テアトル十瑠

1920年代のサイレント映画から21世紀の最新映像まで、僕の映画備忘録。そして日々の雑感も。

ぼくの伯父さん

2005-04-10 | コメディ
(1958/監督・主演:ジャック・タチ/アラン・ベクール、ジャン=ピエール・ゾラ、ドミニク・マリ)


 何十年も観たかった、批評家にすこぶる評価の高いタチ映画。ちょっと前(2/18)にBSで流れたのを録画、今朝観ました。

 コメディということですが、あんまり笑えません。フランス人のコメディ感覚についていけない訳ではないはずなんですよ。「わんぱく戦争」なんて大好きですし、「禁じられた遊び」の中のオカシイ場面も笑えた。ただ、タチの感覚にはのれませんなあ。
 ギャクがわざとらしい。TV版「ミスター・ビーン」のギャクに似てるんですが、あれよりちょっとすましてる感じがしてダメですな。上品と言ってしまえば、そうなんでしょうが。「アメリ」も思い出しましたな。些末なことを殊更に追ってる感じが。

 ただ、色彩感覚や画面構成は素晴らしかった。しかも、品があった。だけど、面白くない。何なんでしょう?
 お間抜けな人が主人公なんですが、「ミスター・ビーン」のように徹底してない。58年当時なら、これで笑えたのかも知れませんが、ギャグという観点では感覚が古いです。子供たちの悪戯も、いまいち感覚が古い。
 台詞もタチさんが考えたそうですが、大してありません。まるで、サイレント映画を観てるようです。そして、アップショットがほとんどないです。だから、人間を描いてる感覚が稀薄ですな。今となっては、パターン化されたような人間しか出てきません。

 オートメーション化にはしっているこの頃の文明への批判が入っていて、タチ扮する“ユロ”さんの義弟のモダンな家を皮肉った場面は少しは笑えました。義弟の会社の秘書の描き方にも皮肉が入っていて、どうも、タチさんは女性に対するある種の想いが強そうだなと感じましたな。
 公開順序が逆になった「ぼくの伯父さんの休暇(1952)」は、タチの長編第二作目で、初めてユロさんが出てくる映画らしいんですが、夏のバカンス時のドタバタを描いていて、こちらの方が単純に理屈抜きの四コマ漫画的、パントマイム的で面白そうです。

 しかしながら、評価としてはこちらの方が高いようで、58年のアカデミー賞NY批評家協会賞で、それぞれ外国語映画賞外国映画賞を受賞。カンヌ国際映画祭でも、審査員特別賞を獲ったそうです。

 極めて個性的な映画ですので、お好きな方はどうぞ。

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2 コメント

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知りませんでしたぁ。 (izumi)
2005-06-19 11:57:38
十瑠さん、こんにちは。

TB&コメントありがとうございました。



外国語映画賞、獲ったんですね~?へ~って感じです。

メッセージはありましたね。それと、とてもそんな昔の映画には思えなかったです。

他のも観てみたいと思いましたぁ。
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こんにちは (十瑠)
2005-06-19 14:25:53
そういえば、冒頭や途中にもワンちゃんがたくさん出てきましたよね。izumiさんには嬉しいシーンじゃなかったですか。



「ぼくの伯父さんの休暇」が放送されたら観るでしょうが、あんまり期待しないでかる~い気持ちで観ようとは思ってます。
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