アブソリュート・エゴ・レビュー

書籍、映画、音楽、その他もろもろの極私的レビュー。未見の人の参考になればいいなあ。

無宿人別帳

2017-02-20 20:17:30 | 
『無宿人別帳』 松本清張   ☆☆☆☆☆  『かげろう絵図』が大変面白かったので、松本清張の時代劇をもうひとつ読んでみた。こちらは短篇集である。  タイトル通り、すべて「無宿人」を題材とした短篇。無宿人とは江戸時代に存在したある階層の人々をさす言葉で、要するに社会のすべての構成員が「人別帳」で管理されていた時代にその「人別帳」に載っていない、つまりはなんらかの事情で社会の枠組みから零れ落ちてし . . . 本文を読む
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旅情

2017-02-17 21:47:51 | 映画
『旅情』 デヴィッド・リーン監督   ☆☆☆★  日本版ブルーレイで再見。主演、キャサリン・ヘプバーン。秘書で生計をたてるアメリカ人の独身女性が一人旅でヴェニスを訪れ、現地で骨董品店を経営する男と恋に落ちるというお話。ヴェニスの観光映画にして大甘のメロドラマと言われても仕方がない映画だけれども、それだけで切って捨てるには惜しい部分もある。普通のメロドラマにはない、ビターな味わいがあるのだ。   . . . 本文を読む
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海に投げこまれた瓶

2017-02-13 23:26:16 | 
『海に投げこまれた瓶』 コルタサル   ☆☆☆☆☆  コルタサル最後の短篇集。なぜか絶版になっているので古本で入手した。晩年の短篇集らしく、コルタサルの超絶技巧をたっぷり堪能できる素晴らしい作品集だ。何が超絶技巧かというと、何はともあれこの文体。アイデアももちろん相変わらず冴えているのだが、もはや融通無碍となったこの文体をもってすればこの世に可ならざるものはなし、ということを思い知らされる。村上 . . . 本文を読む
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海よりもまだ深く

2017-02-10 23:24:15 | 映画
『海よりもまだ深く』 是枝裕和監督   ☆☆☆☆  日本版のブルーレイを購入して鑑賞。首を長くして待ったこの映画をようやく観ることができた。『歩いても歩いても』のパート2のようなキャストと雰囲気である。主演は阿部寛、母親が樹木希林。阿部寛の姉が小林聡美で、別れた妻が真木よう子。  阿部寛は昔何かの文学賞を受賞して一冊だけ本を出した「なんちゃって小説家」だが、その後まったく売れず、書くことを諦め . . . 本文を読む
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赤毛のレドメイン家

2017-02-07 22:49:33 | 
『赤毛のレドメイン家』 イーデン・フィルポッツ   ☆☆☆☆  再読。本書はかつて江戸川乱歩に激賞され、黄金時代ミステリのベストテン第一位に君臨しお墨付きの「名作」とされていたが、アマゾンのレビューなどを読むとどうやら最近では評価が割れているようだ。「犯人がすぐ分かる」「大したトリックじゃない」などがその理由で、昔は傑作だったのだろうが今となっては古びてしまった、と考える人も多いようである。 . . . 本文を読む
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アンダーグラウンド

2017-02-04 22:56:06 | 映画
『アンダーグラウンド』 エミール・クストリッツァ監督   ☆☆☆☆  日本版ブルーレイを入手して鑑賞。1995年のパルムドール受賞作である。前々から気になっていたが、三時間という上映時間の長さに恐れをなしてずっと敬遠していた。やっと観ることができたが、色々な意味で予想を裏切る映画だった。今はもはや世界地図に存在しない国、ユーゴスラヴィアに捧げられた叙事詩風ファンタジー映画で、「むかし、あるところ . . . 本文を読む
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シャンボールの階段

2017-02-01 23:50:13 | 
『シャンボールの階段』 パスカル・キニャール   ☆☆☆☆  昨年、キニャールの『シャンボールの階段』と『ヴュルテンベルグのサロン』を古本で購入した。作品が書かれた順番とは逆だがまずは『シャンボールの階段』を読了。どこかヒチコックを思わせるストーリー、という評に惹かれたからだが、まあ、これから読む人はあまり真に受けない方がいい。最後の最後にあるミステリーの真相が明かされるのだが、この小説の大部分 . . . 本文を読む
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クリーピー 偽りの隣人

2017-01-29 21:12:36 | 映画
『クリーピー 偽りの隣人』 黒沢清監督   ☆★  私は『不法侵入』や『The Gift』みたいにアブナイ奴が出てくるサイコサスペンスものが大好きなので、日系ビデオレンタル屋さんでDVDを入手して観たのだが、これはもうサイテーだった。香川照之がアブナイ隣人役を演じているというのも期待した理由の一つだったが、完全に役者のムダ使いである。  もう率直に言わせてもらうが、脚本、演出がありえないレベル . . . 本文を読む
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イルカの日

2017-01-26 11:04:29 | 
『イルカの日』 ロベール・メルル   ☆☆☆☆  昨年日本に一時帰国した時古本で入手した絶版本の一冊。フランス人作家ロベール・メルルの代表作で、SFとポリティカル・スリラーを混ぜ合わせたような小説である。絶版になって久しいので、読んだことがある人は少ないんじゃないだろうか。1973年に映画化されてDVDも出ているので、そっちを観た人はいるだろうが、正直映画はぱっとしない出来だったし、映画と小説で . . . 本文を読む
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Deep Song

2017-01-23 23:13:25 | 音楽
『Deep Song』 カート・ローゼンウィンケル   ☆☆☆☆★  フィラデルフィア出身のジャズ・ギタリスト、カート・ローゼンウィンケル。てっきりニューヨークがホームグラウンドだとばかり思っていたが、現在ドイツのベルリンに住んでいるらしい。以前、現代ジャズシーンの注目アーティストとしてネットで名前を見かけたので、E.S.T.と同時期に聞いてみた。E.S.T.はすぐに気に入ったが、こちらはあまり . . . 本文を読む
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証拠は眠る

2017-01-20 23:56:51 | 
『証拠は眠る』 オースチン・フリーマン   ☆☆☆★  ソーンダイクものの長篇を読了。科学捜査の探偵ということで、ミステリの中でもどうやらファン層が限られている様子のソーンダイクものだが、私は結構好きである。コロンボ好きの私は当然倒叙ものが大好きなので、倒叙ミステリの傑作が多数収められている短篇集『ソーンダイク博士の事件簿』はかなり気に入っている。  本書は倒叙ものではなく、犯人が最後まで分か . . . 本文を読む
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裁かれるは善人のみ

2017-01-17 21:44:37 | 映画
『裁かれるは善人のみ』 アンドレイ・ズビャギンツェフ監督   ☆☆☆★  『エレナの惑い』に感銘を受けたため、ズビャギンツェフ監督の映画をもうひとつ鑑賞。映像が素晴らしいという評判だったので是非日本語字幕付きのブルーレイで観たいと思ったのだが、日本ではブルーレイが出ていないようだったのでやむなく英語版ブルーレイを購入した。邦題の「裁かれるは善人のみ」はストーリーの端的な要約になっているが、原題は . . . 本文を読む
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蝶々殺人事件

2017-01-14 23:23:26 | 
『蝶々殺人事件』 横溝正史   ☆☆☆★  古本を入手して読了。「蝶々殺人事件」「蜘蛛と百合」「薔薇と鬱金香」の三篇が収録されている。いずれも金田一耕助ではなく由利先生が登場するミステリである。表題作が傑作という噂をきいて入手したが、個人的にはまあまあだった。クロフツの『樽』を意識した作品ということで、東京と大阪でトランクやコントラバスのケースが行き来するあたりよく似ているが、この趣向なら私は『 . . . 本文を読む
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ブルージャスミン

2017-01-11 20:44:01 | 映画
『ブルージャスミン』 ウディ・アレン監督   ☆☆☆☆☆  iTunesのレンタルで鑑賞。ひっじょーに面白かった。例によってドタバタ・コメディかと思ったら、ものすごくブラックかつ辛辣かつ残酷、しかも洒脱で機知溢れる物語だった。笑ったりニヤニヤできる部分は数多いけれども癒しやほのぼのとは無縁の、痛烈なアイロニーがギュッと凝縮された映画である。  主人公のジャスミン(ケイト・ブランシェット)はニュ . . . 本文を読む
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屋根裏の仏さま

2017-01-08 14:38:06 | 
『屋根裏の仏さま』 ジュリー・オオツカ   ☆☆☆☆  これも日本で買ってきた本。新潮クレスト・ブックスの一冊で、著者は日系アメリカ人女性である。自分の祖先のことを調べる中で、かつて日本からアメリカに集団で渡ってきた「写真花嫁」に関心を抱き、取材をし、それを題材に本書を書いたという。  「写真花嫁」とは、当時アメリカに移住し孤独な生活を送っていた日本人の男たちの伴侶となるため、ただ「夫」たちの . . . 本文を読む
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