シークレットリサーチの探偵日記

総合探偵社シークレットリサーチの調査員達の日記です。

浮気調査 Part4 その58

2008-01-30 05:15:36 | 調査員Kの日記
 俺はミナミの喫茶店で、田村礼子が来るのを待っていた。
少し遅れて礼子が店に入って来た。既に、夜の仕事に出勤する服装である。
「今日はこのまま同伴してよね
「はっ・・・・・・ああ・・・別にかまわないけど・・・」
「そう良かったちょっと儲かっちゃった」

礼子が微笑んだ。
「Kさん・・・私・・・奥さんに会わせてもらえますか・・・会ってお詫びしたいの・・・あの人に奥さんが居たなんて・・・知らなかったとはいっても、やっぱりこうなった以上は・・・大人としてはね・・・」
「そ・・・そうか・・・分った。それじゃぁ、いつが良い
「お任せします。奥さんの都合に合わせます」
「分った。それじゃぁ・・・先方に連絡して決めとくから」
「ヨロシクねっ」
「・・・大丈夫なのか・・・本当に・・・」
「勿論大丈夫よ私・・・強いから・・・もう若くないし・・」

礼子がまた微笑んだ。
俺は礼子の心が読めるような気がして、胸が痛い思いだった。
「塩崎には話したのか
彼女は首を横に振った。
「奥さんに会ってからにしようと思って・・・その方が踏ん切りがつき易いかなって・・・だから、昨日も電話に出なかった・・・」
「・・・そうか・・・」

どこか妙に寂しい会話である。
「それじゃぁ、今からご飯に連れてって
「おっ・・・おお・・・行こうか」

俺はその日、彼女に「てっちり」を奢らされた。その上、同伴出勤。
<これって・・・経費出してもらえるのかなぁ・・・?ちょっと・・・無理かな・・・?>

浮気調査 Part4 その57

2008-01-28 09:29:28 | 調査員Kの日記
 店を出た俺は、今夜礼子に電話するべきかどうか迷っていたが、明日まで待つ事にした。
帰り際に、俺の携帯電話の番号を礼子に渡してある。落ち着いたら、彼女の方から連絡があるかもしれない。
俺はタクシーに乗り込み帰宅した。

 次の日、BOSSに報告を済ませ、別の調査結果報告書を作成していた。
その日の夕刻・・・そろそろ、田村礼子に連絡しなくてはと思っていた時、俺の携帯が鳴った。
彼女・・・田村礼子からだ。
「おはよう・・・Kさん・・・」
声は嗄れてはいたが、思ったより元気そうな声だった。
「おはよう
「今日・・・私が店に行く前に、時間ある
「悪い・・・今日はちょっと・・・明日なら・・・」
「そう・・・それじゃぁ・・・明日5時にミナミでどう
「分った・・・17時だな・・・必ず行くから」
「うん・・・それじゃぁね・・・バイバイ
<良かった・・・昨日の今日だから、少し心配だったけど・・・少しふっ切れたのかなぁ・・・空元気じゃなきゃいいけどな・・・>

俺は礼子と会う事をBOSSに報告した。

浮気調査 Part4 その56

2008-01-26 09:52:37 | 調査員Kの日記
 30分も経ったであろうか、礼子がトイレからやっと出て来て俺の居るテーブルに就いた。
すかさずママが尋ねる
「礼子ちゃん大丈夫
「ごめんなさい、ママ・・・全然平気よ」
「そう・・・それならいいんだけど・・・」

ママが、そう言いながら俺の顔を盗み見た。
「もう一回乾杯しよっねっKさん
「うん・・・」

礼子は泣いた後に化粧を直してきたのであろうが、瞼が腫れている。
俺は乾杯をした後、礼子の気持ちを考えると何も言えなくなっていた。
礼子はというと、自分で忘れたいのか、逃げ出したいのか、気を紛らわせようとしてはしゃいでいるのである。
「それじゃぁ・・・礼子ちゃん・・・後はよろしくね」
そう言ってママはカウンターの中へと戻って行った。

俺は依頼者が会いたがっている事をどうするのか、尋ねる事を迷っていた。
その時、礼子が俺に黙って一枚のメモを渡した。
携帯電話の番号。
俺は素早くそれをポケットに仕舞おうとした。
それをママと入れ替わりにやって来た、ゆうかに見られた。
「あ~っそんな事してる~じゃぁ私のもあげるね
そう言って、ゆうかも自分の携帯電話の番号をメモに書いて俺に渡した。
「Kさんメールしてよねっ
メモにはメールアドレスも書いてあるのであろう。
「お・・・おう・・・何か・・・急にモテだしたなぁ・・・俺・・・」
<こんなの持って帰れる訳ないじゃないか・・・考えただけで恐ろしい・・・自殺行為だ・・・>
その時俺の頭の中には、妻の顔が浮かんでいた。

浮気調査 Part4 その55

2008-01-24 05:29:10 | 調査員Kの日記
「塩崎さんの事って
「本人から何も聞いてないのか
「何も・・・どんな話
「えっ
<やっぱり・・・別れたなんて嘘ついてたんだ・・・>
「今日、店が終わってから時間ある
「あるけど・・・でも気になるから今話して」
俺はどうしようか迷った。
話した結果がどうなるか想像できた。
「冷静に話せる
「大丈夫よ・・・どんな話


俺は今までの事を全て礼子に話した。
そして、依頼者が会いたがっている事も・・・。
礼子は俺の話を黙って聞いていた。
俺が話し終わる頃には、俯いて涙を拭っていた。
カウンターの奥から、ママが心配そうにこっちを見ていた。
「本当なのね?・・・その話は・・・」
「うん・・・本当の話だ・・・」
「あなたたち・・・本当に探偵さんだったのね・・・」
「うん・・・」

その時、ママがやって来た。
「Kさん・・・どうしたんです・・・ダメじゃない・・・礼子ちゃん泣かしたら・・・大丈夫・・・礼子ちゃん・・・」
ママが礼子の肩にてを当てて、顔を覗き込んだ。
「ゴメンゴメン・・・そんなつもりじゃなかったんだけど・・・」
礼子が席を立ち、トイレへと向かった。

「本当に何があったの
「いや・・・別に・・・」
「ウチの大事な女の子なんだから、いじめちゃダメよ
「ゴメンゴメン・・・もうしないよ・・・」
<今日はもう依頼者と会うかどうか、話せないなぁ・・・>

浮気調査 Part4 その54

2008-01-22 09:34:43 | 調査員Kの日記
 田村礼子(仮名)と目が合った。彼女は微笑んで軽く会釈した。
<?!・・・何か様子が変だ・・・ひょっとして、塩崎(仮名)から俺たちの事を聞いて無いのか・・・>

 暫らくして、礼子が俺の席にやって来た。
「いらっしゃい・・・今日は一人なのね・・・」
そう言って、礼子は自分の水割りを作り始めた。
「うん・・・今日はちょっと礼子ちゃんに話しがあって・・・」
「え~・・・私に・・・何だか怖いなぁ・・・どんな話
「塩崎の事で・・・」
・・・塩崎さんの事

礼子は豆鉄砲を喰らったような顔をしていた。
それはそうであろう。どうしてこの俺が塩崎の事を知っているのか、彼女には分らないはずである。

そこへゆうかが、口を挟んだ。
「Kさんダメですよそんなズルイ事したら・・・塩崎さんの悪口でしょ告げ口なんて見っとも無いですよ・・・礼子さんの事が好きなら、正々堂々としなくちゃ・・・」
「ゆうかちゃん、違うんだ・・・そうじゃないんだ・・・悪いけど、ゆうかちゃん席を外してもらえないか
「え~っ何よそれ~っ

ゆうかが、礼子の顔を見た。礼子がゆうかに頷いた。
それが合図のように、ゆうかがまたふてくされた顔で去って行った。


浮気調査 Part4 その53

2008-01-20 07:29:45 | 調査員Kの日記
 数日後。依頼者より連絡があり、塩崎が礼子と別れたと言っているが、それを確認したいと言うのだ。その確認方法とは、やはり田村礼子と会って話がしたいとの事だった。
 
俺は依頼者内容証明による方法を薦めたのだが、どうしてもという事だった。
ただ、セットはしてみるが彼女が会うかどうかは分らないと告げた。

その日の夜。俺は”ハニーB”に出かけて行った。
「いらっしゃいませ~あれっ今日は一人
ゆうかが出迎えてくれた。
俺は一人であるにも関わらず、ボックス席へと通された。
「礼子ちゃん呼んでくれる
「もうっKさんたら・・・礼子さん礼子さんって・・・私が居るのに~

ゆうかが少しふてくされた顔で言った。
「ゴメンゴメン・・・後からでいいから・・・」
<そうだな・・・そんなに焦る事は無いだろう・・・>

俺はゆうかを相手にくだらない会話をして、田村礼子が来るのを待った。

浮気調査 Part4 その52

2008-01-18 05:22:27 | 調査員Kの日記
「塩崎(仮名)さん・・・どうするんだまだこのまま悪態をつくのかそれとも・・・反省して、きっちりと奥さんといい方向に話し合うのか・・・その前に、奥さんを殴った事を謝罪しろ今この場で・・・」
塩崎本人は目線を落として、難しい顔をしていた。
BOSSも少し冷静になったみたいだった。
また・・・沈黙が続いた。

「悪かった・・・許してくれ・・・」
塩崎が小さな声で呟いた。依頼者には聞こえていないようだ。
「俺が悪かった・・・許して欲しい・・・」
塩崎はそう言って、両手で顔を覆った。

「奥さん・・・後は二人で話し合う事ができますかそれとも弁護士を紹介しましょうか
依頼者は俯いたまま、首を横に振った。
「それじゃぁ・・・どうなさいます
依頼者は俺たちに、話し合いに同席して欲しいと言った。
「私どもは構いませんが・・・お二人の方がいいんじゃありませんか
しかし、依頼者は俺たちに居て欲しいと言った。
<本人が今、素直になっているみたいだから二人の方が話しやすいと思うけど・・・やはり殴られたショックかなぁ・・・>

それから話し合いが始まった。
塩崎は田村礼子(仮名)と別れるから、一からやり直して欲しいと言った。
しかし、依頼者は頑として礼子に会いたいと・・・それからだと・・・。
BOSSはそれを停めた。
彼女・・・田村礼子も可哀想な立場なのだと。
何故、そこまでして礼子に会いたいのかは最後まで訊く事は出来なかった。

結局、その日は結論が出なかった。
少し時間が欲しいと言う、依頼者の言葉で話し合いは終了した。
依頼者は、早々と席を発って行った。
塩崎は俺たちに「悪かったなぁ・・・」そう言って出て行った。

俺はBOSSを見た。
「帰ろっか・・・アイツ・・・勘定をしやがらなかったな・・・」
俺は少し笑えた。
「いいじゃないですか
「何か・・・損した気分だ・・・」

BOSSがボヤキながら席を発ち、俺たちは店を後にした。

浮気調査 Part4 その51

2008-01-16 05:20:39 | 調査員Kの日記
「奥さんあなたの言っていた様に田村礼子(仮名)に会わせてあげますよ
塩崎(仮名)の顔色が、サッと青ざめるのが分った。
「お前何いってんだだから・・・礼子は俺に相談してたんだよ
BOSSが塩崎を睨んだ。
BOSSの怒りが頂点に達したような・・・。
「Kテープ出せ
「えっ
「テープだあの日・・・コイツと礼子の会話のテープ礼子の部屋でのな
<?!本当に・・・出しちゃっても・・・いいのかなぁ・・・?>

塩崎は驚いた様な顔をしていた。
そんな物が本当にあるのか・・・というような・・・。
「そんな・・・ものが・・・あるわけ・・・」
「私たちはプロの探偵ですからね・・・」

俺はBOSSに言われた様に、あの日に録音した本物のテープをテーブルの上に置いた。
小型のプレーヤーも一緒に。
出かける前に、BOSSから持って来るようにと指示されていたのだ。
また塩崎の顔色が、更に青くなった。
「・・・・・・」
「どうします塩崎さん・・・これをここでお聞かせしましょうか
「・・・・・・」

BOSSは本当にこのテープを塩崎に聞かせても構わないと思っているのであろう。
<ちょっと・・・やり過ぎじゃないですか?・・・BOSS・・・>
俺はBOSSの顔を見た。
BOSS「分っている大丈夫だ」という様に、俺に向かって頷いた。
依頼者は俯いたまま、泣き続けている。
沈黙が続いた。


浮気調査 Part4 その50

2008-01-14 08:29:33 | 調査員Kの日記
「あっ・・・どうもです・・・」
「こんにちは・・・えっ・・・今日はどうされたんですか
「俺が呼んだんだよお前らに説明してもらおうと思ってな」
「何を説明するんですか報告書の説明ならこの間しましたよね・・・奥さん・・・」
俺は依頼者の顔を見た。
<えっ?!>
依頼者が俯く。
「もう一度ゆっくり説明してくれや俺のいる前で・・・」
俺はBOSSの方を見た。BOSSは俺に頷いて椅子に座った。
俺もそれに合わして席に着いた。
依頼者である奥さんも、マル被の横の椅子に座った。
依頼者の正面に座った俺は、もう一度その顔を覗き込んだ。
「・・・奥さん・・・その顔・・・どうされたんですか
思わず声が出ていた。
俺の言葉に反応して、BOSSも覗き込んだ。
「どうしたんですか
依頼者は俯いて泣き出した。
依頼者の顔が紫色に腫れていたのである。

「お前・・・殴ったのか
「はぁお前らには関係無いだろ身内の事だ
「俺はお前が殴ったのかって訊いてんだ

とうとうBOSSがキレてしまったようだ・・・。
「お前・・・それでも刑事かこれは明らかに傷害事件じゃないか答えろ
「うるせーって言ってんだろお前には関係ないって言ってんだろ
「奥さん・・・こんな奴・・・訴えましょう・・・浮気はするは・・・暴力は振るうわ・・・最低な奴だ
「何ぃ俺は浮気なんかして無いって言ってんだ
「その吐いた唾を飲み込むなよ
「おう

BOSSがキレた事で、俺は少し冷静になる事が出来た。
<しかし、今日のBOSSはキレ過ぎてる・・・言ってはいけない事を・・・バンバンと・・・>


浮気調査 Part4 その49

2008-01-12 09:13:23 | 調査員Kの日記
 塩崎(仮名)は、そうとうアツくなっている様子だった。
「塩崎さん・・・そんなに大きな声を出さなくても、ちゃんと聞こえてますよ」
俺はぶっきらぼうに、塩崎にぶつけてやった。
「何ぃ
「塩崎さん・・・私たちは嘘の報告書を書く事は出来ませんそれだけです・・・もうこれで失礼させて頂いてもいいですか
「お前ら・・・本当にそれで済むと思っているのか
「済まなかったらどうするんですか
「絶対に叩き潰してやる
「脅迫ですか
「脅迫かどうかはお前らが考えろ
「話にならない・・・」
「お前ら覚悟しておけよ
「いい加減にして下さいよあなたは自分のしている事を棚に上げて、何を言ってるんですか身から出たさびでしょ・・・」
<まずい・・・BOSSもアツくなりすぎている・・・>
「もういい帰るぞ

そう言ってBOSSが立ち上がろうとした時だった。
後ろに依頼者、つまり塩崎の奥さんが立っていた。