ひまわり博士のウンチク

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大江志乃夫さん死去

2009年09月23日 | 昭和史
S_ohe_p
 
 歴史家の大江志乃夫さんが、去る20日に亡くなっていたそうである。
 大江志乃夫さんは1985年、日露戦争後に起こった兵士の脱走事件をもとに、明治の軍隊を歴史小説風に書いた作品『凩(こがらし)の時』で大佛次郎賞を受賞している。
 日清・日露戦争を中心にした近代軍事史に詳しい。
 二部作である『東アジア史としての日清戦争』『世界史としての日露戦争』は、当事国だけの問題ではなく世界の趨勢による影響を受け、政治的錯誤の戦争であったとの視点から、日本の侵略戦争の構図を詳細に描いている。
 大江さんの代表作の一つに数えられる労作だが、版元の立風書房が倒産したために絶版となり、一時は古書でも入手しにくかった。
 立風書房は学習研究社に吸収合併されたものの、保守的な学研がこれらの著書を増刷するとは思えず、他社からの復刊が望まれる。
 
Shinobu_ohe
 
 大江さんの著作にはずいぶんお世話になった。○○について調べたいと思いつき、これがよいと買い求めると、それが大江さんの著作だったりする。
 気づけばこんなにあった。(撮影後、書棚に戻しながら、まだ何冊かあるのを見つけた)
 中公文庫の『張作霖爆殺』は、日中戦争の最初の頃を調べていた時に見つけて、このころはまだ、大江さんについてよく知らなかった。大佛次郎賞作家であることを知ったのは、後のことである。
 
 岩波新書の『靖国神社』はタイトルだけ見て買った本である。靖国にはただ反発していたので、その成り立ちも天皇との関係もまったく知らず、昭和史関連の本を作る上で、最小限のことは知っておいた方がいいと思って入手した本で、これも大江さんの著作であると意識していたわけではない。
 岩波書店が発行しているのだから、保守反動の本ではなかろうという、それだけの理由からである。
 
 失礼な話だが、自分が知らなければ著名人ではないと思い込んでいる人はけっこう多い。この頃の自分はそういう人間を笑えなかった。「ああ、この人けっこう近代史の本を出しているんだなあ」くらいにしか思っていなかったのである。
 
 びっくり仰天したのが、先の二部作である。これを読んで、すさまじいばかりの調査力と視点の斬新さに驚いた。それから立て続けに大江作品を読むことになる。15年ほど前のぼくにとって、大江さんと言えば大江健三郎ではなく大江志乃夫だった。
 
 本人は亡くなっても、著作は永遠である。これからも大いに役立てさせていただくつもりだ。
 81歳だそうである。現代の医学では、この年齢を長寿と言うか、もう少しと言うか微妙だが、ぼくの感覚ではもう少し生きていていただきたかった。
 残念ながら、一度もお会いしていなかったのだ。それが心残りである。
 
 ご冥福をお祈りする。
 
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