ドイツのブレーメンにあるマックスプランク海洋微生物学研究所。私が1年間滞在したのは、もう30年も前のこと。その時のホストは、Friedrich Widdel教授。
Widdel教授は2018年8月に定年退職した。ブレーメンの地にマックスプランク海洋微生物学研究所が設立されたのは1992年なので、創立25周年を迎えてから翌年のことであった。彼の退職記念パーティーでは、これまでの業績、共同研究者の当時と現在の写真と研究成果のエッセンスなどをまとめた写真集が作成された。
定年退職を迎えるWiddel教授への贈り物は何が良いだろう? あれこれと悩んだ挙句、下記の論文を贈ることに。
Miho Watanabe, Yuriko Higashioka, Hisaya Kojima and Manabu Fukui. Desulfosarcina widdelii sp. nov. and Desulfosarcina alkanivorans sp. nov., hydrocarbon-degrading sulfate-reducing bacteria isolated from marine sediment and emended description of the genus Desulfosarcina. International Journal of Systematic and Evolutionary Microbiology 67: 2994-2997. 2017. DOI 10.1099/ijsem.0.002062
上記のDesulfosarcina widdeliiは、Widdel教授に因んで名付けられたパラキシレン分解硫酸還元菌である。1995年12月、クウェートの湾岸海洋堆積物を接種源にして、集積培養し、何年もかけて単離培養に成功。湾岸戦争後のクウェートでの試料採取は困難を極めたものの、何年もかけて、忍耐強く単離培養を行ってきた中川達功さん(現在 日本大学生物資源学部)や東岡由里子さん(現在 高知高等工業専門学校)の功績は極めて大きい。名古屋議定書関連で、論文発表にはクウェート側と粘り強く交渉が必要であったが、Widdel教授の退職前に発表できた。試料採取から論文発表まで22年!