土井敏邦
パレスチナ記録映像4部作
完成記念シンポジウム
??ガザ緊急報告??
土井敏邦さんの20年間にわたるパレスチナでの取材映像が、4本のシリーズにまとめられるまであとわずか。その完成記念シンポジウムが明治大学リバティータワーで行なわれました。
今日はそのダイジェスト版(1時間)を見ることができました。
パレスチナの記録は、広河隆一さんが膨大なアーカイブス版を制作していますが、土井さんの視点は、広河さんと幾分異なります。
土井さんの映像は、よりいっそう個人に密着しています。
たとえば、一つの家族をとらえると、さらに一人の少女にずっと視線を送り続ける、といったぐあいです。
内側に入り込む力は、他に類を見ません。
「またかよ、と言われるかもしれませんが」と前置きして語ることは、マスコミでは報道されない出来事の下半身について。
自爆テロとそれに対する報告という上半身だけを見ていると、戦争が終わるとすべてが終わったように見えます。しかしそうではなく、家族を失った子どもは生きるすべを奪われ、農地を破壊された農民は家族を食べさせることができないのです。
そういうことは、戦争が終わったあともずっと続きます。
「上半身が自爆テロと報復なら、下半身は占領と難民」であると、土井さんは2002年から使っているという手描きのイラストを示して説明します。(写真を見せられないのが残念)
また、テロと報復についても、その規模の違いをマスコミは伝えていないといいます。
「パチンコ玉をぶつけられた仕返しにミサイル攻撃をするほどの違いがある、まるで象がアリを踏みつぶすようなものだ」
これも手描きの図で説明します。
「高さの違う二本の柱も、真上から見ると同じに見える」
ハマスとイスラエル軍では戦力の差がまるで象とアリ。花火のようなロケット弾が一発撃ち込まれると、イスラエル軍は猛烈な空爆を繰返すのです。
マスコミの報道は、そうした一面的な見方である批判しました。多くのマスコミはイスラエル寄りといわれますが、まさにそのとおりです。
この日は、先月取材から持ち帰ったばかりの、ガザの最新映像も見せてもらいました。
この最新映像は3つのテーマに分けられています。
最初は「人的被害」。
イスラエル軍によって破壊された建物は、10日経ってもまだくすぶり続けています。
「燃えているのは白燐弾の破片です。もう10日以上も燃え続けています。水を掛ければさらに燃え広がりますから、自然に燃え尽きるのを待つしかありません」
送られて来た支援物資の食糧も燃えてしまっています。
爆撃で家が破壊され、そこに住んでいた36人のうち23人が死亡しました。
3歳から13歳の子どもも含まれています。
彼らがテロリストであろうはずがありません。
家族を失った13歳のアマルは、カメラの前で淡々と語ります。
「突然イスラエル兵が家にやって来たの。『この家の主人は誰だ』ってイスラエル兵は言ったわ。父は身分証明証もって両手を上げて、??こうやって、両手を上げて、『主人は私だ』って出ていった。そしたら、数メートル離れたところの兵隊が、いきなり父を撃ったの。ここ(左胸)とここ(右胸)とここ(額)」
このとき、幼い兄弟も含めて、子どもたちは自分以外全員殺されました。
イスラエルは、パレスチナ人をすべて、この世から抹殺しようとしています。
二つめは「産業の破壊」
苺畑がわずか1分で、白燐弾によって破壊されました。
「ここに武装勢力がいたとでもいうのか!」
農民がカメラに向かって叫びました。
400頭の羊と400頭の牛がいた農場は、50頭の羊が瓦礫の下に埋まり、救えた牛は100頭だけ。
「ここにはハマスもファタハもいなかった。なのにイスラエル軍はやりたい放題だ」
三つめは「殺す側の耕造」
荒れ果てたガザとは対照的に、のどかな雰囲気のイスラエルの街。
「私がテレビに出るのは最初で最後でしょうから、晴れ姿をよく見ておいてください」
土井敏邦さんがレポーターのごとく語りながら街を行きます。
「イスラエル国民の92%が空爆を支持したといいます。はたして彼らは何を感じ、何を思っているのか、聞いてみたいと思います」
空爆でなんの罪もない子どもたちまで死んでいることをどう思うのかと、若い女性にインタビューをします。
「せっかく土地を与えたのに、彼らは全部よこせっていうのよ」
塀で囲って封鎖している状態は、占領ではないと考えているようです。
「封鎖を解いたらテロリストが押し寄せてくるわ」
??ロケット弾で数十人死んだ報復に、ガザではすでに900人が死んでいるが。
「これまでに殺された人の数は、イスラエル人の方がずっと多いわよ。彼らは悪いことをしたんだから罰を受けるのは当たり前。そうよこれは罰なの」
イスラエルでは、パレスチナ人の子どもや一般人の死体など、ガザの実情を伝えるの映像は一切放送されないそうです。つまり、国に都合の悪いことは自国民にも知らされない。まるで戦時中の日本の大本営。
「マスコミが興味を持つのは、一番目だけでしょう。二番めと三番めは地味すぎてマスコミでは取り上げてくれません。しかし、大切なことは二番めと三番めにあります。戦争が終わったあとに残される、より多くの苦労は二と三にあるのですから」
土井さんが追い続けた一人の少女はアマルといいます。家族を失いこれからどうやって生きていくのか、将来はまったく見えていません。
「パレスチナ人という総体ではなく、アマル、あるいはムスタファという個人とつながることで、パレスチナ全体とつながることができると思うのです。わたしはアマル基金なるものを立ち上げられないだろうかと考えています。協力できる人がいたら名乗り出て欲しい」
この後、土井さんと朝日新聞社の川上泰徳氏、日本女子大教授の臼杵陽氏によるパネルディスカッションがあったのですが、午後1時から始まって、ただでさえ長い集会がすでに相当延びています。これも付き合っていると終わるのは7時ごろ。
で、パネルディスカッションはパスしました。
いつものことですが、JVJAの集会は予定通りにはまず終わりません。
今回は東京芸術大学を中心に、学制ボランティアが実にすばらしい資料集を作ってくれました。
写真の右下がそれで、アラビア語のニュースや資料を翻訳し掲載してあります。
とくにアメリカのオバマ大統領のパレスチナ問題に対する姿勢を分析したところはすばらしく、「ブッシュと大差ない」という結論を導き出していました。
こういった集会に参加するのは、資料集めも兼ねています。
通常手に入りにくいものや、埋もれて見落としているものなどが目にとまるからです。
今回の収穫は、岡真里さんの講演記録(左下)。
「DAYS」や「Actio」は模索舍でも入手できますが、ついでなので買っておきました。
◆~~~~◆~~~~◆~~~~◆~~~~◆~~~~◆
◆出版と原稿作りのお手伝い◆
原稿制作から出版まで、ご相談承ります。
メールでお気軽に galapyio@sepia.ocn.ne.jp まで
パレスチナ記録映像4部作
完成記念シンポジウム
??ガザ緊急報告??
土井敏邦さんの20年間にわたるパレスチナでの取材映像が、4本のシリーズにまとめられるまであとわずか。その完成記念シンポジウムが明治大学リバティータワーで行なわれました。
今日はそのダイジェスト版(1時間)を見ることができました。
パレスチナの記録は、広河隆一さんが膨大なアーカイブス版を制作していますが、土井さんの視点は、広河さんと幾分異なります。
土井さんの映像は、よりいっそう個人に密着しています。
たとえば、一つの家族をとらえると、さらに一人の少女にずっと視線を送り続ける、といったぐあいです。
内側に入り込む力は、他に類を見ません。
「またかよ、と言われるかもしれませんが」と前置きして語ることは、マスコミでは報道されない出来事の下半身について。
自爆テロとそれに対する報告という上半身だけを見ていると、戦争が終わるとすべてが終わったように見えます。しかしそうではなく、家族を失った子どもは生きるすべを奪われ、農地を破壊された農民は家族を食べさせることができないのです。
そういうことは、戦争が終わったあともずっと続きます。
「上半身が自爆テロと報復なら、下半身は占領と難民」であると、土井さんは2002年から使っているという手描きのイラストを示して説明します。(写真を見せられないのが残念)
また、テロと報復についても、その規模の違いをマスコミは伝えていないといいます。
「パチンコ玉をぶつけられた仕返しにミサイル攻撃をするほどの違いがある、まるで象がアリを踏みつぶすようなものだ」
これも手描きの図で説明します。
「高さの違う二本の柱も、真上から見ると同じに見える」
ハマスとイスラエル軍では戦力の差がまるで象とアリ。花火のようなロケット弾が一発撃ち込まれると、イスラエル軍は猛烈な空爆を繰返すのです。
マスコミの報道は、そうした一面的な見方である批判しました。多くのマスコミはイスラエル寄りといわれますが、まさにそのとおりです。
この日は、先月取材から持ち帰ったばかりの、ガザの最新映像も見せてもらいました。
この最新映像は3つのテーマに分けられています。
最初は「人的被害」。
イスラエル軍によって破壊された建物は、10日経ってもまだくすぶり続けています。
「燃えているのは白燐弾の破片です。もう10日以上も燃え続けています。水を掛ければさらに燃え広がりますから、自然に燃え尽きるのを待つしかありません」
送られて来た支援物資の食糧も燃えてしまっています。
爆撃で家が破壊され、そこに住んでいた36人のうち23人が死亡しました。
3歳から13歳の子どもも含まれています。
彼らがテロリストであろうはずがありません。
家族を失った13歳のアマルは、カメラの前で淡々と語ります。
「突然イスラエル兵が家にやって来たの。『この家の主人は誰だ』ってイスラエル兵は言ったわ。父は身分証明証もって両手を上げて、??こうやって、両手を上げて、『主人は私だ』って出ていった。そしたら、数メートル離れたところの兵隊が、いきなり父を撃ったの。ここ(左胸)とここ(右胸)とここ(額)」
このとき、幼い兄弟も含めて、子どもたちは自分以外全員殺されました。
イスラエルは、パレスチナ人をすべて、この世から抹殺しようとしています。
二つめは「産業の破壊」
苺畑がわずか1分で、白燐弾によって破壊されました。
「ここに武装勢力がいたとでもいうのか!」
農民がカメラに向かって叫びました。
400頭の羊と400頭の牛がいた農場は、50頭の羊が瓦礫の下に埋まり、救えた牛は100頭だけ。
「ここにはハマスもファタハもいなかった。なのにイスラエル軍はやりたい放題だ」
三つめは「殺す側の耕造」
荒れ果てたガザとは対照的に、のどかな雰囲気のイスラエルの街。
「私がテレビに出るのは最初で最後でしょうから、晴れ姿をよく見ておいてください」
土井敏邦さんがレポーターのごとく語りながら街を行きます。
「イスラエル国民の92%が空爆を支持したといいます。はたして彼らは何を感じ、何を思っているのか、聞いてみたいと思います」
空爆でなんの罪もない子どもたちまで死んでいることをどう思うのかと、若い女性にインタビューをします。
「せっかく土地を与えたのに、彼らは全部よこせっていうのよ」
塀で囲って封鎖している状態は、占領ではないと考えているようです。
「封鎖を解いたらテロリストが押し寄せてくるわ」
??ロケット弾で数十人死んだ報復に、ガザではすでに900人が死んでいるが。
「これまでに殺された人の数は、イスラエル人の方がずっと多いわよ。彼らは悪いことをしたんだから罰を受けるのは当たり前。そうよこれは罰なの」
イスラエルでは、パレスチナ人の子どもや一般人の死体など、ガザの実情を伝えるの映像は一切放送されないそうです。つまり、国に都合の悪いことは自国民にも知らされない。まるで戦時中の日本の大本営。
「マスコミが興味を持つのは、一番目だけでしょう。二番めと三番めは地味すぎてマスコミでは取り上げてくれません。しかし、大切なことは二番めと三番めにあります。戦争が終わったあとに残される、より多くの苦労は二と三にあるのですから」
土井さんが追い続けた一人の少女はアマルといいます。家族を失いこれからどうやって生きていくのか、将来はまったく見えていません。
「パレスチナ人という総体ではなく、アマル、あるいはムスタファという個人とつながることで、パレスチナ全体とつながることができると思うのです。わたしはアマル基金なるものを立ち上げられないだろうかと考えています。協力できる人がいたら名乗り出て欲しい」
この後、土井さんと朝日新聞社の川上泰徳氏、日本女子大教授の臼杵陽氏によるパネルディスカッションがあったのですが、午後1時から始まって、ただでさえ長い集会がすでに相当延びています。これも付き合っていると終わるのは7時ごろ。
で、パネルディスカッションはパスしました。
いつものことですが、JVJAの集会は予定通りにはまず終わりません。
今回は東京芸術大学を中心に、学制ボランティアが実にすばらしい資料集を作ってくれました。
写真の右下がそれで、アラビア語のニュースや資料を翻訳し掲載してあります。
とくにアメリカのオバマ大統領のパレスチナ問題に対する姿勢を分析したところはすばらしく、「ブッシュと大差ない」という結論を導き出していました。
こういった集会に参加するのは、資料集めも兼ねています。
通常手に入りにくいものや、埋もれて見落としているものなどが目にとまるからです。
今回の収穫は、岡真里さんの講演記録(左下)。
「DAYS」や「Actio」は模索舍でも入手できますが、ついでなので買っておきました。
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