◆ご贔屓さんを増やす、かっこいい下請け
【生きのびるための中小企業デザイン】
こんにちは!中小企業のデザインコンサルタントの木全(キマタ)です。
中小企業の方々に向けて工業デザインのエッセンスについてお知らせしています。
中小企業のデザインのお悩み、なんでもご相談ください。
都内近郊であれば、初回は無料でお伺いして、ご相談を承ります。
designsoudan★goo.jp(★を@に)
2014年から2年間、日経BP社サイト「小さな組織の未来学」で「生きのびるための中小企業デザイン」というコラムを担当していました。
そのサイトは閉鎖されてしまいましたが、サイト編集の方と相談しながら考えた、中小企業の方々に役立つデザイン情報は今でも有効だと考えています。そのコラムの内容を、隔週で発信しています。
今回は「老舗ブランドは二代目がつくる」です。二代目だからこそ、デザインをうまく導入して老舗ブランドを立ち上げることができるのです。
前回は、B2B市場における「かっこいい下請け」としての老舗ブランドについて説明しましたが、今回は、実を言うと若い二代目こそが老舗ブランドをうまく立ち上げることができるというお話をします。
■先代がやらなかったこと
創業以来、何十年にもわたって会社が存続できたのは、顧客開拓や資金調達など、先代が行ってきた数々の活動のおかげでしょう。できることはすべてやってきたからこそ、今も会社が生き残っているのです。そして現在は多くの企業で先代が引退し、次世代に事業継承する時代になっています。
でも、代替わりした二代目には二代目の悩みがあります。その典型が、なかなか先代と違う新機軸を打ち出せないことでしょう。
トップが変われば何か変わるのではないか、従業員や関係者はなんとなく期待するものです。しかし、できることはほとんど先代がやりつくしているでしょう。それでも先代がやらなかったことがあるかもしれません。その最たるものとして挙げられるのがデザインの導入です。
■先代の失敗
デザインに対する先代の反応には、大きく次の二つの場合があるようです。一つは全くデザインと接点がなかった場合。そういう方も多くいらっしゃって、筆者自身もよく、中小企業の社長から「デザイナーと初めて会った」と言われます。そしてもう一つは、デザインへの投資がうまくいかず、デザインに対してネガティブな印象を持っている場合です。
例えばバブルの頃、中小企業においてもブランドリニューアルが流行しましたが、大手代理店などにブランド刷新を依頼したものの数百万円という費用に見合う効果がなかった、というような失敗をした先代社長は二度とデザインにかかわろうとしません。
当時、大手代理店のブランディング受託部門の営業一人当たりの年間売上目標は1億円を大きく超えていたと言われています。そんな彼らにとって数百万円の案件は小さな仕事でしたから、きめ細かい対応を望むべくもなく、中小企業のブランド開発は中途半端に終わることが多かったようです。
■二代目のデザインセンスを生かそう
当時はそのような「不幸なデザインとの出会い」の話をよく耳にしました。でも、バブル期に日本人のデザインセンスが洗練されたのも事実です。そんな時期に多感な学生時代を過ごした二代目は、デザインとの付き合い方を身につけています。
「デザインとの付き合い方を知っている二代目だからこそ、デザインをうまく導入して老舗ブランドを立ち上げることができる」。筆者は、先代との違いに悩む二代目社長に、このようにお話しさせていただくことがあります。
実際に、筆者がブランド開発をお手伝いした中小企業の二代目社長から、ブランド導入半年後に、次のような評価をいただいたこともあります。
「社員が気に入っているのが一番の効果」
「社員の自信や愛社精神に寄与している」
「顧客から企業の格が上がったと言われる」
ブランド開発の効果は短期的な売り上げに結びつくものではなく、そして売り上げが上がる頃には、ほかのさまざまな条件も変化しているため、その貢献度が見えづらいものです。しかし、それがうまくいった時には、長期的に見て収益を向上させるきっかけを作ることができるのです。
なお、ブランド開発を成功させるためには押さえておかなければならない要点があります。B2B市場における老舗ブランド開発については次回お知らせします。
著作のご紹介
「デザインにひそむ<美しさ>の法則」(ソフトバンククリエイティブ新書)
「売れる商品デザインの法則」(日本能率協会)
「中小企業のデザイン戦略 」(PHPビジネス新書)
「売れるデザインの発想法」(ソフトバンククリエイティブ新書)
「マインドマップ デザイン思考の仕事術」(PHP新書)
「デザイン家電は、なぜ『四角くて、モノトーン』なのか?」(エムディエヌコーポレーション)