木全賢のデザイン相談室

デザインコンサルタント木全賢(きまたけん)のブログ

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1-4「製品は流線形の洗練を受ける 」その1

2021年01月23日 | 家電デザインの話をしよう(デザイン家電はなぜ四角くてモノトーンなのか?)

大型客船オーシャンライナー(提案モデル)/アメリカ/1930年代/D:ノーマン・ベル・ゲデス



◆1-4「製品は流線形の洗練を受ける 」その1
 【家電デザインの話をしよう】


 こんにちは!中小企業のデザインコンサルタントの木全(キマタ)です。
 中小企業の方々に向けて工業デザインのエッセンスについてお知らせしています。

 中小企業のデザインのお悩み、なんでもご相談ください。
 都内近郊であれば、初回は無料でお伺いして、ご相談を承ります。
 designsoudan★goo.jp(★を@に)




 2014年に上梓した拙書「デザイン家電は、なぜ『四角くて、モノトーン』なのか?」(エムディエヌコーポレーション)で唯一心残りだったのが、取り上げた新旧の家電製品写真350枚がモノクロ写真だったことです。これから、本文と一緒に隔週で少しずつ350枚の製品写真をカラーでお届けしていきます。

 今回は、第一章「面白い家電デザイン」1-4「製品は流線形の洗練を受ける 」(その1)です。流線形は1930〜40年代のアメリカで〈デザイン=流線形〉と言われるほど流行しました。



第一章「面白い家電デザイン」1-4「製品は流線形の洗練を受ける 」(その1)

 前述のように丸・三角・四角が造形の基本要素だといわれていますが、それだけではありません。たとえば「流線形」です。

 デザインの流行はほとんど建築・絵画・ファッションの世界から生まれていますが、唯一、インダストリアルデザインから生まれた流行が流線形です。

 流線形は、アメリカのデザイナー、ノーマン・ベル・ゲデスによって広められ、1930〜40年代のアメリカで〈デザイン=流線形〉と言われるほど流行し、ほぼすべての工業製品が流線形の洗礼を受けました。

     
<ノーマン・ベル・ゲデス>
     (Norman Bel Geddes 1893-1958)
     アメリカの第一世代のインダストリアル
     デザイナー。舞台芸術家からデザイナー
     に転身し、流線形を取り入れた未来的な
     デザインを得意とした。ニューヨーク万
     博(1939年)で未来都市像「フューチャ
     ラマ」を設計した。

 流線形の棺が作られたという逸話も残っています。ちなみに、アメリカでは流線形は「ストリームライン」と呼ばれました。



流線形の歴史(その1)

 流線形にすると、航空機や潜水艦の速度と航行安定性が増して燃費も向上する、という科学的確証が得られたことにより、当時のアメリカの時代風潮とも共鳴して、流線形はモダニズムとダイナミズムの時代を象徴するデザインモチーフになりました。

 旅客機の世界ではダグラスDC3が大成功しました。従来のボックスフレーム構造の無骨な胴体の航空機と比べ、流線形モノコック構造の胴体に一体化した翼を持つDC3は、見るからに美しく性能も優れていました。DC3は世界中で一万機以上生産され、旅客機の原型になりました。


●航空機(ダグラス DC-3)/ダグラスエアクラフト・現ボーイング(アメリカ)/1936年

     
<ダグラス DC-3>
     (Douglas DC-3)
     史上初の本格的商業旅客機であり、航空
     機のエポックメーカーとなった不朽の名機

 思想家でもあるアメリカのデザイナー、バックミンスター・フラーが1933年に開発した流線形の試作車「ダイマクション・カー」は、優れた性能と省エネルギーが謳い文句の画期的な自動車でした。当時の一般的な乗用車と比べ、その先進性は歴然としていました。現代の日本で人気のワンボックスファミリカーの原型と言っても違和感がありません。


● 試作自動車(ダイナマクション・カー)/アメリカ/1933年

     
<ダイマクション・カー>
     (dymaxion car)
     「ダイマクション」(Dymaxion=Dynamic
     & Maximum efficiency)は、最少のエ
     ネルギーで最大の効率を引き出すことを
     意味し、ダイマクション・カーはその思
     想から生まれた前輪駆動・後輪ステアリ
     ングの3輪自動車の提案モデル。デザイ
     ン開発にはイサム・ノグチがかかわった。

     
<リチャード・バックミンスター・フラー>
     (Richard Buckminster Fuller 1895-1983)
     アメリカの思想家、デザイナー、構造家、
     建築家、発明家、詩人。特に思想家とし
     て優れ「宇宙船地球号」などの言葉や概
     念を広めた。また、ジオデシック・ドー
     ム(フラードーム)、ダイマクション・ハ
     ウス、ダイマクション・カーなど数多く
     の発明でも有名。

 流線形は大西洋を渡ってヨーロッパのデザイナーを刺激し、洗練した造形を作り出しました。フォルクスワーゲン・ビートルもその流れを汲んでいますが、1947年にピニンファリーナがデザインしたチシタリア202クーペは、革新的技術と流線形を取り入れた優美なデザインで、その後のカーデザインに多大な影響を与えました。チシタリア202はクーペの原型になったと言われています。


●乗用車(チシタリア 202)/ピニンファリーナ(イタリア)/1947年

     
<チシタリア202クーペ>
     ピニンファリーナの名声を確立し、ニュー
     ヨーク近代美術館(MOMA)に収蔵され
     た名車。トヨタ博物館に動態保存されている。

     
<ピニンファリーナ>
     (Pininfarina S.p.A. )
     バッティスタ・ピニン・ファリーナが
     1930年に創業した、イタリアにある
     世界最大級のカロッツェリア(自動車製造
     工房)。フェラーリに代表される自動車の
     デザインは有名。




著作のご紹介

 「デザインにひそむ<美しさ>の法則」(ソフトバンククリエイティブ新書)
 「売れる商品デザインの法則」(日本能率協会)
 「中小企業のデザイン戦略 」(PHPビジネス新書)
 「売れるデザインの発想法」(ソフトバンククリエイティブ新書)
 「マインドマップ デザイン思考の仕事術」(PHP新書)
 「デザイン家電は、なぜ『四角くて、モノトーン』なのか?」(エムディエヌコーポレーション)




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