『シャム双子の謎』 エラリー・クイーン ☆☆
5月半ばから2週間ほど休暇を取り、福岡の実家に戻っていた。実家の本棚を眺めると、自分が中学生高校生だった頃に読み耽っていたミステリが並んでいる。その中からクイーンの『シャム双子の謎』を再読してみた。中学生の時に読んで以来だ。超なつかしい。(写真は最近の創元推理文庫版だが、実家にあるのはもちろん昔のイラストのやつだ)
これはクイーンのいわゆる . . . 本文を読む
『On Your Side』 Magnet ☆☆☆★
マグネットのデビュー・アルバムである。マグネットとはバンドではなく、男性のソロ・アーティスト名。ノルウェー人だ。珍しい。
一言で言うと、哀愁溢れるフォーク・ミュージック+エレクトロニカ風味、といったところだ。基本的にはアコースティック・ギターで骨格を作っている曲が多いが、エレクトロニカがバランス良く入っていて、わりと垢抜けた雰囲気を . . . 本文を読む
『冗談』 ミラン・クンデラ ☆☆☆☆☆
クンデラの作品第一番、『冗談』を再読。初期の作品ということで、後の傑作『存在の耐えられない軽さ』や『不滅』のように突然作者のエッセーが物語に割り込んでくるようなことはなく、より伝統的な小説作法で書かれている。また主人公ルドヴィークの悲惨な運命はもちろんのこと、登場人物たちはみな何かしら人生の苦さ、幻滅を与えられることになっており、クンデラ印のアイロニ . . . 本文を読む
『座頭市と用心棒』 岡本喜八監督 ☆☆☆★
英語版DVDで再見。確かシリーズ20作目である。これはなかなか評価が難しい。座頭市シリーズとしては異色作で、完璧に岡本喜八の映画になっている。
非常にアクが強い。名作『座頭市物語』のようにすっきりした、端正なストーリーではなく、色んな要素がゴチャゴチャ詰め込まれていてごった煮のようだ。登場人物はみんな一癖も二癖もあるような奴らばかりだし、人間 . . . 本文を読む
『フェルナンド・ペソア最後の三日間』 アントニオ・タブッキ ☆☆☆☆☆
偏愛する作家、アントニオ・タブッキの『フェルナンド・ペソア最後の三日間』を再読。これは一冊の本になっているもののほとんど短篇といっていいほど短い作品である。だからあっという間に読めてしまうが、タブッキのキャリアの中でかなり重要な意味を持つ作品ではないかと思われる。というのも、どんな作品でも常にペソアへの目配せを忘れない . . . 本文を読む
『必殺仕切人Vol.1』 ☆
必殺シリーズで「仕切人」というのがあり、かなり評判が悪いということは前から知っていたが、まったく観たことはなかった。放映されたのは「仕事人IV」と「仕事人V」の間で、要するに必殺のバラエティ化が最高潮に達した頃である。今回DVDが出たので、迷ったあげくVol.1だけ購入してみることにした。ネットで、第一話第二話あたりはまだよかったがその後迷走した、という評価を目を . . . 本文を読む
『アホの壁』 筒井康隆 ☆☆☆
筒井康隆がこんな本を出していたとは知らなかった。ベストセラー『バカの壁』のもじりで『アホの壁』。これは『バカの壁』というタイトルを見て筒井康隆が想像した内容が実際の『バカの壁』とは違っていたので、『アホの壁』というタイトルで出したということらしい。
目次を読んだだけで笑える。「真のアホによるアホ」「フロイト的アホな間違い」「正反対の中をとるアホ」「成功の . . . 本文を読む
『ガメラ3 邪神覚醒』 金子修介監督 ☆☆☆
平成ガメラ三作目、つまりトリロジーの最終作を再見。前作の『レギオン襲来』はこれでもかと自衛隊をフィーチャーした作品だったが、本作では自衛隊色は後退し、そのかわりオカルト色が前面に出ている。オカルトといってホラーではなく、少女の怨念をメインに据えたオカルト・ファンタジー色である。
つまり本作の主人公はガメラによって(一作目のギャオスとの戦いの . . . 本文を読む
『灰色の輝ける贈り物』 アリステア・マクラウド ☆☆☆☆★
バロウズの『デッド・ロード』に続けてこれを読んだら、あまりの落差にめまいを覚えた。違い過ぎて、とても(小説という)同じジャンルの芸術様式とは思えない。いやまったく。
堂々たる文藝であり、文句なく傑作である。そのことに異存はない。しっかり感銘を受けたし、感動した。じゃなぜ星5個じゃないかというと、このきっちりした、「純文学」とい . . . 本文を読む
『Iron Man 2』 Jon Favreau監督 ☆☆
先週末に『アイアンマン2』を観て来た。子供が多かった。
特にどうってことないヒーローもので、気楽に観ていればそれでいいんだろうが、ヒーローものや怪獣ものが決して嫌いではない私に言わせてもらえば、この監督カッコイイと思うツボがどうも私とは違うようだ。前作をDVDで観た時も同じ印象を持った。鋼鉄のスーツを着て戦うヒーローというのは . . . 本文を読む