シークレットリサーチの探偵日記

総合探偵社シークレットリサーチの調査員達の日記です。

調査員Nの悩み その3

2008-06-30 08:45:22 | 調査員Kの日記
 それから数日後。
俺はNと一緒に、張り込みを行っていた。
「プルルル・・・プルルル・・・」
暗い車の中で、Nの胸ポケットに入っていた携帯が光っていた。
Nが携帯を取り出し、メールを読み、返信しているようだった。
それが何度か繰り返された。
最初のウチはあまり気にもならなかった俺だが、あまりにもしつこいと苛立ってくる。

「おいいい加減にしろよ仕事中だぞ気が散るだろうが
「すいません・・・ちょっと電話してきてもいいですか
「ああ・・・早く済ませろよ
「はい・・・」

Nは車を降りて、少し離れた場所で電話を掛けているようだった。
<やっぱり女か・・・まぁ若いから仕方ないけどなぁ・・・>
その日の調査は、何事も無く終了した。

 次の日。俺はMさんと同じ現場に居た。昨日からの、引き続きの調査だ。
「Mさん・・・昨日、Nがあんまりしつこくメールしていたんで怒鳴っちゃいました・・・若いから仕方無いと思うんですけど・・・仕事中だったんで・・・」
「張り込み中にか
「そうなんですよ・・・」
「そうか・・・明日は俺と一緒だから、俺からも言っとくわ・・・」
「アイツ、絶対に新しい女が出来たんですよ・・・それまではあんなに頻繁にメールや電話をしていなかったんですから・・・電話だって離れて掛けるんですよ」
「そうか・・・結構な事じゃないか・・・若いんだから」
「仕事に差し支えが無ければいいんですけどね・・・」
「どこの女の子だ
「分りませんよ・・・調査してないですから」
「ふ~ん」

その日の調査も、何事も無く終了した。
この浮気調査も、後残す所1日となった。明日はMさんとNでの調査である。

調査員Nの悩み その2

2008-06-28 07:30:42 | 調査員Kの日記
 しばらくすると、BOSSMさんと帰って来た。
「お疲れ様です
「お疲れさん今日はどうした家でゆっくりしてたらいいのに・・・」
「嫁の顔をずっと見てるのも疲れますよ・・・それにうるさいし・・・」
「お前、嫁さんの事を大事にしてやれよ・・・逃げられてからでは遅いぞ
「じゃぁBOSSはどうなんですか
「うっ・・・お前・・・嫌な事言うヤツだなぁ・・・俺は大事にしてるぞ
「それだったら、俺はもっと大事にしてる事になりますよね
「・・・・・・」

Mさんが笑って俺とBOSSの話を聞いていた。
俺は、Mさんに舌を出して、肩をすくめて笑ってみせた。

「N君はどこ行った
「何か・・・依頼者から電話があって、Nに相談したい事があるらしく出て行かせました・・・でも・・・本当に依頼者かどうか・・・」
「何だどういう事だ
「何か様子が変なんですよ・・・」
「どんな風に
「電話が掛かってきてから、落ち着きが無く、携帯ばっかり気にしてる様で・・・本当は金融屋じゃないかと思ったんですが・・・」
その時、Mさんが笑いながら言った。
「女でも出来たんじゃないのか
「でも・・・相談専用の電話に掛かって来たんですよ・・・携帯からですが・・・そこのメモに着歴を取っておきましたけど・・・その番号見た事ないですか
「どれ・・・」

BOSSがメモを取り上げた。Mさんは横からそれを覗き込んでいた。
「分らんなぁ・・・最近のあいつが受件した資料を見てみろ
「いいんですか調べちゃって・・・」
「様子が変なんだろう・・・ここは探偵事務所だ調査するのは当たり前だ
探偵事務所だからって・・・イマイチ意味が分りませんが・・・」
「深く考えるな
「・・・分りました・・・調べてみます・・・」


俺はパソコンのフォルダを開いた。
<Nが受件した案件は・・・っと・・・>
俺は着歴に残っていた番号を探した。・・・が無い・・・どこにも、その番号は無かった。
<おかしいなぁ・・・依頼者が番号を変更したかもしれないなぁ・・・しかし・・・アイツ・・・自分の携帯の番号もメルアドも相手には教えてそうだったよなぁ・・・依頼者じゃなく、ただの彼女なのかなぁ・・・>

「BOSS・・・ありませんねぇ・・・後で依頼者が番号を変えたのかもしれませんが・・・やっぱり・・・彼女か何かじゃないんですかね・・・」
「そうか・・・まぁ・・・いいだろう・・・それじゃぁ放っておこう・・・」
「そうですね・・・了解しました」

調査員Nの悩み

2008-06-26 05:27:21 | 調査員Kの日記
 俺はその日、何もする事が無く、事務所でボーッとしていた。

「はいお電話ありがとうございますシークレットリサーチです・・・あっ・・・そうなんですか・・・また後で掛け直します・・・はい・・・」
「N誰から
「いえ・・・自分になんですけど・・・」
相談専用の電話に・・・誰からだ
「この前の依頼者なんですけど・・・」

Nはそう言いながら、自分の携帯を見ていた。明らかに様子が変だ。
依頼者?何だってトラブルか
「いえ・・・また相談に乗って欲しいと・・・」
「何のどんな相談何で今してやらない
「この前やった浮気調査で、ご主人の浮気が出ちゃって・・・離婚するらしいんですけど、その相談に乗って欲しいって・・・」
「お前にか・・・ふ~ん・・・成長したもんだなぁ・・・お前に離婚相談ねぇ・・・」
「いえ・・・そんな大した事じゃないですよ・・・」
離婚相談が大した事が無いだとお前・・・それはおかしいだろ・・・相手の一生がかかってるんだぞ
「・・・はい・・・いえ・・・あの・・・そんな・・・つもりじゃ・・・すいません・・・」

俺はNに近寄って、ジッと目を見た。
「何か隠してないか
「・・・いえ・・・何も・・・」
「今の電話・・・本当は金融屋か何かじゃないのかそれだったら、ちゃんと相談しろよ」
「違いますよ・・・本当に依頼者ですから・・・」
「それじゃぁ・・・何で後で掛け直すんだそのまま話せば良かったんじゃないのか

Nは明らかに動揺していた。
「・・・依頼者が会って話したいと言うもので・・・BOSSに予定を訊いてからと・・・」
「・・・そうか・・・」


その時、Nが持っていた携帯電話が光出した。
「出たら
「いえ・・・メールですから・・・」

俺はソファに座り直して、雑誌を読むフリをしてNを盗み見た。
Nは携帯を開け、メールを確認していた。

「いいよ・・・」
「はい

「BOSSには俺から言っておいてやるから・・・行って来いよ
「えっ
「いいから行って来いって依頼者なんだろう・・・でも緊急の場合は呼び戻すかもしれんがな」
「はいありがとうございます

Nは頭を下げて、自分の鞄を持って出て行った。
<どうも怪しい・・・依頼者からであれば、仕事なのに・・・行くのが当然だろうに・・・>
俺はNが事務所を出て行った後、電話の着信履歴を見た。
090-6963-・・・・携帯電話からであった。
その時、浮気を疑っている人達の気持ちや行動が、俺と重なっていた。
<どうしようか?調べようかなぁ・・・でも・・・まあいいかぁ・・・放っておこう・・・何か問題でも起きれば言ってくるだろう・・・>

困った依頼者 Part4 その13

2008-06-24 08:30:02 | 調査員Sの日記
 事務所に着くと、MさんとKさんは、まだ報告書を作成していました。
「お疲れ様です
「お疲れさんどうだった
「はいBOSS・・・一応、契約まで済みました」
「一応・・・って何だ
「ちょっと契約するのに、条件を出されまして・・・」
「それで・・・その女と別れられるのか
「・・・あの・・・だから・・・違うって・・・」
「どんな条件だ

私はBOSSにその内容を言う前に、N君の方を見ました。N君は、ボーッとしていました。

「Nどうかしたのか
「何か変だな

MさんとKさんがN君の所へ近寄って行くのが見えました。

「Nがどうかしたのか
「それが・・・条件というのが・・・N君を調査から外すという事なんです・・・」
「はぁ何で
「どうも・・・N君が依頼者の機嫌をそこねたみたいで・・・依頼者がN君の事に腹が立つって・・・N君は依頼者の事に腹を立てていましたから、私には分らなかったんですが、態度に出ていたんじゃないかと・・・」

私はBOSSに全て報告しました。
その時BOSSは、大笑いしていました。
「そうか・・・Nも嫌われたものだな・・・今まで、特定の調査員を外してくれって聞いた事が無い・・・はっはははは・・・でも依頼者が言うんだったら仕方ないよな・・・」
N君は顔を両手で覆ったまま、何も言いませんでした。


柴田(仮名)さんの調査も無事に終了しました。
もちろんN君抜きで・・・。
柴田(仮名)さんのご主人も、居直ってた事もあってか、全然警戒する様子も無く、堂々と不倫相手とラブホテルに出入りしていました。
その浮気相手も、柴田(仮名)さんが言っていた女性でした。
N君はあの面談の日以来、まだ落ち込んだままです。今日あたり、BOSSが飲みに連れてって元気を出させる事でしょう・・・。

困った依頼者 Part4 その12

2008-06-22 06:17:12 | 調査員Sの日記
 私は柴田(仮名)さんと、話しながら調査の手順を考えました。勿論、彼女の意向も聞きながら・・・。
その時は、今までの柴田(仮名)さんとは別人の様でした。とても穏やかで、優しく感じられました。
そして全て話し終えました。
「それじゃぁ柴田(仮名)さん・・・この方向で進めようと思いますので、契約をお願いできますか
「そうお願いしたいんだけど・・・」

私は契約書を鞄から取り出す手を止めて、彼女を見ました。
「何か・・・他に
「・・・・・・」
「何かあるようでしたら、遠慮なさらないで言って下さい」
「コイツ・・・」
「はぁ

彼女はちらっと視線を動かしました。そこにはN君が居ました。
「コイツを外して他にも探偵さんはいるんでしょコイツは使わないで
私は驚いてN君を見ると、N君の口が半開きになっていました。
「コイツを外す事が、契約の条件よ
「しかし・・・」
「どうするの外すの外さないの

彼女はまた、ぶっきらぼうな彼女に戻っていました。
<えっ!?どういう事だ?・・・事実N君は外しても、調査には影響はないけど・・・>

私は少し考えて答えました。
「・・・分りました・・・外しましょう・・・」
「Sさん・・・」
「N君・・・ちょっと先に車に戻っててくれないか・・・」
「・・・はい・・・分りました・・・」

N君は納得がいかない様な顔をしていましたが、肩を落として店を出て行きました。
「柴田(仮名)さん・・・これでいいですか
「うん・・・ゴメンね・・・何か・・・腹が立つのよ・・・」
「・・・・・・」

やはりN君の、柴田(仮名)さんに対する思いが態度に表れていたのでしょうか・・・。

契約が済みました。
N君は帰る車の中で、私にしゃべり続けていました。N君もショックだったのでしょう・・・。

困った依頼者 Part4 その11

2008-06-20 05:33:14 | 調査員Sの日記
 待ち合わせの店に着くと、彼女は既にコーヒーを飲んでいました。
「どうもです・・・」
「さっきはごめんなさい・・・」
<やっと落ち着いたみたいだなぁ・・・>
「それで・・・どうされましたか今日は、この前話していたご主人の浮気の件ですか
「そうなのよ・・・」

そこへN君が
「その件は他社に相談されるんじゃなかったのですか
<バカ・・・何で余計な事を言うんだ・・・>

柴田(仮名)さんは見る見る間に、顔色が変わっていきました。眉と目がつり上がって・・・。
<まずい・・・また、へそ曲げるぞ・・・これは!>
「・・・・・・」
「すいません柴田(仮名)さん・・・このアホの言う事は気にしないで下さい・・・」
「・・・・・・」


暫らくの間、柴田(仮名)さんはコーヒーカップを睨んだまま、何も話さなくなってしまいました。
しかし、私もN君の発言でその後の言葉が出なくなっていました。
N君を見ると、申し訳なさそうに頭を下げていました。

「柴田(仮名)さん・・・
「・・・・・・」

彼女の目から、涙がこぼれていました。
「・・・落ち着いて下さい・・・ゆっくりでいいですから、話していただけますか」
「・・・あはっ・・・」

彼女が、急に笑いました。
「えっ!?
「何か・・・刑事ドラマみたいね・・・取調べを受けてるみたい・・・」
「・・・すいません・・・そういうつもりじゃないんですが・・・話していただかないと、前に進まないものですから・・・」
「そうね」
「ご主人がまだ浮気されてると、決まった訳じゃなんですから、落ち着いて話して下さい」
「・・・ううん・・・アイツはもう居直ってるの・・・毎日、顔見る度に喧嘩よ・・・」
「それじゃぁ・・・調査するのは裁判での証拠という事ですか
「その方が良いって・・・友達に言われたの・・・後の事を考えたら調べておいた方が良いって・・・今は居直ってるけど、離婚の話し合いになった時にシラを切る可能性もあるからって・・・旦那と言っても、他人なんだからいざっていう時には分らないものだから・・・慰謝料ガッポリ取りなさいって・・・」
「そうなんですか」

それから、柴田(仮名)さんは全てを話してくれました。

困った依頼者 Part4 その10

2008-06-18 05:26:29 | 調査員Sの日記
 それから数日後。私は事務所でさんとさんとで、報告書を作成していました。
そこへ、電話がかかってきたのです。
「お電話ありがとうございます。シークレットリサーチです・・・はい・・・どちら様でしょうか・・・柴田(仮名)様ですね・・・少々お待ち下さい・・・Sさん電話です
「柴田(仮名)さんから
「そうですよ」
「あっ・・・分った・・・」

私は近くにあった電話を指差すと、君がそこへ電話をつなぎました。
「もしもし・・・Sですが・・・」
「ちょっと・・・また時間取って貰えない

またもやイキナリです。
「柴田(仮名)さん・・・あなたも大人なんだから、もう少し話し方があるんじゃないですか・・・ぶっきらぼうに・・・ご主人の浮気で、気が動転しているのは分りますけど、私も人間なのでイキナリそんな言い方されたら・・・」
「ガチッ・・・」
「えっ

皆が私の方を見ていました。
「どうしたんですか
「・・・切られた・・・」
「え~っ・・・全・・・く・・・」


とその時、また電話が鳴りました。
「お電話ありがとうござ・・・」
「柴田(仮名)ですけど・・・ごめんなさい・・・」
「あっ・・・どうもです・・・」
「さっき・・・言った事なんだけど・・・時間取ってもらえません・・・か・・・」

彼女は泣いている様でした。
「柴田(仮名)さん・・・時間は空けますが・・・ちゃんと話していただけますか・・・この前の様な話し方されたら、話が前に進みませんよ・・・きちんと話していただけるのであれば、私も一生懸命考えますから・・・」
「・・・うん・・・分った・・・」
「それじゃぁ・・・いつがいいですか
「・・・今日はダメ
「いいですよ・・・時間は
「すぐに・・・でも・・・」
「分りました。1時間後でどうですか1時間後にこの前の店で
「うん・・・」
「それじゃぁ1時間後に遅刻したらダメですよ
「うん・・・分ってる」


N君が、電話を切った私の所へ寄って来ました。
「柴田(仮名)さんと会うんですか
「うん・・・」
「それじゃぁ私も行きます・・・BOSSいいですよねぇ

BOSSがPCのモニターの横から顔を出して
「おう行って来て・・・S・・・今度こそキッチリと別れてこいよ
「だから・・・・・・もういいです・・・」

私は事務所を出て、N君の運転で待ち合わせ場所へと向いました。

困った依頼者 Part4 その9

2008-06-16 08:13:29 | 調査員Sの日記
 それから3日が経ちました。
「柴田(仮名)さん・・・連絡ありませんねぇ・・・BOSS・・・」
「ん・・・柴田(仮名)って・・・あの・・・お前と別れてくれない女か
「・・・だから・・・違うって言ってるでしょ

そこへ君が口を挟んできました。
「もう・・・あんな女、放っておいたらいいんですよ
「しかしなぁ・・・あの人も気が滅入ってるんだよ・・・きっと・・・」
「ん~そうか・・・やっぱりお前の事がそんなに好きだったんだなぁ・・・」
「あのねぇ・・・BOSS・・・いい加減にして下さいよ本当に怒りますよ
「え~っと・・・この書類は・・・」

<聞いて無い・・・この人は・・・>

「Sさん・・・本当に困ってるんだったら、また電話ありますよ・・・別の調査会社に依頼してなかったらですけど・・・」
「そうだったらいいんだけどなぁ・・・」
「Sさん・・・気になるんですか
「いや・・・気になるというか・・・何というか・・・」

すると、デスクのパソコンの向こうから
「そりゃ気になるわなぁ・・・別れるって思っててもなぁ・・・一緒に過ごした女だもんなぁ・・・あの時はこんな事もあったなぁ・・・とか・・・センチになったりなんかして・・・」
と小声でBOSSが言いました。
「だから違うって言ってるでしょ
<ホント・・・しつこい・・・>

しかし私は、この間、変な別れ方をしてしまったので、彼女の事が気になっていました。
柴田(仮名)さんの連絡先も聞いておらず、ただ待っているしかありませんでした。
<やっぱり・・・あの時、もう少し時間をかけてあげれば良かったかなぁ・・・今更、遅いけど・・・>

困った依頼者 Part4 その8

2008-06-14 07:48:57 | 調査員Sの日記
 私は君を見て頷きました。
そして、再び腰を下ろして依頼者を見て、依頼者が話し始めるのを待っていました。

暫らく依頼者は何も言わず、下を向いたまま泣いていました。
「・・・・・・」
「そろそろ、ちゃんと話していただけますか
「・・・・・・」

それでも依頼者は何も答えてはくれませんでした。

どれくらいの時間が過ぎたでしょう。
「もう・・・そろそろ・・・」
「・・・・・・」

まだ依頼者は話そうとしません。
もう、泣いてはいない様子でしたが、俯いたまま黙っていました。
「柴田(仮名)さん・・・日を改めましょう・・・今日のところは失礼します・・・また落ち着いたら連絡下さい・・・」
「・・・・・・」

私は依頼者を、その場に残して立ち去りました。

「いったい・・・何なんでしょうかねぇ・・・全く・・・何をどうしたらいいのか分りませんよねぇ・・・」
君が苛立っていました。
「本当だなぁ・・・ちょっと気持ちが不安定になってるんだろうなぁ・・・」
「それにしても酷すぎるでしょうあの態度は・・・」
「まぁ・・・なぁ・・・」
<あの人も”旦那に浮気されてるかもしれない”と思っているのだろう・・・いや・・・”旦那が浮気している”って決め付けて、気が滅入ってるんだろう・・・>

困った依頼者 Part4 その7

2008-06-12 05:27:37 | 調査員Sの日記
「やっぱり調査出来ない
私たちが着くといきなりでした。
挨拶も無ければ、遅刻した事の謝罪もありません。

「柴田(仮名)さん・・・その前に、私たちに言う事があるんじゃないですか
私はまたカチンときていました。私も人間なのです。
「何よ・・・」
「何よ・・・じゃないでしょあなたが会いたいと言うから、約束の時間に来たんですよそれを連絡も無しに、1時間近くも遅れてあげく・・・いきなり”調査出来ない”っておかしいでしょ・・・それも、あなたがこの間、断ったんでしょ・・・そんな態度は、大人としておかしいじゃ無いんですか・・・それで私が ”はい分りました調査させていただきます” って言うと思ってるんですか
「・・・・・・」

彼女は一瞬、私をキッとした目で睨んで何か言おうとしましたが、俯いたまま黙ってしまいました。

「あなたはこの間、依頼を断った・・・そうですよねぇ・・・他社に依頼するって言ってましたよねぇ
「・・・・・・」

彼女は俯いたまま、何も答えませんでした。
「だったら・・・私たちはもういいですよね・・・帰っても・・・」
「・・・・・・」

沈黙が続きました。

「柴田(仮名)さん?・・・何とか言っていただけないと・・・」
彼女は、何か気持ちはここに無いっていう感じがしました。
「もう・・・失礼させていただいてもよろしいですか
私はそう言って、立ち上がりました。
その時です・・・
「・・・まっ・・・」
「はい何ですか
「待って・・・」

彼女は小さな声で答えました。そしてハンカチで目の辺りを拭いました。
<泣いているのか?・・・何だか分らない人だ・・・>