泰西古典絵画紀行

オランダ絵画・古地図・天文学史の記事,旅行記等を紹介します.
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ドイツ博物館-4 ミュンヘン・ウィーン・ロンドンの旅(5)

2013-05-22 23:49:01 | 旅行記

 1F(二階)に上がるとやはり閉鎖中の展示室が続き,途中,「薬学」の部屋に出ましたが,順路からすると最後のところなのでざっと見てから,また後で写真をと思いましたが結局そのままとなりました.さすがにだいぶ疲れてきたようです.

 気が付くと通路は「物理学」と「エネルギー工学」の狭間ですが,左の部屋を見ると,おお!

左:天体望遠鏡が鎮座した部屋です.が,扉は閉鎖されている....
中:ここは「アカデミー・コレクション」の部屋ですが,展示準備中.遠目にしか見えません.
右:望遠レンズで写真を撮ってみると,向かいの壁の棚には肖像の横にたぶんリング型日時計Universal ring dial が置かれているようです.


左:写真で見ると,壁の解説には「バイエルン(英語ではバヴァリア)科学アカデミーの科学機器」の展示である旨が書かれていました.
中:この部屋が左,奥が「エネルギー工学」,戻ると「物理学」
右:「エネルギー工学」の入り口には人間が産み出す電気やCO2量の表示.奥は太陽光エネルギーや核エネルギーなどの展示でした.

 戻って,「物理学」のセクションは迷路のように入り組んでいます.途中でどこかわからなくなりました.
左:物理法則の教材の体験型展示 科博にもありますね.
中:アルキメデスの原理
右:中にはアンティーク機器もあります.これは1656年に発明されたクリスティアーン・ホイヘンス式の振り子時計の振り子(左上に1673年刊行の解説書の写真).この辺りのキャプションや解説はドイツ語しかありません.

 うろうろしていると,また異質な空間が現れます.


科学者の書斎を再現したものと思われますが,ここも進入禁止.奥に渾天儀と地球儀が見えます.入れてくれと,係員のおじさんに頼んだのですが,「ダメダメ,・・・あれは複製だよ」と.
左の写真は,腕を伸ばしてあたかも部屋の中にいるようなアングルでとってみました.


左:渾天儀のアップ 水平環の台が八角形なのでドイツ製かと思いましたが,台は状態がどうも近代の複製のようです.球のほうはオリジナルかも.
右:地球儀も複製でしょうかね? 台の下にはコンパスが入る穴も付いていますが.


 この地球儀の水平環の板に張られた紙のはがれ具合は決して複製ではなく,明らかにオリジナルでした.帰国後に再確認したところ,これは有名なブラウの68cm地球儀で,1645/48年頃に製作された第4版でした.
 この特徴としては(1)左上に日本が描かれていますが,蝦夷は変形して縦長く,本州よりはかなり北に描かれています.(2)左下のオーストラリア大陸はまだ探検され尽していないので,南東が不完全です.(3)右上の北米のカリフォルニアは半島でなく島として描かれています.


ドイツ博物館-3 ミュンヘン・ウィーン・ロンドンの旅(4)

2013-05-19 09:32:36 | 旅行記

ホール方面から向かって右奥に向かいます.照明を落とした一角は「ドイツの未来大賞」.そこを抜けると広い階段教室のような空間に出ます.


左:「ドイツの未来大賞」 左にはドイツの著名なエンジニアリング企業の名前が掲示されています.奥に人だかりが出来ていますが....展示内容はよく分かりませんでした
右:この場所ではナノテクやバイオテクノロジーの講座が開かれるそうです.奥の宇宙基地のような球体はDNA研究所らしく,中では研究者の方が仕事中で,勿論入れません.右手のオブジェは骨梁構造を表現しているようです.


左:手前の壁には生体応用技術として最新の義足の展示
中:このホールを出て,戻りは「ロボット工学」の部屋ですが,日本の展示会に比べると,動いていないためか見劣りします.
右:鉄道模型パノラマの部屋 ハンブルクでもそうでしたが,ドイツの博物館ではよく眼にしますね.


左:トンネル工学 この手前を左に曲がるとエレベータ・階段室ですが....
中:上を見上げている子供
右:6階層のもっと上からワイヤーが降りています(画像ななめに右上方向へ)


フーコーFoucaultの振り子でした.じつは,外から眺めた右の高い塔がこの部分です.

 19世紀前半に提唱されたコリオリの力という物理学の概念があり,地球の自転によって,極寄りと赤道寄りのわずかな差でもその場所に存在する物には,赤道寄りのほうが自転と逆方向に残ろうとする慣性力が大きいため,北半球では時計回りに振り子は回転します.
 振り子が並んだピンを倒していくので,一種の時計になっています.回転が1周するのにかかる時間は、その場所の緯度θ°に依存し,24時間/sinθで計算されます.ミュンヘンの北緯は48°でsinθ=0.743から32時間で,ここでは100度くらいが9時間相当と表示されています(矢印は方向を示すだけ).素朴な疑問ですが,毎日開館直前にピンを戻し,台を回転して場所合せをするのでしょうね.

 水力工学と橋のセクションは改装中のため,以上で地上階は終了,ここから1F(2階)に上がります.地上階は工学中心でしたが,上の階はもっと古典的な意味でアカデミックかもしれません.


ドイツ博物館-2 ミュンヘン・ウィーン・ロンドンの旅(3)

2013-05-16 01:00:51 | 旅行記

クロークルームを抜けると左手に「石油と天然ガス」(ビジュアルに向かず略します),地下に「採鉱」(見落としました)の展示があり,奥の右手が「金属」の展示です.


左:「金属」の第一室 ブロンズ彫刻の手や鉄製の武具など.写真正面に見える小窓を拡大すると....
右:貴金属の鋳造でした.ドイツの博物館はこのようなミニチュア模型が本当によく出来ています

先に進むと鉄の製造の歴史です.突き当たりに「溶接」,角を回って「素材検査」,レーザーの解説もあり,「機械工具」となります.

左:19世紀までの鉄と鋼鉄の精錬,手作業です.こちらは等身大の模型
中:1856年からインゴット塊として製造されるようになり,格段に生産が増します.奥がまだまだ遠い....
右:機械工具の展示,工場の中にいるようですね.

 恐らくドイツの(バイエルン州の?)子供はここにきて,工場見学の変わりに様々な機械を目にして学ぶのでしょうね.
 続いて,「動力機械」の展示になります.まずは自然エネルギーから.ここが前半の一番のお勧め.


左:このミニチュア模型の中央右を見てください.牛が歩みながら台の車が回る仕組みです.1馬力ならぬ1牛力ですね.
中:水力 小川などの流れを椀状のプロペラで受けて,軸が回転する仕組みですね.これは少し大きな模型
右:風力 各種の風車模型の展示です.大きいものは何メートルもありました.


左:Post mill[柱式風車] 12世紀末にフランドル・フランス・イギリス付近で開発されたものらしい.このなかでは最も古いものでしょう.(写真に写っている解説がピンボケで読めませんでした.間違っていたらごめんなさい)
中左:Trunk Windmill(Hollow[中空型]-postmillのことでしょうか.postmillの発展型だそうです) 1830年頃北ドイツに見られたもの.
中右:Smock mill[オランダ式風車].この模型は1880年頃北ドイツに見られたものです.中空型の最終発展したこの形式によって風向きの変化の問題が解決しました.風車の付いた頭部だけが回転して向きを替え,風車の回転はカムを介して塔内の軸を回す仕組みです.17世紀オランダで発達しましたが,19世紀に蒸気機関・内燃機関の発達,さらには電化によって衰退します.解説によるとドイツ内の風車は1882年に19000台あったものが1925年に15000台,現在?においては5000台ほどだそうです.
右:Tower mill[塔型風車] 13世紀末までに出現したそうです.これも写真が読めませんでした.塔型は二番目に古いものかとも思いますが,風車の形式も異なるし最も古そうに見え,並んでいる順でも最古かも.

内燃機関を経て,機械部品の通路を抜けると「電力」の展示に移ります.

左:蒸気機関・・・ですね.
中:「電力」の展示,機械はモーターなどだと思いますが.
右:奥の部屋に鎮座する怪しげな機械は? 部屋に入ったときには演出が終わったあとでした.

これで1階を半分以上,見終わったことになります.


ドイツ博物館-1 ミュンヘン・ウィーン・ロンドンの旅(2)

2013-05-13 21:40:36 | 旅行記

 ドイツ博物館は日本で言えば,上野の国立科学博物館に近い存在です.博物館学という学問があり,扱う資料の分野によって博物館の特質が決まります.その意味で両者にはやや違いがあり,科博では自然史natural historyが含まれているので,鉱物・動植物の標本や恐竜博までやっていますが,ド博では理工学を中心とした科学技術や科学史が主体です(間違っていたらごめんなさい).

 地上階(BF)の展示室は,入り口から直進してしまったので突然巨大な空間に帆船が,上空ではなくて体育館よりも高い天井の付近には飛行船が....

左:HF31 Maria号 1880年製の帆船 上に飛行船が小さく見える
右:Renzo号 1931年製 ヴェニスの蒸気タグボート. 船内に入ると蒸気機関を間近に見られます

 もう少し進むと,戦闘機が並び,ああこれが模型マニア垂涎の,と息を呑みましたが,その後どちらに行ったらいいのか分かりません.

左:動力機関とあるのですが,矢印もあるのでつい奥に進んでしまいます
中:実物のジェット戦闘機群が....
右:これはメッサーシュミットMe 262 A-1a 1944年 アウグスブルク製だそうです


左・中:ジェット旅客機のジェットエンジンの構造が実物で分かります
右:クロークルームの奥に見えるのは,古式ゆかしい井戸の掘削機か?

 とりあえず,もらった館内図で確認すると,入り口左がクロークルームでそこから回るのが模範ルートであることがわかりました.


天球儀を求めて~ミュンヘン・ウィーン・ロンドンの旅(1)

2013-05-08 03:38:19 | 旅行記

 2年ぶりに訪欧する許可が出たので,GW中3都市(グリニッジを加算すると4都市)を周遊してきました.日系A社ではGW期間中はいくらマイルが残っていてもなかなかエコノミー以外予約を受けてもらえないことが判明しています.さしあたって,往路ミュンヘン着,帰路ロンドン発で1年前から予約していた小旅行でした.
 滞在中はすべての都市で雨がぱらついたかと思えば晴天もあり,朝は肌寒く昼は上着着用では暑いといった気候でした.

 初日,滞在3度目のミュンヘンはAll about 「ドイツ博物館」だけ.事前に天球儀の展示場所をメールで聞いてみたのですが,届いた返事をみたのは帰国後でした.
 事前に中央駅から博物館棟への行き方をウェブでみると,トラム16と書いてあったり18と書いてあったりします.どうもこの二つの路線はクロスオーバーしているようで,同じ電車に乗っていても中央駅を過ぎると路線表示が変わり,それに気づかずに見当外れのところに出てしまいました.この時期,停留所に注意書きとおぼしき掲示が出ていたので,運行の変更など特殊事情があったのかもしれませんが.ホテルで聞いたとおり,中央駅からは地下鉄でたしか3つめのイザルトール駅で降りて徒歩5分程度なので,これが最も速いし間違いが無いようです.

 じつはこの博物館は展示場が市内に3箇所に分かれ,さすがエンジン・テクノロジーの国ドイツとあって,自動車や航空機に試乗できる会場がそれぞれあるらしいのですが,個人的関心はメインの博物館棟です.以前ツアーで一緒になった方に航空機のモデル作りが趣味の方がいらっしゃって,この博物館の実物の展示は模型のディティールに非常に役立つので来訪した旨のことを聞いていました.
 B-1階(日本の一・二階)は建物全体が展示空間で,確かにこの中にも格納庫のように広大なスペースに実物の飛行機(フルスケールは中小型機ですが)などが飾られています.2-3階は回廊形式,4-6階が丸い塔の部分,ただし5階以上のプラネタリウムと天文台の部屋は現在改装中で閉館していました.


左:博物館はイザール川河畔に聳える塔が目印 右の塔ののなかには,あるものがあります.左の丸い塔はプラネタリウムと観測室のはず.
右:古地球儀の展示 これだけの明るさでの展示は珍しく見やすい


右:3階の天文展示室Ⅰ 古観測機群や渾天儀もあります
左:2階の宇宙飛行関連の展示 さまざまな実物大の人工衛星群