木全賢のデザイン相談室

デザインコンサルタント木全賢(きまたけん)のブログ

中小企業のデザインのお悩み、なんでもご相談ください!!

コア・コンピタンス

2006年07月19日 | デザイナーとの付き合い方(相談室)
◆中小企業とデザイン3 ≪コア・コンピタンス≫
32:【デザイン相談室】考え方11


 こんにちは!「工業デザイン相談室」木全(キマタ)です。デザイナーの実像・デザイナーとの付合い方・デザイナーとのトラブル回避法など書いていきます。御相談がありましたら、コメントをくださいね。

 記事の目次
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中小企業にとって、どこまでデザインが必要か?

 前々回の中小企業とデザイン1で、少しずつ中小企業に向けたアプローチを始めたことをご報告しました。

 そこで、実際にアプローチを始めてみて、なかなか、中小企業とデザインとの具体的な接点はない感じを受け、結論として、悩んでばかりいても先に進まないでしょうから、デザインが役に立つかどうか、試してみたら如何ですか、という提案をしました。

 そして、前回の中小企業とデザイン2では、「A株式会社」という架空の企業を設定して「老舗として生きる」場合の「デザインの効果」について考えてみました。

 今回も引き続き、「中小企業にとって、どこまでデザインが必要か?」というお題で、「新規事業を展開する」場合の「デザインの効果」の話をしようと思います。

  (以下の説明は、ちょっとデザイン寄りすぎるかもしれません。決して、デザインを導入しない企業は駄目だとか言っているわけではないので、それはご了解ください。また、デザインを強要しているわけでもありません。念のため。)



中小企業のプロフィール例

 中小企業センターにお伺いしたとき、デザインの導入を考えられている企業の例として以下のようなプロフィールを教えていていただきました。便宜上、「A株式会社」とします。


「A株式会社」のプロフィール
 従業員10数名の部品製造メーカー。
 いままで、大企業数社からの受注で部品だけを製造してきた。
 最近、大企業からの受注が減ってきており、新しい販路を開拓したい。
 オリジナル製品の開発も検討している。


 「A株式会社」の場合、大きく2つの選択肢があると思います。

1) 現状のまま、受注メーカーとして技術を磨き、新規の大企業に営業をかける。
2) 新規事業としてオリジナル製品の開発し、全く新しい販路を開拓する。

 前回、1)の場合の「デザインの効果」を考えました。今回は、2)の場合について考察します。


新規事業は新規販路獲得が前提

2)「新規事業としてオリジナル製品の開発し、全く新しい販路を開拓する。」という方針は、勇気の要る決断だと思います。

 オリジナル製品といっても、部品のオリジナルというものもあり得ると思いますが、ここでは、一般商材としての完成品のオリジナル製品という前提で考えます。(部品で考えても、流通が違うだけで、考え方は大きく変わらないと思いますが。)

 「A株式会社」はメーカーですので、製品を作る能力はあります。でも、売り先がないとどうにもなりません。

以前、中国での生産についてに書いたのですが、そこで、「物作りよりも、流通を確保するほうが難しい。物を作って売るためには、売り先、販売ルートがないと商売が続きません。」と書きました。

 販路の獲得に、デザインの効果は期待できそうにない感じですが、実はそうでもありません。この場合は、前回の名刺・便箋・封筒・伝票・部品・パッケージなどの具体的な商品のデザインではなく、「デザインの考え方」が役に立ちます。


顧客の要望

 デザイナーは、メーカーと顧客の両方の立場に立ち、どちらかと言うと顧客の立場で物事を考えます。顧客の立場から、企業に対して提案を行うから、意味があります。メーカーと同じ視点で見ていては、コンサルタントが出来ません。

 では、顧客として、新しいメーカーが営業にきたら、どのように考えるでしょう?

1) 信頼の置けるメーカーなのか?
2) どのような技術を持っているのか?
3) 納期管理・在庫管理・クレーム対策はしっかりしているのか?
4) 何がアピールポイントなのか?
5) 今後とも、新製品を継続的に供給してくれるのか?

 もし、御社に下請けの部品メーカーが営業にきたら、同じようなことをチェックすると思います。

1)、2)、3)は、既に大手企業を顧客に持っている「A株式会社」にとっては、問題ありません。問題は、4)と5)です。そして、4)と5)は微妙に連動しています。

4)は最近の流行の言葉で言えば「コア・コンピタンス」と言われているものです。


「コア・コンピタンス」
 顧客に対して価値提供する企業内部の一連のスキルや技術の中で、他社がまねできない、その企業ならではの力。競合他社に対しては、経営戦略上の根源的競争力につながるものであり、他社との提携などの際に相手に与える影響力や業界イニシアティブの強弱のキーともなる。



 簡単に言えば、「何が得意で、それを生かして、これからどういう方針で経営していくのか」ということでしょう。

 実は、これがしっかりしていないと、新規市場に参入しても、続かないのです。

 新規事業立上だ、アイデア商品を思いついて、商品がないと営業できないからと、エイヤッとばかりに新商品を開発しても、「コア・コンピタンス」がしっかりしていないと、次々に商品を開発することができません。

 でも、顧客は、せっかく口座を開くわけですから、長い付き合いを前提にしています。できれば、恒常的に新製品を供給してくれるメーカーと付き合いたい。その商品が置かれる陳列棚に常に目新しい商品がほしい、と考えます。

 ですので、顧客は「コア・コンピタンス」、会社のアピールポイントを重要視します。それがないと、恒常的な商品開発ができないことを知っているからです。一発勝負のアイデア商品は、アイデアだけ取られておしまいです。


銀行の期待

 新商品を開発するためには、お金も必要です。銀行から開発費を借りなければならない場合もあるでしょう。

 ここでも、「コア・コンピタンス」が重要になってきます。

 これは、銀行の法人営業の人から聞いたのですが、企業には「7億円の壁」があるのだそうです。

 社長の力だけで、中小企業なら売上7億円までは、頑張ればいくそうです。しかし、7億円を超えようとすると、社長1人の力では難しい。従業員の力も必要になる。

 社長と従業員が同じ方向を向いていないと、「7億円の壁」は越えられない。「7億円の壁」を超えられるかどうかの判断基準は、その企業に明確なアピールポイント(コア・コンピタンス)があるかどうか、なのだそうです。

 明確なアピールポイント(コア・コンピタンス)があるからと言って、必ず売上が伸びるわけではないが、アピールポイントがない場合は、ほぼ確実に売上が頭打ちになるそうです。

 銀行も企業評価に「明確なアピールポイント(コア・コンピタンス)」を最重要視しています。それに応えることができないと、開発費用の調達も難しくなってしまう。


企業のコンセプトが大切

 やっと「デザインの効果」の話にたどり着きました。

以前、商品コンセプトって何?のときに、商品コンセプトについて、以下のポイントが必要だと書きました。

1) 商品の存在理由 (なぜ、今必要なのか?)
2) 差別化要因 (今までの製品とどこが違うのか?)
3) ターゲット設定 (誰がどこで買い、誰が使うのか?)
4) ニーズ設定 (使う人が求める機能は何か?)
5) シーン設定 (だれがいつどこでどう使うのか?)
6) 企業理念の確認 (なぜ、作るのか?)
7) シーズ設定 (どのように作るのか?)
8) 販売ルート設定 (どのように売るのか?)
9) 商品構成 (どのような商品にするのか?)
10)デザインコンセプト (どのようなイメージにするのか?)

「6)企業理念の確認 (なぜ、作るのか?)」が、まさに、企業の「明確なアピールポイント(コア・コンピタンス)」の確認なのです。

 新商品を開発する際に、顧客のスタンスを持ったデザイナーと共に、上記のようなコンセプトを構築していく過程の中で、企業の「アピールポイント(コア・コンピタンス)」を明文化(キーワード化)していくこと。それ自体が「デザインの効果」です。そして、それがうまくいけば、顧客や銀行に対して「それ以上の効果」を期待できるはずです。



 ちょっと、出来過ぎのシナリオだと眉に唾をつけられそうですが、デザインを導入しないで、このような演出をすることは難しいと言うことはご理解いただけたのではないかと思います。

 中小企業にとっての「デザインの効果」の話、如何でしたでしょうか?

 もし、デザインの導入を検討されているのであれば、あまり悩まずに、デザイナーに声をかけてみてください。きっと、何かが始まります。

 御相談がありましたら、このブログにコメントをください。出来る限りお答えいたします。


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