安倍晋三の中南米資源外交、マスコミのスポットライトを浴びて派手に見えるが、その実質は?

2014-08-01 07:12:47 | Weblog



 安倍晋三がメキシコ、トリニダード・トバゴ、コロンビア、チリ、ブラジルの中南米5カ国を訪問中だという。経済成長見込み可能な「6億人市場」の中南米をターゲットに成長戦略の柱のインフラ輸出推進、資源・エネルギー開発等の経済連携強化、さらに2015年実施国連安全保障理事会非常任理事国選挙の協力要請が目的だそうだ。

 一番の目的は資源調達先の一部に中南米各国を組み込むことなのか、これを以て資源外交だと、一部マスコミは高く評価している。《安倍首相、中南米で資源外交に奔走》MSN産経/2014.7.30 15:27)

 〈豊富な天然資源を抱える中南米諸国に対し、技術力や資金力を武器に官民による開発を訴えることで供給源の多角化を図り、エネルギー安全保障の強化をもくろんでいる。

 首相が28日(日本時間29日)に到着したコロンビアは、石炭で南米1位、石油で3位の生産量を誇り、ニッケルなどの鉱物資源開発も進む。首相は29日午前(日本時間30日未明)のサントス大統領との首脳会談で、資源・エネルギー分野での日本企業の技術や人材を売り込み、資源開発や日本への供給のための環境整備で一致した。〉――

 安倍晋三「メキシコの石油増産やシェールガス開発が、世界のエネルギー市場の安定にとって重要だ。日本の技術と資金が今後有効に活用されることを期待する」

 カネを出して資源を買いつける国が一国でも増えれば、あるいは買い付け量を増やせば、それだけ利益を得ることができる。買いつけが各国競う形になると、望むまいと自然に値が上がる。それを技術も提供してくれる、開発資金の提供してくれるとなれば、なお結構となる。日本が資源を買いつけると、その国の資源が値下がりするというなら、どの国も断るだろう。

 日本でもちょっとした高級店にカネを持って高級品を買いにいけば、バカでもチョンでも大切なお客さんとなって、「いらっしゃいませ」と頭を下げられて、丁寧なオモテナシを受ける。

 オモテナシが日本人の心からだけ発するサービス精神であるとは限らない。どこの国の人間も相手がお客さんという立場で訪れたなら、それなりのオモテナシの精神を発揮するだろう。何しろカネになる話である。

 資源を買い付ける国が不景気になって、それが世界的に波及し、売れなくなって、全体的販売量が減って利益を下げたとしても、生産調整をして値崩れを防ぎ、経営自体の維持を図る。いくら不景気でも、資源自体が不必要になることはないから、資源保有の強みは資源が底をつくまで失うことはない。

 リーマン・ショックで日本が不景気に陥ったとき、企業は情け容赦なく派遣切りの雇用調整を行って、経営自体の維持を図ったようにである。

 資源調達先の多角化は湾岸戦争やイラク戦争、中東の様々な紛争を教訓に前々から言われていたことである。だが、13億の国民を抱えて国家を成り立たせていかなければならない中国の切迫感、前以ての危機感に日本の国家経営の切迫感・危機感は太刀打ちできなかったらしく、アフリカに於いても中南米に於いても中国の資源外交の後塵を拝することとなっている。

 貿易総額に関して言うと、中国は2005年に日本を追い越して、2013年には約3.6倍まで差を広げていると「毎日jp」記事は伝えている。この差は中国と日本の中南米に於ける浸透度の違いでもあり、力の入れ方の違いでもあるはずだ。

 そしてこの違いは中国と比較して石炭で南米1位、石油で3位生産量のコロンビアの資源、その他の中南米の国々の資源が持つ重大な利用価値を見逃してきたことによって現れた違いでもあるはずだ。

 訪問時はマスコミがスポットライトを煌々と当てるから、さも立派な資源外交に見えるが、何事も作用対反作用の力学が働く。安倍中南米資源外交が中国に対抗する目的を持っていたとしても、中国は相手国の官民との間に築き上げたコネクションをフルに利用して一度つけた差の維持を図るか、あわよくば更に差を広げようとするだろうから、差を縮めることすら困難な壁として立ち塞がらないとも限らない。

 資源調達先の多角化は前々から言われていながら、実質的にはこの程度なのが安倍中南米資源外交の正体と見なければならない。中国の切迫感・危機感に対抗する日本の切迫感・危機感は安倍晋三が「朝早く起きて額に汗して、働き、作物をつくって、秋には五穀豊穣を祈る瑞穂の国、これを私は目指していきたい」と日本の将来像を思い描いているようでは所詮、期待不可能なのかもしれない。

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