夢千夜 1000dreams

漱石「夢十夜」へ挑戦する

291夜

2005-10-31 21:07:42 | Weblog
開かずの踏み切り。無数の人と車が待っている。もうすぐ電車がやってくるベルが鳴り響いている。私の乗ったバスは時間通りにここまでやってきた。バスは遮断バーをフロントバーで押し、強引に踏み切りに進入する。遮断バーは最初抵抗するが、バスの圧力に負け、グンヤッと曲がってバスを線路に入れる。線路は四本ある。最初の線路をバスの尻が抜けた瞬間、電車がやってくる。バスの運転手は毎日のことなので、電車のダイヤを秒刻みで把握している。二本目の線路を抜けた瞬間、今度は逆方向から電車がやってくる。バスの尻と電車の鼻がミリ刻みですれ違う。三本目の線路を抜けた瞬間、次の電車がやってくる。四本目は向こうの遮断バーを押して進む関係上、アクセルの踏み方を強くしなくてはならない。ギュッと踏み込んでバーを押し、グンヤッと踏み切りを抜けた瞬間、四本目の電車がやってくる。電車の運転手もバスの運転手を信頼しているのでスピードを緩めたりはしない。こうやってバスも電車も時間通り運行する。

290夜

2005-10-30 09:00:48 | Weblog
私は女の股間にペニスを挿入する。が、私にも快感がないし、女も不快な表情をしている。ヴァギナとは別の穴にペニスが挿入されているらしい。見ると尻の穴、ヴァギナの前にもう一つ別の穴がある。内部は薄い粘膜の袋になっていて、強く突くと破れてしまいそうだ。どうやらそこに入れてしまったようだ。私は改めてペニスをヴァギナに挿入する。今度は女もうっとりと快感に浸っている表情を見せる。快感が高まると、女は口から長い紐のようなものを出す。直径三cm、長さ二〇cmはある。黄色と黒の横縞模様になっている。これは舌ではなく、クリトリスの発達したものだ。ピストン運動を激しくすると、女も黄黒の紐を激しく出し入れする。私も女が快感に浸っているのでうれしい。

289夜

2005-10-29 11:15:52 | Weblog
小さな地震だったが、テレビの速報によると津波の恐れがあるという。二階の窓から見ていると、ずっと向こうに横一線の水の盛り上がりが見える。ここは海岸線から数キロは内陸なのに津波が押し寄せてきたわけだ。もう逃げても遅い。私は二階の窓をすべて開け放し、津波をやり過ごすことにする。待っていると、水はゆっくり前の窓から部屋の中に入ってくる。高さは私の腰の辺りだ。十秒程度水は私の部屋に留まっていたが、後ろの窓から静かに去っていく。津波が去ったあとはすべてが水浸しになってはいるが、水は完全に引いて生活はなんとかできそうだ。

288夜

2005-10-28 16:48:06 | Weblog
普通の男子便所。アサガオは三つ並んでいる。大便所は一つ。大便所は広い。四畳半はある。真ん中に和式の大便器がある。木製だ。水洗式だが、上から覗くと、汲み取り式のように下の糞つぼが見える。糞つぼは六畳くらいの部屋だ。ちょうど天井の真ん中に便器の穴があいている。床は板張りで、便が床の真ん中に落ちると、六畳の床全体に水が流れるようになっている。糞つぼ部屋の一方は一面の障子。障子を透かして十分な外光が射し込んでいる。二方は白い壁。窓の反対側の一方には襖がある。排水は完璧に設計されていて、糞が流れ終わったあと、部屋が水浸しになったりすることはない。部屋の中には、いろいろな生活道具がきちんと置かれている。それらも排水が完璧なせいで水に濡れたりすることはない。今は外出しているが、誰か人が住んでいるのだろう。ときどき糞が落ちてくることさえ我慢すれば、快適な部屋といえる。

287夜

2005-10-27 19:36:30 | Weblog
予備校の大教室。私は生徒の質問を受ける。「傍線部の問の解答なんですが、この登場人物たちがここでカレーを食べるというのは納得できません」と生徒は言う。「この人たちが食べたのはカレーではない。魚だ」と私は答える。私は昨夜の夢の中でこの小説の中にいて、この人たちといっしょに魚を食べたことをはっきり覚えている。「魚だ」と私は断言する。「魚だったんですか。魚なら納得できます」と生徒は納得する。やはり実際に経験したことは説得力があると私は会心の笑みをもらす。

286夜

2005-10-26 14:25:27 | Weblog
普通の和室。六畳。炬燵が真ん中にある。私は炬燵の一面に座っている。私の他に一組の夫婦とその子供がいる。炬燵の三面に三人が座っている。私は三人に部屋の外に出てはいけないと命令する。が、男は私に逆らって襖を開けようとする。私は怒って子供の頭を両手で挟んでつぶす。紙風船をつぶす感じで子供の頭がつぶれる。血や脳漿が少し飛び散る。夫婦は黙って見ている。私はそれでも腹立ちが収まらず、女の頭を拳で殴る。女の頭は割れて砕け散る。かつて顔があった部分に今は何もない。次に私は男の頭を殴る。男の頭も砕け散る。それでやっと私は腹立ちが収まる。私の命令に逆らったからには、この程度の罰は当然だと思う。

285夜

2005-10-25 19:23:22 | Weblog
バスの終点。私が座席の上で目を覚ますと、新しい客が乗り始めている。ここまで乗ってきた客の中で私が一人取り残された形だ。私が急いで降りようとすると、運転手はまだ運賃を払っていないので駄目だと言って降り口を開けてくれない。私が運転手の所にいき、運賃を払おうとすると、バスは出発してしまう。私は終点で降りなければならないので焦る。運転手は「客が降りる停留所がきたら降ろしてやる」と言う。最初の停留所で私が「降りる」と言うと、「お前は正規の客ではないから降りる資格はない」と言う。「正規の客が降りるならお情けでいっしょに降ろしてやる」と怒って言う。いくつも停留所を通り過ぎるが、正規の客が降りる気配はない。バスは細い道で、さらに乗用車が半分ふさいでいるような所を通り抜ける。一ミリ単位の計算をして進路を決めているらしい。バスは終点からどんどん離れていく。正規の客はじっと座ったまま降りようとしない。

284夜

2005-10-24 20:51:26 | Weblog
広大な屋敷。主人は有名な画家だ。庭に潜水艦ほどもある巨大な石が埋まっている。ゴキブリ型で、黒光りしている。周りは緑の芝生だ。私は巨大石の天辺に裸足で立っている。ツルツル滑って危ない。私の足の下に直径二十センチの穴が数十も並んでいる。穴から水が流れ下っている。その水はこの屋敷の便所の浄化水だ。便所からこの巨大石にパイプがつながっていて、糞尿交じりの水が内部の複雑な穴を通過することによって浄化されるという。天辺の穴から出た水は天然水にも勝る名水として客に供される。さすが芸術家はこんなにも芸術的なやり方で便所の水を浄化するのかと私は感動する。

283夜

2005-10-23 11:28:57 | Weblog
海辺の平凡な公園。ブランコやシーソーや、どこにでもある遊具が並んでいる。真ん中にゾウのオブジェがある。コンクリートで作った高さ一メートル五十くらいのオブジェだ。細部がデフォルメされていない十分なリアリティを持っている。子供が上って遊ぶには背が高い。私は衝動的にゾウにまたがってみたくなる。遊んでいる子供が見ている。私がゾウ使いのように耳の下を蹴ると、ゾウは走り出す。砂場を蹴散らし、ジャングルジムをなぎ倒す。ドンドンと砂浜を踏みつけて海に出る。コンクリート製なのに海の上を軽快に走る。私は子供に帰ったような痛快さを感じる。ゾウは一通り走り回ると、また元の場所に戻り、動かなくなる。

282夜

2005-10-22 10:29:42 | Weblog
私は知的で長身のおばさんに追われている。おばさんは私の体が目当てだ。私はおばさんが蕎麦屋で便所にはいった隙に店から飛び出る。おばさんが私の逃げる軌跡をたどることができないように路地をはいったり出たりジグザグの軌跡を描く。向こうに場外馬券場が見える。ここにいる男は例外なく博打で身を持ち崩した連中だ。何千人もの人間がクローンのように同じに見える。所所に一人の男を中心にしてサークルができている。中心の男は自分はどのような経路をたどって自殺せざるをえない状況に至ったのか大声で語っている。サークルの中心の男は皆同じようなことを語っている。博打で身を持ち崩すコースは誰でも同じだ。私も一つのサークルに混ざって話を聞く。ここに混じってみると、私もクローンのように周りの連中と同じ姿になっている。あのおばさんがここまで追ってきても、周りの連中と私を区別することはできない。私は絶好の隠れ場所を見つけてうれしい。

281夜

2005-10-21 15:08:47 | Weblog
駅の横の地下道を抜けると、私の住んでいるマンションの地下駐車場があり、そこのエレベーターで直接私の部屋がある二十三階まで上れる。ここ数十日降り続く雨で地下道には川のように水が溜まっている。水深は私の腰のあたりまである。天井からも雨のように水滴が落ち続けている。やっと駐車場まで来ると、そこは沼のようだ。向こうに小さな滝が落ちていて、それを潜ると、エレベーターだ。エレベーターの中にも水があふれていて、天井からもシャワーのように水滴が流れ落ちている。かろうじて動くエレベーターで二十三階まで上り、自分の部屋の窓から町を見下ろすと、町はすべて泥水に浸っている。三階以上のビルは泥水の上に頭を出しているが、それより低い建物はすべて水の中に沈んで見えない。見ているうちに増水し、四階から五階と水は上がってくる。私のいる階が水の中に沈むのも時間の問題だ。

280夜

2005-10-20 18:22:01 | Weblog
オーストラリアの砂漠。直径三十メートルの穴がある。深さは十メートル。底には産業廃棄物が溜まっている。無数の色が大理石模様のように渦を巻いている。模様はかなりのスピードで動き続け、一つの形に留まることがない。数十秒吸い続ければ気を失うような臭いが立ち上っていることを除けば、その模様は美しいとさえ言える。表面はかなりの重さの物体を数分留めるが、次第にそれを内部に吸い取ってしまうほどの硬さだ。私を含めて数十人の人が口を覆いながら穴を覗き込んでいる。さっき穴の中に馬が落ち込んだからだ。馬はしばらくのあいだ廃棄物の表面を動き回っていたが、次第にその姿を廃棄物の中に埋まらせ、ついには完全に姿を消す。金髪の少女が穴の中に飛び込む。そして片腕を廃棄物の中に突っ込む。少女の手に耳をつかまれた馬が、廃棄物の中から引きずり出されてくる。馬は完全に姿を現し、少女は馬の背に乗って走り回る。が、再び馬の体は少女とともに廃棄物の中に吸い込まれる。私たちは見ていることしかできない。

279夜

2005-10-19 15:40:22 | Weblog
砂浜に高層ホテルが建っている。しかし、よく見ると、それは建っているのではなく、砂に埋まっている。手でタバコのパッケージを砂に埋め込んだような形だ。入り口は海側にあるが、あとで壁に穴を開けて作ったものだ。入ってみると、そこが五十階で、この下にさらに五十階と地下十階あわせて六十階の建物が埋まっているという。五十階から下の階は窓から砂しか見えないが、今でもホテルとして機能している。砂に埋まった部屋の神秘的な雰囲気に惹かれて、多くの客が五十階より下の部屋を希望するという。なぜホテルがこんな状態になったのか、従業員は誰も知らない。私は今、三階の部屋にいる。つまり地下五十七階ということになる。体の中を流れる血液の音が完全に聞こえるような静寂さの中で、私は限りなく幸せな気持ちになる。

278夜

2005-10-18 15:02:27 | Weblog
砂浜。海は見えない。太陽が照りつける。私は白い兵隊に囲まれている。白い兵隊は整然と並んでいる。兵隊が着ている軍服はどこの国のものなのか、私にはわからない。上着もズボンも帽子も白い。戦闘服ではなく礼服のようだ。皆胸に小さな勲章を付けている。左肩に銃を担いでいる。皆微動だにしない。足を半歩横に開いたままじっと前方を見つめている。私も兵隊の中の一人だ。目玉をできる限り動かして自分の体を見ると、私も皆と同じ軍服を着ている。銃も担いでいる。私のすぐ前の列から自分の位置を数えると、私は右から五人目、左から五人目、つまり横列の真ん中にいる。縦列は重なっていて数えられない。私はなぜ自分がここにいるのか、まったくわからない。重い銃が肩に食い込む。足も疲れてふらついてくる。周りに兵隊の呼吸音だけが聞こえる。いつこの整列に終わりが来るのか、わったくわからない。

277夜

2005-10-17 20:06:47 | Weblog
ある都営モノレールの駅は、改札が映画館の入り口に直通している。ホームの横には映画館の大看板が見える。モノレールが駅に着くと、宇宙人映画でパニック状態になった観客が映画館から逃げ出してモノレールの中に殺到してくる。モノレールが満員になってもさらに多くの観客が続いている。中に入れないとわかると、モノレールの下に付いている金属の棒にしがみついてぶらさがる。これ以上ここにいたらモノレールが破壊されると思った運転手は、モノレールをバックさせ、バックのままスピードを出して、入り口にしがみついている観客を振り落とし、下の棒にしがみついている観客を払い落とす。ふと見ると、モノレールに平行してモノレールの十倍はあるUFOが飛んでいる。茶色のゴテゴテした外装のUFOだ。地球征服を目論んだ宇宙人が、特殊な装置を使ってスクリーンから実体化して飛び出してきたに違いない。宇宙人の科学力を持ってすればそれも可能だ。私の命も宇宙人の気持ち一つだ。