シークレットリサーチの探偵日記

総合探偵社シークレットリサーチの調査員達の日記です。

2009-10-30 07:00:00 | 調査員Mの日記
 先日、友人の1人が尋ねて来た。相談があると言うのだ。
その相談の内容とは、年甲斐も無く好きな女性が出来たと言うのだ。
それで「この気持ちをどうしたらいいか・・・」という事だった。
「あのなぁ・・・俺は探偵やぞ・・・分ってるんか探偵
私は心理学者でもなければ、カウンセラーでもない。
まぁ、相談の内容が、ストーカーみたいに私に嘘をついて”その相手の女性の事を全て調査してくれ”という事ではなかったのが救いではあるのだが・・・。
その友人には、家族があり、奥さんも子供もいるのだ。
「お前にしか、こんな話でけへんやんけ・・・」
「そんなら、止めとけ・・・不倫なんか・・・」


その相手の女性は、トビッキリの美人(べっぴん)でも、トビッキリのスタイルでもないらしい。
ただ、明るく、気立てが良いらしい。
友人も最初のうちは、そんな思いはなかったらしいのだが、いつからか、気になって夜も眠れなくなってしまったという事だ。
完全にのぼせ上がっているらしい。
「駆け落ちでもしてみたらと、私が冗談で言ってみたのだが、「そんな事は出来るわけが無いだから悩んでるんやと怒り出すしまつである。
本人は、家庭を壊したくはないという気持ちは持っている様だ。だから悩んでいるらしいのだが・・・。

「それで、相手の女性とは何回くらい
「何回って・・・何にもないよ・・・」
「何にもないって・・・お前・・・ひょっとして・・・ただの片思い・・・とかと違うやろなぁ
「まだ、告白とかしてないし・・・」
「はぁ・・・告白ぅ・・・何が家庭は壊したくないじぁ・・・何も始まった訳でもないやないか
「せやから言うてるやないかこの俺の気持ちをどうコントロールしたらええのかって
「そ・・そうか・・・」

私は、相手の女性と交際でも始まりかけてるのかと思っていたのだが、どうやら本当に片思いだけのようだ。
<全く・・・こいつは・・・中学生の相談か・・・>

「そのままで、ええんとちがうんか人を好きになるって事は悪い事やないと思うし、年も関係ないやろう・・・仕方ない事やんけ・・・それに、お前がしっかりしてたら間違いもないやろうし・・・お前は今の気持ちが嫌なんか
「いや・・・嫌やない・・・」
「そしたらその話は、ただの自慢か
「そんなつもりは・・・心が苦しいねんやん・・・」

考えてみれば、羨ましい話である。
私は、ここ数十年そんな気持ちになった事がない。先に下心が勝ってしまっていたような気がする。

苦しんで・・・飲み過ぎて・・・二日酔いになって・・・。
浮かれて楽しんで・・・また飲み過ぎて・・・また二日酔いになって・・・。
<そんな気持ち・・・忘れてたなぁ・・・>

皆さんはどう思われます



不倫 Part3 その15

2009-10-28 07:00:00 | 調査員Sの日記
 中田(仮名)さんは申し訳なさそうな顔を落として、黙ったままでした。
「Sさん・・・これで私の話は終わりました。ありがとうございました」
「いえ・・・伊藤(仮名)さん・・・本当にこれでいいんですか
「何がですか
「いや・・・その・・・」
「私は話が出来ただけでいいんです。これからの事はゆっくりと考えていきます」
「ゆっくりと・・・ですか
「はい。焦って結論を出してもろくな事にはなれへんでしょう。今までの事からこれからの事をゆっくりと考えていきますよ」
「分りました・・・またご連絡します」
「それじゃぁ・・・私はお先に・・・」

伊藤(仮名)さんは、中田(仮名)さんには声もかけずに帰って行きました。
伊藤(仮名)さんは何を思い、何を感じたのでしょうか。

席に残った中田(仮名)さんは、テーブルの上のコップを見つめて何かを考えている様子でした。
「アホやったんやなぁ・・・俺・・・」
「・・・・・・」
「一瞬でも、一緒になりたいと思った俺は、ホンマにアホやったんやなぁ・・・何をやってたんやろう・・・俺も家族、居るのに・・・」
「・・・・・・」

私は何も言う事が出来ませんでした。

しばらく沈黙が続いた後、中田(仮名)さんが私に言いました。
「伊藤(仮名)さんの奥さんとは、ちゃんと別れます・・・ホンマにすいませんでしたって、伊藤(仮名)さんにもう一回伝えといてもらえませんか
「分りました」
「私がこんな事をしてしまって、こんな事言うのもなんなんですけど、奥さんとは離婚はしないで下さいって事も・・・言うてもらえませんか
「分りました」
「そしたら・・・私も帰ります・・・今日はすいませんでした・・・もし、私にも何か相談したい事が出来たら、電話してもいいですか
「はい。私でよければ・・・」
「そしたら、ここで失礼します」

中田(仮名)さんは肩を落として帰って行きました。
私はその寂しそうな姿を見送った後、君の方を見ました。

それを見た君は、ビデオカメラの入った鞄を持って私に近づいて来ました。
「お疲れ様です・・・結構、長かったですねぇ・・・」
「うん・・・カメラ大丈夫やった
「大丈夫ですよ・・・それより、どんな話してたんですか
「長くなるから録音でも聞いて・・・」
「はい・・・Sさん・・・何か元気ないですねぇ
「そうか・・・ちょっと疲れたんかなぁ・・・さぁ、帰ろ
「了解です

私は何かやるせない気持ちで一杯でした。

私には伊藤(仮名)さん、中田(仮名)さんたちが、これからどうしていくのかは分りません。
しかし、出来る事であれば、少しでも元の平穏な生活に戻って欲しいと願ってます。
やはり、不倫は重たい代償が付いてくるんやなぁ、と思いました。

不倫 Part3 その14

2009-10-26 07:00:00 | 調査員Sの日記
 伊藤(仮名)さんは一度俯いてから顔を上げて、中田(仮名)さんを見ました。
「分りました。これでもう結構です」
「えっ
「もういいですよ・・・帰っていただいても」
「あのぅ・・・私から言うのもおかしな話なんですけど・・・慰謝料とかは・・・どれくらい・・・」

伊藤(仮名)さんが、『ん?』という様な顔をしました。
「お金の事なんか、考えてません・・・あなたの奥さんが、私の妻から慰謝料を取ったら同じ事やし・・・」
それを聞いて、中田(仮名)さんが呟く様に言いました。
「それやったら・・・私はどうしたらええのか・・・」
「どうしたらええのかは、自分で考えて下さい・・・妻と関係を続けるのも・・・別れるのも・・・」
<えっ!?なっ・・・なっ・・・え~っ!?>

私は伊藤(仮名)さんの言葉に驚いて、伊藤(仮名)さんの顔を見ました。
そして次に中田(仮名)さんの顔を見ると、首を傾げてやはり驚いた様な顔をしていました。

「そんな・・・続ける事は出来ませんよ・・・伊藤(仮名)さんから、今日の事は話したらアカンと聞かされてましたからまだ話してませんけど、明日にでも話しするつもりでした・・・勿論、私の嫁にも全部話して、今後の事を考えようと思ってます・・・もし、1人になっても自業自得やと思ってますから・・・皆、巻き込んでしまって・・・」
伊藤(仮名)さんは少し間をおいて、優しい顔で言いました。
「まだ・・・皆やないですよ・・・奥さんには黙ってた方がええ・・・あなたが私の妻と一緒になろうと思ってへん限り、言わん方がええ・・・」
「そ・・・それでは私の気が・・・」
「奥さんや家族まで巻き込まんでもええでしょ
「でも・・・」
「分りました・・あなたは私に本当に申し訳ないと思ってはるんでしょ見ていてもよ~分ります・・・それで・・・どうしたらええかと・・・
「はい・・・」
「それやったら、示談の内容は 『あなたは、あなた自身の家族を巻き込まない』 という事にしといて下さい。これ以上辛い思いをする人を増やしたくない。勿論、会社を辞める事も許しません。あなたが、もし、会社にいる事が辛いと思うんやったら、それは自分が犯した罪滅ぼしやと思って下さい」
「・・・・・・」
「それで・・・私の妻が納得せ~へんかったら、私に言うて下さい」
「そういう訳には・・・」
「納得出来ませんか私はそうして欲しいんやけど・・・」
「・・・・・・」

中田(仮名)さんは言葉を失っている様子でした。
私は、何だか伊藤(仮名)さんの考えてる事が、少し分らなくなってきました。
<どういうつもりなんやろう?・・・このままでも、終わらせてもええけど、家族には内緒にしとけって事やなぁ・・・そんでも、別れやんでもええって・・・どういう事なんやろうなぁ?・・・伊藤(仮名)さん、やっぱりそういう趣向があるんかなぁ?・・・考えが深い(?)人なんかなぁ?・・・>

不倫 Part3 その13

2009-10-16 07:00:00 | 調査員Sの日記
 話が始まってから、2時間くらいが経過しました。
中田(仮名)さんが本当に伊藤(仮名)さんの奥さんを好きになった事から、2人のSEXの内容まで・・・。
中田(仮名)さんは、伊藤(仮名)さんに訊かれる事を全て話していました。
<せやけど・・・伊藤(仮名)さん・・・自分で聞いてて腹立てへんのやろか・・・そう言う趣味って事やないやろなぁ・・・>
しかし、伊藤(仮名)さんは、真剣に中田(仮名)さんの話を聞いていました。
まるで、何かを探しているように・・・。

「あなたは自分の奥さんの事は、愛してなかったんですか
「いいえ・・・そんな事はありません・・・」
「家族としてやないですよ
「そう言われると・・・家族として愛してるんでしょうか・・・」
「女としては、もう見られへん奥さんとSEXはしないんですか
「最近は・・・」
「そうなんですか・・・いつから
「伊藤(仮名)さんと付き合い出してからでしょうか・・・」
「そうですか」

伊藤(仮名)さんが、上を向いて何かを考え始めた様子でした。

「変な話ですけど、お金は会ってる時はどうしてたんですか
「どう・・・と言いますと
「割り勘やったとか、あなたがいつも出してたとか、妻が出してたとか・・・」
「いつも、割り勘でした・・・」
「そらぁ、あなたにも家族が居るし、食べさせていかなアカンもんなぁ・・・」
「すいません・・・」
「それは謝られても、私も困るわ・・・何で妻の分まで金出せへんかったんやって怒るのもおかしいでしょ
「は・・・はい・・・」

<ごもっとも・・・不倫の方を怒らなアカンねんから・・・>

「最後にもう一つ訊きたいんやけど・・・私の妻の写真はありますか一緒に写っている写真・・・」
「携帯にありましたけど、もう消去しました・・・昨日・・・」
「それは、どんな写真やったんですか
「どんなって・・・食事してた時の写真とか・・・」
「ベッドでの写真は無かったんですか
「・・・いえ・・・ありました・・・」
「それは、最中の
「最中・・・
「SEXの最中の物やったんですか
「いいえ・・・違います・・・」
「その時は裸で妻は笑ってましたか
「・・・はい・・・でも、布団は被ってました」
「私の妻の携帯で写真は撮らへんかったんですか
「いえ・・・撮りました・・・」
「そうですか・・・妻の携帯にもあるんですね・・・」

伊藤(仮名)さんは、ウンウンと2度頷きました。

不倫 Part3 その12

2009-10-14 07:00:00 | 調査員Sの日記
「あなたと居る時、妻は笑ってた勿論、楽しかったやろうと思うねんけど・・・」
「・・・はい・・・でも・・・最近は・・・」
中田
(仮名)さんは俯いたまま、首を横に振りました。
「最近・・・は
「別れ話する様になって・・・それからは、あまり笑ってる顔を思い出せません・・・」
「えっ別れ話・・・どっちからいつ
「2週間ほど前やったと思うんですけど・・・私の方からです・・・自分勝手な事なんですけど・・・私も随分・・・というより・・・伊藤(仮名)さんとお付き合いするようになってから、毎日悩んでました。このままやったらアカン・・・とか・・・ご主人を前にしてこんな事言うのは何なんですけど、皆、捨ててしもうて、2人で暮らそうとか・・・毎日悩んでました・・・」
「それは、SEXだけやなくて、ホンマに妻の事を好きやったという事なん
「自分自信でも、その事は考えました・・・どうなんやろうって・・・」
「それでどう・・・
「・・・・・・」
「妻にその事はしゃべってないん
「冗談っぽく、何回か言いました・・・」
「妻は何て
「・・・・・・」
「ハッキリ言うて下さいよ
「このまま・・・この関係でええやんって・・・ややこしくなるからって・・・」

伊藤(仮名)さんがコップの水を飲み干しました。

「それは・・・妻の方がSEXを求めてるという事
「・・・・・・」

私が聞いた昨日の喫茶店での2人の話は、そういった事を含んだ話もありました。
最初はどうであれ、昨日の時点では奥さんの方が・・・。
「中田(仮名)さん・・・ハッキリ答えてくれへんかなぁ・・・今後を考える上で、私には大事な事なんやから・・・」
<だから怖がってると思うんやけど・・・>

私の想像では、中田(仮名)さんは伊藤(仮名)さんの奥さんの事を心配してるんだと思うのです。
出来れば元の鞘に戻れたら、と思っているんじゃないかと思いました。
「確かに私は、今、物凄く悔しい思いをしてる。それでも、全部聞かんとこれからの事を考えられへん・・・だから聞きたいんや・・・ちょっと言葉が荒っぽくなってるんは、自分で分ってる・・・でも聞きたい全部・・・」
「奥さんが私を求めてるかどうかは、私には分りません・・・ただ、一緒に居ったら楽しいからとは言うてました・・・」
「そらぁ、そうやろう・・・楽しくなかったら一緒には・・・・・・・」

伊藤(仮名)さんが突然、黙ってしまいました。
何かを思ったのでしょう。今度は伊藤(仮名)さんが俯いてしまいました。

しばらく、沈黙が続いたのですが、私は伊藤(仮名)さんが気になって声をかけました。
「大丈夫ですか
「はい・・・すいません・・・中田(仮名)さん・・・もうちょっと訊いてもいいですか
「はい・・・私には断れる理由が無いですから・・・」
「無理にやなくて・・・難しいかもしれへんけど、アンケートにでも答えるつもりで話してもらわれへんやろか
「とんでもないです・・・きちんと答えさせていただきます」

また、伊藤(仮名)さんが話し始めました。

不倫 Part3 その11

2009-10-12 07:00:00 | 調査員Sの日記

「最初に・・・キッカケを知りたい・・・こうなったキッカケを・・・」
伊藤
(仮名)さんが中田(仮名)さんの目を見据えて言いました。
「キッカケですか・・・それは・・・会社でも一緒に仕事してますし、普段から冗談なんかを言うたりしてました。それで、飲み会の時に私が誘ってしまいました。酒が入ったとはいえ、とんでもない事をしてしまったと思ってます」
「酒が入ったから
「・・・いえ・・・前から・・・」
「前から、何

中田(仮名)さんが俯きだしました。
「好きに・・・なってしまいました・・・誘ったらアカンと思ってたんですけど・・・自分を抑えきれなくなって・・・」
「誘ったらアカンと思ってたという事は、自信があったという事
<好きになったって・・・何か・・・ちょっとマズイ言葉かなぁ・・・>
「いえ、とんでもないです・・・自信とかそういうのではなくて、誘うって事は自分の気持ちを出すっていう事になるんで・・・勿論、伊藤(仮名)さんにはご主人も居てはる事は分っていましたし・・・私にも家族が居ますから・・・」
「分る様な分らん様な答えやけど・・・まぁええわ・・・貴方が誘った時に、私の妻は
「はい・・・と言いますと
「直ぐにOKしたんかどうかという事とか、喜んでいたのかどうかという事やなんかですよ」

少し、伊藤(仮名)さんの声が荒くなってきた様な気がしました。
<ちょっと押さえなアカンかなぁ・・・>

伊藤(仮名)さんの声が荒くなったかなのでしょうか。中田(仮名)さんは少し間を置いてから答えました。
「最初は相手にしてもらえませんでした・・・それで酒が入ってた事もあり、私がしつこく誘って・・・」
「それは何私の妻をかばってはるんですか
「い・・・いえ・・・そういう事とは違います・・・私が強引に・・・」

私でも見抜く事が出来るウソ。
伊藤(仮名)さんは、どう感じ取ったでしょう。
「・・・・・・」
「本当の事なんです・・・」
「分りました・・・普段はどんな所で会ってはったんですか
「喫茶店とか・・・飲み屋とか・・・喫茶店で待ち合わせて、食事に行く事が多かったです」
「それから
「えっ
「ホテルに
「・・・は・・・はい・・・」

中田(仮名)さんは俯いてしまいました。


              (イメージ)


不倫 Part3 その10

2009-10-10 07:00:00 | 調査員Sの日記
 私と中田(仮名)さんに続いて、伊藤(仮名)さんがコーヒーラウンジに入りました。
「こちらで・・・」
私は伊藤(仮名)さんと中田(仮名)さんを、ビデオが映りやすい席に案内しました。
ラウンジはこの時間にしては空いていたので、迷う事はありませんでした。君の席から座る席を確認して座ったのです。
私たちが席に着くと、ラウンジのスタッフが注文を取りに来ました。
さっき、中田(仮名)さんが伊藤(仮名)さんに土下座した時に、私と目が合ったスタッフです。
そのスタッフが”コーヒー3つ”の注文を取り、去ると同時に再び中田(仮名)さんが頭を下げました。
「本当に申し訳ありませんでした」
私は何も言えず、ただその様子を見守っていました。
伊藤(仮名)さんも何も言わず、ジッとそれを見ていました。

しばらく沈黙が続き、ラウンジのスタッフがコーヒーを3つテーブルの上に置いて行きました。
「ごゆっくりどうぞ」

私は君を見て、映像が大丈夫なのかと目で問いかけると、『大丈夫』という様に君は1回頷きました。
伊藤(仮名)さんは砂糖を入れずに、運ばれてきたコーヒーを一口つけ、タバコに日を点けました。
そして、話出しました。
「今日は貴方に、話を聞きたいと思って来てもらいました。私には聞く権利があると思ってます」
中田(仮名)さんが軽く頷きながら、伊藤(仮名)さんの言う事を聞いていました。
「折角、頼んだコーヒーやから、飲みながら話しましょう」
伊藤(仮名)さんにそう言われて、再び小さく頭を下げてコーヒーカップを自分に近づけた中田(仮名)さんでしたが、口にはしませんでした。
私は砂糖とミルクをタップリとコーヒーカップに入れ、ゆっくりとスプーンでかき混ぜました。
コーヒーをかき混ぜながら、伊藤(仮名)さんの次の言葉を待っていたのですが、話出したのは中田(仮名)さんでした。
「何からお話させていただいたらよろしいでしょうか全部、お話しさせていただきます」
「ちょっとだけ待ってもらいたい・・・色々考えて来たんやけど、ちょっと整理するから・・・」
「はい・・・」

また沈黙です。伊藤(仮名)さんは目を瞑っています。
さっきの中田(仮名)さんの態度の事も考えているのでしょうか。
緊張感が漂ってきました。


不倫 Part3 その9

2009-10-08 07:00:00 | 調査員Sの日記
 ミナミにある、ホテルのティーラウンジ。午後6時30分。
約束の時間の30分前には、君は撮影の用意を終えていました。
私はロビーで、伊藤(仮名)さん、中田(仮名)さんが来るのを待っていました。
ロビーからは、ティーラウンジが見わたす事が出来ます。

午後6時43分。先に現れたのは中田(仮名)さんの方でした。
<この人・・・やっぱり誠実な人なんやなぁ・・・>
「どうもです・・・」
「早いですね。伊藤(仮名)さんはまだなんですよ。先にティーラウンジの方へ行きましょか
「いえ、とんでもないですここで待ってます・・・どうぞ、お先に・・・」
「私は、ここで伊藤(仮名)さんと待ち合わせてるんで・・・」

私と中田(仮名)さんは、無言で伊藤(仮名)さんが来るのを待っていました。
依頼者である伊藤(仮名)さんが来られた時に、私と中田(仮名)さんが仲良く話してると思われたくなかったものですから・・・。

しばらくすると、伊藤(仮名)さんの姿が見えました。
「どうもです。こちらが中田(仮名)さんです」
と、その時です。中田(仮名)さんが、伊藤(仮名)さんに土下座したのです。ホテルのロビーでです。
ホテルのスタッフの人たちも、心配そうに見ていました。
「今回の事は、本当に申し訳ありませんでした
伊藤(仮名)さんは、少し困った様な顔をしていました。
それもそうでしょう。一流ホテルのロビーで土下座されてるのですから、周りの目も気になります。
しかし、それは私が始めて見る伊藤(仮名)さんの表情だったのかもしれません。

「中田(仮名)さん・・・こんな所で・・・困りますよ・・・」
私は中田(仮名)さんの腕を取り、立ち上がらせました。
「困りますよ・・・こんな所で・・・ラウンジの方へ行きましょう」
<気持ちは分るんやけどなぁ・・・皆、何事かと思って見てるし・・・>

中田(仮名)さんは、立ち上がっても膝に両手を揃え、頭を下げたままでした。
「本当に、すいませんでした
中田(仮名)さんが再び謝った時、ホテルのスタッフの人が、心配そうに声をかけてきました。
「何かございましたでしょうか
「いえ・・・大丈夫です」

私がホテルのスタッフの人にそう言ったのですが、スタッフの人はその場を離れませんでした。

伊藤(仮名)さんが、中田(仮名)さんに困って、『何とかしてくれ』という様な顔で私を見ました。
「中田(仮名)さん・・・こんな所で謝っても、伊藤(仮名)さんは困るだけですよ・・・話が前に進みません・・・さぁ、ラウンジへ」
私はそう言って中田(仮名)さんの腕を引っ張って、ティーラウンジの方へ連れて行きました。
<いきなり、参ったなぁ・・・>


不倫 Part3 その8

2009-10-06 07:00:00 | 調査員Sの日記
 次の日。朝10時になり、中田(仮名)さんに確認の電話をかけました。
確認の電話を入れるのは、ドタキャンがあったりするからです。
最初に話した時にはOKでも、時間が経つと色々考えて嫌になったりする事があるからです。
ですから、本当は昨日、中田(仮名)さんが言った様に、直ぐに行った方がいいのですが、相手の方から言われるとは思ってもみませんでした。たいていは、相手の方から1週間くらい空けられる事の方が多いのです。

「中田(仮名)さんですか?シークレットリサーチのSですが・・・今日は大丈夫ですか
「はい、大丈夫ですよ」
「それでは19時に難波で・・・」
「分りました。お伺いさせていただきます」


次に、私は依頼者である伊藤(仮名)さんにも電話をかけました。
今日の事は、昨日のうちに電話で話してあったのですが、念の為に・・・。
「シークレットリサーチのSですが・・・今、相手の方と話しまして、今日で大丈夫だと確認を取りました」
「そうですか。わざわざありがとう御座います。それでは7時に・・・」
「了解しました

依頼者も大丈夫のようです。

「N君、用意は出来てる
「はいOKですよ
「そうか」
「Sさん、今日は忘れて帰らんといて下さいよ
「まだ言うか~・・・しつこいなぁ・・・」
「言いますよ今までに、何べんも忘れられてるんですよKさんにも、そうやし・・・僕・・・そんなに影薄いですかねぇ
「ノーコメント」
「ノーコメントって・・・ずるいなぁ・・・」

その時BOSSが言いました。
「N影薄かったらええやんけ~ええ探偵になれるぞ
「何でですか
「尾行してても、バレへんやん」
「そうかそうやなぁ・・・これはええ事なんや

私が半笑いになり、BOSSを見ると舌を出していました。

<一応確認しとこか・・・>
私は君が用意した鞄の中身を確認しました。
「何してるんですか
「いや・・・忘れ物が無いか確認を・・・」
「確認って・・・僕、さっき確認しましたよ信用ないなぁ・・・」
「そうやなくて、俺はいつも、自分で確認せな気がすまへんから・・・」

またBOSSがデスクの向こうから言いました。
「Nお前、ええやんけ~確認してもらってるねんぞありがたいと思わな・・・Sはな、もし、もしやぞ・・・お前が何かミスして俺に怒鳴られたら可哀想やと思って、してくれてるねんぞお前の事を思えばこそやないか・・・感謝せな、バチあたるぞ
「そ・・・そうなんですか・・・ありがとうございます・・・って、何かおかしい様な気が・・・」
「おかしくないそれよりお前・・・この前の報告書はまだか
「えっ・・・今、やってますもう出来上がります


<伊藤(仮名)さん・・・今日は落ち着いて話せるかなぁ・・・中田(仮名)さんも大丈夫かなぁ・・・>

不倫 Part3 その7

2009-10-04 07:00:00 | 調査員Sの日記
「そうですか。ありがとうございます。もう一つ、伊藤(仮名)さんからお願いがあるんですけど・・・」
「はい、何ですか
「この事は、まだ奥さんには話さんといて欲しいという事なんです」
「えっでも・・・何でですか
「理由は私にも分りません」
「え~っ・・・どういう事やろ・・・」
男性は1度、首を傾げました。

「それでは、ご都合は、いつ頃がよろしいですか伊藤(仮名)さんはいつでもいいと・・・ただ、お互い仕事もあるし、夜の方がありがたいと言ってましたが・・・」
「今からやったら、あきませんか
「えっ今からですか
<それは・・・ちょっとなぁ・・・気持ちは分るけど・・・>
「はい・・・一刻も早く謝りたいし・・・綾ちゃん、いえ・・・奥さんに話さないでという事であれば、早い方が・・・同じ会社なんで、顔を合わしますから・・・いつまでも、知らないフリが出来るかどうか・・・」
「そうですか・・・お気持ちは分りますが・・・明日という事ではあきませんか
「分りました・・・明日やったら・・・7時でいいですかね
「19時という事ですね。そう伝えます。それと・・・お1人で来られますか
「えっ・・・はい・・・1人で行きますけど・・・」
「伊藤(仮名)さんには私が同行しますけど、よろしいですか
「あっ・・・そういう事・・・かまいませんよ」


調査済みではあったのですが、私は男性に携帯の番号を聞き、明日の朝10時に確認の電話を入れる事を伝えました。
「そしたら、中田(仮名)さん・・・明日、お電話させていただきます」
「すいません・・・ご迷惑をかけて・・・お願いします」

男性は、どこか吹っ切れたのか、少し顔が明るくなった様な気がしました。
<この人も、不倫はアカンと思って悩んでたんやろうなぁ・・・何かそんな態度やもんなぁ・・・>

私は帰りに電車の中で、色んな事を考えていました。
翌日の段取りや、伊藤(仮名)さんと奥さんの事。そして、浮気相手である中田(仮名)さんの気持ち等を・・・。
その時、私の携帯がバイブしました。
着信には君の名前が・・・。
<あっ・・・忘れてた・・・>