アートの周辺 around the art

美術館、展覧会、作品、アーティスト… 私のアンテナに
引っかかるアートにまつわるもろもろを記してまいります。

ベルサイユにアートの虹を架ける ~李禹煥の挑戦~ (日曜美術館)

2014-09-07 | メディア情報

きょうの日曜美術館は、とても楽しみにしていました。李禹煥(リ ウファン)さんの最新の仕事が見れると知って。

フランス・ベルサイユ宮殿。伝統と格式を重んじているイメージのこの場所で、2008年から現代美術の作家を招へいし、この独特な空間と個性豊かな作品とのコラボを演出しています。第1回はジェフ・クーンズ、第3回の2010年には村上隆さんがまさに村上ワールドを展開し、賛否両論だったことも記憶に新しいところ、伝統に縛られないとっても意欲的な取り組みですよね。

そして今年、取り上げられたのが李禹煥さん。きょうの日曜美術館では、この大プロジェクトに取り組んだ李さんの姿と、これまでの作家活動や主な作品が紹介されていました。

李禹煥さんはおなじみなんです。番組でも紹介されていた「点より」シリーズの1点を、マイ・ホーム・ミュージアムである滋賀県立近代美術館が所蔵しています。白いキャンバスに、ひたすら青い点・点が左から右に続いていくこの作品は、岩絵具を使っているということで、置かれている色にとても物質感があります。この点・点がだんだんかすれていくのは、「たんぽ」に絵具を含ませ、規則正しく捺していき、色が擦れると、また絵具を含ませ、捺し続けるから…。まさにその制作の行為そのものが、この絵画に写し取られていて、永遠に続く時間を閉じ込めているかのようです。とてもシンプルなのですが、瞑想的で深みのある作品なので、私は大好きです。

その李さんが、今、こんなにも石(岩?)を使った大規模な作品を作っているとは知りませんでした。直島の李禹煥美術館も、まだ行ってないからな~。まさに「もの派」ですね。

ベルサイユにかかった虹をイメージさせるステンレスのアーチは、青空に映えて素敵でした。木立の間に置かれた、巨大で武骨な鉄板と石の対話も、場に溶け込んでいるようでした。決して美しく造作されたものでないのに、物質の存在の重さと場所のコラボレーションみたいなものに、心を動かされます。これこそ「もの派」の芸術なのでしょうね…。シンメトリーに計算され尽くしたベルサイユの庭と建物に、なじむでもなく、でも対立するでもない、厳然たる物質。新しい空間を生み出していることはまちがいないです。いや~、行けるものなら行ってみたいですね~!!

ベルサイユでの展示は、11月2日まで。日曜美術館は、来週14日(日)の夜8時から再放送があります。

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京の"いろ"ごよみ 染織家・志村ふくみの日々 冬から春へ (日曜美術館)

2014-06-29 | メディア情報

もう6月も終わり、はや1年の半分が過ぎようとしています…。あっという間に季節が移り過ぎますね。

さて、きょうの日曜美術館は、染織家・志村ふくみさんの、冬から春への日々を追ったドキュメンタリーでした。お正月に放映された番組の続編です。

京都・嵯峨野に工房を構える志村さんの日々は、本当に自然の美しさと恵みに彩られています。植物をいとおしみ命を敬い、そしてその植物の命を再生させるがごとく、色をいただく。

番組冒頭、志村さんがいとおしそうに眺める、梅の蕾のぎゅっと身を縮めたようなかわいらしい様子がとても印象的。これから色を纏って花開く前のエネルギーを感じるようです。私たちは日頃、咲いた花は愛でるけど、このような蕾の様子に注意を払ったことはなかったな、と改めて思います。日本の宝である四季折々の美しさ、きっと私たちの身近なところにもあるだろうに、気づかずに過ごしているのは、本当にもったいないことではないでしょうか。

美術館で志村さんの作品を見るだけではわからない、実際に工房でどのように糸が染められ織られているのかを見ることができるのは、とても貴重で興味深いです。染色って不思議だな~。植物を煮出した液は、一見濁っていて全然きれいな色ではないのに、真っ白な生糸を浸すと、わずかに色がつき、何度も何度もすすぐことで、みるみるまに色が深みを増していく。液を絞ってそして乾燥させると、さらに色が変化するそうです。テレビでもスゴイなー!と思うのだから、実際に目にするとどんなに美しいのだろう!

まもなく90歳を迎えられる志村さんですが、とても見えない。凛としてらっしゃって、今なお、アンテナをびんびん張って、いろいろなインスピレーションを湧きださせておられるようです。ヒントを得ている画集が、ベン・ニコルソンだったのは意外でした!クレーとかなら納得なんだけど。

志村さんの着物を、美しいお庭や風景とともに紹介していて、美術館のハコを飛び出して、風に揺れ日の光に透かして見る織地もとても美しいと思いました。取り上げられていた作品のひとつ「紅襲(桜かさね)」は、滋賀県立近代美術館が所蔵しており、実物を見ると、本当にため息が出ます。まずピンク色の何とも言えないかわいらしさ。そしてグラデーションの美しさ。その縦と横の糸が繊細に織りなされることで色が変化している様子を見ると、もうびっくりです。ぜひ自然の風景とともに眺めてみたいですね~。

映像がとても美しい番組でした。音楽も素敵です。日曜美術館の再放送は、7/6(日)夜8時から。ぜひ録画して永久保存版にされることをおススメします。

 

★志村ふくみさんについてその他の記事もよろしければご覧ください。

志村ふくみ「色を奏でる」 

織の話 

「志村ふくみ・志村洋子 作品展 しむらの色KYOTO」細見美術館 

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夭折の画家・石田徹也(日曜美術館)

2013-10-01 | メディア情報

この前の日曜美術館、画家・石田徹也が取り上げられていました。

現在、足利美術館で展覧会が行われているとのこと。実物の作品にはお目にかかったことがないです。何年か前にテレビ番組で知ったのだと思います。最初見たときは、衝撃がありましたね。

改めて作家の情報を見てみると、若かったんですね~。ほとんど同時代の人。何となく作風から(蟹工船的?な…)もう少し昭和の人のように思っていました。画集の表紙にもなっている、飛行機人間の絵「飛べなくなった人」が印象的。その他にも、今回、番組で取り上げられていた作品を見ても、何というのでしょう…すごく象徴的に人間社会の哀しみ、のようなものを描いているのだけど、表現はきわめてユニーク。

写実的で、登場人物の表情もけっこう無表情なので、ちょっとコワイようにも思ってしまうのですが、今回、一緒に展示されているという、また最近本になったという、彼のアイデアノートを見ると、また違う印象を受けました。本当に絵が大好きで、しかも発想が豊かでユニークで、そのアイデアをすぐ絵にしたくって、そんな風に生まれた絵なんだな~、と。

番組では、この絵に共感するたくさんの人のメッセージが紹介されていました。でも、私は何となく絵が大好きだった彼を、現代社会に苦しむ人々、生きにくい人々の代弁者のようにはとらえたくないなあ、と思ったのでした。

実際の作品を見たら、きっとすごく力があって、衝撃(ホントに)をドンと受けるのじゃないか、と想像しています。展覧会で、ぜひ、たくさん見てみたいなと思いました。

日曜美術館の再放送は、来週10/6の夜8時から。

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フランシス・ベーコンについて(展覧会の予習)

2013-07-10 | メディア情報

 

愛知県の豊田市美術館で始まっている「フランシス・ベーコン展」。7月中には訪ねるつもりなので、そろそろ予習スタートです。

フランシス・ベーコンの作品は、1点は実物にお目にかかっている。10年以上前、確か東京で見た展覧会の出口近くに突然現れたその作品が、あまりに負のイメージ(恐怖なんだろうか?)に満ちた暗い作品で、人物の顔が判然とせず(つぶれているのか?)、ちょっと衝撃を受けた覚えがあります。哲学者にも同じ名前の方がいらっしゃるから、名前と印象は深く刻まれたのだけど、その後滅多と出会う事はありませんでした。そのベーコンの作品がこれだけまとまって国内で見ることのできるめったにない機会。

まずは録画していた日曜美術館を見ることに。噂には聞いていたが、大江健三郎さん、デヴィッド・リンチ監督、浅田彰さんと、ゲスト陣がいつになく豪華だな~。デヴィッド・リンチが人間の深く暗い内面を描くベーコンの魅力を語るのに対し、大江さんはすごく前向きなメッセージをベーコンの絵から受け止めておられ、全く両極な捉え方に、やはり見る人にさまざまなイメージを与えるのだなあと感じました。

フランシス・ベーコンの作品は、本当に今まで見たことのない、唯一無二の絵だと改めて思います。

さすが、テレビ番組だ、とおもしろかったのは、フランシス・ベーコンがモデルにしていた若き恋人のジョージ・ダイアーを、映像で見れたこと。動くダイアーの顔は、まさしくベーコンの描く肖像画そのものでした。あの歪んだ感じこそが、生きている彼をあらわしているというのには、深く同意。

あと、ベーコンの描く絵具には、砂や繊維などいろいろなものが混ぜて独特の質感をもたらしている、また、キャンバスの表面処理のされていない裏側を使用することで、やり直しのきかない筆の運びにスピード感とエネルギーがあふれている、という情報も大変興味深かったです。実際に絵の表面をじっくり眺めるのもとても楽しみ。たぶん、印刷物ではその作品の迫力と美しさは半分も伝わらないんじゃないかな。

それにしても、1992年まで生きてらしたというのに、テレビ番組に映像や肉声がひとつもない、というのも不思議に思えますが、ベーコンは生前はバイオグラフィーも徹底して出すことをせず、セルフイメージをコントロールしていたというのです。

これは、『美術手帖』3月号のフランシス・ベーコン特集で語られていました。いろいろな記事がある中で、一番おもしろかったのは、ベーコンを研究されていて、今回の展覧会の企画者でもある東京国立近代美術館の学芸員である保坂さん、桝田さん、それから美術ジャーナリストの藤原さんの鼎談。皆さん、ベーコンの作品、ベーコンというアーティストに深い思い入れがあるようで、何というか表面的ではない本当によく知った親しみ深い人について語り合っているようで、読んでいてすっごく楽しかったです。

早く作品たちに対面したいです。楽しみだな~!!

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籔内佐斗司流「仏像拝観手引 日本列島巡礼編」(Eテレ)

2013-04-29 | メディア情報

 

籔内佐斗司流 仏像拝観手引 日本列島・巡礼編 (趣味Do楽)

2011年11月~12月に放映された彫刻家・籔内佐斗司さんナビゲーターによる番組「仏像拝観手引」の続編が放映されています。今度は「日本列島巡礼編」ということで、奈良・京都に留まらず、東北から関東、近畿、四国、九州まで全国を行脚していろいろな成り立ちを持つ仏像を紹介いただけるようです。

中でも第2回で取り上げられていた「十一面観音像」は、琵琶湖周辺のお寺に数多くいらっしゃり、それぞれに美しさと個性を湛えられていることがよく知られています。とても穏やかな本面の頭上には多様な表情の十の面が頂かれています。怒った顔、笑った顔、それぞれの表情には意味があり、救済者としての種々の能力を表しているそうです。

今後の放送も「みちのくのほとけさま」「山岳のほとけさま」「なにわ 庶民信仰のほとけさま」など、バリエーションに富んだ仏様が楽しめそうです。

さて、籔内さんといえば、先日、別の番組で、彼が指導している東京藝術大学 文化財保存学・保存修復研究室の学生さんの1年間の活動を追ったドキュメンタリーが放映されていて、とても興味深く見ました。学生さんたちが、国宝級の仏像の制作技法をそのまま再現する「模刻」を苦労しながら取り組む様子が紹介されていたのですが、古の仏師の技術の高さ、完成への執着心の深さには、その制作過程をなぞっていくことで、改めて驚かされます。

私にとって興味深かったのは、そのような学生さんたちが、学部時代は現代彫刻を行っていたということ。仏像を修復していくことに、どうなんだろう、一般的に考える「創造性」って発揮されないようにも思うのだけど、大学院へ進学したときに、現代アートから仏像へ転換されたその心情って…?学生さんたちが完成させた仏像の模刻は、やはりそっくりそのままではなくて、「その人らしさ」がにじみ出ているように思いました。仏像って芸術家が信仰のために持てる技術のすべてを注ぎ込んで作り上げた芸術作品なのでしょうね。

昨日の日曜美術館で神像が紹介されていましたが、その自由なつくりに較べると、仏像って決まりごとが多いし、より厳格なものである印象を受けました。

「仏像拝観手引」は、毎週火曜日の21:30からEテレで。翌週の火・水曜日に再放送もあります。

前回シリーズの紹介はこちら

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4/21日曜美術館 プライスさんのコレクション

2013-04-21 | メディア情報
4月から司会者も一新、俳優の井浦新さんが登場の「日曜美術館」。きょうは、今東北で開催中の「若冲さんが来てくれました プライスコレクション 江戸絵画の美と生命」が紹介されていました。

アメリカの江戸絵画コレクターであるジョー・プライスさん、すごいですね~。ご自身の何の予備知識もない審美眼で今や大人気の伊藤若冲を発見、素晴らしいコレクションを形成しました。
今回、大震災で被災された東北地方の方々に、日本人が描いた美しい絵画が少しでも心の慰めと力になれば、と展覧会にやって来てくれたのです。

伊藤若冲の「鳥獣花木図屏風」は、改めて素晴らしい!テレビでこのモザイク柄のひとつひとつをよくよく見ると、その緻密さに驚きます。それでいて全体が醸し出す生き物ワールドの一体感!生き生きとした生命感!色もとってもキレイだし。
今回の展覧会では、子どもたちにもわかりやすいようにと、絵のタイトルが工夫されているのが、とっても良い!と思いました。「鳥獣花木図屏風」は「花も木も動物もみんな生きている」、「百福図」は「『おたふく』がいっぱい」、「達磨遊女異装図」は「『だるま』さんと〈ゆうじょ〉さんが着物をとりかえっこ」などなど。その方がずっとわかりやすいし、覚えやすいし、絵をイメージしやすい!!ぜひ他館でも取り入れてほしいナイスアイデアだと思います。

つい先日、今売れに売れている村上春樹さんの新作「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」(長すぎて覚えられないタイトル)を読み終えたところなので、「色」に関してちょっと敏感。
番組の最後で、プライスさんが「被災者の方が語った震災直後は何もかも茶色に染まって世界の色が失われていたという話に、改めて色の大切さを感じた」とおっしゃっていたのには深く共感を覚えました。
人の目に映る「色」はとても大切、それって心を映したものでもあるのかな~って思います。






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ユーミンのSUPER WOMAN

2012-08-12 | メディア情報
テレビ視聴はオリンピック一色になってしまってるこの3週間ほどですが、この番組は必須です!

「ユーミンのSUPER WOMAN」
これは、さまざまなライフスタイルや価値観を持つ現代女性がいま興味を注いでいるテーマを取り上げ、ユーミンと女性ゲストが旅を通して新しい出会いと発見をするという番組で、7月からスタートしています。

前回のケルト文化研究者の鶴岡真弓さんとアイルランドの女神の聖地を訪ねる旅は、素敵でした!
アイルランド…私も音楽や美術も含め、ケルト文化にとっても興味を抱いて、実は10年ほど前に彼の地を訪ねました。今回映像でダブリンの街を見ていろいろなことを思い出したのですが、やっぱり他のヨーロッパの国々と比べても独特の肌合いのある街です。

番組で紹介されていたように、ケルト・キリスト教は、元々のケルトの太陽や大地を崇める自然信仰とキリスト教がゆるやかに融合しており、何か日本と通じるところがあるのもしれません。有名な装飾本である「ケルズの書」に描かれている文様も、日本の三つ巴(陣太鼓の模様)とそっくりだったり!不思議ですよね~。アジアとユーラシアの果て…。何か源流がつながっているのでしょうか。
ユーミンもしきりに「懐かしい」という言葉を発していましたが、特にアイルランドの音楽は、旋律とか楽器の音などによるのか、本当にしみじみと郷愁を誘われてしまいます。
番組に出られていた合唱グループの声の迫力は圧巻!ユーミンの感激が手に取るように伝わりました。きっとこの先、この体験にインスパイアされた作品が生まれると確信しています。

ユーミンはやっぱり偉大なアーティストだな~と思います。感性が豊かで独特の視点を持って、感動を言葉にできる。もちろん風景にぴったりマッチしたお洒落なファッションも見もの。また、鶴岡さんの言葉も、何か詩の一篇のように美しくて、聞き惚れました~。

次のゲストはキュレーターの長谷川祐子さんで、お二人が瀬戸内のアートの島を訪ねます。またこれも楽しみです!

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彫刻家・藪内佐斗司流 仏像拝観手引@Eテレ

2011-12-18 | メディア情報
最近展覧会に足を運ぶ時間がなく、テレビの話題ばかりで申し訳ないのですが、「彫刻家・藪内佐斗司流 仏像拝観手引」なかなか面白いです。
この番組のナビゲーターは、昨年の平城遷都1300年祭のマスコットキャラクター「せんとくん」の件で良くも悪くも?有名になった藪内佐斗司さん。藪内さんの彫刻作品は非常にユニークで、愛らしい童子など私はけっこう好きです。せんとくんが大ブーイングを受けた際も真摯なコメントを寄せていて、とても好感を抱きました。その藪内さん、自身が創られる作品にもよく似たまあるく暖かな感じのお方でした。

さて、番組は仏像の起源やルーツ、仏像の種類などの基礎的な知識や「仏様は大切に伝えられてきた拝むもの。」という拝観の礼儀に始まり、主に奈良のお寺をめぐりながら実際の仏像を拝観し、その技法などが語られます。
藪内さんは、東京藝術大学大学院教授として文化財保存学講座で仏像修復を担当されているので、造る人としての視点での解説にはいろいろと新しい発見があります。また、彼が指導する学生さんたちが修復のために昔の技法で仏像を模作をしている場面なども出てきたりして、こんな若い方たちがたくさん、文化財の修復と保存を志しているのだということに感動を覚えます。

少し前に大ブームを巻き起こした興福寺の「阿修羅立像」。あれは木でも金属でもなく、漆で造られた「乾漆像」なのだそうです。これは長江流域から伝えられた技法で天平時代は乾漆造りの全盛期だったそうで、有名な唐招提寺の鑑真さんの像も乾漆造りです。
この技法は土でつくった像の上に漆で麻布を貼り重ね、乾燥した後に背面に穴を開けて土を掻きだすというもの。平安時代になると消滅したため詳細は不明なのだそうですが、実際に再現しその本質に迫っている様子も紹介されていて大変興味深かったです。

さて、この番組のテキストがまた充実なんですよ!番組を見なくても(それ以上の)内容が十分にわかるカラーの立派なテキスト。なのにたったの1050円!私もまずは本屋でこのテキストを見つけてから番組を見始めたってわけです。年明けにかけてまだ3回ほどありますので、興味のある方はぜひ。
火曜日午後10:25~です。

奈良って行ってみたいお寺がたくさんある。身近なだけに改めて行くことがなかなかないのだけど、この番組を見ると一度ゆっくりと仏像様めぐりをしてみたいなと思います。
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ジャクソン・ポロック(日曜美術館)

2011-12-11 | メディア情報
今か、今かと待っていました!今朝の日曜美術館は、「アクションから生まれた革命~ジャクソン・ポロック~」。
滋賀県立近代美術館のサポーター活動に参加するようになって得た美術の知識のなかで、最大のトピックといえば「抽象表現主義」。その最も代表的な作家ともいえるジャクソン・ポロックは、このアメリカ発の美術の革新の大立役者として私たちの解説の中にしばしば登場します。

今回の放送も、そのような大きな美術の流れのなかでこの作家がどう位置付けられているか、といった内容を予想していましたが、全く違いました。きわめて個人的な、ひとりの作家として独自の画風を打ち立てるための孤独ともいえる戦いを追ったものでした。
そ~なんだ、当然だけど彼もひとりの人間。すごく偶像化というか記号化していた自分に気づかされました。また、革新って印象派しかり、あとから歴史に位置づけられるものなんですね。現在は偉大な作家としてオークションでもものすごく高値のつく彼の作品も、当時は一部の支持者を除いた大多数の世間の人々には全く受け入れられなかったというのです。

実は当館にはマーク・ロスコ、クリフォード・スティルなど抽象表現主義の素晴らしい作品がありますが、ポロックは版画のみでいわゆる大きな作品は持っていません。彼の作品には、ずいぶん前にニューヨークのMOMAで1点だけお目にかかりました。当時はあまり注目してなかったのですが、数ある作品のなかで、展示されていたその様子を思い出せるのだからやはり印象的だったのでしょう。でも作品からすごく強い力の迫力があったかといえば、そんな印象はないんですよね…。

さて、展覧会では、若き時代の具象絵画にもお目にかかれるようです。けっこう骨太のゴツゴツした絵画です。ピカソという大きな存在を乗り越えて独自の表現を獲得するために、アメリカ先住民の表現を取り入れたり、無意識の表現(意図せずに湧き出る表現とでもいうのか)を探求したり、そしてついに辿り着くのが塗料を垂らして描くこと(番組ではポーリングと言われていましたが、私たちはドリッピングと言ってます)でした。
番組で、ポロックが塗料を垂らしているのを下から撮影している映像がありましたが、無意識といいながらも、やはり絶妙のバランス感覚で色と線を組み合わせて作品をつくりあげていったのだろうな~と思わせる様子でした。

若い頃からアルコールに溺れ、酒を飲んで自動車事故で最期を迎えてしまうわけですが、だからこそ郊外に居を移し納屋を改造した広いアトリエがあのような作品の制作を可能にしただろうし、アルコール中毒の治療で出会った無意識を描くことが、あの技法を生み出したりと、不幸ではあったけどポロックにとって欠かせない要素ではあったのだろうと思いました。

展覧会は、愛知県立美術館で来年1月22日まで。
ゼッタイ見に行きたいぞ~。この年末年始の多忙をかいくぐって展覧会に出かけることが果たして出来るでしょうか?!

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たけしアート☆ビート

2011-12-03 | メディア情報
いろいろなことがあった2011年も、もう師走。
今年の我が家の出来事のひとつにテレビ地デジ化がありまして、ブラウン管テレビの上下の切れた小さな画面を見ていた私たちにとって、37型液晶テレビの大きさ・美しさには感動を覚えました。

録画もめっきりカンタンになったので、気になる番組をバンバン録画しちゃうわけですが、けっこう1週間を通してアートに関する番組がありますよね。

まずは当ブログにもよく登場する「日曜美術館」。こちらはNHKらしく、まじめで正統派な感じです。千住明さんが司会をしていますが、彼も分野は違いますがアーティストであるので、そういった視点や発言が真摯で興味深いな~と思います。

そして最近面白くて気に入っているのが同じくNHKの「たけしアート・ビート」であります。「たけしがいま、一番会いたいアーティストに会いに行く」という主旨のもと、美術にとどまらず各界で活躍するアーティストが登場、たけしがすごくはにかんだ様子なのですが、なぜか最後にはゲストと心を通い合わせている…という、誠に楽しそうでうらやましい番組であります。
特に印象に残ったのは、指揮者のコバケンさん(情熱的!)、沖縄の版画家・名嘉睦稔さん(ぜひ現地で作品を見たいと思った)、杉本博司さん(あんな気さくな雰囲気の方とは思わなかった!好感!)、アニメーション作家・山村浩二(「頭山」シュールすぎる!)などなど。出演されるアーティストの皆さんは、人間的にも魅力もあって、たけしとのやり取りがおもしろいです。
あと、この番組の途中に「アート・トーク」という、たけしと東京藝術大学学長の宮田亮平さん、それから週によって奈良美智さんや山口晃さんなど著名アーティストが集まり、世界の不思議アートについて語り合うというコーナーがありまして、それも3人で気楽に言いたいこと言ってる感じで、おもしろいんです。
次回は12月7日、ゲストは三沢厚彦さん!楽しみですね~。

他の美術番組としては、これもNHKの「極上 美の饗宴」、それからBS朝日の「世界の名画~美の殿堂への招待~」(もう番組終わった?)など、次から次へと録画してるのだけど、なかなか見る時間がなくてたまる一方…。
美術番組のつらいところは何かしながら見るってのができないところですね。凝視ですよ、凝視。
他にもおすすめの番組がございましたら、ぜひ教えてくださいませ~。 

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