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『日本辺境論』をこえて(5)ちょっと付け足し

2012年03月03日 | coolJapan関連本のレビュー
◆内田樹『日本辺境論 (新潮新書)

前回、書き忘れたことがあるのでちょっと付け足しておく。

日本の若者は、外部に圧倒的に優れた「師」が存在しなくなった時代に育っており、その意味での欧米への劣等感からも解放されていることに前回触れた。ところで、彼らが外部に「師」をもとめて「ふらふらきょろきょろ」する傾向から解放されている理由が、もう一つある。これはすでに触れたことだが、再度確認しておきたい。

それは、明治以来の日本が必死に追いつこうとしていた「世界標準」そのものが、今行き詰まり、批判にさらされているということだ。「近代合理主義」「進歩」「科学」といった価値だけを無条件に信奉する時代が確実に終わり、新たな「世界標準」が模索される時代になったのである。1990年のバブル崩壊以降に小学生時代を送った世代(Z世代)は、日本人のかつての「師」が振りかざしていた原理が、すでに疑われ始めた時代に育っている。地球環境問題は、その具体的な現れのひとつだ。親の世代が崇拝していた「師」は、自分たちの実力とさほどかわらないだけではなく、「師」が掲げていた教えそのものが疑わしいという空気の中で彼らは育った。

日本が、「西欧近代」という外部の文明原理を、自分たちの伝統文化を否定さえして、無我夢中で追い求めた時代はとっくに終わった。しかし、親たちの世代までは、その欧米崇拝と「辺境人」根性と自己否定と劣等感などからまだ解放されていなかった。しかし、これからの時代は違う。「辺境人」根性から自由になった眼で、一度否定した自分たちの伝統をもう一度見直し、その長所は長所で、ありのままに受け入れ、そこから出発していくほかないと体感している世代が出現した。そのような傾向は、たとえ自覚を伴っていなくとも、若い世代の間にすでにはっきりと現れている。

何度もいうようにこの変化は、かつての圧倒的な唐文明の影響から脱して、自分たちに独自の文化を築いていった時代の変化に匹敵するのである。

《関連図書》
欲しがらない若者たち(日経プレミアシリーズ)
ニッポン若者論 よさこい、キャバクラ、地元志向 (ちくま文庫)
論集・日本文化〈1〉日本文化の構造 (1972年) (講談社現代新書)

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クールジャパンに関連する本02
  (『欲しがらない若者たち(日経プレミアシリーズ)』の短評を掲載している。)

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2 コメント

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Unknown (名無し)
2012-03-04 14:16:47
西洋文明を師としてきたが行き詰まり,新たな「世界標準」が模索される時代になったのはいいとして,現在の若者が日本の古い伝統・価値観を見直し始めたきっかけって何でしょうね。なにしろ親の代で否定されていたものですから,自ずから興味を持って調べないと「伝統的な何か」には辿りつけません。西洋を規範とする「世界標準」に生まれた時から身を置いていた若者が,どうしてその代用として日本の伝統文化に興味を向けたのでしょうか。
ブログで (cooljapan)
2012-03-05 09:02:38
名無しさん、

鋭く興味深い質問だと思いました。
ブログでの今の展開が終わったら、ブログの記事として、この問題にも触れ、考察してみたいと思います。

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