アートの周辺 around the art

美術館、展覧会、作品、アーティスト… 私のアンテナに
引っかかるアートにまつわるもろもろを記してまいります。

色彩の画家 オットー・ネーベル展@京都文化博物館

2018-06-03 | 展覧会

東京で開催されているときから、とても興味を抱いていた展覧会に行ってきました。(Bunkamuraザ・ミュージアムの展覧会サイトがたいそう充実しているので、ぜひご覧ください)

ドイツ・ベルリンに生まれたオットー・ネーベルは、パウル・クレーやカンディンスキーより10~20年若い世代ではありますが、彼らと親密な交流を持つなかで、具象画から抽象画の世界へと飛び立った画家のひとりです。経歴がおもしろくって、キャリアの最初は建築専門学校で建築工事の技術を学んでいたり、その後俳優で活躍した時期もあったり。建築を学んでいた影響か、初期の抽象化されていく風景には、建物が多く描かれ、縦と横の直線が目立ちます。

タイトルに「色彩の画家」と謳われているとおり、作品で用いられている色の美しさが目を引きます。チラシに取り上げられている作品は、「イタリアのカラーアトラス(色彩地図帳)」の中の「ナポリ」。これは、ネーベルが1931年にイタリアを旅した際に、その景観を自身の視覚感覚によって色や形で表現した色彩の実験帳。さまざまな形状のバリエーション豊かな色の組み合わせ。彼がその地に降り立ったときに感じた取った空や土や風景の色彩、風、音、そんなものが凝縮されているのだろう。実際、展示で見ることができたのは2ページだけだったのだけど、映像で全部紹介されていて、また24枚組の絵ハガキが販売されていましたので、即買い!眺めているとウキウキしてくる美しさです。

展覧会場では、クレーやカンディンスキーの作品も併せて展示されていましたが、比べてみるとネーベルの作品の特徴が際立っていました。それは、絵肌の複雑さです。描かれている形自体はシンプルであっても、目を凝らすと、色面が細かい線やドットで構成されており、まるで細い糸で刺繍したような重層感を感じるのです。あたかも単色でペッタリ塗ることを断固拒否しているような、その色面の作り方は、さまざまな作品を見れば見るほど驚愕!してしまいます。布地を思わせるからか、暖かみを感じました。

※展覧会場では、一部の作品が撮影可でした。

バウハウスから創作のインスピレーションと、偉大な友人たちを得たネーベルは、ナチスから退廃芸術であると弾圧され、スイスのベルンに移り住みます。ベルンでは、1933年から制作・就業を禁じられ、実に10年以上も苦難が続いたとは驚きでした。中立国のスイスにおいても、そのような状況であったとは…。

1952年にはベルン市民となり、大規模な展覧会なども開催したとのことです。晩年には近東を訪ね、そのイメージ(土地の色とか、文字の形とか、だろうか?)を取り入れた作品なども制作し、ますます自由な境地を開いていった様子が作品からも窺えました。そして生涯ずっと、絵肌は重層でした!

本当に眼に美味しいこの展覧会。ぜひ実物を見てほしい!6月24日(日)まで。


Comment    この記事についてブログを書く
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ルドン-秘密の花園@三菱一... | TOP | ボストン美術館浮世絵名品展 ... »

post a comment

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

Recent Entries | 展覧会