◆2代目だからできる老舗ブランド
【生きのびるための中小企業デザイン】
こんにちは!中小企業のデザインコンサルタントの木全(キマタ)です。
中小企業の方々に向けて工業デザインのエッセンスについてお知らせしています。
中小企業のデザインのお悩み、なんでもご相談ください。
都内近郊であれば、初回は無料でお伺いして、ご相談を承ります。
designsoudan★goo.jp(★を@に)
2014年から2年間、日経BP社サイト「小さな組織の未来学」で「生きのびるための中小企業デザイン」というコラムを担当していました。
そのサイトは閉鎖されてしまいましたが、サイト編集の方と相談しながら考えた、中小企業の方々に役立つデザイン情報は今でも有効だと考えています。そのコラムの内容を、隔週で発信しています。
今回は「2代目だからできる老舗ブランド」です。B2Bのブランド開発では、ロゴマークの使われ方をコントロールすることが重要です。
前回、2代目経営者こそ、デザインをうまく導入してB2B向けの老舗ブランドを立ち上げることができると書きましたが、ブランド開発は、「ロゴマークを作成し、それを使って名刺・便箋・封筒を作れば完成」というものではありません。そこで終わってしまうと、典型的な「効果を実感できない中途半端なブランド開発」になってしまいます。
■中小企業のブランド開発、ありがちな失敗
実際、どんな小さな企業でも、デザインすべき対象は名刺・Webサイト・看板・伝票・社用車など少なくとも50種類ほどあります。その50種類に適用するシステマチックなデザインを「アプリケーションデザイン」と呼びます。
ブランドの核となる企業のロゴマークはブランドの核となるもので、ただの飾りではありません。業務で得た信用は、ロゴマークに集約されてゆきます。しかし、使われている場所によってばらばらで統一感のないロゴマークに対して、人が信頼を積み重ねることはありません。
たとえば名刺ひとつをとっても、いまだに社員の名刺は横書きなのに社長の名刺が縦書きという企業を目にすることがあります。フォーマットがばらばらの名刺を渡されたユーザー(得意先)はどう感じるでしょうか。たとえ名刺に入っているロゴが同じでも、フォーマットが異なるために、渡された側には一瞬、戸惑いが生じることになります。
■ロゴマークは信頼を蓄積する仕組み
この戸惑いは突き詰めれば「同じ会社なのか」という疑いで、このような疑問を持たれることは企業にとって、何もいいことがありません。だからこそ、ロゴマークは常に同じものが、同じ方法で運用されなければならないのです。
名刺というひとつのツールを例に説明しましたが、名刺の交換は企業活動のほんの一部でしかありません。B2B市場においてブランドを浸透させるべき相手は、顧客の担当者や自社の従業員であり、彼らが日々目にするのは、名刺よりも、現場の看板やWebサイト・伝票・社用車かもしれません。自社のそれらを振り返ってみた時、デザインがバラバラな名刺が与えるのと同じ違和感を、知らず知らず与えてはいないでしょうか。
B2Bのブランド開発では、ロゴマークが実際にどう使われ、誰が見てどう扱っているのか、それを見極めてコントロールすることが重要です。つまり、名刺から看板・製品・Webサイト・伝票・社用車に至るまで、現場で使われる50種類に及ぶ個別のデザイン(=アプリケーションデザイン)が、すべて同じ印象になるように統一すること。それこそがロゴマークに信頼を蓄積する仕組みであり、ブランド開発の要点なのです。
著作のご紹介
「デザインにひそむ<美しさ>の法則」(ソフトバンククリエイティブ新書)
「売れる商品デザインの法則」(日本能率協会)
「中小企業のデザイン戦略 」(PHPビジネス新書)
「売れるデザインの発想法」(ソフトバンククリエイティブ新書)
「マインドマップ デザイン思考の仕事術」(PHP新書)
「デザイン家電は、なぜ『四角くて、モノトーン』なのか?」(エムディエヌコーポレーション)