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今、日本のポップカルチャーが世界でどのように受け入られ影響を広げているのか。WEB等で探ってその最新情報を紹介。

『日本力』、ポップカルチャーの中の伝統(2)

2011年01月12日 | coolJapan関連本のレビュー
◆『日本力』(松岡正剛、エバレット・ブラウン)

今度は、エバレット・ブラウンの発言から。彼が日本人を見ていて面白いと思うのは、ケータイ電話のストラップだという。ケータイにストラップをつけるのは、日本以外ではあまりない。海外では、ケータイは単なる機械だという。しかし日本人は、そこに自分の気持ちを入れる、命を与える。ものに命を与える日本人の心性が、彼は大好きだという。

現代の若者はケータイにストラップをつけることを、ただそうしたいから、そうしないと何となく物足りないと感じるからやっているのだろう。しかし、そこに日本人の伝統的な心が働いている。かつて日本の職人は自分の、命をものに入れていたという。お金のためだけにものをつくっていたのではない。

それと同様、今の若い人たちも無意識にものに命を与えている。そういう傾向が、今すこしずつ復活している。ネイルアートも、先日触れた「痛車」も「初音ミク」もそういう傾向の表れかもしれない。ヴォーカロイド「初音ミク」とCGによるこだわりのコラボは、コンピューターのプログラムによってまさに命を吹き込む作業で、かつての職人の心、もっとさかのぼれば縄文人の心が、現代の最先端によみがえっているのかもしれない。現代の日本人が、縄文的な心性を受け継いでいることをもっとも象徴的に表しているのが、ケータイ電話のストラップなのだろう。

ケータイのストラップが、日本人に独特な傾向の表れだということは、多くの人が指摘している。たとえば、以前にも紹介したことのある『菊とポケモン―グローバル化する日本の文化力』で著者アン・アリスンは次のように言う。日本人はケータイに、ブランド、ファッション、アクセサリーとして多大な関心を払い、ストラップにも凝ったりする。そうしたナウい消費者アイテムにも、親しみ深いいのちを感じてしまうのが日本人のアニミズムだ。このように機械と生命と人間の境界があいまいで、それらが新たに自由に組み立て直されていく、日本のファンタジー世界の美学を著者は「テクノ-アニミズム」と呼ぶ。日本では、伝統的な精神性、霊性と、デジタル/バーチャル・メディアという現代が混合され、そこに新たな魅力が生み出されているのだ。(《関連記事》『菊とポケモン』、クール・ジャパンの本格的な研究書(2)

最近紹介した『世界が絶賛する「メイド・バイ・ジャパン」 (ソフトバンク新書)』の基本コンセプトは、オタク文化と製造業の融合だったが、それを一言でいうならまさに「テクノ-アニミズム」ということになるだろう。かつての「たまごっち」というサイバー・ペットの世界的な流行も、日本的な「テクノ-アニミズム」が世界に受け入れられていく先駆けだったといえなくもない。

『日本力』の対談で取り上げられた話題は多岐にわたり、興味尽きない。ここでは、このブログのテーマに関わるかぎりでその一端を取り上げたにすぎない。

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