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蔵馬ウケネタ、日常のことなど思った事を綴る。

小さな布からの、恋に落ちてⅡ

2021年04月29日 17時29分23秒 | 蔵馬受けblog内小説
お久しぶりです。

最近ずっとオセロニアというアプリゲームをしています。
余りRPGとか得意ではなくても出来るゲームって貴重なのでありがたいです。
オセロニア大好きで、休日ずっとやっています。

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結構前に投稿していた、コエ蔵の小説のつづきを書いてみました。
サイドストーリーもあるのですがそれを書かなかったので、それを含めて。

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霊界のコエンマの部屋の扉を閉めて、蔵馬は与えられ羅部屋に戻った。

パタンと小さな音を立てて扉を開ける…さすが霊界の王の住む建物、やけに白くうっすら輝いて
いる壁が、ここは特別な空間なのだと教えていた。

あなたのことは…消えそうな声で、蔵馬は呟いた。
あなたのことは好きですよ。

好き…その概念が人と同じとは限らない。
明治時代以降受け付けられた純真な好き、…それとは違う…自分は人とは違う世界に生きて、
人の感覚も覚えた、二つの好きを持ち合わせる存在なのだ。
部屋のベッドの座り込んで、蔵馬は黒髪を梳いた。

人の優しさを持って接しているのは母親にだけで…。

コエンマのことを、一瞬思う。
端正な顔立ちの王子と初めて会ったその日、吸い込まれそうで真っ直ぐ見つめられなかった。
霊界の王子は、話もうまく、得体の知れない妖狐にも無邪気で笑わせてくれた。

魚を火で焼いて食べることを教えたとき、熱いのにそのまま直ぐに食べるコエンマを、
ただの世間知らずだと笑った…その時、言われたことを思い出す。
「知らない世界を、お前が教えてくれ」

初めて触れる外の世界の存在だったのかもしれない…。

けれどコエンマは、熱い身体を持っていた。
引き締まった筋肉を強く押し当てて、蔵馬の白い肌を弄り回した。
激しい吐息は蔵馬の耳に強くしなやかな刺激を与えた。んっと、蔵馬が息を吐くとコエンマが
熱く、煌めいた腕を重ねてきた。
蕩けるような波が去った後、コエンマは大概蔵馬の耳を撫でた。
「柔らかい」
くすぐったそうに蔵馬が身をよじると、コエンマは益々耳を撫でた。

蔵馬も気まぐれな生き物で…コエンマの身体が来たときに洞窟にいるとは限らなかった。
規則正しく義理堅い一族のコエンマとは違うのだ。

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「いないのか」
仕方がないな…。

そっと、コエンマは口の端を上げた。
わかっている。けれど余りに予想通り過ぎて…笑ってしまう。
こんなことも起きるとは思ってた。魔界の生き物は、約束も守らない。
大体、相手の言葉を信じる習性がないのだ。
知っていたから驚かなかった。


だから…いつかこうなる気がした。




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「妖狐…蔵馬?」

逮捕命令の了承を取りに来た部下に見せられた書類に…コエンマは目を見開いた。
どうかしましたかと言われ、いや…と書類を突き返す。
そうか。
妖狐か。


なら。今こそ…。

銀の髪を揺らして、蔵馬は身を起こした。
コエンマのからだから、僅かに離れた。

「蔵馬?」
「しばらく…ではないかもしれない」

しばらくと、コエンマは言った。けれど、多分…。
「分かった…」
また、会える日がくるのを、待つ。一言、蔵馬はそう言った、

その日…消えた指輪。
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蔵馬は、霊界の部屋から解放されるまでコエンマとは会わなかった。
取り調べも終わり…そこから先、ただ待つ以外に二人出来ることは、なかった。


正式な決定までの数日…蔵馬は大人しかった。

蔵馬が人間界に戻される、その日は空が明るく晴れていた。
「蔵馬」
霊界の門を開く瞬間、眩しそうにコエンマが目を細めた。それは何故か…蔵馬も同じ瞬間
目を細めた。陽の光が、僅かに二人を遮った。
見送りは、コエンマだけだった。

蔵馬は、コエンマを見て、背を向けた。
「それでは」
「蔵馬!!」
そうじゃない。これで終わりではない。
それでは困る。

ハッと、蔵馬は身体をこらばらせた。
「なんですっ……!!」
目の前に、あの綺麗な顔が合った。息がかかり…次の瞬間。
「ん!」
奪われた吐息。薄い唇を、熱く火照ったコエンマの唇が捕らえていた。
もがきかけた身体を押さえ込み、コエンマは蔵馬の肩を抱きしめた。
「指輪…はお前の所にあるだろう」
「…んっ…し…らな…」

嘘をつけ。激しく声を出したいのを、コエンマはグッと堪えていた…。



暫く会えないと言ったその日…あの日…霊界に戻ったら…嵌めていた指輪がないことに気づいた。

「んっ…はっ…」
ヌルッ、と逃げ惑う舌を、コエンマが絡めていた。蔵馬の身体を押さえ込んだコエンマの肩が
妙な熱を帯びていた。

風が強く舞った。
「はっ…!!」
突き飛ばされたコエンマの身体が、ズザッと…たじろいだ。
「あれは二度と手に入らない、とても気に入ったものなんだ」
お前、知っているだろう。

二度と手に入らない石の、高価な指輪。


「あの時まで、指に嵌めていた!!」
逃げたら戻さない。
帰さない。
コエンマが、全身で訴えていた。


「……」

くすっと、蔵馬は笑った。

「そう」

あの時、確かに…。
それだけ、蔵馬は言った。
「そうですね…」
でもね。
本当にお知りになりたければ。探しているのなら。
「俺の心を…捕らえてみれば」
そうしたら、返してあげる。

これは、次に会うときまでの印にね…。

コエンマの唇に、蔵馬の唇が重なった。