◆中小企業とデザイン2 ≪老舗として生きる≫
31:【デザイン相談室】考え方10
こんにちは!「工業デザイン相談室」の木全(キマタ)です。デザイナーの実像・デザイナーとの付合い方・デザイナーとのトラブル回避法など書いていきます。御相談がありましたら、コメントをくださいね。
記事の目次
デザイン相談室の目次 デザインの考え方と運用について
デザインのコツ・ツボの目次 商品企画とデザインワークについて
アクセスランキング
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■中小企業にとって、どこまでデザインが必要か?
前回の中小企業にとって、どこまでデザインが必要か?で、少しずつ中小企業に向けたアプローチを始めたことをご報告しました。
そこで、実際にアプローチを始めてみて、なかなか、中小企業とデザインとの具体的な接点がない感じを受け、結論として、悩んでばかりいても先に進まないでしょうから、デザインが役に立つかどうか、試してみたら如何ですか、という提案をしました。
今回も引き続き、「中小企業にとって、どこまでデザインが必要か?」というお題で、もう少し具体的に「デザインの効果」の話をしようと思います。
今回は、架空の企業を設定して、その企業にとって、どのような「デザインの効果」が期待できるかを具体的に書いてみます。
(以下の説明は、ちょっとデザイン寄りすぎるかもしれません。決して、デザインを導入しない企業は駄目だとか言っているわけではないので、それはご了解ください。また、デザインを強要しているわけでもありません。念のため。)
■中小企業のプロフィール例
中小企業センターにお伺いしたとき、デザインの導入を考えられている企業の一般的な例として以下のようなプロフィールを教えていていただきました。便宜上、「A株式会社」とします。
「A株式会社」のプロフィール
従業員10数名の部品製造メーカー。
いままで、大企業数社からの受注で部品だけを製造してきた。
最近、大企業からの受注が減ってきており、新しい販路を開拓したい。
オリジナル製品の開発も検討している。
もし、私がこの「A株式会社」の従業員だったとしたら、上のプロフィールを見ただけで、これからの経営(給料)に少なからず不安を感じさせるものがありますね。
デザインコンサルタントの立場から見ますと、最後の「オリジナル製品を開発して、新しい販路を開拓したい。」が、方針の大きな分かれ目に見えます。
「A株式会社」の場合、大きく2つの選択肢があると思います。
1) 現状のまま、受注メーカーとして技術を磨き、新規の大企業に営業をかける。
2) 新規事業としてオリジナル製品の開発し、全く新しい販路を開拓する。
ではまず、1)の場合の「デザインの効果」を考えてみましょう。
■老舗として生きる
「現状のまま、受注メーカーとして技術を磨き、新規の大企業に営業をかける。」という方針は、「自らの技術を信じて『老舗』になろう」ということでしょう。
「老舗」 いい言葉ですねえ。
お客様から、「あの技術ならA社さんだよ。この部品ならA社さんがいいね。」とすぐに思い出してもらえるほどの「老舗」になれればこっちのものです。
では、「A株式会社」に「老舗」と呼べるような技術があったとしましょう。(どんな企業にも秀でた技術は必ずあると思います。)
既存の顧客は、長年の付き合いで、「A株式会社」を「老舗」だと認識していても、これから開拓する新規の顧客に「老舗」だと認識してもらうには、どうしたらいいでしょう?また、受注の減っている顧客に、再び、「A株式会社」を「老舗」だと認識し直してもらうにはどうしたらいいか?
ここで、「デザインの効果」が期待できます。
■老舗の面構え
三越・高島屋とまで言わなくても、お菓子屋さんや豆腐屋さんでもいいです。「老舗」といわれるようなお店は、やはり、近所の総菜屋さんとは違います。
まず、お店のファサード(店構え)が立派。そこにある看板もさりげなく主張しており、ロゴマークも品がある。ロゴマーク・パッケージ・包装紙・紙袋だけでなく店舗内装までなんとなくと統一感があり、落ち着く。店員さんの対応も心配りがあり、熱心な社員教育が感じられ、安心感がある。
『老舗』となれば、このくらいの「演出」は必要です。これなら、一見さんのお客さんでも、また来てみようかな、また買ってみようかなとリピーターになってくれる可能性が高い。
おまけに、ありがたいことに「老舗」になれば、少しくらい高くても買ってもらえる。(この効果は大きいですよね。)
やはり、『老舗』にとって、面構えは大切です。技術はあって当たり前。そのうえで、名刺・便箋・封筒・伝票などの顧客と直に接する部分の営業ツールにデザインを導入し、『老舗』らしい「演出」を仕掛けることで、顧客へのアピールをすることができます。
そして、もし可能であれば、会社の応接室をきれいにしたり、商品である部品や、パッケージにデザインを導入すれば、もっと「老舗の演出」が効果的にできます。
■老舗の心意気
名刺・便箋・封筒・伝票・部品・パッケージなどに『老舗の面構え』が出てくると、面白いことに、従業員に『老舗の心意気』が生まれてきます。
これは、デザインの副次的な効果で、なかなか測定が難しいです。デザイン自体の効果測定が難しいのに、その副次的な効果などといったら、どう測っていいものやら皆目見当がつきません。でも、明らかに効果があります。
皆さんもディズニーランドに行かれたことがあると思います。そこで働いているスタッフはほとんどがアルバイトです。給料が凄くいいと言うわけでもないのに、いつも笑顔で誰にでも優しく親切に対応してくれます。社員教育が徹底しているのもあると思いますが、決してそれだけではない。ディズニーランドでキャスト(このネーミングも効果的)として働いているのだというある種のステータス(お客様に「夢」を売る!)からくる「心意気」が生まれているのだと思います。
人間は、意外と簡単に周りの環境に馴染んでしまいます。特にステータスの高い状況のほうが馴染みやすい。
「A株式会社」に『老舗の面構え』ができてくると、徐々に「A株式会社」の従業員に『老舗の心意気』が生まれてきます。こうなれば、しめたものです。
同じ業界の中小企業の中でも「A株式会社」は一目置かれるようになりますし、新しい顧客開拓も『老舗の心意気』を持った営業マンが果敢にアタックして獲得してくれるはずです。
ちょっと、出来過ぎのシナリオだと眉に唾をつけられそうですが、デザインを導入しないで、このような演出をすることは難しいと言うことはご理解いただけたのではないかと思います。
次回は、「新規事業としてオリジナル製品の開発し、全く新しい販路を開拓する」場合の「デザインの効果」の話です。
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こんにちは!「工業デザイン相談室」の木全(キマタ)です。デザイナーの実像・デザイナーとの付合い方・デザイナーとのトラブル回避法など書いていきます。御相談がありましたら、コメントをくださいね。
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■中小企業にとって、どこまでデザインが必要か?
前回の中小企業にとって、どこまでデザインが必要か?で、少しずつ中小企業に向けたアプローチを始めたことをご報告しました。
そこで、実際にアプローチを始めてみて、なかなか、中小企業とデザインとの具体的な接点がない感じを受け、結論として、悩んでばかりいても先に進まないでしょうから、デザインが役に立つかどうか、試してみたら如何ですか、という提案をしました。
今回も引き続き、「中小企業にとって、どこまでデザインが必要か?」というお題で、もう少し具体的に「デザインの効果」の話をしようと思います。
今回は、架空の企業を設定して、その企業にとって、どのような「デザインの効果」が期待できるかを具体的に書いてみます。
(以下の説明は、ちょっとデザイン寄りすぎるかもしれません。決して、デザインを導入しない企業は駄目だとか言っているわけではないので、それはご了解ください。また、デザインを強要しているわけでもありません。念のため。)
■中小企業のプロフィール例
中小企業センターにお伺いしたとき、デザインの導入を考えられている企業の一般的な例として以下のようなプロフィールを教えていていただきました。便宜上、「A株式会社」とします。
「A株式会社」のプロフィール
従業員10数名の部品製造メーカー。
いままで、大企業数社からの受注で部品だけを製造してきた。
最近、大企業からの受注が減ってきており、新しい販路を開拓したい。
オリジナル製品の開発も検討している。
もし、私がこの「A株式会社」の従業員だったとしたら、上のプロフィールを見ただけで、これからの経営(給料)に少なからず不安を感じさせるものがありますね。
デザインコンサルタントの立場から見ますと、最後の「オリジナル製品を開発して、新しい販路を開拓したい。」が、方針の大きな分かれ目に見えます。
「A株式会社」の場合、大きく2つの選択肢があると思います。
1) 現状のまま、受注メーカーとして技術を磨き、新規の大企業に営業をかける。
2) 新規事業としてオリジナル製品の開発し、全く新しい販路を開拓する。
ではまず、1)の場合の「デザインの効果」を考えてみましょう。
■老舗として生きる
「現状のまま、受注メーカーとして技術を磨き、新規の大企業に営業をかける。」という方針は、「自らの技術を信じて『老舗』になろう」ということでしょう。
「老舗」 いい言葉ですねえ。
お客様から、「あの技術ならA社さんだよ。この部品ならA社さんがいいね。」とすぐに思い出してもらえるほどの「老舗」になれればこっちのものです。
では、「A株式会社」に「老舗」と呼べるような技術があったとしましょう。(どんな企業にも秀でた技術は必ずあると思います。)
既存の顧客は、長年の付き合いで、「A株式会社」を「老舗」だと認識していても、これから開拓する新規の顧客に「老舗」だと認識してもらうには、どうしたらいいでしょう?また、受注の減っている顧客に、再び、「A株式会社」を「老舗」だと認識し直してもらうにはどうしたらいいか?
ここで、「デザインの効果」が期待できます。
■老舗の面構え
三越・高島屋とまで言わなくても、お菓子屋さんや豆腐屋さんでもいいです。「老舗」といわれるようなお店は、やはり、近所の総菜屋さんとは違います。
まず、お店のファサード(店構え)が立派。そこにある看板もさりげなく主張しており、ロゴマークも品がある。ロゴマーク・パッケージ・包装紙・紙袋だけでなく店舗内装までなんとなくと統一感があり、落ち着く。店員さんの対応も心配りがあり、熱心な社員教育が感じられ、安心感がある。
『老舗』となれば、このくらいの「演出」は必要です。これなら、一見さんのお客さんでも、また来てみようかな、また買ってみようかなとリピーターになってくれる可能性が高い。
おまけに、ありがたいことに「老舗」になれば、少しくらい高くても買ってもらえる。(この効果は大きいですよね。)
やはり、『老舗』にとって、面構えは大切です。技術はあって当たり前。そのうえで、名刺・便箋・封筒・伝票などの顧客と直に接する部分の営業ツールにデザインを導入し、『老舗』らしい「演出」を仕掛けることで、顧客へのアピールをすることができます。
そして、もし可能であれば、会社の応接室をきれいにしたり、商品である部品や、パッケージにデザインを導入すれば、もっと「老舗の演出」が効果的にできます。
■老舗の心意気
名刺・便箋・封筒・伝票・部品・パッケージなどに『老舗の面構え』が出てくると、面白いことに、従業員に『老舗の心意気』が生まれてきます。
これは、デザインの副次的な効果で、なかなか測定が難しいです。デザイン自体の効果測定が難しいのに、その副次的な効果などといったら、どう測っていいものやら皆目見当がつきません。でも、明らかに効果があります。
皆さんもディズニーランドに行かれたことがあると思います。そこで働いているスタッフはほとんどがアルバイトです。給料が凄くいいと言うわけでもないのに、いつも笑顔で誰にでも優しく親切に対応してくれます。社員教育が徹底しているのもあると思いますが、決してそれだけではない。ディズニーランドでキャスト(このネーミングも効果的)として働いているのだというある種のステータス(お客様に「夢」を売る!)からくる「心意気」が生まれているのだと思います。
人間は、意外と簡単に周りの環境に馴染んでしまいます。特にステータスの高い状況のほうが馴染みやすい。
「A株式会社」に『老舗の面構え』ができてくると、徐々に「A株式会社」の従業員に『老舗の心意気』が生まれてきます。こうなれば、しめたものです。
同じ業界の中小企業の中でも「A株式会社」は一目置かれるようになりますし、新しい顧客開拓も『老舗の心意気』を持った営業マンが果敢にアタックして獲得してくれるはずです。
ちょっと、出来過ぎのシナリオだと眉に唾をつけられそうですが、デザインを導入しないで、このような演出をすることは難しいと言うことはご理解いただけたのではないかと思います。
次回は、「新規事業としてオリジナル製品の開発し、全く新しい販路を開拓する」場合の「デザインの効果」の話です。
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