安倍晋三は2015年1月17日エジプト「政策スピーチ」は「イスラム国」への宣戦布告だと国会答弁した

2015-04-11 09:10:22 | 政治



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       《 4月7日(火)小沢代表の定例記者会見要旨ご案内》    

      【質疑要旨】

      ・積極的平和主義について
      ・集団安全保障について
      ・辺野古移設問題について
      ・統一地方選争点について
      ・子どもの貧困対策について
      ・政治家資質問題について
      ・『日本改造計画』続編について 

 4月8日参院予算委員会で民主党の小川敏夫元法相が2人の日本人が「イスラム国」に拘束されている状況下での安倍晋三の今年2015年1月17日のエジプト・カイロでの「政策スピーチ」を取り上げて、言葉への配慮を質した。

 最初に断っておくが、私は既にブログに書いているようにテロ集団が獲った人質の身代金要求には応ずるべきではないと考えている。身代金支払いによって人質の生命を救うことができたとしても、その身代金がより多くの生命を奪う軍資金となる危険性を否定できないし、テロ集団の延命資金とならないとも限らないからだ。

 このように言うことは人質一人の命を犠牲にすることで、与えた場合の身代金がより多くの命を奪うことを阻止する可能性を言っていることになることは承知している。

 但し国家がもしそのようにテロ集団と対峙することを基本姿勢としているなら、このことを前以て国民に伝えておく義務があるはずだ。身代金要求に応じないことを絶対前提として、その場合の人質の犠牲を覚悟しながら人質解放に努力している姿勢を国民の前に見せることは国民を欺いていることになるからだ。

 だが、政府は2015年1月20日に「イスラム国」が72時間以内に身代金を支払わなければ拘束している日本人2人を殺害すると脅迫する映像をインターネット上に公開するまで2人の拘束も身代金要求も隠していた。

 実際にも安倍晋三は身代金要求に応じないことと人質の犠牲との関係について、人質を犠牲にすることによって身代金を払わずに済み、身代金を払わないことによって人質を犠牲にすることになるという相互対応を可能性としていなければならないはずなのに、それを隠して関係国と協力し、人命第一に対応するよう関係閣僚に指示を出す表向きの態度で国民を欺いていた。

 少なくとも身代金要求には応じないこと、そのことによって人質が犠牲となる可能性を言い、別の方法で解放に努力することを国民に説明すべきだった。

 これが最初かどうか分からないが、少なくとも政府として、と言うよりも安倍晋三として身代金の要求には応じない姿勢を基本としていることを明らかにしたのは2人が殺害された後である。 

 2015年2月19日の衆院予算委員会。

 安倍晋三「そもそも政府としての立場はテロリストとは交渉しない。これが基本的な立場です」

 「そもそも」は「そもそもから」という言葉から「から」を略した言葉で、「最初から」という意味である。 

 断るまでもなく「交渉しない」ということは「取引きしない」ことを意味していて、人質解放の条件に身代金を要求しても、その取引きには応じないということを“最初から”の基本的立場としていたということの宣言である。

 安倍晋三は「最初から身代金の要求に応じるつもりはなかった」と言ったに等しい。

 だが、このことを国民に隠していた。

 確かに「イスラム国」は身代金要求からヨルダンで囚われている女性死刑囚との人質交換に取引きを変えはしたが、あくまでも日本政府が身代金要求には応じなかったことの結果である。

 要するに安倍晋三は2015年1月17日のエジプト・カイロでの「政策スピーチ」を行う際、2人の日本人がテロリスト集団に拘束され、身代金を要求していた情報を得ていた上で、その要求には応じない姿勢でスピーチに臨んでいたことを頭に置いて小川氏と安倍晋三の遣り取りを見なければならない。

 小川敏夫「現実に2人の日本人が捕らえられているという状況があれば、テロ組織に危害を与える口実を与えたりすることのないような配慮が当然あって然るべきだが、こうした総論的な考え方については総理はどうか」

 安倍晋三「イスラム国の2邦人殺害やチュニジアのテロ事件が示しているように今やすべての国がテロの脅威に曝されている時代になっていると思う。事の本質はテロのリスクを如何に低くしていくかの点だと思う。

 テロの威しに屈するような態度を取れば、テロは効果があると思われる。日本人がテロに巻き込まれる可能性が更に高まっていくことになる。

 カイロでのスピーチに関してはISIL(アイシル)自体が1月20日公開した動画に於いて我が国の支援を非軍事的支援だと認識し、彼らが出しているホームページ等で、あるいは動画でアラビア語、あるいは英語で表示をしているのだが、私のカイロのスピーチが非軍事的支援を行っている、人道支援を行っているのだということを明確に理解した上での行動である。

 1千万人以上の難民、避難民のための食糧・医療など命をつなぐための人道支援を行うことを表明すること自体がISILに対して刺激的であり、やめるべきであったと考えるのであれば、そのこと自体がテロの脅威を恐れる余り、テロリストの思う壺にはまっていく。

 国際社会は安保理決議を累次に亘って採択をし、テロと戦う決意を鮮明にしている。この過激主義の流れを何としても止めなければならないわけで、(テロリストが)人質を取ってしまえば、テロとしっかり戦っていくという決意が揺らぐ、あるいは団結が揺らぐ、そしてそういう中で頑張っている穏健派に対する支援すら表明できなくなってしまうという状況をつくれば、まさにテロの思う壺ではないだろうか。

 私は日本はそうはなってはならないと思う。大切なことは過激主義と最前線で直面している穏健イスラム諸国を日本の責任ある一員として支援をしていく。彼らは一人ではない、我々も一緒にいるというメッセージを出し続けていくことではないのか」

 小川敏夫「総理は私の質問には何も答えていない。私は『イスラム国』、テロリストは決して容認できない。これに対応するのは当然各国が強調していくべきだと言っている。援助することに何の異論もない。

 ただ、そうした考えがあるとしても,人質が捕らえられているんであれば、人質の生命・身体に危害が加えられないような配慮をするべきではないか、あるいはした方がいいのではないかと聞いているのであって、今のようにテロに向かう覚悟・決意を聞いているのではない。

 テロに立ち向かう。テロに屈する必要は全くない。全く同感です。そのことについて総理に聞いているのではない。具体的に聞きます。パネルに印したカイロでの記者会見で述べた二つ(の発言)を取り出してみた。
  
 『日本政府は、中東全体を視野に入れ、人道支援、インフラ整備など非軍事の分野で、25億ドル相当の支援を、新たに実施いたします。』

 この表現について何の異論も批判もない。

 しかし、『イラク、シリアの難民・避難民支援、トルコ、レバノンへの支援をするのは、ISILがもたらす脅威を少しでも食い止めるためです。地道な人材開発、インフラ整備を含め、ISILと戦う(赤太文字はそのママ)周辺各国に、総額で2億ドル程度、支援をお約束します。』とこのように表現している。

 これは『イスラム国』を刺激する言葉ではないのか。現実に総理の発言があった後、あの悲惨で非道な殺害が起こった。この後半の部分、総額2億ドル程度はこれは上にある25億程度の(支援の)一部です。なぜ重ねてここでISILということを強調した発言の必要があったのか。

 あるいはそういう(人道支援という)目的があってもいい。しかし日本人が人質として捕らえられているという現実を踏まえるなら、これは言葉に出さないで、しかしテロには厳しく対応する姿勢があるべきだったと思いますが、総理、如何ですか」

 安倍晋三「私は中東を訪問し、カイロに於いていわば政策スピーチを行った。これは中東、世界に於いて注目されるスピーチであった。そこで日本は世界の課題とどう立ち向かっていくのか、どう課題を解決に向かって貢献していくのか、メッセージをしっかりと出していく必要があると考えた。

 ISILこそ、イスラムの人々にとって大きな脅威になっているのはないだろうと思った。人々を平気で殺し、人々からおカネを巻き上げて生活を塗炭の苦しみの中に突き落としているのはまさにISILである。

 そのことに触れないで、あるいは彼らにどう対応していこうかということを述べないで、それこそまさに日本がメッセージを歪めるものになると、こう思います。

 先程は私は明確にお答えをした。(一段と声を強めて)人質を取られているからと言って、そういうスピーチをしない、人質を取られていいなければ、そういうスピーチをするということなら、人質を取っていれば、その国の言論を変えることができる。あるいはISILの侵蝕に対して頑張っている、あるいは難民を受け入れていることに対してもISILは威かしをかけている。

 しかしその威かしに屈せずに頑張っている国々に対して私たちもあなたたちを支援していきますということをメッセージとして出していくのは当然のことだと思う。それはISILが日本の人質を取ろうとも、私たちはそれを曲げることはない。

 そのことによって国際社会はISILの動きを止めることができるんだろうと、この信念を私は変えることはありません」

 小川敏夫「総理の話を聞いていると、そうした大きな国家のためには一人ひとりの国民の命は顧みなくてもいいんだと言っているように聞こえる。例えば総理、同じ時期、ヨルダン軍は兵士が人質に取られた。その瞬間、空爆を取り敢えず中止している。人質が捕らえられれば、捕らえられている人質への危害、生命への危害、身体への危害を配慮した対応をすることはテロに屈する(ことになる)ということを言っているのではない。

 言いなりになれと言っているのではない。それはそれで厳然たる姿勢で臨まなくてはいけないが、人質が捕らえられているんだから、人質に危害が及ぶような言質や口実を与えるような言葉は控えて、国民の一人ひとりの生命を守るような配慮をすべきではなかったかとお尋ねしているんです」

 安倍晋三(笑いながら立ち上がって)「私は今小川さんの質問に拍手が出たことに唖然と致しました。まさに日本から人質が取れば、日本の意思を挫くことができる。それでいいんだと宣言しているようなもんだろうとこのように思う。

 ヨルダンは空爆に参加し、パイロットを人質に捕らえられた。しかし彼らは決してISILを非難することはやめていません。空爆は一時作戦上の理由はあったんだろうと思う。しかしヨルダンの国王と会談を行い、ISILの動きを止めていくことこそ、穏健派イスラム諸国の責任であるとはっきりとおっしゃっている。

 そういう諸国をこそ、私たちは応援していかなければならない。そのヨルダンに対して難民を受け入れていることに対して私たちが支援を表明していることは当然ではないでしょうか。

 では、人質事件が長引いていけば、我々はそういうメッセージは出せないと、できないということになっていく。日本はそういう国になってはならないわけであるし、すべての国がもしそういう国になったとしたら、ISILはどんどんどんどんどんどん彼らの支配地域を増やしていくでしょう。

 場外から汚いヤジを飛ばしている人がいますが、我々はそういうヤジにも屈するわけにはいかない(自分の冗談に気をよくしてだろう、フッと笑う)。

 大切なことは我々は国際社会と連携しながら、このISIL、過激主義の動きを止めていくわけである。カイロに於けるスピーチのメインテーマは『中庸こそ最善』ということで、これはイスラムの人たちと共有できる。共有しながら、、この考え方を広めていくことによって中東の地域を平和と繁栄の地域にしていきたい。これこそ私のメッセージで、スピーチのメインテーマあるということは申し上げておきたいと思う」

 (大きな拍手が起きる。)

 小川敏夫「私も民主党もテロに屈するとは全く考えていない。この2億ドル程度の支援をやめろとも言っていない。だけど、人質が捕らえられているという状況下に於いて一つ一つの言葉の使い方についても配慮する必要があるんじゃないかと言っている。

 私も民主党もISILと戦うのをやめろとか、ISILに屈しろとか、人質を解放するために何でもかんでも要求を認めろなんていうことは言っていない。私は総理の言葉の中に大きな目的のため、国家の目的のためには国民一人一人の生命は配慮しない、そうした姿勢が現れているなと感じた」

 次の質問に移る。

 安倍晋三は今回の国会答弁で「カイロに於けるスピーチのメインテーマは『中庸こそ最善』」という哲学だと言い、具体的政策として非軍事的な人道支援の表明だと言っているが、国会答弁全体ではそうはなっていない。

 「事の本質はテロのリスクを如何に低くしていくかの点だと思う」と言い、「テロの威しに屈するような態度を取れば、テロは効果があると思われる。日本人がテロに巻き込まれる可能性が更に高まっていくことになる」と言っていることは、カイロでの「政策スピーチ」はテロの威しに屈しないことの宣戦布告であり、その宣戦布告が単なる言葉ではないことの証明として「ISILがもたらす脅威を少しでも食い止めるため」を目的とした中東各国に対する支援を掲げて、「地道な人材開発、インフラ整備を含め、ISILと戦う周辺各国に、総額で2億ドル程度をお約束します」とISILと戦うことを目的とした具体的な金額を挙げたことになる。

 いわば人道支援を“そもそも”の目的としたのではなく、「イスラム国」の脅威阻止を“そもそも”目的として、日本は軍事的支援ができないから、人道的支援を申し出たのである。

 安倍晋三は「国際社会は安保理決議を累次に亘って採択をし、テロと戦う決意を鮮明にしている」と発言している。

 このことを前提とすると、「大切なことは過激主義と最前線で直面している穏健イスラム諸国を日本の責任ある一員として支援をしていく。彼らは一人ではない、我々も一緒にいるというメッセージを出し続けていくことではないのか」と言っていることの「日本の責任ある一員として支援をしていく」の「支援」は「テロと戦う」ことの支援であり、「我々も一緒にいるというメッセージ」はテロとの戦いに「一緒にいるというメッセージ」ということになって、テロの威しに屈しないことの宣告以外の何ものでもないことになる。

 また、カイロの「政策スピーチ」は「日本は世界の課題とどう立ち向かっていくのか、どう課題を解決に向かって貢献していくのか、メッセージをしっかりと出していく必要があると考えた」内容だと言っていることの「世界の課題」とは安保理が決議を採択したテロと戦いを指し、世界がテロ集団の勢力拡大阻止を目的としていることを課題としている以上、「政策スピーチ」で出したメッセージはテロとの戦いの宣告としなければならなくなる。

 いわばテロとの戦いを優先させたこの内々の宣戦布告が一段と強調する口調で述べた、「人質を取られているからと言って、そういうスピーチをしない、人質を取られていいなければ、そういうスピーチをするということなら、人質を取っていれば、その国の言論を変えることができる。あるいはISILの侵蝕に対して頑張っている、あるいは難民を受け入れていることに対してもISILは威かしをかけている」という人質の存在を無視した国会答弁となって現れたのであり、内々の宣戦布告と国会答弁はその趣旨に於いて整合性を持ち合うことになる。

 さらに支援声明を「政策スピーチ」にメッセージとして出すことは「それはISILが日本の人質を取ろうとも、私たちはそれを曲げることはない」と、内々の宣戦布告の不変(=テロとの戦いの不変性)を強調することで、「政策スピーチ」が「イスラム国」に対する宣戦布告であることを図らずも自ら告白した国会答弁だったとすることができる。

 繰返しになるが、安倍晋三は2015年1月17日のエジプト・カイロでの「政策スピーチ」を行う際、2人の日本人がテロリスト集団に拘束され、身代金を要求していた情報を得ていた上で、人質の生命が犠牲になることも覚悟して身代金要求には応じない姿勢でスピーチに臨み、あのような「イスラム国」に対する宣戦布告の文言となったのである。

 安倍晋三は人質の生命を犠牲にすることはあってもテロリストの身代金要求には応じないことを基本姿勢としているのだから、小川敏夫の「総理の話を聞いていると、そうした大きな国家のためには一人ひとりの国民の命は顧みなくてもいいんだと言っているように聞こえる」等の発言に対して民主党席から拍手が起こったことに、笑いながら、「私は今小川さんの質問に拍手が出たことに唖然と致しました」と反応するのは当然である。

 安倍晋三はあくまでも国家優先の立場に立ち、国家を生かすことを優先させて、そののちに国民を生かす国家主義を政治信条としている。国民を生かすことを優先させて国家を生かす国民主義を自らの政治信条としているわけではない。

 前者は国家を生かす目的のためには国民を殺すこともあり得ることになる。後者の国民主義は国民と国家を限りなく運命共同体の関係に近づけなければ、成り立たない。

 当然、安倍晋三のこのような国家主義を前提に「国民の生命と財産」とか、「国民の幸せと暮らしを守る」等々の言葉を聞かなければならない。

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