福井 学の低温研便り

北海道大学 低温科学研究所 微生物生態学分野
大学院:環境科学院 生物圏科学専攻 分子生物学コース

てっぺんごえ

2023-06-29 14:37:09 | 研究室紹介
東日本大震災の頃だったか。当時の大学院生Aさんが、「昨日は、てっぺんごえだった!」と。私はその意味がわからなかったのですが、彼女曰く、「真夜中の12時を超えて活動すること」なのだそうだ。現在でも使われる言葉なのか不明なのですが。

オーバーナイトで実験することも、「てっぺんごえ」?



風乾中

2023-06-29 01:34:49 | 研究室紹介
幾多の苦難に嘖まれながらも、希望を抱きながら実験を続ける。そんな時、恩師の滝井進先生が実験している後ろ姿を思い出す。

実験ノートに書き込むペンは、低温科学研究所創立80周年を記念して作られたノベルティ。ノートとの相性が良く、気持ちよく滑らかに記録ができる。ただ、ペンのフックに飾られていた低温研ロゴマーク入りの付属プレートが外れやすく、数日前になくしてしまった。残念! 渡部所長にお願いして、特別にもう1本支給もらいたいところだが、そんなことはしてはならぬこと。



リタイアメント

2023-06-21 05:39:05 | 研究室紹介
ドイツのブレーメンにあるマックスプランク海洋微生物学研究所。私が1年間滞在したのは、もう30年も前のこと。その時のホストは、Friedrich Widdel教授。



Widdel教授は2018年8月に定年退職した。ブレーメンの地にマックスプランク海洋微生物学研究所が設立されたのは1992年なので、創立25周年を迎えてから翌年のことであった。彼の退職記念パーティーでは、これまでの業績、共同研究者の当時と現在の写真と研究成果のエッセンスなどをまとめた写真集が作成された。




定年退職を迎えるWiddel教授への贈り物は何が良いだろう? あれこれと悩んだ挙句、下記の論文を贈ることに。

Miho Watanabe, Yuriko Higashioka, Hisaya Kojima and Manabu Fukui. Desulfosarcina widdelii sp. nov. and Desulfosarcina alkanivorans sp. nov., hydrocarbon-degrading sulfate-reducing bacteria isolated from marine sediment and emended description of the genus Desulfosarcina. International Journal of Systematic and Evolutionary Microbiology 67: 2994-2997. 2017. DOI 10.1099/ijsem.0.002062



上記のDesulfosarcina widdeliiは、Widdel教授に因んで名付けられたパラキシレン分解硫酸還元菌である。1995年12月、クウェートの湾岸海洋堆積物を接種源にして、集積培養し、何年もかけて単離培養に成功。湾岸戦争後のクウェートでの試料採取は困難を極めたものの、何年もかけて、忍耐強く単離培養を行ってきた中川達功さん(現在 日本大学生物資源学部)や東岡由里子さん(現在 高知高等工業専門学校)の功績は極めて大きい。名古屋議定書関連で、論文発表にはクウェート側と粘り強く交渉が必要であったが、Widdel教授の退職前に発表できた。試料採取から論文発表まで22年!



このところ、夕暮れになると窓の外の森を眺めながら、Widdel教授のことを思う。研究生活を終えようとした彼が何を考えていたのだろうか?



諦念

2023-06-12 02:24:25 | 研究室紹介
実験台の前に立ち、ピペットで1マイクロリットルの溶液を吸い取りながら、ふと思う。あれやこれやと。研究への興味、好奇心は溢れるほど湧いてくる。




ピペットのチップ先端に溶液が確実に吸い取れているか確認する。1マイクロリットル。僅かな液量。焦点が合わず、液量を確認するのが往生する。



そんな時、ふと思う、若手研究者への期待。そして、自戒を込めて強く思うことは、下記;

・惜しみなくエンカレッジする。
・足を引っ張らない。
・自由な発想を尊重する。
・必要最小限の引き継ぎ。

もうじき夏至を迎える。21時を過ぎても明るく眩しい北の地。そして、想う。一度も咲かずに散ってゆきそうな花のように、静かにそっと去っていきたい。そう、『キシマ先生』のように。