『つかこうへい正伝 1968-1982』 長谷川康夫 ☆☆☆☆☆
つかこうへいを身近に見ていた劇団員の長谷川康夫による、つかこうへいの評伝を読了。といっても大学入学から初期「つかこうへい事務所」解散までの、著者によればつかこうへいがもっともつかこうへいらしく輝いていた14年間に絞られている。私は大学生の頃につかこうへいを読み始めたが、すでに事務所解散後だったのでこの時代の、平田満や風間杜夫 . . . 本文を読む
『陽気な中尉さん』 エルンスト・ルビッチ監督 ☆☆☆★
ルビッチ監督の『陽気な中尉さん』を日本版DVDで鑑賞。1931年作品、傑作『極楽特急』の前年の公開である。一応ミュージカル仕立てになっていて、主人公のニキ中尉(モーリス・シュヴァリエ)やその恋人(クローデット・コルベール)がセリフ代わりに歌ったりするが、大勢出てきて踊る場面などはなくて、普通の映画とさほど違わない。ヨーロッパの小国の王 . . . 本文を読む
『もうすぐ絶滅するという紙の書物について』 ウンベルト・エーコ、ジャン=クロード・カリエール ☆☆☆★
先ごろ惜しくも亡くなってしまったエーコの対談本を購入。本好きならこのタイトルを見て興味をそそられない人はいないだろう。対談相手のジャン=クロード・カリエールとはブニュエル映画の脚本を書いていた人である。
対談のテーマは必ずしも電子書物に限ったものではなくて、それ以外にもインターネット . . . 本文を読む
『時の娘』 ジョセフィン・テイ ☆☆☆☆
有名な歴史ミステリの名作を読了。題材はリチャード三世で、赤ばら白ばら戦争時代のこの悪名高い王は本当に悪人だったのか、というのがテーマである。正直、私はリチャード三世がどんな人か知らず、悪名高いことすら知らなかった。私がもし人並みはずれて無知蒙昧というのでなければ、多くの日本人も同じようなものだろうと思う。加えて、当然ながら歴史に登場する人物の名前が . . . 本文を読む
『2001年宇宙の旅』 スタンリー・キューブリック監督 ☆☆☆☆☆
ご存じ、SF映画の金字塔『2001年宇宙の旅』。所有していたDVDをブルーレイに買い替えて再見したが、やはり偏執狂的なまでに細部を見せることにこだわったこの映画は、リストアされたブルーレイに買い替える価値があった。素晴らしい。
子供の頃初めて映画館で観た時はさっぱりわけが分からず、ただ異常な衝撃の記憶だけが残った。その . . . 本文を読む
『ラテンアメリカ怪談集』 鼓直編 ☆☆☆☆☆
再読。ラテンアメリカ文学のアンソロジーは色々あって私もいくつか所有しているが、数多くの作家が収録されている鳥瞰的なものという意味では以前紹介した『遠い女』とこれが双璧ではないだろうか。『遠い女』はデルヴォーの絵画をあしらった表紙の通り、コルタサルの作品を中心に幻想的な短編を集めたものだったが、この『ラテンアメリカ怪談集』は怪談的なものという趣向 . . . 本文を読む
『ゼロヴィル』 スティーヴ・エリクソン ☆☆☆☆☆
エリクソンの新刊を読了。見事に面白かった。今回は映画がテーマである。テーマというか、映画がオブセッションであり映画に憑かれた書物、といった方がいいだろう。ハリウッドを舞台にした、映画マニアの青年がエディターそしてディレクターとなって映画を作る物語というだけでなく、当然ながらありとあらゆる実在の映画が引き合いに出され引用される小説である。い . . . 本文を読む
『シンデレラ』 ケネス・ブラナー監督 ☆☆☆☆☆
ディズニーの実写版『シンデレラ』をブルーレイで鑑賞した。いやー、ムッチャきれいだったなあ。
今更言うまでもなく、誰もが知っている王道、古典的ラヴストーリーである。美しくけなげで優しいヒロイン、あくまでりりしくかっこいい王子様、意地悪な継母とその娘たち、というベタな設定の本家本元である。それを今の時代に実写でやるにあたっては、ひねくれたア . . . 本文を読む
『でっちあげ』 福田ますみ ☆☆☆☆
第六回新潮ドキュメント賞を獲ったノンフィクションを文庫で読了。私は寡聞にして知らなかったが、2003年に福岡の小学校で起きた「殺人教師」事件の顛末をルポしたものだ。教師が生徒をいじめたという事件だが、そのいじめの内容がとんでもなく凄惨で、毎日のように虐待された生徒は鼻血まみれになったり耳がちぎれそうになって化膿したりし、しまいには死に方教えたろかと恫喝 . . . 本文を読む
『吸血鬼』 カール・テオドール・ドライヤー監督 ☆☆☆
たった一時間強の短い映画なのに、何べん観ても途中で激しい睡魔に襲われてしまうドライヤー監督の『吸血鬼』。観るものを魔法のように眠りに誘うフィルムはタルコフスキーをはじめ色々あるが、私にとってはこの『吸血鬼』がナンバーワンだ。タルコフスキーの倍ぐらいの睡眠導入効果がある。はっきりいって普段の意識を保ったまま見終えたことはないが、一通り最 . . . 本文を読む