Zooey's Diary

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「あなたになら言える秘密のこと」

2008年07月24日 | 映画
静かな悲しい映画です。

2005年スペイン映画。
『死ぬまでにしたい10のこと』のイサベル・コイシェ監督が、
再びサラ・ポーリーを主演に描く、愛と命と再生の物語。

何処の国とも分からない工場の従業員として、主人公ハンナは働いています。
灰色の作業着を着て、髪は無造作に結んで化粧もせず。
誰とも話さず、誰にも打ち解けず、頑なに一人で。
昼食は毎日、タッパーに入れた白米と冷凍のチキンとリンゴだけ。
まるで生きていることが自分への罰であるような、そんな生き方です。

ひょんなことから彼女は、重症の火傷患者の世話をすることになる。
またもや国籍不明の、北の海の油田掘削所で。
ベッドに横たわる目の見えない患者ジョゼフ(ティム・ロビンス)が色々と話しかけてもろくに返事もせず、自分の名前を教えようともしない。
掘削所で働く他の人間が誘っても、頑なに断り続ける。
映画の前半は、そんな彼女に正直腹が立ちます。
そこまで心を閉ざさなくてもいいのに、と。

どんよりと暗い北の海の油田掘削所。
外界から隔絶された孤島のような場所。
果てしもなく、寄せては返す波の音。
そこでの生活はしかし、彼女に少しずつ安らぎを与えたようなのです。
ジョゼフは根気よくハンナに話しかけ、彼女は少しずつ少しずつ自分を開いていく。
ジョゼフもまた、悲しく重い秘密を抱えていた。
そうして、ハンナが打ち明けた彼女の秘密とは…

ここでは、その内容については触れるのは控えます。
ただその頃、クロアチアで民族紛争が起きたとだけ言っておきましょう。
民族浄化という名のもとに、狂気の振る舞いが行なわれていた、と。

あれだけのことを体験してしまったら
ハンナが、自分が生き延びたことを恥じるのも分かるような気がします。
尚も生き続けることを、自分への罰と考えるのも。
その時、彼女は必死に祈ったのです。
同じような目に遭った彼女の友達に、
せめて早く死なせてあげて、と。
これ以上苦しませないで、と。
でも、そんな祈りさえ、叶わなかったのです…
そしてその「友達」とは、実はハンナのことであったようにも思えるのです。
「生きていることを恥じるほどの痛みに苦しんでも尚、生き続ける」ということの意味が、観終わってようやく分かったような気がします。

この映画、原題は"The Secret Life of Words"というのです。
「あなたになら言える秘密のこと」という甘ったるい邦題から
誰が社会派の佳作を想像できるでしょうか?
残念に思います。

☆4

「あなたになら言える秘密のこと」
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4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
zooeyさん こんにちは♪ (なぎさ)
2008-08-03 11:34:30
この作品は近くのシネコンで観たのですが、お客さんは少なかったです。
こういう作品がもっとシネコンで観れたらと思います。

ほんとですね、このタイトルからこんなに社会派のすごい映画だとは想像つかないですよね。

サラ・ポーリーの熱演も冴えていました。

海の真ん中に立つ油田所が舞台というのも孤独を増幅させていましたね。
返信する
なぎささま (zooey)
2008-08-03 17:58:03
私もこの映画、上映中から気になっていたのですが
小さな映画館でしかやらなくて、しかもすぐに終わってしまったのです…
本当に残念です。

サラ・ポーりーの抑えた演技もよかったし、
ティム・ロビンスのベッドの上だけの演技も凄かったですね。

何処の国かも分からない、暗くて荒涼とした北の海でしたね…
返信する
TB&コメント、ありがとうございました♪ (メル)
2008-09-27 10:00:10
今回はしっかりTBも届いてます~♪
ありがとうございますm(_ _)m

ほんとに衝撃的なあの事実の告白でしたが
おっしゃる通り、彼女は自分を、生き残った自分を
許せなかったんでしょうね~・・
集団でなにかの事故や災害やテロにあってしまった人たちの中には、よくそういう風に思う人が出てきて
自分が生き残ってしまったことにすごく罪悪感を感じて、ずっとその傷を背負って生きていってる人が
いらっしゃいますが、彼女もそんな感じだったんでしょうね。

彼女の静かな言葉で話されるあの事実が
自分の頭の中で映像化して、もう絶句・・でした。

それにこの映画でいいなぁ、と思ったのは
あの油田。油田って「奇跡の海」でもかなり
印象的でしたが、周りが海でぽつんとある場所なので
映画的には作り安い場所なんでしょうが、あそこで
働いてる人たちの心情がじんわり胸に響いてきて
この映画をさらに良くしてたんじゃないかな~、と感じました。

それとブックマークの件ですが
すごく嬉しいです~!^^
ありがとうございます
私の方にもzooeyさんのブログをブックマークさせていただきたく、どうぞよろしくお願いいたしますm(_ _)m
返信する
メルさま (zooey)
2008-09-28 00:12:47
TBできたようでよかったです!

こういう映画こそ、もっと多くの人に観て貰いたいと思うのに残念です。
ハンナが話した「友達」というのは
やはり、ハンナ自身のことだったのでしょうね…

油田は本当に効果的でした。
何より、あの環境だからこそ、ハンナの固く閉ざされた心は少しずつ開かれたのですものね。
「奇跡の海」私も昔観ました。
暗くて救いのない話なので、私は嫌いだったのですけど、妙に印象的に残っています。

映画のこと、色々お話できそうで楽しみです。
どうぞよろしくお願い致します
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