ありゃりゃサンポ

近現代の建築と一日八千歩の散歩の忘備録。美味しいご飯と音楽と。
東京都全域を徒歩で塗り潰す計画進行中。

埼玉県立大学 =山本理顕=

2024年03月19日 | キャンパス建築巡り

獨協大学の見学を終えた後、獨協大学前駅から郊外に向かってさらに7駅でせんげん台駅に着きました。駅からまっすぐに歩くこと15分で埼玉県立大学に到着。
「保健・医療・福祉の連携と統合」を理念に1999年に開学した新しい公立大学で、校舎群は2024年のプリツカー賞を受賞した山本理顕の代表作です。

一直線に伸びる北棟(大学棟)は大屋根部分も含めるとその長さは330m以上。過去に見た建造物の中でも最長の部類です。

細い足で支えられて宙に浮かぶような部分の下に守衛室があります。ここで入館証を受け取ってからさらに本部棟の施設管理課で許可証に記入して中へ。

細長い校舎の北側(右側)が教室スペースで南側がアトリウム的な空間と移動のためのスペースになっています。



プレキャストコンクリートの格子に教室名の数字が大きく掲示されています。

ガラス張りのエレベーターで2階に。向こう側に南棟(旧短大棟)が平行に配置されています。(短大は2008年に閉校)

アトリウムの中に浮かぶような傾斜した床面。

中は席が階段状になった講義室。

平行に配置された大学棟と短大棟の間には平屋建ての共有施設や研究施設がランダムに配置されていて、その屋上部分が二つの棟を人工地盤的に繋いでいます。

屋外に飛び出した階段教室の下から見る北棟。

北棟と南棟の間は85mほど。直線的なウッドデッキ部分以外は芝生が植えられています。

旭硝子の銀座ガラス建築ツアーで学んだDPG工法(ドットポイントグレージング工法)。

大学より西側は全面的に農作地帯です。

南棟から見る北棟。外に飛び出した階段教室の傾斜面がそのままむき出しなのが良く見えます。
通常、柱とその上に床があればその下部分も使おうとするものですが、スペース的に余裕のあるこの学校の場合その必要性がありません。



随所で何種類かのオリジナル家具が見られます。このパンチングメタルは室内の壁面でも多用されているものを流用しています。

鉄製の角パイプのロングチェアは建物の構造材をそのまま置いただけのような感じ。

北棟と本部棟の間は大屋根の下で地上、2階デッキ、3階ブリッジの3層で接続されています。

体育館棟。

地上と2階デッキを繋ぐ階段をガラスで覆っただけのフリースペース。

短大にも飛び出した階段講義室があります。

本部棟の前に一か所だけ地上と2階を芝生のスロープとしている場所があります。



建物の形と配置をあえてランダムにしてその隙間の通路が迷路のようになっています。迷ったときは舟橋全二が描いたアートサインが居場所を教えてくれます。

支柱がなく空中に飛び出した非常階段が福生市役所の階段と同じです。

ガラスと鉄とコンクリートだけの無機質な空間に光が様々な模様を描きます。

これほどの規模のキャンパスで一人の建築家の設計で全てを同時に建てたというのは初めて見ました。
北棟、南棟、本部棟など構造的には複数の建物がありますが、建物間のデッキやブリッジも含めて全体として340m×130mの一つの建築と見做されるべきものです。
あらゆる部分が綿密で美しく、見学していて非常にわくわくしました。これだけガラス張りのスケスケな建物で使い勝手はどうなのかは気になりますが。
日本人建築家として9人目のプリツカー賞受賞者。国別ではこれでアメリカを抜いて最多になったそうです。
少々日本に肩入れし過ぎなんじゃないかという気もしないでもありませんが、そんな権威ある賞に選ばれた設計家の作品を気楽に見て回ることができるのは幸せなことです。
山本理顕の作品を見るのは横須賀美術館福生市役所に続いて3つ目。
コメント
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