私が調査員になって数年がたった頃、当社にも新入調査員がやって来た時の事です。
「はじめまして、調査員のTです」
「はじめましてFです。これから頑張りますので宜しくお願いします先輩」
私は初めて「先輩」と呼ばれて嬉しくて舞い上がりました。
「俺もまだまだわからない事が多いけど、分からない事があったら色々と聞いて下さい」
初めて先輩面して言った言葉です。
「F君こっちへ来てくれ!打ち合わせをするから」
Fはボスに呼ばれました。
それから数時間後、襟取り(下調べ)を終えた大先輩であるMさんが帰って来ました。
「お疲れ様です」
私より先に新人調査員Fが声をかけたのです。
<ちくしょう やるなぁ。俺が新入調査員で初めてMさんに会った時は、緊張して挨拶もろくに出来なかったのに>
「M君お疲れさん、ちょっと・・・」
ボスが大先輩のMさんと何か話をしました。
「F君今からM君と一緒に襟取りに行って来てくれ」
「はい、わかりました。」
初々しい声です。
<Mさん帰って来たばかりなのに、どうしてボスは俺に言ってくれないんだろう?>
「ボス、私が行って来ましょうか?」
「いや、いいんだ。それよりお前あのFと云う男は絶対にキレるぞ、話しててわかった。お前も気をつけろ。」
私は嫉妬しました。
<そんなにデキる奴なのかまぁすぐには無理だろう・・・。俺だってここまで出来る様になるまで数年かかったんだから>