福井 学の低温研便り

北海道大学 低温科学研究所 微生物生態学分野
大学院:環境科学院 生物圏科学専攻 分子生物学コース

雨水+廃棄物=硫化水素

2008-10-30 07:38:04 | 微生物から学ぶ

松江のホテルの地下から硫化水素発生事故。マスメディアでは、不法に投棄した建築廃材と雨水が反応して硫化水素が発生したと説明している。テレビニュースのテロップには、

雨水+廃棄物=硫化水素

と。うーむ。どうして硫化水素が発生するのだろう?

そのカラクリ、
わかるかなあ? わかんないだろうなあ~
(松鶴家千とせ風に)

冗談はさておき、10年ほど前には、福岡で死亡事故も起きている。そのカラクリは、共通で、微生物生態学の重要性を改めて痛感させられる。

かつて、bluestar さんと一緒に、そのカラクリを解明する実験を行ったことがある。しかし、まだ、論文にしていない。

bluestar さん、今度まとめましょうか?
(松江の硫化水素事故を報じる、昨日のテレビニュースで、ふとbluestar さんのことを思い出しました)


Lösung(レーズング)

2008-10-29 09:37:51 | 悩み

081029 33歳の頃のこと。ドイツ・ブレーメンにあるマックスプランク海洋微生物学研究所での研究生活。研究所で唯一の東洋人であった。周囲はドイツ人、デンマーク人、オランダ人、スペイン人、そして米国人。実験室には、ドイツ人のテクニシャンが居て、試薬や溶液のラベルはドイツ語で書かれている。当時、私のドイツ語のレベルは、数字の1、2、3しか分からない程度。ある時、電気泳動の実験のため、バッファーを探していたら、実験棚にLösungと書かれていたボトルを発見。早速、独和辞書で調べてみると、「溶液」の意であることが判明。

それから、少しずつドイツ語を覚えていった。その際、親切に、かつ、忍耐強く、教えてくれたのが、テクニシャンのSさん、Kさん、Bさん。彼女たちの支えがあって、当時の研究がうまく行ったと思う。感謝しても感謝しきれない。いろいろな問題点や悩みが発生した時も、彼女たちに相談に乗ってもらい、自分なりに解決していった。

その年の夏、Sさんは結婚。研究所の同僚としては、私のみであったが、結婚式に列席。結婚披露宴は、研究所近くのHotel Munteで。夜通しの宴会は、エネルギッシュで、かつ、至福であった。これが、ドイツでの最高の思い出の一つ。

その後、 Sさん、Kさん、Bさんは出産等で研究所を離れる。しかし、数年前から、SさんとBさんは、研究所に戻っている。彼女たちは、相変わらず、右も左も分からないニューフェースに懇切丁寧にラボのいろいろを教えているに違いない。

海外で、しかも、日本人一人(若者)で研究を進めていくことは、困難が多い。ふと思うのだが、辞書でLösungを調べてみると、本来は、「解決」、「解消」、「打開策」の意。困難に遭遇した場合、自分自身のLösungを見つけたいものだ。

ベストアルバム『Expressions』が好評を博している、竹内まりあは、こんなことを言っている

(Can't you see? Can't you see?)
どんな道を選んだとしても 悩みの数同じだけついてくる
(You can choose You can choose)
私が決める私のプライオリティ 何を取って何を諦めるの

(Can't you see? Can't you see?)
幸せの基準はかるものさし 自分の心の中にあるのさ
(You can find You can find)
足りないもの数えるくらいなら 足りてるもの数えてごらんよ!
Count what you have now, don't count what you don't have


081029_2あっ、そうだ。

今度、ブレーメンに行こう!


秋雨弁当

2008-10-24 12:43:16 | 低温研のことごと

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今日の札幌は雨風模様。秋の雨。一降りごとに、着実に冬に近づいている。

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08102404 こんな日は、やはり、さくらの出前弁当(500円)にかぎる。物価高なのに、相当の努力が伺える。その努力に感謝と心配の念。

さくら弁当を紹介してくれたのは、前の大学で同僚だったS先生。それは、私が低温研に赴任する前のこと。

S先生は、かつて低温研の教員をされておられた。S先生、この弁当の写真を見たら、きっと札幌生活が恋しくなるに違いない。


研究集会「雪氷の生態学」

2008-10-24 07:10:12 | 学問

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下記の通り、低温科学研究所研究集会(共同研究)が開催されます。





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『雪氷の生態学(3)?雪氷界面における微生物代謝, アカシボ現象との関わり?』

 

日時:2008年11月7日(金)10:00-17:00
場所:低温科学研究所新棟3階交流ラウンジ

 

10:00-10:05 集会にあたって 野原精一(国立環境研究所)
10:05-11:00 南極の赤雪現象 藤井正典(北海道大学)
11:00-11:55  氷河生態系の雪氷藻類分析 瀬川高弘(国立極地研究所)
11:55-12:10 総合討論(1)
12:10-13:10 休憩
13:10-13:40 雪氷界面における藻類 山本鎔子(元明治大学)
13:40-14:10  アカシボの微生物  小島久弥 (北海道大学) 
14:10-14:40  アカシボ現象と動物    福原晴夫 (新潟大学)
14:40-15:10  尾瀬地域における雪氷の物質・水循環 野原精一 (国立環境研究所)
15:10-15:40 アカシボ発生の化学  落合正宏(徳島文理大学)
15:40-16:30 総合討論(2)

 


里芋のうま煮

2008-10-19 18:56:43 | 食・レシピ

081019 知人の農家から里芋を頂きました。さて、どう料理しようか?
うま煮にすることにしました。照りのある里芋を口に入れるとモッチリとした食感。なかなか良いですね。

今度の研究室の月例会では、芋煮会にするのも良いかもしれません。でも、札幌大会が迫っているので、そんな余裕はないか?


風にのってどこまでも

2008-10-18 19:18:00 | 旅行記

時にはなぜか 大空に
旅してみたく なるものさ
気球に乗って どこまでいこう
風に載って野原をこえて
雲をとびこえ どこまでもいこう
そこになにかが まっているから

(合唱曲『気球に乗ってどこまでも』より)

かつて教育実習で、音楽の授業でこの唄を教えたことがある。軽快なリズムなので、こどもたちも楽しく歌っていた、キーが高いにもかかわらず。

081011 081018 さて、機上からは富士山を眺望できる。一週間で、その頂は雪化粧。これからどんな装いに変化していくのか楽しみ。

富士を眺めながら、ふと思う。札幌で空に舞った変形菌(粘菌)は富士山まで届くのだろうか? あっ、居た! そこだ、あそこだ!

時にはなぜか 大空に
旅してみたく なるものさ
気球に乗って どこまでいこう
星をこえて 宇宙をはるか
星座の世界へ どこまでもいこう
そこにかがやく 夢があるから
ラララ ラララ ララー

(東龍男 作詞『気球に乗ってどこまでも』より)


空を舞うアメーバ(粘菌)

2008-10-17 10:23:17 | 学問

雪が溶けて 川になって 流れて行きます
つくしの子が はずかしげに 顔を出します
もうすぐ春ですね
ちょっと気取ってみませんか

風が吹いて 暖かさを 運んで来ました
どこかの子が 隣の子を 迎えに来ました
もうすぐ春ですね
彼を誘ってみませんか

(キャンディーズ 「春一番」より)

昔、こんな唄がありましたね。
秋なのですが、春先の自然現象の話題を一つ。

01  変形菌類(真正粘菌)は、アメーバの仲間で、主に森林に生息してして、落葉や倒木などの上でみつかることが良くあります。古くは、南方熊楠が魅せられた生き物ですし、近年では、迷路の中で最短のルートを探し当てることのできる単細胞生物としても知られるようになりました。しかし、その生態はベールに包まれています。

 変形菌類の中には雪を好む種類がいて、好雪性変形菌と呼ばれています。雪解けの頃、雪に埋もれた木の枝を伝わって粘菌が這い上がり、春風に乗って、その胞子が広範囲に散布されます。この現象を世界で初めて発見した方が、博士研究員の加茂野晃子さんです。

 

彼女の論文が、ドイツの総合科学雑誌Naturwissenschaftenにオンラインで掲載されました

Kamono A, Kojima H, Matsumoto J, Kawamura K, and Fukui M. Airborne myxomycete spores: detection using molecular techniques. Naturwissenschaften. doi:10.1007/s00114-008-0454-0


曇りのち大雨、そしてポトフ

2008-10-02 00:55:00 | 日記・エッセイ・コラム

曇りのちドシャブリの大雨。小雨に変わり、晴れ。再び小雨に、曇り。そんな具合に天候が小刻みに変化する札幌の秋一日。

そして、冷え込んだ夜。そんな日の夕食は、ポトフが一番。

久しぶりです。コトコトと煮込む時間がなかったので、野菜を小さめに切って、調理時間を短縮。

ポトフと言えば、南極大陸でのことを思い出す。悪天候で思うように調査に出られず、じっと我慢の時間。丸ごとジャガイモをゆっくりと煮込んで、味のしみたポトフ。大量にポテトサラダを作ってしまい、3日間食べ続けたことも

081001 札幌でのカンタンポトフ。多めに作って、残そう。きっと翌朝には、味わい深いポトフに生まれ変わっているに違いない。


生まれ変わる低温研

2008-10-01 00:37:00 | 低温研のことごと

汝なんのためにそこにありや

これは、秋田県立秋田高等学校の第28代校長(1963.4.1 - 1967.3.31)であった鈴木健次郎の言である。常に自分を省み、他者や社会との関係で自己の存在を考えよ、と若人たちに呼びかけたものである。言わば、行き過ぎた自己本位への戒めでもある。

さて、本日、低温科学研究所は生まれ変わる。

3研究部門制となる。研究部門は、環オホーツク観測研究センターとともに、共同研究推進部(新設)を全面的に支える。また、全国共同利用研究所としての役割を一層強化して行く。

新研究部門は下記の通り。
1. 水・物質循環部門(主任:河村公隆)
2. 雪氷新領域部門(主任:古川義純)
3. 生物環境部門(主任:田中 歩)

共同研究推進部には、8名の専任教員が配置され、下記の研究プログラムが集中的に遂行される。
1. 環オホーツク圏(リーダー:大島慶一郎)
2. 氷床コア解析(リーダー:飯塚芳徳)
3. アストロバイオロジー(リーダー:渡部直樹)
4. 寒冷圏エコ-オミクス(リーダー:笠原康裕)
5. 寒冷圏非平衡科学(リーダー:佐崎 元)
6. 国際南極大学(リーダー:青木 茂、杉山 慎)

こうして変わって行くのも低温研の品格。ふと、耳もとでトワ・エ・モアの「虹と雪のバラード」が聞こえてくる。