ごとりん・るーむ映画ぶろぐ

 現在584本の映画のあくまで個人的な感想をアップさせていただいています。ラブコメ、ホラー、歴史映画が好きです【^_^】

46億年の恋(三池崇史監督)

2008-01-20 | Weblog
キャスト;松田龍平、安藤正信、石橋蓮司
ストーリー;ゲイバーで買われた客に暴行され正当防衛の範囲を超えた暴力をふるったため少年院に入所させられた有吉。一方、別の殺人事件で再び少年院にもどってきた香月。「まったく同じことを繰り返すことはできない」とリアルにいってのける少年院所長の高津。高津には以前、香月に妻を暴行され妻が自殺したという経緯があった…。
コメント;70年代風のロケットが少年院の窓から見える。そこから差してくる光が有吉の胸を射抜く。終始暗い画面の中に、ときおり現れる2005年の東京の街並み。そして電気網にひっかかって焼かれてしまうアニメーションの図柄。農作業も洗濯作業もまったく現実をふまえていない特殊な場面なのにそれが洗濯場なんだ…と納得してしまう三池監督の映像美術。「天国か宇宙か」の二者選択をせまられたとき、香月は「天国」を選んでしまう。「亡霊」が出現するもそれが本物の亡霊であるかどうかはわからない。ただし暴力だけにすがってきて有吉に「何か」が発生し、「天国」とよばれるマヤの遺跡にも似た高い遺跡には登らずに、別の世界へ…。「同じ犯罪は二度とできない」として二度とかえってこない過去の時間。1光年離れた世界からだと1年前の地球が見える。そして100光年離れると100年前の地球が見える。しかし見えてもその場所には帰れない。「救い」がないようで「救い」が見られるのは、映画の中の世界はけっして「他人事」ではないという実感と、通常ならば感情移入できるはずのない空間が画面に映し出されてそのまま画面にひきずられるように自分自身もまた時間を過ごしてしまったことであろうか。

テキサス・チェーンソー・ビギニング(ジョナサン・リーベスマン監督)

2008-01-16 | Weblog
ストーリー ;もともとは実在の連続殺人者エド・ゲインをモデルにした「悪魔のいけにえ」シリーズをリメイクしたものだが、個人的には「1」よりも「2」のほうが怖かったなあ。で、それをリメイクした「テキサス・チェーンソー」の今度は原点に立ち返り。1969年に始まったとされる連続殺人の「最初」から描写する。テキサスにある精肉工場が閉鎖され、その街からは人が流出していく。しかしヒューイット一家だけはかたくなに地元を離れるのを拒み、聖書の教えを独特に解釈した「日々の糧」を得る…。一方、ベトナム戦争に再徴兵される兄と弟。それぞれ愛する女性を連れて基地に向かう途中にヒッピーに銃を発砲され、大事故を起こしてしまう…。
出演 ;ジョルダーナ・ブリュースター、マット・ポーマー 、テイラー・ハンドリー
コメント ;う~ん、「スプラッタ」ではあるものの、やはり怖くない…。血しぶきが舞いとび、人間が加工されていく怖さ…こういうのってあまり画面に出さないほうが逆に怖いのかもしれない。「ザ・リング」>>>>>>>>「テキサス・チェーンソー」シリーズだろうか。それに血しぶきでいうとやはり元の「悪魔のいけにえ」シリーズのほうが妙なスピード感があって怖かったなあ。なにせジープで逆走してその上に、レザー・フェイスが乗っているという設定で…。どうせならスピード感を加えたほうが怖いのかもしれない。同じエド・ゲインに題材をとったヒチコックの「サイコ」。名作とされているが実はこれも個人的には怖くはなかった。ただ鮮烈なイメージで「鳥」の燻製が映画に出ていたのを思い出す。この映画にはそういう記憶に残る一場面というのがないんだなあ。スプラッタというのはある意味ご都合主義的で、だいたいレザーフェイス側にとってかなり有利な条件が設定されている。それが行き過ぎると、もはやホラーというよりも、コメディに近くなってくるわけで…。

サムサッカー(マイク・ミルズ監督)

2008-01-16 | Weblog
ストーリー;17歳になっても親指をしゃぶる癖がぬけない高校生ジャスティン。歯医者のところに通っているうちに、心理学的な講義を受ける。そしてカウンセラーからADHDとも診断されるが、その処方箋としてまず薬物を飲用。しかしそれは本質的な解決にはならず、次第に薬物ではなく別の原因を自分で探り当てていく…。
出演;ヴィンス・ボーン、ティルダ・スウィントン 、キアヌ・リーブス
コメント ;う~ん…。キアヌ・リーブスはやはりお医者さんの役が非常に似合う。これだけスマートな歯医者でありながら、髪の毛はぼさぼさで歯医者の癖に催眠術や心理学について急に語りだしてしまうという破天荒ぶり。おそらくアメリカの法律でも医師法違反の対象になると思うのだが、そういうことはぜんぜん気にしていない風来坊ぶりが印象的。またジャスティンの母親役を演じたティルダ・スウィントン。すでに「コンスタンティン」でスマートな天使の役で鮮烈なイメージを残したが、この映画では、憧れの俳優のために看護の職場を変えて、とてつもない献身的な作業で一人の俳優を立ち直らせるというやくどころ。英国出身の俳優だけあって優雅さが漂う演技が素晴らしい。で、この手の映画ではもちろんラストは定番どおり。後はどうするか…は結局、ジャスティンが一人で決めることになる。根拠のない将来への展望がバスでニューヨークへ向かう少年の心を満たす…。あれ…これはもう21世紀版の「アメリカン・グラフィティ」か。じゃ、別に改めて製作することもない映画だったのかもしれない…。あ、それでも高校教師の役のヴィンス・ボーンが実にいい感じ。リアリティあるなあと思った。台詞回しもしっかりしているし、この俳優は本当にコメディもシリアスもなんでも絵になる不可思議な俳優だ…それほど美形っていうわけでもないのに…謎だ…

ホステル(イーライ・ロス監督)

2008-01-16 | Weblog
ストーリー;アメリカ出身の若い二人組パクストンとジョシュとアイスランド出身のオリーはフランスで意気投合。スイスを経由してオランダのアムステルダムで大麻や「買春」にふけっていた。あまりの乱行に宿舎への入居を拒否された三人はアムステルダムの学生アレックスの部屋に避難。そこでバルセロナではなく、スロバキアの「ブラティスラバ」に行くことを進められる。三人は勢いこんで「ブラスティラバ」に乗り込んでいくが、一人また一人と消息が絶えて行く…。そしてその宿に宿泊していた日本人女性の二人組も行方不明となり…。
出演;ジェイ・ヘルナンデス、デレク・リチャードソン、バルバラ・ネデルヤコーヴァ
コメント;ホラー映画ではあるのだが、実際には「怪奇映画」というよりもかなりリアリスティックな映画で、設定も非常に現実的。「テキサス・チェーンソー」のような理由のない怖さではなく、「もしかすると世界中のどこかにこんな場所があるかもしれない」と思わせれるような映画設定。日本の名監督三池崇史監督も途中でカメオ出演。しかもラストに備えた重要な台詞を映画ではいう。クエンティン・タランティーノが製作していることもあってか映画の中では、「パルプ・フィクション」がテレビで流されていたりする。冒頭の場面だけでは映画のラストはまるで予測もつかずBクラスの映画としてはかなりの出来具合。最初の部分の場面進行の遅さも一種の演出だったのかもしれない。オレンジ色の屋根で彩られ、石造りの路地がゆきかう。しかもそのほとんどが昼間の場面なのだから、それで「怖い」と思わせるのがすごい。電車が走るシーンとか止まるシーンとか何気ない撮影場面が非常に美しく、スタジオ撮影された部分の凡庸さとえらい対比である。現実にプラチスラバという街は存在するが、映画と現実は違うものだろう。ブラチスラバはなんといってもスロバキア共和国の首都であり、こんなに閑散としているわけがない。スロバキア人が約80パーセント、ハンガリー人が約10・5パーセント(外務省ウェブページ参照)。元共産主義国家ではあるが、実際には低所得者に優しい社会福祉国家をめざすとされている。子供たちの人種の中にやや顔の形が独自の子供たちがまじっていたがマジャール人ではないかと推測される。大モラビア帝国時代のあとハンガリー人の支配下におかれていたことがある。2006年で失業率が9・4パーセントとやや高いが、経済成長率は8・3パーセント(いずれも外務省ウェブ2006年調査)。日本は有償資金協力を約110億円おこなっており、良好な関係を保っているとされる。映画の中で日本人旅行者がいたとしても問題はたしかにないシチュエーションだ。第一次世界大戦終了時にオーストリア=ハンガリー帝国が終焉し、当時の北部ハンガリーといわれた地域が現在のスロバキアということになる。ナチスドイツの侵攻、共産党政権、1993年に連邦解消、そして2004年にはEUに加盟している。ブラチスラボの平均気温はマイナス0・7度というから、映画にでている俳優がぜんいん厚着なのもうなづける。第二次世界大戦終了後にはドイツ人のほとんどが追放され、ユダヤ人のコミュニティも解消されたとあるが、そうしたシチュエーションの中で登場する「ドイツ人」と割礼をしている「ジョシュ」の存在は想像以上にいろいろな思惑があるのかもしれない。スロバキア出身で「ドン・ジョバンニ」「どん・キホーテ」などのマリオネット作品でパペット使いの名手として活躍しているバルバラ・ネデルヤコーヴァのふてくされた演技がなかなかすばらしい。

イルマーレ(イ・ヒョンスン監督)

2008-01-16 | Weblog
ストーリー;「イルマーレ」イタリア語で「海のそばの家」。日光を取り込み、潮が満ちてきたときには階段で海に下りることもできる。大学院の建築学科を休学して現場工事にいそしむ。そしてあるとき、郵便ポストを通じて今から2年後にこの家にすむ女性との文通が始まる…。
出演;イ・ジョンジェ、チョン・ジヒョン
コメント;リメイク映画のサンドラ・ブロックよりやはりチョン・ジヒョン。売れない声優で漫画喫茶でアルバイトをしながら不誠実な恋人に心をよせる。そしてイ・ジョンジュは父親への反抗心と建築設計への夢を忘れない。原作も映画の画面構成もあきらかにこっちの映画のほうが上。特に工事が終わったあと、さりげなく雪が降り出す場面が印象的。ラブコメというよりも実際にはもう純愛映画そのものなのだが、107分できっちりまとめた娯楽作品であるところが好ましい。映画に顔をだすコーラという名前の犬やスパゲティ作りの場面が印象的。

007/カジノ・ロワイヤル(マーティン・キャンベル監督)

2008-01-16 | Weblog
ストーリー ; チェコ共和国の首都プラハ。「00」(ダブル・オー)の称号を得たジェームス・ボンドは男性ボーカルのテーマ・ソングとトランプのカードにまじってのお洒落なオープニング。そしてバハマのナッソーでは、株式の先物取引のカラ売りと資金の提供が軍閥と謎のビジネスパーソンとの間で行われていた。一方、マダガスカルではテロ暗殺者を逮捕どころか殺害してしまい、さらに他国の大使館を爆破。「エクリプシス」という暗号を手がかりに謎の組織の解明に向かうジェームス・ボンドがいた…。
出演;ダニエル・クレイグ、エヴァ・グリーン、ジュディ・デンチ
コメント ;オリジナルの007シリーズはかなり見ているのだが、1980年代から「悪」の組織が非常に大掛かりとなり、現実的な感じがしなかった。今回は原点にたちかえってシンプルなスパイ道具。ボンド・カーもミサイルを発射したりといった活躍はみせないが、そうしたリアリティのあるアクション・シーンがいいのかも。バーで頼むカクテルも「いつもの…」ではなく、アルコール度40度を超えるラムのソーダ割りで「笑い」を取ってしまう。

ハンニバル・ライジング(ピーター・ウェーバー監督)

2008-01-16 | Weblog
ストーリー ; 1944 年のリトアニア。ドイツ軍の侵攻により、レクター一家は山荘に逃れる。しかしそこでの生活も突如現れたソビエト連邦軍とドイツ軍との爆撃により破壊され、レクターと妹の二人だけが残される。そして制服をとりかえては、あちこちの廃屋から略奪行為をしていた一群が現れ…。その後レクターはソビエト連邦の教習を受けつつ、しゃべれない状態が続く。ある日、教練で教官に反抗したレクターは閉じ込められるが、そのまま脱走。かつて自宅で母親が大切にしまっていた手紙を頼りにポーランド、東ドイツ、西ドイツそしてフランスへと渡る…。
出演 ;ギャスパー・ウリエル、 コン・リー 、ケヴィン・マクギッド
コメント;ずいぶんと前に劇場でみた映画なのだが、爆撃音のすさまじさがいかんなく大きな画面とともにせまってくる。リトアニアの領土でドイツの爆撃機とソビエト連邦の戦車が戦うシーンが印象的だ。いずれも他国軍には違いないわけだが。雪が降る中でふらふらと倒れる場面や、ゆっくりとしたアクションシーンが印象的。ギャスパー・ウリエルのわずかな表情の変化で「すべて」を語る演技が素晴らしい。台詞に頼らないで演技をする役者はやはり最高だ。スピードに頼らないアクションを展開するのもなかなかのもの。「マイアミ・バイス」でキューバ人を演じたコン・リーが今回は日本人の演技。これもすごい。中国出身の女優さんだとわかりきっているのに、日本人の自分ですら「日本人だ」と思い込ませてしまう女優。「マイアミ・バイス」ではサンバを踊っていたがなかなかの身のこなしで、この映画でも剣道の場面とさりげない汗が最高。ナチス・ドイツが蹂躙した東から西へのルートを逆にたどり、そして日本人に「異なる文化」を移植されて、「羊たちの沈黙」の世界へとつながる。となると次に登場するのは30代~40代のハンニバル・レクターなのだろうか。ちょっと楽しみ。

硫黄島からの手紙(クリント・イーストウッド監督)

2008-01-16 | Weblog
ストーリー ; 太平洋戦争末期、日本の国土であり、さらに米軍に占拠されれば内地への攻撃拠点になることが明らかな拠点、「硫黄島」に新たな指導者が就任。栗林中将だ。陸軍と海軍との確執や栄養状態の悪い兵たちへの思いやりなどで、多少の摩擦をひきずりながらも擂鉢山にトンネルを掘り、米海軍との長期にわたる銃撃戦を展開した。食事が不足し、敗戦も確実な状態で兵士たちはいかに生きようとして死んで行ったか。粗筋は実はあるようでなにもなく、ただひたすらラストの夕日が美しい。
出演 ;渡辺謙 、中村獅童 、二宮和也
コメント;「父親たちの星条旗」は実話だったが、こちらのほうはかなりフィクションが入っていると思われる。主人公も実在した人物だったかどうかはわからない。ただ日本の史実や当時の雰囲気などは、日本の監督以上に的確に本質をつかんだ演出をしていると思う。また当時の日本軍部の陸軍と海軍との内部の対立や硫黄島をめぐる戦争の状況なども的確。その中で孤立無援の厳しい戦いを常識以上に抵抗しつづけた栗林中将の生き様がすごい。ラストは地獄をおもわせるサラサラの砂の上で死ぬことになるが(史実ではどこでどうなったのかは不明らしい)、史実を超えたまさしく映画としか思えないフィクションの連続。夕日が沈む光景のあとに再び2005年の日本にカメラは舞い戻り、男たちの「声」が映画にあふれでる…。まさしく傑作で、おそらく「父親たちの星条旗」よりも高い評価を受けた点。それはラストまでついに「教訓」めいた台詞が一つもなかったことの相違かもしれない。結論はないが、「思い」や日本の「イメージ」があちこちにあふれ出し、とてつもないエネルギーを感じさせる名作となっている。


スーパーマン・リターンズ(ブライアン・シンガー監督)

2008-01-16 | Weblog
ストーリー ; ひさかたぶりに自分のうまれたクリプト星にもどり破滅を実感したスーパーマンは再び地球にもどってくる。そして再び同じ新聞社に勤務することになったが、NASAのスペースシャトルの開発は進み、かつての恋人は「スーパーマンは必要ない」という論文でピュリツァー賞を受賞。しかも内縁の夫と子供の家庭も設けていた…。レックス・ルーサーは、いったんは逮捕されたもののスーパーマンが証人として裁判所に出廷しなかったため刑務所を釈放されていた。そしてルーサーは、クリプト星のクリスタルからスーパーマンの弱点を知る…。
出演 ;ブランドン・ラウス 、ケイト・ボスワース 、ケヴィン・スペイシー
コメント; ケビン・スペイシーがなぜにルーサー役をやっていたのかいまひとつわからないが、おそらく監督の「ユージュアル・サスペクト」で当時かなり注目されたから恩返しのつもりなのかもしれない。ああでもなあ。どうしてこんなにしょうもない台本にこれだけの予算をつぎ込み、なおかつ長時間になるのか不明。やっぱり地球に帰ってこなくてよかったんじゃないかなあと最後は思い始める。「空を飛ぶ」っていうことがそれほどすごいとか羨ましいとかっていう感じではないからかもしれない…。リアリティがなさすぎてついていけないうえ、ジャーナリストがあれだけ揃っていてクラート・ケントの正体もみぬけないとはもう…不自然すぎ…。

父親たちの星条旗(クリント・イーストウッド監督)

2008-01-16 | Weblog
ストーリー ; ウィスコンシン州。葬儀屋の社長は階段を上りながら、急に倒れる。「where is he?」とうなされながら…。元衛生兵のジョン・ブラッドリー、通称ドク。そしてその息子は、テープレコーダーやインタビュー、各種資料にもとづき、父親ドクが1940年代に経験した過去を調べ始める…。1944年6月15日前。米海軍部隊は日本の領土である硫黄島に船団を組んで向かっていた。いわゆる「硫黄島の戦い」のためであり、日米双方あわせて約4万人以上の戦死傷者を出す大激戦となる。その最中、ジョー・ローゼンタールの手によって偶然、硫黄島に撮影した写真が話題となり、米財務省はこの写真を国債の消化にあてるべく広報活動に利用しようとする。一枚の写真は戦争のあり方以前に、帰還してきた3人の米兵の人生にも微妙な影を与えだす…。
出演;ライアン・フィリップ 、 ジェシー・ブラッドフォード 、アダム・ビーチ
コメント;製作にはスティーブン・スピルバーグも参加。日本アカデミー賞では外国語映画賞を受賞した作品。戦闘シーンの撮影などは実際には硫黄島ではなくアイスランドで行われたらしい。現在は東京都の特別許可がないかぎりは一般人は慰霊祭などをのぞいて島には立ち入りできない。映画公開後は通称「イオウジマ」とされていた呼称がもともとの「イオウトウ」に戻された。
正直上陸作戦時の大船団や戦闘シーンなどはこれまでのクリント・イーストウッドの映画の中でも予算は最大級と思われ、さらにカメラのブレは「硫黄島からの手紙」よりもひどくカメラに水しぶきがかなりかかっている。「ハートブレイクリッジ」といった海軍の内部を描いた作品ではこのようなカメラ・ワークはあまり記憶にない。焦ったのかあるいは意図的な演出なのか。ダウンタウンのマッチャンが、「最近のイーストウッドには手抜きが目立つ」という文章をどこかで書かれていたが、なんとなく「手抜き」にみえてしまう部分が多い。「硫黄島からの手紙」のほうが高い評価を受けたのも細部にやや「手抜き」と思われる撮影と、ラストにやや「教訓めいた台詞」が流れるせいかもしれない。
俳優は若手を中心にそれでもやはり豪華。アダム・ビーチは「ウインドトーカーズ」にも出演していたが、この映画で見せる苦悩など「ウインドトーカーズ」の比ではない。また「プライベート・ライアン」と比較すると上陸時の対応というか原則を無視した当時の栗林忠道中将がとった作戦はかなり異色の作戦ということがわかる。海岸線を放棄して、擂鉢山に穴を掘り、そこから海岸を上陸してくる米兵が一定程度内地に入り込むまで発砲を控えていた。「リトル・ダンサー」で評価されたジェイミー・ベルが「ラルフ・イギー・イグナトウスキー」役で出演。やはりプライベート・ライアンで注目されたバリー・ペッパーがマイク・ストランク役、「ワイルド・スピード」で(たしか警官役)で注目されたポール・ウォーカーが、ハンク・ハンセン役。原作はやはりドクの息子のジェイムズ・ブラッドリーとロン・バワーズ(「硫黄島の星条旗」文藝春秋)。

16ブロック(リチャード・ドナー監督)

2008-01-16 | Weblog
ストーリー; 右足を悪くした定年前の刑事ジャック・モーズリー・仕事といえば書類仕事か殺人現場の保存といった閑職ばかり。しかもアルコール中毒気味で、仕事にはやる気をまったく失っていた。そんな彼に「定時」を過ぎた超過勤務として、裁判所の証人喚問のために16ブロックはなれた高裁までエディ・バンカーという容疑者を連行することになった。しぶしぶ引き受けた証人護送だったが、酒場から出てきた瞬間にエディを狙う狙撃者を射殺…。16ブロック先への移送が急な展開を見せる…。
出演;ブルース・ウィルス、デス・モフ、デビッド・モース
コメント;どうしても予告編から、クリント・イーストウッドの「ガントレット」(1977年)をやはり思い出さざるを得ない。「真実とはなんだ」などという野暮な議論なしに、証人を護送するアルコール中毒気味の刑事役にクリント・イーストウッド。正直、この作品と構図はまったく同じであるが、完成度はCGや予算をさいても「ガントレット」には及ばないというのが…。製作者のインタビューをみても「ガントレット」に言及している俳優や製作者がいないのが不可思議なほど類似したシチュエーション…。ニューヨーク市警の分署の腐敗が原因でおこるさまざまな人間模様という粗筋なのだが…。正直みていてしんどかった…。

サイレント・ヒル(クリストフ・ガンズ監督)

2008-01-16 | Weblog
ストーリー ;コナミの大ヒットゲームの映画化。画面に展開する「手がかり」をもとに、母親が子供を捜し、夫は妻と娘の行方を追う。ゲームが原作であることは100も承知で、ラストの風が漂う風景に息を呑む。始終、灰か雨が降っている奇妙な画面構成も最高。ハリーとローズの娘、シェリルは夢遊病で夜中に家を抜け出し、「サイレント・ヒル…」とつぶやく。ローズはやむなく薬物治療を受けるため娘を連れて行こうとするが、サイトでみた「サイレント・ヒル」の記録を目にして、道路封鎖を突破してサイレント・ヒルに向かう…。そして交通事故を起こした後、シェリルの姿は消えていた…。サイレント・ヒルでは1974年11月から石炭の地下火災が続いており死体の半分はまだ発見されていない…
出演;ラダ・ミッチェル、デボラ・カーラ・アンガー、ショーン・ビーン
コメント;ストーリーの展開はかなりゲームとは異なるようだが、ゲームのストーリーをヒントとして、映画製作者がオリジナルの映像を展開したといえるのだろう。悪夢のようなウエストバージニアのゴーストタウンでの母親による娘の探索が始まる。ゲームを知らなくても充分楽しめる映画とともに、カルト宗教や「いじめ」、親子愛といったものが複雑にからみあい、迷路のような別世界と表世界に漂う「喪失感」が最高の出来具合。カナダやオーストラリアの俳優を起用しつつ、たまにしか姿をあらわさない英国出身の俳優ショーン・ビーンが残された者の孤独を表情でみせてくれる。アレッサ・ギレスピーの母親ダリアには完全に日本の「老婆」のイメージが投影されており、ラストはまるで歌舞伎さながらの悪夢の状態となる。「クリスタペラ」が率いるアメリカのカルト宗教のマークと、奇妙なクリーチャーの混在がまた気持ち悪いほどはまっている。パペット・ナースが勢ぞろいするときの奇妙なハイヒールの効果音やサイレンなど奇妙なイメージが終始まとわりついて癖になる。映画化にあたっては「リング ハリウッド版」もおそらくかなり参考にしたと思う。ハリーがブラームス公文書館に忍び込むところは「リング」とほぼ同じ構図。
 夫妻はオハイオ州に住んでいる設定。だがしかし最後から巨大な十字架や「神は天使をも裁く」といった箴言が画面に登場してきて非常に怖い。オハイオとウエストバージニアは隣接しているが、ウエストバージニア自体はアパラチア山脈系統の山が多い地域。画面では自動車が北上しているような印象を演出。地下資源が多く、石炭が地下炎上しているという設定も天然ガスや石炭が多く産出されるウエストバージニアならではの設定かも。人工は減少傾向でさらに出生率も低く死亡率も高い…。場所の設定も最高で、山奥を失踪するジープとそれを追う白バイというのも忘れがたいイメージだ…。

グエムル~漢江の怪物~(ポン・ジュノ監督)

2008-01-16 | Weblog
ストーリー;西暦2000年2月9日。在韓米軍ヨンサン第八基地内部。ブルーに統一された実験室で英語で会話が行われる。西暦2002年6月。釣り人の二人が何か珍しい形の生き物が泳いでいるのを見つける。そして西暦2006年9月…。のんびりした秋空の下で金髪のソン・ガンホが居眠り。テレビでは家族の一人がアーチェリーの試合をおこない、娘のヒョンソが中学校から帰宅してきた。漢江の周辺ではデートにきた人や釣りをしている人などでいっぱい。そして突然、「それ」が漢江大橋のたもとにぶらさがっているのが目撃される…。
出演;ソン・ガンホ 、パク・ヘイル、ペ・ドゥナ
コメント;終始冷静にカメラが固定化されていて、非常に好ましい。ソン・ガンホのアップで始まり、アップで終わる構成は「殺人の追憶」そのもの。「怪物」のデザインはともかくとしても静かに流れる音楽と、ユーモアあふれる脚本作り。そしてラストでついに画面でも台詞でも明らかにされなかった別の「物語」がこの映画の裏側で進行していたことがわかる。夜の雪が画面の下にしずむラストをみて、観客ははじめて本当のエンディングを知るというすばらしい映画。主役は「怪物」ではなくて、やはりソン・ガンホやパク・ヘイル、そしてペ・ドゥナなどが演じる人間模様。青い色で統一された実験室と二人の登場人物のしらけた会話口調やビンが何本も横に並んでいるシーンが印象的。同様のあらすじ(たとえば映画公開時には日本の漫画「機動警察パトレイバー」との類似点などが指摘されたが、たしかに似てはいるが「パトレイバー」以前にも映画「アリゲーター」があったわけで、やはりこの映画は似ているようでぜんぜん違う別個の映画だろうと思う)の映画や漫画は多数あれど、この韓国という国が1980年代から続けてきた一つの歴史の流れがこういう形の映画や映像になって登場するのかと思うと非常に興味深い。日本ではやや韓国より早く1960年代安保でさんざんデモ行進した人間が大企業の管理職や国家公務員のキャリアになっていた時代とおそらく雰囲気が似ている。スローモーションというワザが多少使われてはいるのだが、すばやい動きをなるべく固定化して撮影を重ねていく作品の作りこみ画本当に素晴らしい。怪獣映画というよりもおそらく「人間模様」がどんどんかさなっていく映画なんだろうと思う。秋がすぎて冬が訪れる頃の演出となるともう無駄な台詞がまったくなく、観客は見ているだけですべてが把握できるという演出の凄さ…。

IMPRINT~ぼっけえ、きょうてえ~(三池崇史監督)

2008-01-16 | Weblog
ストーリー ; おそらく場所は日本。そして江戸時代とも明治時代とも、あるいは昭和前期ともとれないことはない架空の世界の日本の浮き島。遊郭だけが存在するその浮島に向かう船に一人のアメリカ人が乗っている。川の流れにはまた身を投げた女郎の仏様が浮かぶが船頭も秒客も「成仏しろよ」と投げ捨てるだけで、本当に同情している様子はみせない。そして船は浮島につき、名も知れぬアメリカ人は格子によりもしないある遊女に目を留める。かつて自分が愛した女郎「小桃」を探してあらゆる遊郭を捜し歩き疲れ果てたそのアメリカ人はその遊郭に泊まる。そしてその遊女の口から語られる一夜のどこまで真実かわからない「物語」が始まる…。
出演 ;工藤夕貴 、ビリー・ドラゴ 、美知枝
コメント; あまりの凄惨な画像に途中真面目に気分が悪くなる。がどうしても画面に見入ってしまうのは、架空の話なのにとてつもなくリアリティがあるからだと思う。どこまでが真実かわからず、そしてどこが本当のエンディングかもわからないが、見ているうちに「業」という言葉を思い出すのは自分が日本人のせいか。髪型や服装はあきらかにモダンなのにもかかわらず、画面の中に流れているのは前近代的な日本。そしてその空間に紛れ込んだアメリカ人新聞記者は実は、この映画を見ている21世紀の日本人そのものだったりする。過去の「業」から逃れられないまま「銃」で解決しようとするアメリカ人は結局、画面の中の前近代的な世界からは逃れられないという「怖さ」。そして画面の中にでてくるのははてしがないほどの差別の抑圧の重なり合い。どこまでいっても誰かが誰かを抑圧して、最後には正義というものはどこにもないという「逃げ場のないエンディング」を迎えるのが苦痛を通り越して快感にさえなってくる。これが三池監督の「技」といえるのかもしれない。ただただ残虐なだけでなく、ラストに見えるのはおのおのがおのおのの「美学」に酔いしれる時間…。
 ビリー・ドラゴの演技がだれかに似ている…と思ったらクリント・イーストウッドだった。風貌も往年のクリント・イーストウッドを思わせるが、履歴を調べてみると「ペイルライダー」に出演している。悪者保安官の手下役だったと思うが顔つきはなかなかのもの。ただクリント・イーストウッドにはありえない大仰な身振りがちょっといただけない。どうせだったら静かな動きで演技すればよかったのだと思うが…。抑制したぎこちない動きがあれば工藤夕貴の演技との対比がもっと鮮明になったのに…と思わずにはいられない。これがもしクリント・イーストウッドだったらさぞかしもっとすごい映画になっていたのだろう。

ホテル・ルワンダ(テリー・ジョージ監督)

2008-01-16 | Weblog
ストーリー ;1994年。古くはベルギーの植民地時代にベルギーに協力して奴隷を「輸出」していたツチ族と逆に輸出されていたフツ族。首都キガリでミシュラン4星の高級ホテルの支配人を勤めるポールはそんな中でもツチ族の妻タティアナと息子たちと仲良く暮らしていた。しかしホテルに来客したVIPやそのほかの人間から「高い木を切れ」という暗号に隠された意味を知らされ、不穏な空気が流れ始める。実際に100万人以上のツチ族が虐殺された歴史をふまえて展開される実際にあった話の映画化。最初は日本では主要な映画配給会社は配給しなかったが、アカデミー賞の3部門ノミネートされ、話題に。
出演 ;ドン・チーゲル、ニック・ノルティ、ホアキン・フェニックス
コメント;さっそく映画を見終わったあとに地図を見る。ルワンダという国名すら知らなかったが、コンゴの右横にある本当に小さな国だ。映画の中にでてくるRPFとはルワンダ愛国戦線というツチ族の戦闘集団のことらしい。政治的にはフツ族が政権を握っていたが、ツチ族のRPFが抵抗。そしてフツ族によるツチ族の虐殺が始まり、周辺諸国に難民が流出したという経緯をたどる。映画の中での国際連合の部隊は発砲ができない中、必死でホテル・ルワンダを虐殺から守ろうとし、マスコミも必死で報道しようとするが、各国の部隊は撤退。国際連合が仲立ちして虐殺を停止させたとあるが、実際には映画の中でみるように虐殺が始まってから落ち着くまでに100万人近い人が亡くなっている。政府軍と民兵の複雑な協力体制やコヒバ葉巻を吸う姿だけを真似していた支配人が自分自身を恥じる場面。そして、電話による国際支援援助運動など当時のツチ族の人たちの必死さと国際社会の無関心さがうきぼりにされる作品。当初まるで無視されてしまった映画だからこそ、これだけの評判を呼んだと思われる。オリバー・ストーンのような虐殺だけを題材にしないところが素晴らしい。