安倍晋三の「被災者の生の声に耳を傾ける」ことを直接耳にすることとしている勘違いが地震対応遅れの原因

2016-04-21 12:39:55 | Weblog

 
 4月19日、首相官邸で第10回地震非常災害対策本部会議が開催された。  

 と言っても、午後4時58分から同5時22分までのたったの24分間である。被災現場では様々な対応遅れが生じている。一生懸命地震に対応している姿を見せるためのアリバイ作りの可能性もある。

 文飾は当方。
   
 安倍晋三「全国の自治体からの応援職員が、第一線で頑張っている市町村を支えるため、続々と現地入りしてくれています。国としても、昨日の3市町村に加え、特に要員が不足している被災自治体に対し、一両日中に更に職員を投入します。被災自治体と一体となって、被災者の『生の声』に十分に耳を傾けて、対応に当たっていただきたいと思います。

 最初の地震発生から丸4日以上が経ち、被災者の方々の『心と身体』のケアについても、気を配らなければなりません。とりわけ、いわゆるエコノミー症候群の防止が急務です。

 直ちに取り得る応急の処置として、既に地元の保健師等による巡回指導に加え、車の中で睡眠をとる方々に対し、『寝る前に意図的に水分を摂る』など、エコノミー症候群の予防法についてのチラシの配布を始めていただいています。また、全国から50人の医師・看護師も駆けつけてくれており、今日の夜までに被災者に広く周知していただきたいと思います。

 エコノミー症候群を始め、避難所等での不自由な生活に起因する問題を根本的に解決するためには、住環境を早急に整備する必要があります。避難所からの移動先として、既に約1,500の宿泊施設、2,000戸を超える公営住宅や約1,500戸の民間賃貸住宅を確保しています。高齢者や慢性疾患を抱える方など、特に配慮を要する被災者で自宅に戻れない方々からできるだけ早く入居していただけるよう、被災者の状況や要望等に応じて、適切に割り当てる取組を被災自治体と共に、早急に進めていただきたいと思います」(一部抜粋)

 「被災自治体と一体となって、被災者の『生の声』に十分に耳を傾けて」と言っていることは、全国の自治体から派遣した職員に対して被災自治体の職員と共に被災者の声を直接聞いて、その要望に過不足なく応えるよう促す発言であろう。

 確かに被災者から直接耳に聞く「生の声」は現在進行形の被災体験者としての声だから、切実な指摘や示唆が含まれていることが多く、参考となる情報となり得る。

 だが、被災者から直接耳に聞く声だけを「生の声」と言うわけではない。ネット上の「実用日本語表現辞典」「生の声」を次のように解説している。  

 「生の声」

(1)編集や脚色が加えられていない、その人が発したそのままの発言や意見を意味する表現。

(2)ある物事を取り上げる際に、それに直接関わっている人の意見や感想を意味する表現。主にテレビ番組などで、出演する有名人ではない、街頭インタビューなどで得た一般市民の発言を指して用いられる。あるいは、商品の紹介などで、実際にその商品を試した人の発言を指して用いられることもある。 ――

 「生の声」を発する主体は現在進行形の体験者ではなくても、過去形の体験者であってもいいし、あるいは新聞やテレビ等のマスメディアを介した過去・現在に関わらない被災体験者であってもいいということになって、後二者からも「生の声」を知ることができることになる。

 勿論、過去・現在進行形それぞれの被災体験者の「生の声」が断絶しているなら、過去の被災体験者の「生の声」は現在進行形の被災体験者の「生の声」として役には立たないが、何日前かの当ブログに取り上げたようにそれぞれが発する声は定番化している。

 どの災害であっても、当初は食料が足りない、飲み水が不足している。それがある程度満たされると、トイレが満足に使えない、トイレットペーパーが足りない、常備薬を失って、薬が手に入らない、生理用品が不足している、プライバシーを守ることができないといった「生の声」に変わっていく。

 いわば「生の声」はある一定のパターンを踏んでいて、定番化している。

 当然、大自然災害に新たに遭遇した現在進行形の被災者の「生の声」は、その声を直接耳に聞くのを待たずとも、1995年の阪神大震災、2004年の新潟中越地震、2011年の東日本大震災等々に対するそれぞれの政府の対応や、現地を直接訪れて被災者の「生の声」に直接耳を傾けた災害研究の専門家や国会議員の情報、あるいはマスコミが現地から発信した様々な情報を仔細に点検・検証することによって一定程度、あるいはそれ以上にあら方知ることができることになる。

 だが、安倍晋三は地震発生から5日目も経ってから、現在進行形の被災体験者の「生の声」を直接聞いて過不足なく対応するよう促した。

 このこと自体が対応遅れを生じさせている証明となる。

 なぜならテレビや新聞を通して既にマスコミが「生の声」を十分過ぎる程届けているし、過去の災害からも学習できていることであるし、学習していなければならないことだから、それらに応じて地震発生早々から順次的確な対応を打っていく場面を展開させていかなかればなかったはずだが、応じることができなかったからこそ、今更ながらに「生の声」を求めて、過不足ない対応に備えようとしたということであろう。

 対応遅れの例を挙げてみる。

 エコノミークラス症候群は2004年の新潟県中越地震で車中泊を続けていた被災者や多人数が避難している避難所で狭い空間の占有しか許されず、窮屈な姿勢を日常的に強いられていた被災者の間に発症し、うち4人が死亡したことによって表面化したという。

 そのため東日本大震災ではマスコミや医療関係者による被災者に対する頻繁な注意喚起が早くから行われ、このためなのだろう、発災から3日目のピーク時には全国で約47万人の避難者が出たとされている人数の割にはエコノミー症候群に罹った人数は少なかったとされているが、それでも2011年3月11日の発災から17日後の3月28日の早い時点で石巻赤十字病院の医師が避難所を回って調査に乗り出し、行った検診では診察した22人のうち12人から血の固まりが見つかり、このうち1人は精密検査が行われたと2011年3月28日付「NHK NEWS WEB」が伝えているから、かなりの人数の被災者がエコノミークラス症候群に罹っていたことになる。

 いわき市の高齢女性は車内での避難生活でエコノミークラス症候群になり、足を切断したとの報道もある。

 今回の熊本地震では地震発生直後から大勢の避難者が避難所に駆けつけ、入りきれない避難者が自治体が避難所としていない公共施設に入って避難所とし、一時どの公共施設にどのくらいの避難者がいるのか把握しきれないという状況が生じたが、そこでも入りきれないか、赤ん坊がいて泣くから、あるいはペットを飼っていて迷惑がかかるといった特殊な事情から車中泊避難者が続出した。

 当然、避難所に大勢が避難することで窮屈な姿勢を長時間強いられる被災者や車中泊避難者がエコノミークラス症候群を発症し、最悪死亡することを予想した迅速な危機管理対応を地震発生翌4月15日の可能な限り早い時間に取らなければならなかったはずだ。

 だが、一部の避難所で医師や保健師などが巡回する支援が始まっていることを伝えているのは4月18日付の「NHK NEWS WEB」からである。   

 記事は次のように伝えている。、〈一部の避難所では医師や保健師などが巡回する支援が始まっていますが、体調を崩す避難者もいて、中には重い症状で搬送される人もいました。また、18日になって初めて保健師が巡回してきたとか、避難者の中にいた医療関係者に支援してもらっているというところもあり、今後、避難生活を支える態勢づくりが課題になっています。〉

 正確には一部避難所で何日から始めたか分からないが、地震発生の翌4月15日から3日後になっても医師や保健師による健康相談や診察の巡回は全ての避難所や車中泊避難者が車を止めている全ての駐車場で行う程の危機管理状況とはなっていなかった。

 また、巡回支援が「一部の避難所」に限られているということは全ての避難所に手が回らない人手となっていることを意味していることは4月18日午前の官房長官の菅義偉の記者会見の発言を伝えている「NHK NEWS WEB」によって証明することができる。 

 菅義偉「現在、熊本県の市町村の保健師が避難者を巡回して健康管理や心のケアを実施しているが、全国の自治体と派遣調整を行い、避難者の健康管理に万全を期していきたい」

 要するに熊本県内の市町村の保健師だけでは手が回らないから、全国の自治体に保健師の派遣要請を行い、調整後に派遣して貰うことになるとの方針の伝達となっている。

 このことを地震発生後の4日目にして決める。テレビや新聞が伝える、あるいは自治体からの情報を集約した4月15日の避難所の避難状況や車中泊の台数、さらに4月15日だけでも00時03分の震度6強の余震、引き続いて震度6弱とか、震度5弱、震度4等々の余震が引き続いていることからも、避難所の避難と車中避難が長引くことを予想して、全国の自治体に保健師派遣の手配だけはしておくべきだったろう。

 なぜなら、人数の確認が必要だからだ。

 菅義偉が4月18日の記者会見で保健師の派遣を「全国の自治体と派遣調整を行う」と発言している以上、派遣は4月19日以降となる。

 派遣が何日になっているか、「静岡新聞」(2016/4/19 07:38)から見てみる。

 〈日本赤十字社静岡県支部は(4月)19日、浜松赤十字病院(浜松市浜北区)の医師と看護師、薬剤師、事務職員計7人の救護班を派遣する。現地のニーズに沿って、避難所で巡回診療などを行う。〉・・・・・

 静岡〈県は20日から、厚生労働省の要請と熊本県との災害協定に基づき、保健師を派遣する。保健師3人と運転手1人のチームが4泊5日の日程で、熊本県南阿蘇村の避難所での健康相談や衛生対策などに取り組む。約1カ月間で、8チームの派遣を予定している。〉・・・・

 日赤は準備のために本格的活動は4月20日からということになるかもしれないし、静岡県から派遣の保健師にしても、4月21日からの本格始動ということもあり得る。

 厚労省は4月20日に日本OTC医薬品協会に対して一般用医薬品の配送を熊本県薬剤師会対策本部依頼したと4月20日付「日刊薬業」が伝えている。   

 〈配送予定は21日か22日。19日午後7時の情報。〉と記載されている。

 「日刊薬業」のサイトにはこの手の記事は他には見当たらない。

 医薬品不足は東日本大震災でマスコミによって散々に報道され、災害時に於ける定番化した不足品の範疇に入れておかなければならなかったはずだ。

 だが、学習していなかったようだ。

 こう見てくると、対応遅ればかりが目立つことになる。このような対応遅れは安倍晋三が熊本地震発生後5日目の4月19日になって初めてエコノミー症候群に触れ、改めて住環境の整備を言及している点にも現れているし、繰返しになるが、過去の災害対応を点検・検証して学習しておいた対応を以ってして支援に当たるのではなく、現在進行形の被災体験者の「生の声」を聞くことが何よりも的確な被災者支援となると認識していることから発している対応遅れであろう。

 安倍晋三の震災有事に於ける危機管理、その指導力に見るべき能力は期待できないことを証明して余りある。

 この無能力とは打って変わって軍事的有事に於ける自衛隊最高指揮官としての危機管理、その指導力に関しては有能さを余すところなく発揮するということは考えられないから、同等の無能力と見なければならない。

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