・アンダマン海の海洋保護区 Petch Manoprawitr氏
アンダマン海の海洋保護区としては、海洋自然公園17カ所、禁猟区3カ所、生態圏保護地域1カ所があり、270種のサンゴが生息するサンゴ礁の62%を保全している。アンダマン海の生態圏は生物地理的な多様性があり、コア地域に18の保護区が指定され、世界遺産に応募している。
2010年に大規模なサンゴ白化が発生し、30-90%が白化し、26-100%が死滅した。その回復に向け、いくつかのダイビングサイトを閉鎖するなどの措置を取っている。1946年以降の海水温変化(HadSST2)と比較し、域内の影響を調べたところ、Tonsai湾、Yoong島、Raja Yai島で90%以上の高い致死率であった。調査の結果としては、白化は場所・潮流・サンゴの構造(種)に依存しており、必ずしも気候変動だけに影響されている訳ではないことが分かった。
その後、スリン島は5年でかなり回復したが、シミラン島は回復が遅い。復元力を24の指標を用いて半定量的手法により評価した。いくつか良い結果が得られている。
IUCNの2013年の調査も含め、サンゴ礁の復元モデルの策定を進めている。生態系レジリエンス強化に向けてはシステマチックな空間計画だが、現在の海洋保護区にはジュゴン・ウミガメの生息地などの重要な地域が一部入っていない。
複数カテゴリーの保護区をつないで生態系回廊を構築することが必要であり、そのためにミャンマーと協働した越境保全が緊急に必要となっている。
レジリエンスに基づく管理に向けては、コミュニケーションにより危機を可能性に変え、気候以外のストレスを削減して自然回復のために時間を稼ぎ、生態系に基づく管理計画を策定することが求められる。一例としては、ブダイの販売禁止を求める署名にテスコ(スーパー)が応じたことがあげられる。
・移動漁民 Narumon Arunotai氏
移動生活を行っている地域漁業コミュニティを海洋保護区とつなぐ取り組みを進めている。海洋保護区の社会文化的側面として「保護」の意味を再確認・拡大することを考えている。法的側面を整備し、地域住民が文化的側面も含めて保全を進められるように拡大したい。すなわち、サンゴ礁を、それを賢く使っている人たちを含めて保護する。これは伝統的知恵の保護でもある。
タイにはMokenと呼ばれる移動生活を行う漁民が存在する。
MokenはChao Lay(海洋民)とThai Mai(New Thai)に大別される。乾季には船で生活し、雨季には簡易な小屋に住む。以前はタイ政府から無視されていた(ミャンマーの住民と認識されていた)が、津波以降はタイ住民と認識されるようになった。なお、津波は国際的に「Tunami」と呼ばれているが、Mokenは独自の単語を持っている。Mokenは簡易な技術、高移動、ニッチな生態系の利用、独特の言語、臨時漁業キャンプを持つ、などの特徴を持つ。
UNESCOの支援を受け先住民と地域コミュニティに関するプロジェクトを実施し、報告書に掲載した。この中でMokenのグループを構築し、オーナーシップを作った。また、国立公園のトレイルのガイドとして活用する取り組みを行った。
このような保護区の方が持続的であると考え、オルタナティブな保護区として展開したい。現在Trang州の4村の保護地域において取り組んでいる。97%がイスラム教徒であるYao Noi村ではコミュニティに基づくツーリズムを展開している。また、行動規範の策定も進めている。
現在の保護区への脅威としては、セメント船からのセメント原材料の海中落下による汚染がある。
Q(Greg):海洋管理地域(Marine Managed Area)の方が良い言葉づかいだと思った。海洋保護区という言葉はよく知られているが反発を招く場合がある。
・カンボジアの事例 Kim Sokha氏、Kate West氏
本土から25km離れたKoh Rong半島近くの7島・4万ha・3漁村に最初の海洋保護区として漁業法第12条に基づき漁業管理区域を設定した。これは愛知ターゲット11に関連し、カンボジアの10年目標の一部である。この区域には海草7千ha・サンゴ900haを含み、家族の釣り・ダイビングなどで利用されている。
保護地域・保全地域・地域漁協地域等のゾーニングを行い、関連してダイビング業者へのゾーニング教育を提供した。
また、地域住民が警察と協業してパトロールを実施し、保護したウミガメの放流や学生の招致などに取り組んでいる。
モニタリングについては固定側線を設置し、リーフチェック手法により実施した。併せてサンゴモニタリングの能力開発も行い、サンゴ礁と海草の関係、などを他のメンバーと調査した。
今後の挑戦としては長期資金メカニズム構築などがある。
Q:海洋保護区なのか、漁業保護区なのか?
A:漁業法の下で設定されている。そこで漁業管理区と呼んでいる。海洋資源の保全をしている。観光の対応もしている。実質的には保護区と言ってもいい。
・キューバの事例 Aylem氏、Juliett氏
キューバの保護区の法的枠組みとしては環境法・保護区法・漁業規則、などがある。その管理のため国家保護区センターを設立し、運営においてNGOと協働している。なお、保護区の動物・植物のほぼ90%以上が固有種である。
現在、保護区211カ所、管理保護区120カ所、海洋保護区104カ所(20カ所は沿岸)、管理海洋保護区62カ所が指定されている。
南キューバ保護区での取り組みを紹介する。ゴールはキューバの海洋沿岸生物多様性保全であり、目的を重要海洋生物多様性保全と持続的利用、指標をマングローブ・サンゴ被度・魚類資源量・・人の保護・環境教育・広報・地域参画としている。リゾートの協力が得られている。
GEF等の支援により「海洋保護区内のコミュニティにおける生態系サービスと人の福祉の経済価値評価」を作成した。
持続可能な漁業に向け、4年前に底引き網が禁止された。漁民は観光業に転向し、関連ワークショップを8回開催した。政府・食品業界との協働が重要である。
持続可能な観光業としては、2業者が海洋保護区内でエコツアーを実施し、ガイドラインを作成・発行し、展開している。
海洋保護区の強化に向け、生物多様性モニタリングシステムを開発し、9モニタリングプログラムに向けて12モニタリング手法の冊子を発行した。また、侵略的外来種であるミノカサゴの制御のため、ミノカサゴの釣りトーナメントを実施した。
さらにサンゴ礁再生に向けパイプなどを用いた幼生供給源を海洋保護区に3カ所設置した。
今後はモニタリングを継続するとともに経済評価開発などに取り組みたい。
Q(Jeremy):島の北側での取り組みは?全て南側の取り組みだが、北側は状況が異なるし重要だ。
A:北側でも始めたが、リソースが足りない。
Q:海草は?
A:対象に含まれている。
C(Jerker):GEF6でTEEB Marineの開発を進めているが活用の予定は?
A:今のところBioFinの協力を得て進めている。