橋下府知事カジノ構想/賭博の上がりで財政再建を図る、その政治的創造性

2009-10-31 09:32:26 | Weblog

 橋下大阪府知事が〈大阪市内で企業経営者ら約750人を前に講演し、関西の活性化には都市ごとの役割分担が必要との考えを示したうえで、大阪について「こんな猥雑な街、いやらしい街はない。ここにカジノを持ってきてどんどんバクチ打ちを集めたらいい。風俗街やホテル街、全部引き受ける」と述べた。〉と29日の「YOMIURI ONLINE」記事――《「カジノも風俗街も大阪が引き受ける」…橋下知事》が報じていた。

 どんな理由からかと言うと、京都と奈良が世界に誇れる観光の街、神戸が日本を代表するファッションの街、そのように名を馳せているのに対して大阪をエンターテインメントの街として名を馳せしめることを初期目的としたいらしい。

 「大阪をもっと猥雑にするためにも、カジノをベイエリアに持っていく」

 猥雑(雑然として下品なさま)としていていやらしい街――これが橋下知事が望む活気ある都市のイメージということなのだろ。カジノを持ってきて、今まで以上に猥雑としたいやらしい街にグレードアップする。

 具体的にはどんな街かと言うと、バクチ打ちで賑わい、バクチ打ちと一緒にバクチに打ち興じる女、バクチで儲けた男たちに群がる風俗の女、あるいは逆に風俗の女に群がるバクチで儲けた男たち、当然そういった男と女が利用するホテル――いわばバクチとセックスに溢れた猥雑としていていやらしい街の出現を描いていて、そのような街を大阪のために活気ある風景とすることを初期的成果とするということなのだろう。

 外国の要人も、日本の政治家とか官僚といった要人も、あるいは大手企業経営者等がこっそりと訪れてギャンブルと女の刺激にありつくといったことも風景の一つとすることも考えられる。

 勿論、マスコミにすっぱ抜かれてセンセーショナルなスキャンダルとして報道されることも起こり得る。

 「TBS」記事――《橋下知事「カジノ構想」、関西活性化》

 ――きのう(29日)講演会で、またカジノ構想を関西ベイエリア・・・(?)、バクチ打ちを集めるとかいうようなお話されたようですが。

 橋下「アハハ、まあ、あの、そこだけ取られてしまうとね、表現はね、えー、講演会だったんで、えー、バクチ打ちとか、猥雑な街とか、まあ、色んな表現は使いましたけど――」

 橋下「きちんと環境を整えた形でのカジノというものは、カネを稼ぐ、地域がカネを稼ぐ重要なツールに僕はなると思ってますんで――」

 橋下「エンターテインメントの部分をすべて大阪で引き受けてもいいんじゃないでしょうかね。早く財布を一つにしてね、えー、上がった税収をみんなで分けるっていう、その方向に早く持っていかないと、オー、関西はもう、ほんとにもう、沈没してしまいます」(TBS動画から)――

 「関西が一丸となって、それぞれの役割分担をしたらいいと。エンターテインメントの部分をすべて大阪が引き受けてもいいんじゃないでしょうかね」 (FNN記事)

 「国に頼らず、地域で財源を生み出す仕組みをつくることが重要だ」 (同FNN記事)――

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 「早く財布を一つにしてね、えー、上がった税収をみんなで分けるっていう、その方向に早く持っていかないと、オー、関西はもう、ほんとにもう、沈没してしまいます

 カジノ開催を関西が沈没しないための、もうこれしかない最後手段と位置づけ、その上がりを財政再建の早急且つ「重要なツール」としたい、それが初期成果が次のステップとする最終目的だとしている。

 カジノ構想は周知のように橋下知事が最初ではない。上出「TBS」記事も触れているが、石原慎太郎都知事が2001年にお台場カジノ構想をぶち上げ、「国の頭が固すぎる」と言って断念しているし、2006年8月に当時自民党政調会長だった中川秀直が米軍基地の跡地を利用した沖縄カジノ構想を那覇のホテルで行った講演で披露している(「琉球新報」)。

 だが、カジノも風俗街もホテル街も全部引き受けるとなったなら、引き受けなくても雨後の筍のように風俗街やホテル街を出現させることになるだろうが、意図しないことであっても、闇世界をも引き受けることになる。「TBS」記事も大阪商工会議所の野村明雄会頭の声として伝えている。

 「集客施設としてこれほど大きなものはないと評価がある一方で、闇社会だとか、教育的に良くないとか、そういうネガティブリストを書き出したらきりがない」

 バクチで儲けた男たちからカネを搾り取るために闇世界の男たちが雇った女を派遣し、肉体で稼がせ、その稼いだカネを闇世界の男たちが搾り取る、あるいは個人経営の形で自主的に参加した女たちを威してみかじめ料を取って間接的搾取とする光景を出現させないではおくまい。

 警察が取締れば済むことだと考える者もいるだろうが、警察の取締まりが日本の売春防止法の条文が描いているとおりの禁止状況をつくり出しているのかというと、そうはなっていないその反映をカジノ世界にも描くことになることは間違いない。一般社会と同じく警察の取締まりは単なるモグラ叩きで終わるだろう。

 モグラ叩きのモグラは叩かれると一旦は姿を隠すが、モグラ自体の数は減るわけではない。釈放されれば活動を再開する者、新たに参入する者が出現して、決して跡を絶たないことは現実世界が証明している。

 いわば例えカジノを合法化しても、売春、あるいは闇世界という非合法まで招き寄せ、共存共栄を図ることとなる。

 となると、闇世界の活性・発展を背中合わせする地方の財政再建及び地域活性化、地域発展という皮肉な現象を覚悟しなければならない。
 
 このような構造を防ぐ有効な手段(絶対的手段ではない)は売春の合法化しかない。女性による肉体を武器とした経済活動の合法化である。勿論個人経営のみの合法化としないで、雇われた形を含めた合法化の場合、搾取の形態を残すこととなる。

 橋下知事はどちらの形態を取るのだろうか。売春を非合法のままにして闇世界が蔓延るに任せるのか、あるいは売春を合法化に持っていって、闇世界の活動の阻害・抑制を図るのか。どちらにしても覚悟のいるカジノ開催願望と言える。

 また女子高生や女子大生が、あるいは年齢を偽ってだろうが、女子中学生までがカジノとその周辺の華やかに活気づいた世界に出入りし、女子高生や女子大生であることを武器に、あるいは未成年であることを武器に小遣い稼ぎに、あるいは小遣いといった半端なものではなく、堂々たる経済活動に及ぶ場面の出現を考えると、橋下知事は全国学力テストで大阪府の成績が悪かったことから、大阪府の名誉のためにだろう、日本一成績の良い自治体にすると宣言したが、一方で成績の良い子をつくり出し、一方で学校文化と無縁の売春文化に生活する子どもたちをつくり出すその二重性まで、覚悟の一つに入れなければならない。

 女子中・高・大学生が小遣い稼ぎに売春する、援交するは一般社会で既出の生態だとしても、彼女たちからしたら、新たな活躍機会、新たな進出場所となる。橋下知事側から言うと、カジノ開催によって例え意図しないことであっても、新たな活躍機会・新たな進出場所を彼女たちに提供することになる。

 裏側に「全部引き受ける」とする「猥雑」で「いやらしい」世界を抱え込むこととなる、その実態と覚悟を差引いたとしても、賭博の上がりで財政再建を図ろうとする橋下知事の政治的創造性は見事と言うしかないが、その見事さを考えたとしても、余りに短絡的で貧しい政治的創造性と言えないだろうか。

 それとも何で稼ごうと、カネはカネだとでも言うのだろうか。この論理を正当化するなら、女たちが自分の肉体を武器とした経済行為で稼いだカネだけではなく、その経済行為自体も正当化しなければ、不公平となる。
 
 また大阪のカジノが成功した場合、その成功の独り占めは日本中殆んどの自治体が財政再建を迫られていることから、他の自治体からしたら指をくわえて眺めているだけで済ますわけにはいかず、我も我もと手を上げることとなったなら、政府としても大阪だけ許可と言うわけにはいかず、日本中カジノだらけとなって客足が分散減少することとなったなら、一頃は財政創出に貢献のあった競馬や競輪がその後客足が減って撤退する自治外が続出した二の舞とならない保証はない。


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