いい国作ろう!「怒りのぶろぐ」

オール人力狙撃システム試作機

ネット規制に関する雑感

2008年04月24日 17時03分39秒 | 社会全般
ほぼ煮詰まってきたようなので、遅ればせながら書いてみたいと思います。
個人的な感想としては、これまでにも幾度となく問題とされてきた話ではないかと思います。報道規制の話なんかも少し似た部分はあるかもしれません。ネット規制が何度も俎上に上るということは、それなりに問題がある、ということだろうと思います。


1)現在の状況

はてなブックマーク - 「ネット規制法、保護者も子どもも迷惑」とPTA連会長 MS、ヤフーなどと会見 12 - ITmedia News

主だったところではMiAUという団体が活動を始め、ネットに関連の深い業者や専門家や著名人等が反対表明に至った、ということになりましょう。少し前までの「烏合の衆」から、割と明瞭な形にはなってきたんじゃないかと思います。これもある種の「サイバー・デモクラシー」の一形態の発現と見えなくもありません。


2)これまでの経緯

それほど大袈裟にいうほどの経過でもありませんが、私の主観的な捉え方から書いてみます。
まずは人権擁護法案頃に遡ることになりますが、05年春頃の動きでした。ネット上では、今回の騒動と似たような感じの反応だったように思えます。私個人の考え方はブログ記事に書いてきましたので、今でもあまり大差はありません。

参考記事:
・05/3月 人権擁護法案とネット言論:MSNに言及あり

・05/9月 知識階層は弱体化が進んだのか:サイバー・デモクラシーや反専門家主義について記事のリンクあり

・05/6月 「匿名・実名」問題に対する総務省の立場:「情報フロンティア研究会報告書」関連

・07/1月 Wの喜劇:マスメディアのネット批判とか

・07/11月 炎上とアウトブレイク:リテラシー関連とか

・07/12月 米国の「cyber bullying (サイバーいじめ)」:ヤフージャパンの社長さん談話に触れています


かいつまんで申しますと、05年には人権擁護法案問題や総務省の活動などが注目され、ネットの功罪のうち特に「罪」の方が取り上げられがちだったのではないかと思われます。「功」の方に光が当たるのは、その後の「web2.0」モノとか、ポジティブ教教祖、フューチャリスト、マッチョなどの登場まで待たねばなりませんでした(というのは冗談です。有名どころでパッと思いつくのは、梅田望夫氏、小飼弾氏、ジャーナリストでは佐々木俊尚氏といった方々でしょうか)。

ブログ(利用者や発言力?)が拡大していく中で、ネット言論のマスメディア批判は年中行事のようであり、珍しいものではなくなりました。それ故、両者の対立が深刻化した時期がありました。それが頂点に近づいたのは、06年終わり~07年初め頃だったでしょうか。例の毎日新聞の「ネット降臨」とかが出された頃です。
これにはいくつか伏線があって、例えば「オーマイ」のバトル(続・アマチュアらしさ?)などがありました。


多分、いずれこうなるのではないか、と予感させたのは、NHKの「日本の、これから」(06年12月)だったのではないかと思います。私は当時の放映を見たんですけれども、やはり警察庁の役人の人が呼ばれていて、「ネット規制賛成派」だったと記憶しています。この時にも、ネットの問題点がかなり広い範囲で取り上げられ、規制を急ぐべきではないという専門家の意見が大半ではあったものの、問題を野放しにしておいていいのか、という意識を多くの国民にもたらしたのではないかと思います。今のネット規制に関する論点の大半は、この番組中で出されていたように思います。ですので、ネット上の利用者たちがどう考えているかは判りませんが、話としては特別に目新しい論点でもない、とは思います。

「日本の、これから」に関連して、リンク集が作られておりましたので、ご紹介したいと思います。
日本の、これから─ネット社会” 関連リンク集 “大討論”掲示板 SCIサイ


自由は守るべきだが、「ちょっとマズいよね、今の状況」って話になってきたのではなかろうかと思います。そこに至ったのは、ネットとマスメディアの深刻な対立があり、マスメディアがネット上の浄化を願うことがあるのであれば、恐らくは既存メディアの大半がこの法案に対しては「スルー」という立場を取るでありましょう。別に法案反対を喚起してあげる必要性なんてないからです。現状ではネットメディアの一部が積極的に取り組む程度であり、それではネットに深く付き合っていない国民には情報が届き難くなるだけなので、国民からは強い反対の声は出されないだろうと思われます。

それよりも、既存メディアにとっては、ネットの危険性を国民に知らしめる方が容易であるし、マスメディアが得意の「追及」「糾弾」モード、「ニュースバリュー」といった部分で考えても、そちらの方が選択されやすいのではないかと思います。他のことでもそうなんですが、「こんなに危ない!」とかの方が注目を惹き易く、マスメディアが追及する側に立てるので作りやすいでしょう、ということです。なので、規制反対派の側についてくれることを期待するのは結構難しいのではないでしょうか。


3)法整備に代わる説得的な代替案は必要

多くの国民からの援護射撃が期待できない、ということになりますので、多数派の圧力では動かせないでしょう。むしろ、多数派の意見としては「規制すべし」という方が濃厚かもしれません。数的圧力を動員しないで相手側を説得せねばなりませんので、規制派の主たる疑問や論点について答えることができなければならないと思います。

以前にMiAU発足前の中の人へ、エールを送った(最近の学者は人間力が足りない(笑))ことがありますが、基本的にはあまり変わらないかな、と思います。具体的に対応策を提示した方がいいのではないでしょうか。
例えば、
 ①ネット関与の重大事件で行政の監督責任を追及されたら?
 ②過激なサイトや違法行為をさせるサイトをどうするか
 ③ネットのイジメ問題で自殺したりするのをどう防げるか
 ④個人への攻撃が起こることを防げるか(晒しとか)
といった声に答えられなければならないでしょう。

これまでもそうなんですが、大抵は「法規制はよくない」と言うだけであり、一方的に自分たちの正しさだけを主張しているようにしか見えず、それでは説得されないように思えます。極端な言い方をすれば、大義名分とか規制の害だけは判るだけで、大義名分の正しさを聞かされたところで被害者は救済されません。もしも、「自由を守るためなので逝ってくれ。少数個人が大義の犠牲になるのは止むを得ない」という意見であるなら、それを明確に言うべきでしょう(多分言えないと思いますけど。言ったら、余計に規制派の怒りを買うことになってしまうでしょう。笑)。

また例で申し訳ありませんが、火事について「防火教育が大事だ」ということが真実であるとしても、今現実に火災に遭っている人にとっては何らの効力もないわけです。火事というのは、常日頃の防火訓練や防災教育が有効であり重要なんだ、ということであっても、目の前で燃えてる人を救助できなければ説得力がない、ということです。なので、具体的に「消火器を配備します」「消火栓を設置します」、緊急の時には「消防車が出動できる体制を整備します」、ということを示すことが必要なのではないでしょうか。規制を求める側というのは、そういう対策を求めるが故に規制賛成(推進)の立場なわけですから。

これまでの規制反対派の方々のご意見の多くは、そういう具体的な対策でも何でもなく、ただ単に規制された場合の問題点を挙げているだけで(火事の例でいうと「消防隊整備に膨大なコストがかかる」とか「消火器を配備するのは大変だ」とか)、現実に被害をどう防ぎ救済するか、ということが示されていないように思うのです。それは説得力に欠けるのではないでしょうか、ということです。


4)状況好転のためには

ここに来て、MSとヤフーという業界の巨人が参戦してきたので、大きな援軍を得ました。これを活かすべきでしょう。
法規制を待ってもらう為には、業界内で実効性のある自主規制とか共通の対応策とかを作っていく必要性があると思います。放送業界でいうBPOみたいなものですかね。ウチのブログでBPOを批判したことがありますけれども、行政の介入や規制の影響をあまり受けないようにする為の策としては有効だと思います。強い規制を拒否する代わりに、緩やかな自主規制を受け入れ自ら提示する、ということです。少し譲歩することで法規制を回避できるのであれば、業界側から申し出て自主規制を課すことも一つの方法でしょう。

もしこれを選択するのであれば、
 ア)時間を区切ること
 イ)現実被害の救済が可能なこと
 ウ)将来時点での見直しを約束すること
 エ)行政側との接点を確保すること
みたいなものを提示すればいいのではないでしょうか。

ア)は、いつまでに何をどれだけ、という具体的工程を提示して、それを確約するということです。業者ごとで「そんな時間では対応が間に合いません」みたいなことではダメです、ということ。イ)は、被害者からの訴えとか申出や、刑事事件が発生したような場合に、実効性のある救済措置が発動できるようになっていなければなりません。ウ)ですが、自主規制の体制を整備しても、効果は判りませんので、5年後とかにもう一度点検、検証することを約束します、と現時点で宣言するということです。エ)は平凡ですけれども、自主規制管理団体との情報交換や、行政側から情報提供の求めがある場合に協力するとか、そういったことですね。


既に携帯電話のフィルタリングは動いているので、自主規制でもある程度は機能させられるのではないかと思えます。ネット上ではフィルタリングは害悪だ、みたいな意見もあるわけですが、その改善策を提示できるのであればそれをやれば解決できることではないかと思えます。より原理的に「フィルタリングは許されない」とか「規制することそのものが悪だ」というような意見に傾けば、より強い権限の発動を招くのではないか(具体的には立法措置)ということは考慮しておくべきでありましょう。それでも構わない、ということなら、自分たちの正しさを追求し自由獲得の戦いを挑んで目的達成の為にせいぜい頑張って下さい、としかいいようがありませんけれども。


5)終わりに

自分たちが不利な立場にあり、苦しい戦いを強いられるであろう、ということを自覚しているとは思えないことは珍しくありません。上の例に挙げたような、①~④に対して答えを用意しようと考えないことがちょっと不思議ではあります。

多くの人々は普段は攻撃側にしか回らないので、監督責任を追及される行政の立場なんて考えないのかもしれませんが、行政の不作為を問われないように「我々が全力で防御します、バッシングから我々がお守りします」くらいの意気込みを見せたら、規制法案関係の官僚の方々にも納得してもらえて、猶予を与えられるかもしれませんよ(笑)。


政策決定は、「主張の正しさを立証することではない」ということは前に書いたように思いますけれども、どうも正論をぶつけていこうとする部分だけが目についてしまい、本来の目的である「普通の利用者をどうやって被害に遭わないようにするか、防ぐか、救済をするか」という視点が欠けていると思いますね。
そういうごく普通の利用者や「被害に遭った人、今まさに被害に遭いそうな人」とかの立場になって考えていないんですよ。別に賢くて知的水準が高くて、ネットやケータイやPCにも詳しくて、自分の頭で何でも正しく考えて取捨選択できるような人ばかりをモデルの基本として政策を考えるわけではありませんからね。

あれとこれを用意して、こんなふうにやるから、ぼくらを信頼してくださいね、とか言うのであれば、多くの人が耳を傾けてくれるのではないかと思います。こうしておくから、(法規制するほど)そんなに心配しなくても大丈夫ですよ、というようなことを言わないと、大多数の人々が心配してるんですから。
つまりは、火がついたら消火器で消せるよ、それでダメなら消火栓からホースで水をかけるよ、もっと必要なら消防車を出動させるよ、と示すようなことです。




最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。