泰西古典絵画紀行

オランダ絵画・古地図・天文学史の記事,旅行記等を紹介します.
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サムソンの物語 The Story of Samson(5) 旧約聖書 士師記16章23~31節

2012-08-18 18:44:55 | バロック期迄の版画と素描



ペリシテ人の神殿を破壊するサムソン Samson destroying the temple of the Philistines
engraving on paper, round plate, app.26.7 mm (diameter); c.1560
Lettered below "Marti hemskerck inventor / Philippus galle fecit / H. Cock excudebat". Numbered below right "6".
invented by Maarten van Heemskerck; engraved by Philips Galle; published by Hieronymus Cock
from "The Story of Samson";group of 5 engravings,(New Hollstein 85-90)

 ペリシテ人の領主たちの祝宴で3000人が集まった中,サムソンが引き出され笑いものになろうとしたとき,髪が伸びてきていたサムソンは主に復讐を願い,力の蘇った両手を中央の支柱の二本にかけてこれらを押し倒した.階上の男女も含めてその場にいた者はことごとく命を落としたが,その数はサムソンがそれまでに殺した人数よりも多かったという.彼はそこで絶命したが,それまでの20年間,士師としてよくイスラエルを裁いた.


サムソンの物語 The Story of Samson(4) 旧約聖書 士師記16章1~22節

2012-08-17 22:13:37 | バロック期迄の版画と素描


サムソンとデリラ Samson and Delilah
engraving on paper, round plate, app.26.7 mm (diameter); c.1560
Lettered below left "Martinus hemskerck inventor / Philippus galle fecit / H. Cock excudebat". Numbered below "5".
invented by Maarten van Heemskerck; engraved by Philips Galle; published by Hieronymus Cock
from "The Story of Samson";group of 5 engravings,(New Hollstein 85-90)

 (時を経た後,サムソンはソレクの谷のデリラを愛するが,デリラはペリシテ人の領主たちにサムソンの怪力の秘密をさぐったら一人ずつが銀1100枚を与えるとそそのかされる.デリラは秘密を探ろうとするが,サムソンは三度偽る.最後に執拗なデリラの問いかけに負けて「母の胎内にいたときからナジル人として神にささげられた,力は髪の毛をそられると抜けよう」と打ち明けてしまう.)サムソンはデリラのひざの上で眠り,そこを見計らってもう一人がサムソンの髪にはさみを入れ七房を剃ってしまう.デリラは傍らに控えていた兵士達に切り取られたサムソンの髪を高々と示す.左上奥にはその後捉えられたサムソンが眼をえぐられる場面がやはり異時同図法で描かれている.連作の第五作.


サムソンの物語 The Story of Samson(3) 旧約聖書 士師記15章

2012-08-16 21:41:11 | バロック期迄の版画と素描


ロバの下顎骨でペリシテ人たちを打ち倒すサムソン
Samson smiting the Philistines with the jawbone of an ass
engraving on paper, round plate, app.26.7 mm (diameter); c.1560
Lettered on a shield below "Martin / heems / kerck / inven" and "Philippus gallus fecit H. Cock excu". Numbered below "4".
invented by Maarten van Heemskerck; engraved by Philips Galle; published by Hieronymus Cock
from "The Story of Samson";group of 5 engravings,(New Hollstein 85-90)

 (妻との間を引き裂かれたサムソンはペリシテ人に報復する).遠方のペリシテ人の小麦畑は,サムソンが300匹のジャッカルの対の尾に松明をつけ放ったため火の手が上がっており,そこに諸手を挙げたサムソンが描かれている.(これを見たペリシテ人はさらに妻だった女性を焼き殺してしまう.これを知ったサムソンは,同族によってペリシテ人の前に連行されたとき),彼ら1000人を手近にあったロバの顎骨で徹底的に打ち殺してしまう.下方には死体の山が広がる.顎骨の辺りから出た水を飲むサムソンが中景にやはり異時同図法で描かれているが,サムソンが顎骨を投げ捨てた高台「ラマト・レヒ」でのどの渇きを主に祈ると,主はその地を割いて「エン・ハコレ」(祈るものの泉)を与えられ,そこから水を飲んだというのが正しく,後世誤訳のため,顎骨から水を飲むサムソンがよく描かれている.連作の第四作.


サムソンの物語 The Story of Samson(2) 旧約聖書 士師記14章10~14節

2012-08-15 12:06:58 | バロック期迄の版画と素描



サムソンの結婚 The wedding of Samson and the Philistine woman
engraving on paper, round plate, app.26.7 mm (diameter); c.1560
Lettered below "Martinus hemskerck inve / Philippe galle fecit". Numbered below ".3.". With three lines at right "Desendit pater ... Iudic.14,10.".
invented by Maarten van Heemskerck; engraved by Philips Galle; published by Hieronymus Cock
from "The Story of Samson";group of 5 engravings,(New Hollstein 85-90)

 サムソンは件のペリシテ人の女性と結婚する.前方に結婚式の場面,二人の間に司祭,サムソンの両親が付き添う.異時同図法で,階上に披露宴の場面が描かれ,召使が食事の乗った皿を運び上げ,30人の客と同席したサムソンは中央のハイライトの人物か(謎をかけているようにも見える),向かって左奥に座っている大柄の人物か(隣がマノアら両親).ここでサムソンは謎かけをする:「食べる者から食べ物がでた.強いものから甘いものが出た」.連作の第三作.


サムソンの物語 The Story of Samson(1) 旧約聖書 士師記14章1~9節

2012-08-14 20:47:47 | バロック期迄の版画と素描


ライオンと組打するサムソン
Samson wrestling with the lion
engraving on paper, round plate, app.26.7 mm (diameter); c.1560
Lettered below right "Martinus hemskerck inve / Philippus galle fecit / .H.Cock excud". Numbered below left ".2.".
invented by Maarten van Heemskerck; engraved by Philips Galle; published by Hieronymus Cock
from "The Story of Samson";group of 5 engravings,(New Hollstein 85-90)
good impression, scarce

 主の祝福を受けたサムソンは剛力を謳われる.彼はティムナというところでペリシテ人の娘に心を奪われる.当時はペリシテ人がイスラエルを支配していた.
 サムソンは父母と共にティムナに向かう.ティムナのブドウ畑に来たとき,若い獅子が向かってきた.ここで描かれるのは,彼がライオンの顎を割く場面である.背後にティムナは城塞都市として描かれ,かの地へ向かうマノアら両親が描かれている.彼は自分のしたことを両親に言わなかった.娘と会った後に,獅子の死骸を見に行ったところ,死骸には蜜蜂が群れており,そこから彼は蜜を集めた.じつは「マノアの燔祭」に続く連作の第二作.

 余談だが,この場面は「十戒を授かるモーゼ」のタペストリーを購入したときに同じオークションでこの主題のボルゲーゼ・コレクション旧蔵のタペストリーが出品されていて大いに迷った記憶がある.同じ劇的シーンでも,いつもながめるなら生々しいのはどうかと考えてしまった.