1984年に開館した滋賀県立近代美術館が今年度(26年度)30周年を迎え、記念展覧会のひとつとして、いつもは企画展で使用している展示室を使って、当館の幅広い所蔵作品の中から、珠玉の名作を紹介するコレクション展を開催。残念ながら本日までなんですが、入場無料ということもあり、思いの外多くのお客様がお越しくださっているようでした。初めて来館される方も少なくなく、このような機会に当館の素晴らしい所蔵品に触れていただけるのはとても嬉しいですね。
滋賀県立近代美術館は、オープン以来<日本美術院を中心とした近代の日本画><郷土滋賀県ゆかりの美術><戦後アメリカと日本を中心とした現代美術>を3つの柱としたコレクションを行っています。特に郷土ゆかりの女流日本画家・小倉遊亀さんについてはまとまった作品を所蔵し、それらを常時鑑賞できる展示室があります。
今回の記念展覧会では、やはり主要なお客様層に合わせてか、日本画の作品の占める割合が多かったですね。目玉はやはり速水御舟の「洛北修学院村」でしょう!先般の日曜美術館でも紹介されていましたが、そのブルーとグリーンが混然とした色合いにうっとりし、よくよく見ると緻密な筆に驚嘆する、スバラシイ作品です!そこに流れるひんやりとした空気感まで伝わって来るようで、いつまでも見ていたくなります。
現代美術のコーナーは、展示室の最後の1/3くらい。けっこう抽象画で勝負されてました。アーシル・ゴーキーやマーク・ロスコの名品が展示されてましたが、日本画からの流れだと、やや分が悪いですね。抽象画もとってもおもしろいことをもっとわかっていただきたいものです。
さて、この展覧会に合わせて、美術館サポーターによるイベントも行われました。「おしゃべり美術館」は、サポーターがお客様を、作品について語り合いながらエスコートするイベント。個人的に作品を解説してもらえるとあって、期間中、好評を博していました。
昨日、私もサポーターの一人としてこのイベントに参加させていただきました。私の場合、まだまだ作品に対する知識が不足していて不十分なご案内だったと思いますが、おそらく、美術館で作品を見ていると、いろんな感想が浮かんでくると思うので、そんなことを口に出す、受け止めてもらえる、というだけでも鑑賞者にとって楽しい体験になるのではないでしょうか。(…と願います~)
先日参加したACOP鑑賞会に刺激されましたが、深い対話を引きだすというのは短い時間では難しいし、やはり予め十分なトレーニングが必要なのだな~と改めて感じました。
企画室でのコレクション展は本日で終了ですが、いつもの常設展示室では、引き続き珠玉のコレクションを展示中。今、滋賀県が誇る洋画家・野口謙蔵の作品が7点も展示されています。あまり知られていない画家だと思うのですが、なんかイイ!のです。中でも「ヒヨドリ」は、最高にかわいくて大好きです。この機会になんでこんなにイイ!と思うのか、探ってみようと思っています。
こちらは3月8日まで展示。ぜひ、足を運んでみてください!
先日、広島に行ったとき、広島市現代美術館を訪ねました。ちょうど興味を持っていた「フランシス・アリス展」が巡回されていたこともありまして。
美術館へは、路面電車で「比治山下」下車、少し山を登らねばなりません。寒かったけれど良いお天気で、木々の茂る道を歩いて行くのは気持ちのいいものです。行くのに少し手間はかかるけど、とてもまわりの環境が良いところは、マイ・ホーム・ミュージアムの滋賀県立近代美術館と似ているな、と親近感を覚えました。1989年にオープン、黒川紀章さんの設計だそうです。
フランシス・アリスは、まさに「動く」アーティストでした。この活動を紹介するには、やはり映像が大きな役割を果たします。ヨーロッパとアフリカを隔てるジブラルタル海峡を、それぞれの大陸から子どもたちが列をつくって橋のように繋ごうとした壮大なプロジェクト「川に着く前に橋を渡るな」、向かい合わせの2面の大きなスクリーンでは、子どもたちが無邪気に浜から海に向かって歩きだすのだけど、深みに進んでいくほどに波が押し寄せ、その音にもめっちゃ迫力があって、その子どもたちと同じ体験をしているようで、楽しいような、ちょっと怖いような…。
一番ビックリしたのは、「トルネード」という映像。少し先で竜巻が起こっているんだけど、当然ふつうは逃げようを思うところを、何と!カメラは竜巻に向かって突進していくんです!竜巻の根元を探るかのように、カメラごと突入し、そして一瞬もみくちゃにされたりして、スゴイ迫力です。それも一回きりじゃなくて、何度も何度も向かっていくのだから恐ろしい~。よく生きて帰ってこれましたよね。何だか「勇気」「勇敢」とかっていうより、「好奇心」「無邪気」みたいなもんが、映像からあふれてて、「こんなの見たことない!」と心底驚きました。この作品のお部屋、もう少しで見逃しそうだったのを、スタッフの方がご親切に教えてくださいました。ありがとうございました!
不思議な魅力に充ちた作家でしたね~。すごく地球に根ざしているようなスケールの大きさと、何でもない行為をとらえる日常感と、表現の仕方の詩的な感じが融合しているようで。映像が多かったので、もう少し時間をかけてゆっくり見たかった気がします。
続きましてコレクション展も鑑賞。「コドクノチカラ」と題し、国内外の現代作家の作品が展示されていました。入野忠芳さんや殿敷侃さんなど、やはり地元、広島出身の作家にとって原爆は重いテーマ。当事者の表現がそこにはある、と思いました。
他にもけっこういろいろな作家の作品があって、楽しめます。草間さんやフランシス・ベーコンも見れましたし、アバカノヴィッチのデッサンも初めて見て、興味深かったです。アバカノヴィッチの彫刻は屋外にも並んでましたね(寒そうだった…)。現代美術だけで戦うのって、けっこう大変だと思うのですが、ぜひぜひ頑張ってほしいです。
「フランシス・アリス展」は来年1月26日(日)まで、「コドクノチカラ」は2月23日(日)まで。
先日の連休に福岡へ旅行に行きました。初めてLCCを利用!うー、噂に違わず、座席はめっちゃ狭かったです。すぐ着いたからガマンできたけどね。
今回訪ねたのは「福岡アジア美術館」。世界に唯一の近現代のアジアの美術を収集・展示する美術館として以前から注目していました。
福岡って地図で見ても大陸に近い!古来からアジアからの窓口としての役割を果たし、アジアとの交流を深めた地域であったことから、このコンセプトの美術館が設立されたそう。また、「福岡アジア美術トリエンナーレ」というアジアの現代美術が一堂に会するというイベントも3年に1度開催されているとのことです。
今回の訪問では「渓山清遠 中国現代アート・伝統からの再出発」という企画展が行われていました。正直言って、中国の現代アートをじっくり見るのは今回が初めて。アート・バブルでめちゃくちゃ高値がついている、とか、一部の有名なアーティストについては見聞きしていましたが…。
この展覧会は、これまで中国の現代アート界を席巻していた流れとは異なる、伝統的な絵画に回帰しながらも独自の表現を試みる、若手アーティストの作品を展示するものです。
テーマはきわめてわかりやすい風景画が多かったです。何せ30~40代の若い画家が、つい最近描いたような作品ばっかりだから、なんか作品がピチピチして眩しい感じ。いろいろな表現があっておもしろかったんだけど、特に何名かの画家による、具象画なのに超厚塗りの、絵具のツヤツヤした質感残りまくりの絵が珍しいな~と思いました。(抽象画ではありがちだと思うんだけど…)まだ油絵具の匂いが漂ってくるような…生々しい絵具の痕跡。
その他にも、粗い布地や羽のように薄い絹の上に絵が描かれていたりして、やたらと絵の材質感みたいなものが浮かび上がって来る作品が多かった気がして興味深かったです。
コレクション展でも「中国1979-2009 現代美術の軌跡」と「ガンゴー・ヴィレッジと1980年代・ミャンマーの実験美術」という、ホント他の美術館では見られないような展示を楽しめました。特に中国の現代美術については、時代背景とかも含めて、もっと知りたいな~と、すごく興味わきました。ミュージアム・ショップで適当な書籍がなかったのが残念です。
次に福岡旅行のお約束「太宰府」へ。いやあ~えらい人出でした。アジアからの観光客も多かったです。
この太宰府天満宮の宝物殿企画展示室では、なんと!「フィンランドテキスタイルアート 季節が織りなす光と影」という展覧会が行われていました。なぜ太宰府でフィンランド?そんな疑問はどうでもよくなるような、すごく意欲的な展示だったと思います。
フィンランドと日本の美しい自然と密接に関わったデザイン感覚や美意識をさぐることをテーマに、マリメッコのデザイナーを初めとする3名のテキスタイルデザイナー(日本人である石本藤雄さんのも!)の作品展示と、あと真ん中に日本画家・神戸智行さんによる作品と神社の装束が展示された部屋があって、そこで川の流れのようにいろいろな宝物を展示しているのが、すごくおもしろかったです。このクリエイティブな展示をされた学芸員さんには拍手を贈りたい!
また太宰府の境内にも、インテリアデザイナーimaによるマリメッコのファブリックを使ったインスタレーションがひっそり展示されていて、いやあ、太宰府でこんなアートが楽しめるなんて!!サイトを見ると、さまざまなアートプログラムも行われているようです。由緒あるけどおもしろい場所だなあと思いました。
福岡、おもしろいところです。食べ物も美味しいし(ラーメンにはまりそうです)またぜひ訪ねたいです。
さて、きょうは滋賀県立近代美術館のサポーターたちの研修バス旅行でした。今年は愛知県方面へ、長久手市の名都美術館と豊田市美術館の2館を訪ねました。
一路、新名神で名古屋へ向けてGO!まず訪ねた名都美術館は、実業家の日本画コレクションを収蔵したこぢんまりした落ち着きのある美術館。鏑木清方や伊東深水の美人画で有名なのだそうだが、現在は「日本画に描かれた動物たち」をテーマにした企画展示が行われていました。ここでは当館の所蔵品である小倉遊亀さんの「青巒」と前田青邨の「猫」が借り出されていました。異なる美術館のいつもと違う照明のもとでは、なんだか違った印象になる。おもしろいもんです。
次に訪れたのが豊田市美術館。あまり今まで知らなかったのですが、市立ながら豊かな税収?なのか、すごくモダンで広くて立派な美術館。ステキ。
ここで開催されていた企画展は「山本糾 光・水・電気」。一貫して「水」をテーマに写真を撮り続けてきた作家の初の大規模な個展。水って不思議ですよね…。私たち生物にとって生きるために不可欠でもあるが、一方、時に凶暴な力でもって生命さえ奪う。すべての源である水の美しさ、無限の可能性のある形態、水のある風景の不思議な静寂さ。そんなものが一瞬のモノクロの写真に切り取られている。なんだか静かだけど力のある、いい写真だな~と思いました。
さて、この美術館では、当館のようにボランティアによる作品ガイドツアーが行われています。きょうはそのスタッフさんがお迎えしてくださり、前述の企画展に加えて常設展の「みえるもの/みえないもの」というテーマ展を案内してくださいました。けっこう難解だけれども、ちょっと考えさせられるようなユニークな作品がいっぱいありました。
豊田市美術館の作品ガイドは、いわゆる解説型ではなく対話型を目指してやっておられるとのことでした。対話型とは、鑑賞者と対話しながら個々人の自由な作品の見方を引き出す方法で、おそらくお客様にも好き嫌いがあるかもしれませんが、うまく出来ればお互いにとってすごく想像力が触発される楽しく興奮するような体験になるのはまちがいありません。会場の鑑賞後、豊田市美術館のボランティアさんとの交流会があったのですが、そのうちのお一人が「技術ではなくて、人間性がすべて出る」とおっしゃっていましたが、確かにそういう覚悟がいるよな~と感じました。人間性を磨いてお客様に全力でぶつかる!ってのもかなりカッコイイですよね!
対話型作品ガイドを目指すこの美術館には、かつてアメリア・アレナスが訪れて、屋外にあるリチャード・セラの巨大な鉄の作品について語っているのを映像で見ることができるのですが、サポーター仲間と「あれだ、あれだ」と楽しみに駈けつけたら、「立入禁止」でした…残念!
まずは神戸市立小磯記念美術館。ここは神戸にゆかりのある洋画家・小磯良平が亡くなられた後、作品約2000点が神戸市に寄贈されたのを記念し建てられた美術館です。こぢんまりして上品な美術館、中庭には小磯良平さんが制作を続けた実際のアトリエが移築されています。
小磯良平さん、名前はよく知っておりましたがこんなに作品をじっくり見たのは初めてでした。風景画や静物画などもありましたが、私はやはり肖像画に本領は発揮されていると感じました。何しろ巧いなあ!!って感じです。色味は落ち着いていて日本人好みだと思います。
有名な作品は数ありますが、ぜひ見てみたいのは迎賓館、赤坂離宮に飾られている「音楽」と「絵画」。端正な感じがすごくいいなあと思います。
さて、ここでは特別展として「初和モダン 藤島武二と新制作初期会員たち」が開催されていました。藤島武二の支援のもと小磯良平、猪熊弦一郎、中西利雄らが立ち上げた美術団体・新制作協会、近代的市民文化が華開く一方、戦争の影が忍び寄ってきていた1936年、美術界統制に抗し「反アカデミックの芸術精神」を掲げて結成されました。
その設立メンバーの初期の作品から戦争時代の作品、戦後の再出発の作品が展観できます。初期の作品は、新しい美術運動への意気込みが十分に感じられる自由闊達な大きな作品がたくさんあって見ていて楽しかったです。その中にあっては小磯良平さんは極めてオーソドックスなように思いました。
こんな機会でないと見に行くことはなかったと思いますので、行ってよかったな~と思いました。でも朝イチからお客さんはけっこう多かったです。
次に訪れたのは兵庫県立美術館。こちらの常設展でも小磯良平さんの作品が多数展示されています。ここでは兵庫県立美術館のボランティアスタッフによる解説が行われてましてそれも一緒にお勉強させていただきました。
また、1階の展示室では「美術の中の“わたし”」というタイトルで収蔵作品を編集しており、時代やジャンルの区別なくいろいろな作品をテーマに沿って展示していたのが意欲的でおもしろかったです。
なんと!ここでは館長さんの蓑豊氏がテレビ取材を受けているのを目撃!蓑さんの美術館に対する考え方には共感できて、彼の著書なども読んでいたのでちょっと嬉しくなってしまいました。
さて、今回私たちが小磯良平を神戸に訪ねたのは、1月21日より滋賀県立近代美術館におきまして「近代の洋画・響き合う美―兵庫県立美術館名品展― 」という展覧会が始まるからなのです。
彼の最も有名な作品ともいえる「斉唱」がやって来る!!
そういうわけで兵庫ではいつも展示されている人気の同作品は「滋賀に出張中」と言われておりました…。他にも、安井曽太郎、岸田劉生、小出楢重など、日本の洋画史を語る上で欠かすことのできない巨匠たちの作品が見られる楽しみな展覧会。(2年前の小倉遊亀さんの貸しを返していただいたってことですね、よかった!)
2012年初の展覧会、ぜひ見に来てくださいね~。3月11日まで。
「月曜美術館 休館日に、そこで何が起こっているのか」(小口弘史著・2011年)
新宿にある損保ジャパン東郷青児美術館、親会社からやって来た小口氏が館長となり、取り組んだのが「対話型鑑賞」による子どもたちへの美術鑑賞教育でした。
小口館長は、全然美術の専門家ではなかったのですが、ご自身で社会における美術館の位置づけや日本における文化振興といった広い視野で現状を分析し、そしてまた、一企業が運営している美術館の存在意義のために、子どもたちに対して美術鑑賞教育を推進していく方針を打ち出します。
この方のアプローチのうまいところは、対象の子どもたちへダイレクトに接触するのではなく、まず、いま教育現場で「創る」だけではなく「鑑賞する」ことによる美術の力が見直され、作品を見て語り合うことで、感じる力・考える力を養おうとしているという方向性を把握し、新宿区に公立の美術館がひとつもないこともあって、区との連携を持ちかけ、学校自体を動員していったということ、次に、その方針に合致した「対話型鑑賞」を取り入れ、運営に地域ボランティアを起用し巻きこんでいったことです。
実施方法は、けっこう手間のかかるもののようです。
単にその鑑賞で対話を促すというものではなく、ボランティアの皆さんがまず鑑賞に先立ち学校を訪ね、作品をカードにしたもので「かるた」のようなゲームを取り入れ、作品に対してどんな印象を持つか?といったことを事前にシートに書くなど、実際の鑑賞への期待を膨らませます。そしていよいよ鑑賞日、他のお客様の反応を気にすることないように、実施は休館日の月曜日に行われます。少人数グループにボランティアのガイドがつき、子どもたちは作品の前に座り込んでじっくりと作品を見つめ、対話するというものです。ガイドはあくまで解説せずに、質問をして答えを引き出す…。難しそうでもあるけれど、ガイドさんの感想は印象的です。「子どもたちの豊かな感受性は予想を超えていて、発せられる言葉一つ一つが宝物のように思える。」
本の中では、子どもに続いて大人向けの対話型鑑賞の試みも行っているとのこと、通常の開館時間に行うことは、やはり一部のお客様には不評のようで、かなり気を使われていることが窺えます。美術館でじっと黙って見なければならない、ってのはナンセンスだと思うのだけどね!
この対話型鑑賞へ参加することが、プラチナ・チケットになることを目指している、とのことでした。
決して高価な作品(「ひまわり」とか)だけに集客を頼らず、社会的意義も見据えた小口館長の取り組みは素晴らしいと思いました。HPを拝見していたら今はもう別の方が館長になられていました。「対話型鑑賞」、今でも積極的に行われているのかしら?
そんな経験のある人にぜひ参加していただきたいイベント、それが滋賀県立近代美術館で行っている「おしゃべり美術館」です。これは、美術館の常設展示の作品のいくつかを、スタッフと自由におしゃべりしながら鑑賞する「対話型ギャラリートーク」。
普段私たちサポーターが行っている作品解説は、限られた時間の中で、展示室の作品を網羅的に解説するため、どうしても一方的に聞いていただくという形になります。この「おしゃべり美術館」では、スタッフが鑑賞者に質問を投げかけ、自由に発想していただき、さらにその発想から会話をつなげていく…作品の見方の新しい発見があったり、思いもよらない他の人の視点に驚いたり刺激を受けたり…作品を鑑賞する楽しみが広がるイベントなのです。
私は参加できていないのですが、美術館のサポーターのメンバーたちが、休館日を利用して行っている「対話型鑑賞」のトレーニングの成果を、大いに発揮する場でもあります。
この「おしゃべり美術館」が、関西文化の日であるこの19日、20日に開催されました。土曜日は天気が悪かったためお客さんの数が少なく、スタッフがほとんどマンツーマンでお客様の鑑賞のお供に。少人数なので会話もはずみ、参加されたお客さんたちは一様に満足されたご様子でした。
滋賀県立近代美術館には、3つの常設展示室があり、「現代美術」「小倉遊亀」「日本美術(または工芸)」というくくりで展示を行っているのですが、今回のイベントでは、イマイチわけのわからん現代美術が、自由な会話を繰り出していく…という点ではふさわしいのかな~と感じました。
いつもはシーンとしている展示室で、そこここに楽しげに会話している人たちが見られ、雰囲気も少しざわざわして活気があるような気がして、作品たちも喜んでいるように見えました。
このイベントは年2回ほど開催、興味をお持ちの方は、ぜひ次回ご参加くださいませ!!
現在、タイトルの展覧会開催中。名前の知られた作家ではないのですが、色彩の美しさ、線描の超絶技巧!!(めちゃくちゃ細かい)が生み出す独特の世界に、口コミなのか?けっこう来館者数があるようです。若い女性連れの姿も多く見られました。
チェコアニメの上映や、絵本の読み聞かせなど、イベントも充実しているので、子供も多かったです。ただしどちらかというと、親が夢中、子供退屈…の傾向あり。アニメにしてもすごく大人っぽい内容なのだもの。
さて、美術館に早めについたので、久しぶりに美術館のまわりを散歩しました。
もうすっかり夏の日差し。木々の濃い緑の色が光を反射し目に眩しい。
彫刻の路を歩いて行くと、以前紹介した『夏至の日のランドマーク』、そういえばもうすぐ夏至、しかも見た時刻はほぼ12時、彫刻の影はまだありましたが、ほんの少しすごく短かったです。夏至の日には、完全になくなるのね。
そして、こちらは植松奎二の『置・傾/トライアングル』という作品。
美術館の中にあれば、決して近寄れない作品ですが、ここでは中に入って石をペチペチ叩いてみたりして。風雨にさらされた作品は、より自然と一体化しているようで、そんな作品と触れ合うことのできる楽しさがあります。
『ドゥシャン・カーライの超絶絵本とブラチスラヴァの作家たち』は6月27日まで。
さて、この公園内に「三橋節子美術館」があります。
日本画家である三橋節子さんは、京都出身のちに大津にアトリエを構え作品を制作されました。彼女は夭折の画家として知られ、33歳で利き手の右手を鎖骨の癌により手術で切断、その後は左手で創作を続けましたが、不幸にも35歳の若さで癌の転移により他界されました。
この美術館は、年に一度展示替えがされるので、一年に一度、お正月あたりに行くのですが、今年は行きそびれていて、それで桜とともに鑑賞してきました。
今年は、節子さんのお人柄がにじみ出るような、野の草花を描いた作品が多く展示されていました。とても素朴で、それでいてデザイン的には配置がおもしろい。彼女の作品は、表面が削がれているような、けぶっているような印象を受け、独特の憂いを帯びているように思いますが、モチーフの配し方などはとてもユニークです。
展示作品の後半は、彼女の作品を有名にした「花折峠」「三井の晩鐘」「鬼子母神」など近江琵琶湖に伝わる民話を描いた後期の大作が飾られ、彼女の境遇を重ね合わせ、最後にはとてもしんみりしてしまうのが常です。
お客様もいつも少なく展示室に入ると扉が閉まり、わりと一人きりで鑑賞できるので、少し重くてそれでも充実した時間をじっくりと味わえる美術館なのです。