定年。人生の中でも最も重い通過儀礼の一つであろう。職に就いた頃、この日が来るのは遠い先のようであった。過ぎ去ってしまえば、年月はあっという間のようにも感じるが、それなりに多くの出来事が思い浮かぶし、些事も意思とは無関係に。それはノスタルジーにすぎず、ある意味で甘美な時間をもたらし、いつまでも浸っていたくなる。一方で、胸を抉るような記憶にも苛まれたりもする。ああ、最も重い通過儀礼である、定年は。
日本微生物生態学会から依頼を受けて、若い世代向けのメッセージを執筆する機会を得た。今月、「諦念、そして新たな挑み」と題して和文誌に掲載され、オンラインでも閲覧可能。学会会員向けなので、学術的内容等が含まれてため、読みにくい箇所があるかもしれない。
北海道大学の給与制教員の定年は63歳(年俸制は65歳定年)。4月からは2年間、特任教授として再雇用予定。気ままに、好きな研究だけで過ごすことが可能なので、この恵まれた時を大切にしたい。
<アラスカ永久凍土及び氷河調査に向かう(2023年8月21日. アラスカ大学フェアバンクス校・岩花剛博士撮影)>