウシに依存していたことがわかっている。タミフルの場合、日本のカプセルメーカーが製造したカプセルを中外製薬がスイスに持ち込み、薬を充填し日本に持ち帰るという方法をとっている。昨年のBSE騒動より以前は、米国産ウシをゼラチンの原料に使用していたが、BSE騒動をきっかけに、「BSEの発生した米国・カナダ・日本以外のウシに切り替えた」と中外製薬は公表している。更に、ゼラチン精製過程でアルカリ処理を施すので、仮にBSE感染源が混じっていたとしても、その段階でリスクは消えるとしている。

これに関して、2003年、抗HIV薬フォートベイスカプセルの改訂にともない、同社は次のようにコメントしている。
厚労省通知(平成15年4月14日付け)により医薬品・医療用具等へのウシ由来原料としての脊髄の使用が禁止された。ただし、低リスク国由来原料を使用しアルカリ処理したゼラチンは、その限りでないとされ、本剤は低リスク国であるアメリカを原産とする牛の脊髄を含む骨を原料とし、製造工程で酸処理を行ったゼラチンを使用している。EU委員会科学運営委員会では、酸処理とアルカリ処理との感染物質に対する除去率は、ほぼ同等と評価されている。加えて、同年8月に出された厚労省通知が示す安全ラインを本カプセルはクリアしていると判断する・・・
中外製薬はこのように述べ、その安全性を主張したのだ。

その後の平成17年3月31日の厚労省告示・生物由来原料基準 第4「動物由来製品原料総則」の1『反芻動物由来原料基準』によって、使用可能な原産国のリストから、BSEが発生したアメリカは除かれることとなった。しかし、反芻動物に由来する原料であってもアルカリ処理してあれば、その限りではないとされ、タミフルについては、米国・カナダ・日本以外の原産国(同告示に準じた原産国を使用しているとみなさざるを得ない)に切り替えた上に、アルカリ処理したゼラチンを使用しているので、BSEのリスクはないとするのが中外製薬の主張である。

当該厚労省告示では、同時に、品質及び安全性の確保上必要な情報が確認できるよう、
ア 原産国
イ 原材料を作成した年月日
ウ 原材料の由来となる反芻動物の飼育又はと畜の状況
エ 原材料について伝達性海綿状脳症を防止するための処理及び作業の経過
オ 原材料のロット番号
について、記録・保存するよう義務付けている。 アとウについては、トレーサビリティそのものであり、タミフルカプセルが、ゼラチンの原料を米国産牛からいつ切り替えたのか、その時期が重要なポイントとなる。更に、アルカリ処理すれば米国産牛を使用しても良いと解釈できるにもかかわらず、何故米国産牛の使用を中止したのか、確認すべき点は他にもある。

タミフルの製造には6~8ヶ月間を要するが、原料の精製過程を考慮するとタミフルが市場に出回るまでには、トータルで2~3年を要するそうだ。カプセルへの充填は最終工程だが、現在市場に出回っているタミフルのカプセルのトレーサビリティを知ることは、国民の安全の確保の観点からも厚労省に課された使命と責任であると私は考える。

英国に1日でも滞在した人の献血を禁止するくらい慎重な一面を持つ反面、医薬品や牛肉に関する規制にはあまりにも緩慢な日本政府。牛肉は消費者に選択の権利が残されているが、医薬品となるとそうはいかない。BSEは、変異型クロイツフェルト・ヤコブ病を発症すると脳症の果てに致死するという、重大なリスクをはらんでいる。医薬品に副作用はつきものだが、ことBSEに係る問題に関して、ベネフィットがリスクを上回ると単純に判断することはできないのだ。

政府の責任として、抗リウマチ薬エンブレルにしてもタミフルカプセルにしても、100%BSEのリスクのないことを証明することが必要だと私は考えている。天下り先である製薬企業の利益を優先するあまり、承知の上でBSEリスクを看過することは、薬害エイズに匹敵するくらい反人道的な行為であり政府の傲慢だと考えざるを得ない。安易に例外が認められ、例外がいつしか本流にならぬよう、リスクに厳格に対応する姿勢が、政府には求められるのだ。
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高橋尚子選手と徹底したBSE対策 11月20日

人々の心を揺るがすほどのほとばしるパワーで駆け抜けた高橋尚子選手に、私たちが感謝したい。高橋選手の走る勇姿は、私たちに大きな勇気を与えてくれた。体中からメッセージを発信しながら駆け抜けた高橋選手の味わい深い人間力が、よどんだ精神を綺麗にろ過してくれたようで、なんだか気分が高揚する。どんなに偉い人の一言よりも、高橋選手の走る姿は、私たちに多くのことを教えてくれた。高橋選手の一歩一歩が、それぞれの人々の心を、それぞれの形で揺さぶったに違いない。近年稀に見る、感動のレースだった。

さて、今月29日まで、食品安全委員会は広く一般からのパブリックコメントを募集しているが、アメポチ小泉内閣は、年内の米国産牛肉の輸入再開を事実上決めている。最近は、新聞をはじめメディアの情報が、少なからず政府によって操作されている。今日も識者とされる有名なコメンテイターが、「危険をはらんでいるのは、米国産牛肉だけではない。野菜だって危ないものはある。米国産牛肉についてさわぎすぎだ。輸入再開は妥当だ。」とコメントしていた。なんと無責任な発言だろう。日本国民の食の安全を、いったい何と心得ているのだろうか。見識を疑いたくなる。暗に、中国からの輸入野菜は、農薬にまみれていると認めているのか!?しかし、そんな中国野菜を食べたからといって、直ちに死ぬわけではないが、異常プリオンに感染した牛肉を食べ、変異型クロイツフェルト・ヤコブ病を発症してしまったら、人間は死ぬのだ。このコメンテイターは、薬害エイズの教訓を忘れてしまっている。

世界的な鳥インフルエンザの大発生は、鶏舎がいかに不衛生であるかを物語っている。「米国において、牛由来の肉骨粉、動物性油脂及び血漿たん白質を豚及び鶏に与えることは禁止されていないこと、養鶏残渣及び鶏ふんを牛に与えることは禁止されておらず、肉骨粉入りの飼料が混入している可能性があること、豚及び鶏に与えられた異常プリオンたん白質はふんとして排出され、それが牛に与えられる可能性があること、牛のSRM(特定危険部位)由来の肉骨粉及び動物性油脂が生産されていること、牛のSRM由来動物性油脂及び血漿たん白質を原材料とした飼料が牛に与えられる可能性があること、伝達性ミンク脳症及びシカの慢性消耗病の発生状況、それらの疾病に罹患したミンク及びシカがレンダリングされ、牛に飼料として与えられる可能性並びにシカの摂取歴のあるクロイツフェルト・ヤコブ病患者が存在することについては、食品安全委員会プリオン専門調査会において調査審議が行われている。」と、先の川内議員の質問主意書に対する答弁書には回答されている。これは、米国における飼料規制が非常に不十分であることを認める記述であり、この事実のみをもってしても、とても米国産牛肉が安全だと認めるわけにはいかない。

輸入が再開されたからといって、直ちに米国産牛肉を使用することはしないとする牛丼チェーンもある。政府のお墨付きさえ出れば、消費者の食の安全は二の次に、米国産牛肉を使用して儲けようとする牛丼チェーンとは、明らかにその姿勢に違いがあり評価できる。安くて美味しいにこしたことはないが、牛肉に限らず食材のクオリティは最重要だ。生産者のはっきりしない1個10円にも満たない鶏卵を、食べる気にはとてもならないご時勢なのだ。

私たち大人は、自ら選択するチャンスがあるが、強制的に学校給食を与えられる子どもたちの安全を守る責任は、いったい誰にあるのだろうか。先の総選挙では、食育をかかげ当選した料理研究家もいる。議員になったからには、その公約を全うすべく、100%安全なものだけが子どもたちの口に入るよう、給食現場のチェックを怠らないで欲しいものだ。少なくとも私は、現状では米国産牛肉を子どもたちに食べさせることには反対だ。これを機に、学校給食は地産地消を原則として、すべての食材のトレイサビリティを子どもたちに示し、郷土の農業の重要性を日々の食事からも学べるチャンスをつくって欲しい。

高橋尚子選手は、夢を持ち努力する権利は、すべての人々に平等に与えられていると訴え、人々に感動を与えた。米国産牛肉の問題も、適当になし崩すのではなく、輸入を再開するのなら、徹底的に米国と話し合い、米国でのBSE根絶のための十分な対策を要請し(勿論日本も、なお一層の対策の徹底を行う)、100%安全な牛肉が日本の食卓を彩るその日を、目指すべきだと私は思う。

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エンブレルに関する質問主意書回答 11月18日

川内博史議員が提出した「BSE問題に関する質問主意書」に対する政府答弁書が、今日、正式に回答された。取り急ぎ、抗リウマチ薬「エンブレル」に関する部分のみ紹介する。

三の(7)についての答弁

薬事法に基づく生物由来原料基準(平成15年厚生労働省告示第210号)においては、米国産の反すう動物に由来する原材料を医薬品等に用いることは原則として認められていないが、治療上の効果が当該原材料を用いることによるリスクを上回る場合等には、その使用が認められているところである。御指摘の抗リウマチ薬エンブレル(以下「エタネルセプト製剤」という。)については、その製造工程において米国産の子牛の血清が原料として用いられていることから、そのリスク及び治療上の効果について十分な検討を行い、使用者が伝達性海綿状脳症に感染するリスクは極めて低い一方、エタネルセプト製剤は既存の治療では効果が不十分な関節リウマチ患者に用いられるものであることから、その治療上の効果はリスクを上回るものと判断し、薬事・食品衛生審議会の意見を聴いた上で、平成17年1月19日に薬事法に基づく輸入承認が行われた。このような事例は他にも存在するが、これらについては、輸入承認を受けた事業者に対して、BSEが発生していない国を原産国とする原料への速やかな切替え、切替えがなされるまでの間における使用者に対する情報提供等を指導しているところである。

また、エタネルセプト製剤に係る輸入承認が行われた後、当該輸入承認を受けた事業者から、海外においてエタネルセプト製剤を投与中にCJDを発症した二症例についての報告があり、薬事・食品衛生審議会伝達性海綿状脳症対策調査会において検討を行ったところ、当該二症例がvCJD患者である可能性は非常に低く、国内での販売を見合わせる必要はないとの結論を得た。また、二症例のうち既に死亡している一症例については、脳の組織検査が行われたと承知している。

以上が、エンブレルに関する答弁の全文だ。特筆すべき真新しい記述はなく、これまで通りの厚労省の言い分だ。3月31日のブログに書いたように、本答弁の中でも承認の根拠とされている「薬事・食品衛生審議会」の意見というのが、実は決定的に怪しいのだ。この審議会のメンバーのうち5名は、先日、米国産牛肉の輸入再開にGOサインを出した「食品安全委員会プリン専門調査会」のメンバーなのだ。

「エンブレル」が日本で承認された後、ワイス社は、海外でエンブレルを使用した患者がクロイツフェルト・ヤコブ病を発症し死亡したと、重い口を開いた。この報告を受けて、「薬事・食品衛生審議会安全対策部会伝達性海綿状脳症対策調査会」が開かれるが、ご承知のように「米国産牛肉を食べるか食べないかは、消費者の選択だ」と暴言をはき、「科学的な根拠はないがリスクの差は非常に小さい」という結論を出したプリオン専門調査会のメンバーと一部重なる本調査会が、果たして公平公正な立場で、的確な結論を出したかどうかは甚だ疑問だ。

本調査会は、当のワイス社から提出された資料のみを根拠とし、エンブレルと変異型クロイツフェルト・ヤコブ病との因果関係は極めて低いと、あっさりと結論を出し、間髪いれず3月29日、「エンブレル」はついに日本で発売されることになったのである。答弁書の「リスク及び治療上の効果について十分な検討を行い」とは、いつ誰が行ったものなのか、もう一度ただしたい。発売当初ワイス社は、エンブレルを使用しクロイツフェルト・ヤコブ病を発症した2症例について、1症例は既に死亡しているため調査不可能であり、もう1症例は生存中なので脳の検査が出来ないと答えていた。その後の調査で、生存中の症例については、変異型クロイツフェルト・ヤコブ病ではないことが証明されたということか。また、とっくに死亡した患者については、脳の解剖が可能な状態にあったというのだろうか。答弁書の「脳の組織検査が行われたと承知している」との一文は、極めて玉虫色の表現だ

また、今回の答弁書からも明らかなように、依然として原料となるウシ血清は、米国産のものが使用されている。BSEが発症していない国に速やかに切り替えるよう厚労省から指導されているにもかかわらず、ワイス社にその姿勢は見えない。ワイス社は、エンブレルの安全性の確立よりも、利益の追求を優先しているのだ。いかに表現を曖昧にして売り上げを伸ばすか、それだけに終始しているように見えるのは私だけだろうか

牛肉の輸入再開で明らかになったように、「選ぶか選ばないかは消費者の判断」なのだ。少なくとも、米国産牛肉については、牛の肉骨粉が鶏の飼料となり、それが鶏糞や鶏舎のゴミを通して再び牛に戻ってくる現実をふまえると、到底安全とは言い難い。それでも、食べたら必ずvCJDを発症するなんて大抵の人は想像もしないから、ついつい安価な米国産牛肉に手が出てしまうのだ。

一方のエンブレルは、医療用注射薬だ。スーパーで牛肉を買うのとはわけが違う。医師は、エンブレルとBSEとの関係を正確に患者に伝え、患者の十分な同意のもと投与されることが望ましい。薬害エイズの二の舞にならぬよう、インフォームドコンセントの充実が必要不可欠だ。

エンブレルに関して初めて出された政府の公式見解は、予想通り、患者寄りというよりもワイス社(武田薬品)を正当化するものだった。この答弁の限りにおいて、エンブレルの安全性が確立されたとは到底見なすことはできない。ワイス社がエンブレルについてネガティブな資料を積極的に公表するわけがない。患者にとって、厚労省が最後の砦なのだ。ワイス社(武田薬品)の利益のために、患者に一か八かの賭けをさせることのないよう、慎重な対応が厚労省には望まれる。

今回、エンブレルの他にも、治療上の効果がリスクを上回るという理由で米国産ウシ血清を原料に使用している医薬品が存在することが明らかになった。それについても積極的な情報開示を求めていく。今回の答弁書を出発点として、更なる追及が必要だ。勿論、川内博史議員も、やる気マンマン。街角の薬剤師として、リウマチ患者のQOL向上を目指し、安心安全な治療薬の提供のために、決意を新たにする!

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タミフル国家備蓄戦略の真実 11月17日

タミフルが何故こんなにもてはやされるのか、ずっと不思議だった。世界には、リレンザやシンメトレル(A型インフルエンザのみ有効)という、それなりに効果的な抗ウイルス薬が、タミフルの他にも存在する。しかし、昨今の報道は、タミフルオンリー。今やインフルエンザの切り札として、神様以上に重用されるタミフルだ。

まだ流行もしていない今季のインフルエンザウイルスに対して、本当にタミフルが功を奏するかどうかなんて、正直まだわからない。ドンピシャリ当たる可能性もあるが、まったく効果がない場合だって十分に想定される。にもかかわらず、一にも二にもタミフル、タミフル。世界的なタミフルの大合唱に、浜六郎医師のみならず、首をかしげる識者は多いはずだ。

タミフルは、スイスの製薬会社ロッシュが製造販売元とされているが、正確に言うと、ロッシュが開発した医薬品ではない。タミフルを開発したのは、米国のギリアド・サイエンシズという感染症薬を主に開発するバイオテクノロジー企業だ。1996年、ギリアド社はタミフルを開発し、同年、タミフルのライセンスをロッシュに供与した。その後のタミフルの製造・販売の責任はロッシュにあるが、タミフルの特許そのものは、今でもギリアド社にある。今年6月、ギリアド社は、タミフルに関するロッシュとの開発・ライセンス契約を打ち切りたいとし、ロッシュの米国処方薬部門ホフマン・ラ・ロッシュ社に対して、契約解除を予告する通知を送っている。

ここ数年、家禽類に鳥インフルエンザが流行し、100名を超すヒトが、同ウイルスに感染し、すでに70名近いヒトが命を落としている。現在も鳥インフルエンザによる犠牲者の報道は絶えることなく、世界中が鳥インフルエンザの恐怖におののく一方で、唯一の特効薬ともてはやされるタミフルの売れ行きは、とどまるところを知らない。ロッシュのみならず、特許を持つギリアド社の株価もうなぎのぼりだ。ギリアド社が、タミフルの開発・ライセンス契約を、ロッシュから取り戻したいと思うのも当然だ。

実は、ここに、重大な事実が隠されていたのだ。米国防長官ラムズフェルド氏が、なんとギリアド社の株2,000株を所有していたのだ。今年に入りギリアド社の株価が急騰したまさにその瞬間、ラムズフェルド国防長官は、所有株の50%を売却し、なんと百数十万ドルの利益を得ているのだ。これぞまさしく、わかりやすいくらいに単純明快な、「インサイダー」そのものではないか。絶対にあってはならないことだ。

元国務長官シュルツ氏も、ギリアド社の役員。今年に入って既に700万ドル以上の株を売却している。前カリフォルニア州知事の妻も、ギリアド社の役員に就任・・・。2005年米政府は、兵士への配給分も含め、世界最大のタミフル購入者となった。エンブレルも顔負け!?タミフルほど政治色の強い医薬品もないだろう。しかし現在も、人口比率でみる世界最大のタミフル消費国は、何を隠そう日本なのだ。

確かに、シンメトレルは、A型にしか奏効しない上に古くから使用されているため、耐性ウイルスが少なくない。しかし、吸入薬であるリレンザは、剤形上、小児や高齢者に使いにくいという弱点を持つが、それ故に過去の使用頻度が少ないことから、むしろリレンザのほうがタミフルよりも効きが良い可能性が高いのだ。にもかかわらずタミフルだけが、国家備蓄という最大級の恩恵に預かる裏には、米国の限りない欲望が隠されていたのだ。

小泉政権はタミフルを国家備蓄すると決め、マスコミがタミフル需要をあおる。郵政民営化のときと、まったく同じパターンだ。明確な根拠のないまま、タミフルの売り上げだけが伸びる。腹をかかえて笑っているのは、ここでもやはり米国なのだ。

日本政府は、何よりもまずは家禽類の衛生状態の改善に取り組み、鳥インフルエンザが家禽類に蔓延しないよう手を打つべきだ。そして、クールビズのキャンペーン以上に、うがい・手洗いの励行を国民に訴え、通常のインフルエンザウイルスもさることながら鳥インフルエンザウイルスに感染しない努力を怠らないことが必要なのだ。

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ブッシュ大統領来日 11月16日

小泉総理とブッシュ大統領とが、真の信頼関係で結ばれているのなら、多くの人々が危惧する米国産牛肉の輸入再開問題や在日米軍再編問題について、小泉総理はすなおに日本国民の気持ちを伝え、ブッシュ大統領に理解を求めることが出来ただろう。しかし現実には、二人の関係は浅薄なものなのだ。仲良くふるまうパフォーマンスでは気があっても、外交の核心に触れる論議は、二人の間では忌避されている。

厳戒態勢で道路は大渋滞、地下鉄まで閉鎖され、京都市民は窮屈な一日を余儀なくされた。今更、ブッシュ大統領夫妻のお茶目なパフォーマンスを見せられても、日本国民はまったく感動しない。それどころか、BSEのリスクを完全に除去しないまま日本への牛肉の輸出再開を強行しようとする米国の態度は、日本国民への最大級の侮辱だ。米国の高所得層の人々は口にしない牛肉を、米国は日本人に押し付けようとしているのだ。日本の消費者の疑問の声を排除して、年内の輸入再開を目指す日本政府の政治家や官僚でさえ、実際には当該米国産牛肉を口にすることはないかもしれない。何故なら、100%安全な牛肉ではないからだ。

「安全だと解釈して買うか、安全を疑問視し買わないかは、消費者の選択だ」と言い放った、食品安全委員会プリオン専門調査会の吉川座長の言葉が印象的だ。これは「食べる」ことを選択する人の言葉ではない。

ブッシュ大統領は昨日、「日本が米国産牛肉を安全だと認めてくれた」と表現したが、それは間違っている。しかし小泉総理には、日本国民にとって、そんな大切なポイントを指摘し正す意志は毛頭ない。在日米軍再編問題についても小泉総理は、「関係自治体は、米国の要請を黙って受け入れるべきだ」とブッシュ大統領を前に発言した。日米協力の重要性を、否定する日本人はいないだろう。しかし、日米同盟にプライオリティを置くあまり、例えば沖縄の人々の耐え難い精神的苦しみを更に土足で踏みにじるような対応が、許されて良いはずがない。

小泉総理のブッシュ大統領に対する態度には、日本人としての尊厳はない。靖国神社参拝を強行しアジア諸国と敵対することは、日本人の尊厳を示すことには決してならない。単なる「わがまま」だ。外交的には、米国からも評価されない巻き返しに時間のかかる愚かな行為なのだ。米国は、米国だけが良ければそれで良いのだ。小泉総理は、多くの日本人の意志に反してアジアと敵対し、米国のために日本人を犠牲にする、最悪の暴君総理大臣だ。毎日、高級料理に舌鼓を打ちオアシスに暮らす小泉総理に、庶民の心と生活に、思いを馳せる能力など備わっていない。ポスト小泉によって、この先何年も小泉路線が継続されることは、日本の国益に反することになるのだ。
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